リスキリングで何を学ぶべきか?必要なスキルや企業が推進するための課題を紹介
職業能力の再開発、より高度なスキルの再開発を意味する「リスキリング」。変化の激しいビジネス環境に対応する人材戦略として多くの企業に注目されています。
多くの企業がリスキリングに注目する背景には、急速に進むデジタル化やAI技術の発展があります。特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に伴い、従来の業務スキルだけでは対応できない新たな課題が増加しています。そんな中、「自社に必要なリスキリングとは何か」「社内でどのように取り組むべきか」などを課題に挙げている企業担当者も多いようです。
この記事では、リスキリングで社員は何を学ぶべきなのか、組織で推進するための具体策や注意点とあわせて解説します。
リスキリングとは?
リスキリング(Reskilling)とは、新たなスキルを習得する、またはさせるための取り組みのことです。経済産業省の検討会資料では、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」 と記されています。
コロナ禍により加速したDX(デジタルトランスフォーメーション:※1)に対応すべく、特にデジタル領域・IT関連のスキルを指すことが増えています。自社社員の能力を再開発し、時代に即したスキルを身につけさせて、新たな仕事や職種に携わることを推進する取り組みです。
リスキリングは単に「学び直す」ということではなく、「これからも仕事で価値を生み出し続けるために必要なスキルを身につける」ことに重点を置くものです。人口減少による労働供給制約や職業人生の長期化などの社会の変化の中で、企業と労働者個人の継続的な成長のために重要な取り組みと言えるでしょう。
2022年6月に政府が発表した「経済財政運営と改革の基本方針2022」(通称「骨太方針2022」)において、人への投資を重点施策として掲げられました。その中でリスキリングについて言及されたことも契機となり、リスキリングへの注目度が高まりました。
政府の動きと並行して、Googleなどの国や地方自治体、企業など49団体が参加する「日本リスキリングコンソーシアム」が2022年6月に設立されるなど、企業の枠組みを超えた活動が広がっています。このコンソーシアムは、リスキリングの重要性を社会に広めるとともに、効果的なリスキリングプログラムの開発や普及を目指しています。
(※1)新しいデジタル技術によりビジネスモデルを変革すること
用語解説「リスキリング(リスキル)」❘ 組織・人材開発のHRインスティテュート
引用:経済産業省 第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会(METI/経済産業省)「資料2-2 石原委員プレゼンテーション資料」
リカレント教育とリスキリングの違い

リカレント教育とは、欧米を中心に広まった言葉で「循環」や「繰り返し」を意味する学習行為をいいます。学校での教育を終えた人が再び学び直すことを意味し、義務教育などの基礎的な学習の修了後、は「働く → 学ぶ → 働く」のサイクルを回し続けることがポイントです。
リスキリングでは「何を学ぶか」という面で、企業が主体となり「仕事上必要となるスキルの獲得」を目指します。組織のニーズに基づいて設計された教育プログラムを通じて、社員が新しいスキルを身につけます。
一方、リカレント教育は、どちらかといえば「自らの意思で選択したスキルの習得」という個人主体のニュアンスが強いと考えられます。個人が自己啓発やキャリアアップのために自主的に学習を行う幅広い概念だと言えるでしょう。
リスキリングで何を学ぶか?
