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スタートアップの資金調達方法とは?注意点や調達事例を解説

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スタートアップが事業を開始・継続するうえで欠かせないのが資金調達です。事業活動には多額の資金が必要であり、自己資本だけでまかなえない場合が多いため、資金調達が必要となります。資金調達は一度きりではなく、事業の成長段階を示す「ラウンド」に応じた資金調達方法を選びながら、複数回にわたって実施されることが一般的です。

この記事では、スタートアップの資金調達方法、注意点、そして各ラウンドの調達事例についてわかりやすく解説します。

目次

資金調達とは

資金調達とは、企業が事業活動に必要な資金を外部から集める行為です。新規事業の立ち上げや既存事業の成長には、充分な資金が不可欠です。事業活動のすべてを自己資本だけで賄えるケースは稀であり、ほとんどのスタートアップにとって資金調達は避けて通れない課題となります。

スタートアップの資金調達の重要性

事業の立ち上げの際は、設備や技術開発への投資、必要な人材の獲得や育成、そしてユーザー獲得のための広告宣伝などに多額の資金が必要となります。スタートアップは、新規事業を軌道に乗せるため、上場に至るまでに数回、段階的に資金調達を実施します。

事業を始めたばかりのスタートアップに対して、一度に多額の投資をするケースは少ないため、基本的に資金調達は一回きりで終わることはありません。事業の売上や利益が小規模なスタートアップにとって、自己資本のみで事業活動を継続することは難しく、通常、段階的に複数回にわたる資金調達をおこなわれます。

スタートアップの資金調達方法

資金調達には、大きくデッド・ファイナンス(借入・融資)とエクイティ・ファイナンス(増資による資金調達・出資)の2種類に分かれます。デッド・ファイナンスは金融機関等からお金を借りること、エクイティ・ファイナンスは株式を発行することで資金調達することです。近年は、クラウドファンディングというプロジェクトに共感した人から資金を集める手法も出てきています。スタートアップの代表的な資金調達方法として4つご紹介します。

エンジェル投資家

エンジェル投資家とは、創業して間もない企業へ投資をおこなう個人投資家のことです。エクイティ・ファイナンスに該当する資金調達方法で、リターンとして株式や配当の受け取りがあります。組織的ではなく個人の自由意志によっておこなうもので、スタートアップやベンチャー企業の今後の成長に期待して出資する投資家は数多く存在します。

ベンチャーキャピタル(VC)

ベンチャーキャピタル(VC)とは、スタートアップや成長企業などに投資をおこなう専門の投資機関のことです。エクイティ・ファイナンスに該当する資金調達方法で、上場時やM&A時のキャピタルゲイン(売却差益/保有する株式を売却して得られる利益のこと)を主な目的とします。投資する企業の価値を向上させるために、出資の際には経営サポートもあわせておこなうのが一般的です。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫とは、中小企業やスタートアップへの融資をおこなう国の金融機関です。デット・ファイナンスに該当する資金調達方法で、スタートアップ向けの融資制度として「資本性ローン」があります。

参考:挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)※中小企業事業|日本政策金融公庫

クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、インターネットを通じて多数の人から出資を募る方法です。一口数万円など少額からの出資が可能で、市場のニーズを探るテストマーケティングにも利用できます。

資金調達ラウンドとは

資金調達ラウンドは、スタートアップの成長段階ごとにおこなわれる資金調達のフェーズを指します。投資家目線ではスタートアップに投資をおこなうフェーズであり「投資ラウンド」と呼ばれることもあります。資金調達方法は商品・サービスの開発時期や自社の状況によって異なるため、段階に応じた最適な資金調達方法を選択する際の指標となります。

ここからは資金調達ラウンドの5つのフェーズごとに、それぞれの概要と資金調達事例をご紹介します。

エンジェルラウンド

エンジェルラウンドは創業前後のフェーズであり、アイデアは存在ものの、製品やサービスが具体化していない段階です。資金調達方法としては、エンジェル投資家からの出資や家族・友人からの借り入れなどがあります。

エンジェルラウンドの資金調達事例

東京大学発のスタートアップ、LocationMind株式会社は、2020年5月にエンジェルラウンドで総額4億円の資金調達をおこないました。同社は位置情報に基づく人流分析や位置認証サービスなどを提供しており、調達した資金は位置情報事業の開発や人件費に充てられました。

