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【対談】Go Visions 小助川将氏×HRインスティテュート 三坂健。子ども向け教育と通じるこれからの人材育成(前編)

今、時代が大きく変わっている。これまでの当たり前は当たり前ではなくなり、ほんの数年先の未来を予測することも極めて困難な状況だ。こうした中にあり、人材育成に求められることも大きく変化している。従来通りの手法では、時代に即した真に必要な力を育むことはできない。

では、どんな「教育」が求められるのか。――子ども向け教育事業を手がけるGo Visions 株式会社 代表取締役 小助川将氏と、当社代表 三坂健との対談を企画した。小助川氏はコンサルタントや新規事業開発などで腕を振るった後、子ども向けロボット・プログラミング教室事業に携わり、現在のGo Visionsを起業した経歴を持つ。同氏は現状の教育にどんな課題を感じて起業したのか、その課題は企業での人材育成と同質なのか。2人の対談は理想の人材育成や個と組織のあり方にまで及んだ。

対談の内容を前編・後編の2回にわたってお送りする。前編では人材育成の現状と課題、後編ではこれからの社員教育に求められることが主題となっている。なお、対談は今後シリーズ化され、今回はその第一弾となる。

目次

教育現場がアップデートされていない

三坂:小助川さんは、M&Aや事業再建などのコンサルタント、企業向けメンタルヘルス新規事業や組織開発、インターネット事業に携わった後に、株式会社LITALICOで子ども向け教育事業に携わられています。随分と畑違いのことのようにも感じますが、教育に関心を持ったのはどんなことがきっかけだったのでしょうか。

小助川氏:実はある時、長女が学校に行くのを拒むようになりまして。聞けば、高圧的な先生とどうしても合わないと言い、確かに娘の個性が学校につぶされているようにも感じました。今の学校はどのような仕組みになっているのだろうと調べると、驚くべきことに、私が学生時代を過ごした1980年代と何も変わっていません。インターネットも何もなかった時代からまったくアップデートされていないのです。相変わらず、問題と黙々と向き合い、何の疑問も抱かずに画一的な正解を受け入れることが求められます。日本の教育を変えなければならいという思いがふつふつと沸き起こりました。

ただ、学校そのものを変えるのは相当無理があります。私には娘と息子がいますが、これからどんな時代になるのかは誰にもわからないのだから、自分たちでやりたいことを見つけ、自らの力で歩んでいける力をつけられるようバックアップする。親にできることはこれしかないと夫婦で話し合い、学校に頼らず、いろいろな選択肢や情報、体験を提供することを決めました。

三坂:それで企業という民間の場で、教育に携わることにしたということでしょうか。

小助川氏:はい。LITALICOとは運命的な出会いがありました。娘と息子がプログラミング教室の体験で、LITALICOの運営する教室に足を運んだのです。その数日後に、人材エージェントの方からLITALICOを紹介されて、娘と息子が体験を受けた校舎で面談を受けることになりました。

三坂:導かれるような出会いと言えますね。プログラミング教室で、お子さんたちの様子はいかがでしたか。

小助川氏:二人とも本当に楽しそうで、特に息子が強い関心を示しました。どちらかというと引っ込み思案だったのですが、後に自作ロボットの競技大会にチャレンジしたいと言ってきました。息子が自分で決めたことを応援したいと思い、できる限りのバックアップをしました。その結果、小3の時に日本大会で優勝。世界大会でも7位に入賞しました。これが最初のきっかけとなり、小5の時に孫正義育成財団の支援を受け、この春にはシンガポールの中学校に進学しました。

三坂:それはすごい。シンガポールに行くことは自分で決めたのですか。

小助川氏:国内の進学先などと比較しながら、最終的には自分で決めました。国際大会で海外の仲間と交流するうちに、海外に行くことが当たり前のように感じられるようになったのだと思います。

大人も子どもも、やりたいことが見つかれば、自ら学んでいける

三坂:小助川さんはLITALICOではHR部長も務めていらっしゃいました。学生たちと接する機会も多かったと思いますが、従来型の教育の弊害のようなものを感じることはあったでしょうか。

小助川氏:受験をがんばり有名大学に入っても、やりたいことも自信もない、という学生が多かったように感じます。基本的に受け身の姿勢で、会社から言われたことをするという発想です。自分が主人公となり、自分自身の人生や社会に影響力を発揮しようという発想がありません。それでも終身雇用・年功序列の時代なら、問題なく定年まで勤め上げることができたでしょう。しかし、今はそれだと通用しない場面が多くなっています。教育のあり方が、時代に合わなくなっているのは間違いないと言えます。

