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リスキリングで何を学ぶべきか?必要なスキルや企業が推進するための課題を紹介

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職業能力の再教育、より高度なスキルの再開発を意味する「リスキリング」。変化の激しいビジネス環境に対応する人材戦略として多くの企業に注目されているものの、「自社に必要なリスキリングとは何か」「社内でどのように取り組むべきか」などを課題に挙げている企業担当者も多いようです。

この記事では、リスキリングで社員は何を学ぶべきなのか、組織で推進するための具体策や注意点とあわせて解説します。

目次

リスキリングとは?

リスキリングとは人材戦略の一つで、コロナ禍により加速したDX化(デジタルトランスフォーメーション:※1)やデジタル化などに対応すべく、自社社員の能力を再開発し、時代に即したスキルを身につけさせて、新たな仕事や職種に携わることを推進する取り組みです。

用語解説「リスキリング(リスキル)」❘ 組織・人材開発のHRインスティテュート

2022年6月に政府が発表した「経済財政運営と改革の基本方針2022」(通称「骨太方針2022」)において、人への投資を重点施策として掲げられました。その中で「リスキリング」について言及されたことも契機となり、リスキリングへの注目度が高まりました。

政府の動きと並行して、Googleなどの国や地方自治体、企業など49団体が参加する「日本リスキリングコンソーシアム」が2022年6月に設立される など、企業の枠組みを超えた活動が広がっています。

リスキリングは、社員それぞれが持つ個人的な興味・関心の対象として何かを学び直すのではなく、これから携わる新しい仕事に必要なスキルとして「価値を創造・創出するための新たな知識や経験」を習得することに目的があります。

少子高齢化により労働力不足が社会的な問題として深刻化するなか、企業がリスキリングを取り入れ、人材への投資を積極的におこなう必要性が増しています。社員がリスキリングで何を学ぶかを戦略的に捉え、その学びにより自社の付加価値を向上させて、他社との競争に優位性を持つことが重要視されているのです。
(※1)新しいデジタル技術によりビジネスモデルを変革すること

●リカレント教育とリスキリングの違い

リカレント教育とは欧米を中心に広まった言葉で「循環」や「繰り返し」を意味する学習行為をいいます。学校での教育を終えた人が再び学び直すことを意味し、義務教育などの基礎的な学習の修了後、就職と就学を繰り返すことがポイントです。欧米では新しい知識を得るために一度職を離れるのが基本的なスタイルである一方、日本のリカレント教育は就学を目的とした退職・休職を前提とせず、仕事を続けながら週末や夜間などに自己学習として取り組むことが多いのが特徴です。

リスキリングでは「何を学ぶか」という面で、企業が主体となり「仕事上必要となるスキルの獲得」を目指すのに対し、リカレント教育はどちらかといえば「自らの意思で選択したスキルの習得」という個人主体のニュアンスが強いと考えられます。新しいスキルを身につけるための「学び直し」という意味では共通しているものの、何を主体とした学びであるかという点で違いがあるといえるでしょう。そのため、学びのスタイルも、リスキリングは業務の一環として取り組むことが想定され、業務外に学ぶリカレント教育とは区別されます。

関連記事:リスキリングの導入事例6選!先進企業から学ぶ成功のポイントを解説

リスキリングで何を学ぶか?

持続的な企業価値向上のために、人材育成に戦略的に取り組んでいくには、自社の社員がリスキリングで「何を学ぶか」が重要となります。いわゆる一般的な「個人のスキルアップ・学び直し」とは異なり、リスキリングでは組織のなかで「価値を創造・創出できる人材」として個々の能力を高める学びが求められています。

DX時代を迎えた日本企業においては、大幅に進化したデジタル技術に対応するリスキリングの必要性が高まっています。しかし、デジタル化によって企業のビジネスモデルが変わったことで、今後さらなるDX人材の不足が懸念されます。DXによる経営課題の解決や技術革新に対応する人材戦略として、ソフトウエア・アプリ開発やデータサイエンスなどのIT関連、AI・機械学習、情報セキュリティーなどの高度なスキルを中心とした再教育・再開発が急務といえるでしょう。

実際に、企業が不足しているDX人材を新たに採用・確保することは非常に難しくなっています。売り手市場(求職者数よりも採用側の企業数の方が多い状況)となっている現在においては、競合他社よりも多くの採用コストを捻出できること、かつDX人材に競合他社以上のよい条件を提示できることが採用活動の条件として求められている状態です。

一方、既存の社員がリスキリングで新たなDXスキルを身につけることができれば、今社内にいる人材を最大限に活用でき、外部からの獲得や採用活動にかかる費用を大幅に削減できます。さらに、リスキリングでDXを内製化することによって、組織内にアイデアが生まれやすくなり、新商品の開発や事業の拡大といった自社の価値創造にもつながっていくでしょう。