参考:プレスリリース(2020年5月15日)|LocationMind株式会社

シードラウンド

シードラウンドは創業して間もないフェーズで、ビジネスモデルが定まりつつあります。資金調達方法としては、エンジェル投資家やシード投資家からの出資、日本政策金融公庫などスタートアップ向けに融資をしている金融機関からの借入や政府・自治体からの助成金や補助金、クラウドファンディングなどがあります。

シードラウンドの資金調達事例

ライドシェアサービスの開発を進めるnewmo株式会社では、2024年2月にシードラウンドで約15億円の資金調達をおこないました。出資者には株式会社メルカリのほか、国内の大手ベンチャーキャピタルや個人投資家が含まれており、調達した資金は顧客向け・ドライバー向けのアプリ開発や運行管理システムの開発に充てられます。

参考:プレスリリース(2024年2月16日)|newmo株式会社

シリーズA

シリーズAはビジネスを開始したフェーズで、ユーザー数の増加と売上の拡大が図られます。このラウンドでは、すでにプロトタイプ(試作モデル)が完成し、PMF(プロダクトマーケットフィット)が見え始めています。資金調達方法としては、金融機関からの融資、ベンチャーキャピタル(VC)やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)(※1)からの出資などがあります。

(※1)事業会社が外部のスタートアップやベンチャー企業に出資する活動のこと。さまざまな分野を投資対象とするVCとは異なり、CVCでは自社事業と関連性のある企業に投資する。

シリーズAの資金調達事例

支出管理サービス「バクラク」を提供する株式会社LayerXは、シリーズAで合計82億円の資金調達をおこないました(2023年2月に約55億円、2023年6月に約27億円)。調達した資金はバクラクシリーズの機能追加・開発費、マーケティング、人材採用費に充てられます。

参考:プレスリリース(2023年6月13日)|株式会社LayerX

用語解説「Product Market Fitとは」❘ 組織・人材開発のHRインスティテュート

シリーズB

シリーズBは、ビジネスが軌道に乗り、安定的に稼働しているフェーズです。資金調達方法には、都市銀行や地方銀行、日本政策金融公庫からの融資、ベンチャーキャピタルやコーポレートベンチャーキャピタルからの出資などがあります。売上の拡大を目指して積極的に資金を投下する段階で、億単位の資金調達が実施されます。

シリーズBの資金調達事例

ロボットの設計・製造をおこなうTelexistence株式会社は、2023年7月にシリーズBで約230億円の資金調達を実施しました。これは国内スタートアップにおける2023年の年間資金調達ランキングで2位にランクインする金額です。同社はロボットを商業ベースで運用する段階に入っており、調達した資金は米国での事業拡大に充てられます。

参考:プレスリリース(2023年7月6日)|Telexistence株式会社

シリーズC

シリーズCは上場も視野に入るフェーズで、安定した黒字経営が続いている状況です。資金調達方法としては、キャピタルゲインを目指すベンチャーキャピタルからの出資、証券会社や銀行からの融資などが挙げられます。企業規模の拡大やグローバル展開を目指し、数十億円の資金調達を実施するケースがあります。

シリーズCの資金調達事例

キャディ株式会社は、部品調達プラットフォームと図面データ活用クラウドの2つの事業を展開しています。2023年7月にシリーズCで総額118億円の資金調達をおこない、累計資金調達額は217億円を超えました。シリーズB以降はグローバルに事業を展開しており、米国やベトナム、タイに拠点を設立しています。

参考:プレスリリース(2023年7月5日)|キャディ株式会社

資金調達方法の注意点

スタートアップの資金調達(出資・融資)における注意点を以下にまとめました。

エンジェル投資家やVCからの出資

エンジェル投資家やベンチャーキャピタルから出資を受ける際には、持株比率の変動に注意が必要です。基本的に株主総会の議決権比率は持株比率と同率になるため、投資家に株式を渡し過ぎると、経営の自由度が制限され、コントロール権を失う可能性があります。

金融機関からの融資

返済の必要がない出資とは異なり、融資を受ける場合には期限までに利子を含めて返済しなければなりません。実績がないスタートアップに対する融資では、企業としての信用力や返済能力が重視されるため、現実的な事業計画を立てているかどうかも重要な観点となります。

まとめ

スタートアップの資金調達方法として、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資、金融機関からの融資、インターネットを介して出資を募るクラウドファンディングなどが挙げられます。創業して間もないフェーズ、事業が軌道に乗ってきたフェーズ、上場も視野に入るフェーズなど、事業の成長段階に応じて適切な資金調達方法を選択することが重要です。

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