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グロースマインドセット(Growth Mindset)を育成する方法を解説

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少子高齢化の進行により企業の人材不足が深刻化するなか、採用した人材を自社の戦力となるよう確実に育成する必要性が高まっています。グロースマインドセットは人材育成に活用できる考え方であり、ビジネスシーンにおいて近年注目を集めています。従来の人材育成の手法とは一線を画する点もあるため、人事担当者にとっては理解を深める必要性が高いといえます。

この記事では「グロースマインドセット」を取り上げ、その意味やメリット、育成する方法について詳しく解説します。

目次

グロースマインドセットとは?

グロースマインドセットを理解するためには、まず以下の基本的な事項を押さえておく必要があります。

グロースマインドセットの意味

グロースマインドセットとは、人の能力は経験や努力によって伸ばすことができるという考え方です。グロース(Growth)は「成長」、マインドセット(Mindset)は「考え方」を意味し「成長マインドセット」や「しなやかなマインドセット」と呼ばれることもあります。

グロースマインドセットを提唱したのは、スタンフォード大学教授のキャロル・ドゥエック氏です。発達心理学・社会心理学の権威である彼女が、研究成果を背景としてグロースマインドセットの概念を示しました。

マインドセットとは?

マインドセットとは、先入観や過去の経験によって形成される思考パターンのことです。潜在意識のレベルで思い込んでいるため、払拭するのが難しいとされています。

また、その時代における常識的な考え方を「パラダイム」と表現することもあり、新しい情報によって自らの思い込みに気づき、物の見方や考え方を変えることを「パラダイムシフト」といいます。時代の流れとともに、これまで固定されていた価値観や思い込み(=パラダイム)も変化することがあるものです。パラダイムシフトという言葉はさまざまな分野で使われていますが、ビジネスにおいては過去に常識とされていたアプローチを見直し、新たな方法にアップデートすることを意味します。

フィックストマインドセット(Fixed Mindset)とは?

グロースマインドセットと対極的な考え方とされるのが「フィックストマインドセット」です。フィックストマインドセットとは、人の能力は経験や努力を重ねても伸ばすことができないとする考え方です。

これらは対になる考え方ですが、どちらが優れているというものではありません。ただし、フィックストマインドセットを持つ人は、自らの能力を先天的なものと捉えているため、新たな挑戦に対しても否定的な考えを持ちます。変化が激しい時代に企業が競争環境を生き残っていくためには、経験や努力を重ねれば自らの能力を伸ばしていけるという、グロースマインドセットを備えた人材を育成する取り組みが必要です。

グロースマインドセットが注目を集める背景

グロースマインドセットは当初、教育現場で主に用いられていました。その後、マイクロソフト社がグロースマインドセットを人材育成戦略に導入したことをきっかけに、ビジネスにおける人材育成にも活用されるようになりました。

消費者ニーズや価値観の多様化が進む現代では、先入観や固定観念に捉われない新たな挑戦が求められます。変化の激しい時代だからこそ、新たなチャレンジに対して前向きに取り組める人材が必要となるのです。このような状況を反映し、人材育成としてのグロースマインドセットに注目が集まっています。

グロースマインドセットによってもたらされる5つの肯定的思考

グロースマインドセットによって、次の5つの肯定的思考がもたらされます。

  1. 挑戦を喜んで受け入れ、積極的に取り組む
  2. 障害を乗り越えるまで努力を継続する
  3. 努力をすれば必ず成長できる
  4. 他者の批評を受容し、客観的に振り返る
  5. 他者の成功を自己への刺激と捉え、成長の糧にする

グロースマインドセットは、挑戦や障害、批評など自らの「壁」となる事柄に対して肯定的に捉えるのが特徴です。上記のような思考を通じて、積極的に挑戦することや自主的に努力し続けること、目標達成に向けて粘り強く取り組むことができるようになります。