現場で発生している課題に対しリスキリングをおこなえば、その時々で求められるDX人材を明確にでき、育成をスムーズにおこなえます。自社の業務に最適な人材が増え、組織の活性化による生産性の向上にも期待が持てるでしょう。

企業はこれから必要となる、DXに直結する新たな学びの機会を積極的に提供し支援すること、また企業として目指したい目標・ビジョンを明確に示し、社員の自律的な学びを推奨する組織風土・文化を早急に醸成することが大切です。

関連記事:【ウェビナーレポート】DX、組織変革を加速させる「リスキリング」とは何か。その定義や実践方法をリスキリングの仕掛け人が解説(前編)

関連記事:【ウェビナーレポート】DX、組織変革を加速させる「リスキリング」とは何か。その定義や実践方法をリスキリングの仕掛け人が解説(後編)

リスキリング推進に必要な取り組み

企業がリスキリングの取り組みを進める際には、新しいことに挑戦するときに起こりがちな「社員の不安や抵抗感」を取り除かなければなりません。

はじめにリスキリングの目的やリスキリングで何を学ぶかを明確にし、企業内で価値を生み出すことの必要性を社員に深く理解してもらう必要があります。目まぐるしく変化するビジネス環境のなかで生き残るためには、企業にとっても社員にとってもリスキリングが欠かせない戦略になるということを、丁寧に、わかりやすく伝えられるかがポイントです。

加えて、リスキリングを社内で推進していくには以下の取り組みも必要です。
・社員の「学ぶ」モチベーションを高めていくこと
・習得したスキルの実践として現場で活用していくこと
・主体性を持った社員のキャリア開発を組織全体で実現していくこと

アンケートを取るなど社員の意見を積極的に取り入れながら、必要な研修プログラムやラーニングツール、外部のコンテンツを活用することで、社員がリスキリングに取り組む意欲を高めることができます。

日本リスキリングコンソーシアムでは、DX人材の育成に必要なプログラムを一部無料公開しており、特設サイトに登録することで受講できるようになっています。こうした無料の外部コンテンツを活用することから取り組んでみるのもよいでしょう。

日本リスキリングコンソーシアム

また、一人ひとりがリスキリングで何を学ぶべきか、どの部分の能力を再教育・再開発すべきかを把握するうえでも、社員のスキルを可視化できるシステムやリスキリングを支援する外部サービスの導入も有効でしょう。

関連記事:DX人材とは?企業における職種・役割とスキルセット、育成方法を解説

リスキリングの課題と注意点

企業がリスキリングを推進するうえで課題となるのが「教育の計画と効果検証」です。リスキリングで「何をどのように学ぶか」「どのように評価するか」を実践した体制づくりが企業の課題であり、リスキリング推進の第一歩となります。

リスキリングの効果を最大化するためには、社員一人ひとりの保有しているスキルや、学習の進捗状況や習得のばらつきなどの学習データを一覧にして見られるよう、システム上で一元管理する必要があります。現状とゴール(目標)のギャップを客観的に把握してスキルを身に着ける道筋を明確にすることで、一人ひとりがスキルアップを実感したり、リスキリングで何を学ぶかの優先順位を見直したりすることができます。個人とチームのゴール(目標)を設定し、組織が一丸となって実践していくことがポイントです。

また、リスキリングにおいては学びの場を提供して終わりではなく、社員が習得したスキルの効果検証・フィードバックまでおこなう必要があります。これらを適切に実施することで学んだ内容を実務に適用できているかを確認でき、学習環境の整備や育成方法の改善ができるとともに、社員のさらなるスキルアップや適材適所の異動・人材配置などもスムーズに実施できるようになるでしょう。

リスキリングは効果が出るまで一定の時間がかかることを企業が理解し、効率的かつ継続的に取り組むことが大切です。仕事と学習の両立の難しさを踏まえ、社員がリスキリングに取り組みやすくなるよう業務の一部時間を確保したり、モチベーションを維持できるよう社員同士の情報交換や交流の場、社内SNSなどを設けたりするのも効果的でしょう。

関連記事:eラーニングが学習に効果的な理由とは?社員教育におけるメリットとおすすめサービスを紹介

まとめ

変化の激しいビジネス環境に対応するための人材戦略・経営施策として、近年多くの企業に注目されている「リスキリング」。労働力不足、とりわけDX人材の不足が深刻化するなかで、自社の社員がリスキリングで何を学ぶかを戦略的に捉えること、その学びにより企業の付加価値を向上させて優位性を持つことが重要視されています。

リスキリングの導入は、DXに必要なデジタル人材を社内で育成できることに大きなメリットがあります。今いる人材を活用できれば外部からの獲得にかかるコストを大幅に減らせるうえ、組織内に革新的なアイデアが生まれやすくなり、自社の価値創造にもつながることが期待されます。

リスキリングを社内で推進していくには「目的や何を学ぶかを明確にする」「仕事と学習の両立を支援する」ことが必要です。これらを踏まえ、DX人材の育成という重要課題に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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