三坂:子ども向けの教育が、人材育成や社員教育に通じるところはあるでしょうか。実体験などから感じていることや、自社に取り入れていることがあれば教えてください。

小助川氏:多くあると思っています。自分のやりたいことを見つければ、子どもも大人も能動的かつ主体的に、楽しみながら前に進んでいけます。人は自ら学んでいく生き物ですし、知らなかったことを知るのは本当に楽しい。本来なら学びはエンターテインメントそのものと言えるはずです。

当社でも、一人ひとりの興味や関心を尊重するようにしています。私は経営者なので、社員にこうしてほしいという期待も当然あります。ただ、互いにすり合わせができたら、あとは細かくは言いません。バックアップはしますが、基本的には自己決定してもらいます。この接し方は、子どもに対する時も社員に対する時も共通です。社員教育をしているという意識もあまりありません。教育というと、どうしても教える・教えられるという関係ができますが、もっと対等な関係だと思っています。

社員に主体性を求めるなら、今すぐビジネスモデルを見直すべき

三坂:教えるという言葉が人材育成とそぐわないと、私も感じています。自分で気づいて自分で学ぶよう支援するのが、本当の教育でしょう。小助川さんの指摘したことは、当社が非常に重視している「主体性」と関わってきます。

当社には社員の主体性を引き出してほしいという要望が多く寄せられています。それに対し、具体的な課題を設定して自らの力で解決を目指す「ワークアウト」という手法を用いながら、実践力や主体的な行動力を養おうとしています。小助川さんのご経験を踏まえると、企業が行っている現状の人材育成にはどんな課題や問題点があると感じていますか。ぜひ教えてください。

小助川氏:企業側が伸ばそうとしているスキルとビジネスモデルに齟齬があると思っています。社会にパラダイムシフトが起き、状況が一変したことを受け、企業側は社員の主体性を伸ばしてほしいと要求するようになりました。

しかし、主たる事業は工業化時代の大量生産モデルを引きずっている。つまり、言われたことをミスなく正確に行うことが何より大事で、主体性を発揮されたら逆に困るわけです。その正確さを図るのが受験の偏差値で、企業側はビジネスモデルに即した人材を採用してきたはずです。社員の主体性を期待するなら、ビジネスモデルそのものを見直す必要があるはずです。

三坂:人材育成とビジネスモデルが密接に紐づいているのはおっしゃる通りです。企業側もこのままではいけない、次の事業の柱を作らなければいけないとわかってはいるのです。しかし、なかなかできないから、とりあえず研修をしよう、新規ビジネスをみんなで考えよう、となる。本当に苦しんでいると思います。

最近は、一種の新規事業立案ブームとなっており、大手企業もアクセレータープログラムを開催するなど、躍起になって新規事業の種を見つけようとしています。小助川さんなら新規事業を生み出す人材を育てるために、どんな育成をするでしょうか。大企業向けに何か提案のようなものはありますか。

小助川氏:思い切った施策をとれるのであれば、意志のある社員を選抜して、報酬込みで1000万円を渡します。その上で、国内でも海外でも普段は行かないような貧困・環境問題・障害者・地方の過疎などの強烈なところに自由に行き、さまざまな体験をしてもらいます。すると、居心地の良い組織の中にいたのでは絶対に見えてこなかった課題を発見できるはずです。新規ビジネスにつなげられるのではないでしょうか。

一人ひとりのキャリアのために、人材育成を行う

三坂:なるほど。強烈な体験をすると大きな学びを得られますし、人生が大きく変わることも少なくありません。当社でも、海外に足を運ぶ「ビジョンツアー」という育成プログラムがあり、さまざまな体験を促しています。

小助川氏:もう一つ考えられるとしたら、経営陣が変わることでしょう。経営陣が変わることで、事業の方向性を大きく転換した企業が複数あります。時には、大胆なリストラも実施するようですが。

三坂:日本はますます高齢化社会になるのだから、リストラ以外の選択肢を積極的に考えるべきだと思います。高齢になったらリストラという施策ばかりでは、社会がもちません。

小助川氏:大企業で勤務していた方は、豊富な経験や高い技術、独自のノウハウを持っています。そうした専門性を必要としている企業やNPO、自治体などは多くあるので、もっとうまくマッチングを図る仕組みがあればと思います。培った専門性を広く活かせれば、自分のためにも社会のためにもなるはずです。

三坂:今は自社のみのために人材育成をするという時代ではなくなってきているのかもしれません。社員の描くキャリアのために、必要な育成を行う。企業側にはそうした姿勢が求められてくるでしょう。

【対談】Go Visions 小助川将氏×HRインスティテュート 三坂健。子ども向け教育と通じるこれからの人材育成(後編)

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