グロースマインドセットを身につけることのメリット

グロースマインドセットを身につけるメリットとして以下が挙げられます。

挑戦に対して前向きになる

グロースマインドセットを備えた人材は、失敗を前向きに捉え、次の挑戦に取り組むことができます。挑戦を成長の機会と捉えるマインドは、挑戦そのものを楽しむ感覚にもつながります。仮に失敗したとしても、それを糧にしてさらに成長できる可能性を秘めており、企業にとっても能力を発揮する機会を活かす社員がいることは大きな利益となるでしょう。

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努力を継続できる

グロースマインドセットを持つ人は、努力の積み重ねが自分の成長につながると信じています。新たな試みに挑戦すると、時には失敗してしまうこともあるでしょう。しかし、グロースマインドセットがあればうまくいかなかったとしても、その結果を前向きに受け止めることができます。そして、失敗を恐れずに次の挑戦に取り組むため、結果的に努力を継続することができるのです。

グロースマインドセットを育成する方法

グロースマインドセットを育成するには以下の方法があります。

課題と今後の対策を明確化する

始めに課題を明確化することで、今後に向けてとるべき対策が明らかになります。スタート時点で課題が不明確であると、課題解決に向けた方向性が定まらず、自らの成長につながりにくくなってしまいます。努力しても結果に結びつかないことが続けば、グロースマインドセットの習得を挫折してしまうかもしれません。グロースマインドセットを育成するには、まず課題の本質を見極めること、そして課題解決のための効果的な対策を思考することが重要です。

課題を明確化する際は、その課題を細かく分析していきます。たとえば「営業プレゼンがうまくいかなかった」という課題がある場合「①伝わりにくい話し方だった」「②構成がわかりにくかった」「③資料が見にくかった」というように細分化し、これら一つひとつに対して対策を講じます。一例として「①身振りや目線による表現を意識する」「②フレームワークを活用する」「③資料に図やグラフを用いる」といった内容が考えられるでしょう。このように課題を細分化すれば必要なアプローチ方法が明確になり、改善に向けた取り組みをおこないやすくなります。

プロセスに注目する

失敗すると誰しも成長への意欲を失ってしまいがちですが、その失敗をさらなる成長に活かそうとするのがグロースマインドセットの考え方です。そのためには、失敗の原因を分析し、修正点を見つけることが重要です。また、失敗したとしても「悪かった点」だけを洗い出すのではなく、一連のプロセスにおける「よかった点」にも注目し、それは今後も継続していくように心がけます。

この振り返りは、成功した場合も同様におこなうとよいでしょう。結果を喜ぶだけでなく、プロセスを振り返ってみて、よい点は継続できるようにします。失敗しても成功しても、結果に一喜一憂するのではなく、努力を続ければ結果は自ずとついてくるという感覚を持つことが大切です。

小さな成功体験を積み重ねる

グロースマインドセットを育てるためには、失敗を恐れずに挑戦する姿勢が必要です。日常的に小さな成功体験を積み重ねることで、自己肯定感が高まり、何事にも前向きに取り組むことができるようになります。目の前にある課題を解決して成功体験をつくること、このようなスモールステップから自信が生まれ、新たなマインドセットが構築されるのです。

また、グロースマインドセットの育成には「自分自身が成長している」という感覚が不可欠です。自分が挑戦した回数、つまり目標達成に向けて試行錯誤を繰り返した回数をカウントすることで、前進しているという感覚を維持できます。自分は過去にこれだけの積み重ねを継続してきたという自信にもつながるでしょう。

まとめ

グロースマインドセットとは、経験や努力によって能力を高められるという考え方です。自らの行動や考え方を見直すことがグロースマインドセットの育成につながり、最初のステップとして自分自身のマインドセット(固定された考え方)を認識することが重要となります。ただし、組織風土から醸成されるマインドセットには自分自身で気づくことが難しいため、外部の視点を取り入れて見直しを図るのが有効です。

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