持続的な企業価値向上のために、人材育成に戦略的に取り組んでいくには、自社の社員がリスキリングで「何を学ぶか」が重要となります。
DX時代を迎えた日本企業においては、大幅に進化したデジタル技術に対応できる人材を育てるリスキリングの必要性が高まっています。しかし、デジタル化によって企業のビジネスモデルが変わったことで、今後、DX人材の不足が一層深刻化することが懸念されています。
一方、既存の社員がリスキリングで新たなDXスキルを身につけることができれば、現在社内にいる人材を最大限に活用でき、外部からの獲得や採用活動にかかる費用を大幅に削減できます。企業はこれから必要となる、DXに直結する新たな学びの機会を積極的に提供し支援することが大切です。
リスキリングで学ぶべき具体的なスキルの例は、企業の業種や事業領域によって異なりますが、一般的に以下のようなものが挙げられます。
- プログラミングスキル(Python、JavaScriptなど)
- データ分析・統計スキル
- AI・機械学習の基礎知識
- クラウドコンピューティング
- サイバーセキュリティ
- デジタルマーケティング
これらのスキルを効果的に習得するためには、単なる座学だけでなく、実践的なプロジェクトベースの学習や、オンラインコースの活用など、多様な学習方法を組み合わせることが重要です。
リスキリングでは、これらの新しいスキルを学ぶだけでなく、既存のスキルを新しい文脈で活用する能力も重要です。例えば、従来の業務知識をデジタル環境に適用する方法を学ぶことで、より効果的なDX推進が可能になります。
リスキリング推進に必要な取り組み
企業がリスキリングを効果的に推進するためには、社員の不安や抵抗感を取り除くことが重要です。まず、リスキリングの目的と学ぶべき内容を明確にし、企業内での価値創出の必要性を社員に深く理解してもらう必要があります。
リスキリングの取り組みを成功させるには、以下のような施策が有効です。
- 社内コミュニケーションの強化 : リスキリングの意義や目標を全社員に周知し、質問や懸念に丁寧に対応します。
- 個別のキャリアプラン作成 : 各社員のスキルや経験、キャリア志向に合わせたリスキリング計画を立てます。
- 段階的な学習プログラムの導入 : 基礎から応用まで、段階的に学べるカリキュラムを用意し、社員の学習意欲を高めます。
- 実践的な学習機会の提供 : 座学だけでなく、実際の業務に即したプロジェクトベースの学習を取り入れます。
- メンターシップ制度の導入 : 経験豊富な社員が若手社員をサポートする体制を整えます。
アンケートを実施して社員の意見を積極的に取り入れることも、リスキリングへの参加意欲を高める効果があります。また、必要に応じて外部の研修プログラムやeラーニングツール、オンラインコースなどを活用し、多様な学習リソースを提供することも重要です。
リスキリングの成果を可視化するために、定期的なスキル評価やフィードバックセッションを設けることも大切です。これにより、社員の成長を実感させ、さらなる学習意欲を喚起することができます。
企業は、リスキリングを一時的なトレンドではなく、持続的な競争力を維持するための長期的な投資として位置づけるべきです。経営層のコミットメントと適切な予算配分が、リスキリング推進の成功には不可欠でしょう。
最終的にはリスキリングの取り組みを通じて、社員のエンゲージメントを高め、組織全体の学習文化を醸成することが、企業の持続的な成長につながります。
日本リスキリングコンソーシアムでは、DX人材の育成に必要なプログラムを一部無料公開しており、特設サイトに登録することで受講できるようになっています。こうした無料の外部コンテンツを活用することから取り組んでみるのもよいでしょう。
日本リスキリングコンソーシアム
また、一人ひとりがリスキリングで何を学ぶべきか、どの部分の能力を再教育・再開発すべきかを把握するうえでも、社員のスキルを可視化できるシステムやリスキリングを支援する外部サービスの導入も有効でしょう。
関連記事:DX人材とは?企業における職種・役割とスキルセット、育成方法を解説
リスキリングの課題と注意点
企業がリスキリングを推進するうえで課題となるのが「教育の計画と効果検証」です。リスキリングで「何をどのように学ぶか」「どのように評価するか」を実践した体制づくりが企業の課題であり、リスキリング推進の第一歩となります。
リスキリングの効果を最大化するためには、社員一人ひとりの保有しているスキルや、学習の進捗状況や習得のばらつきなどを把握するため、学習データを一覧にして見られるようにシステム上で一元管理する必要があります。これにより、リスキリングの進捗を正確に把握し、必要に応じて個別のサポートを提供することが可能になります。
また、リスキリングを成功させるためには、社内のリスキリング文化を醸成することも重要です。経営層から現場の社員まで、全社的にリスキリングの重要性を理解し、積極的に取り組む姿勢が求められます。
さらに、リスキリングプログラムの継続的な改善も欠かせません。技術や市場の変化に合わせて、学習内容を適宜更新し、最新のスキルを習得できるようにすることが必要です。
そして、リスキリングの成功事例を社内で共有することも効果的です。他の社員の成功体験を知ることで、リスキリングへのモチベーションが高まり、全社的な取り組みが加速する可能性があります。
リスキリングは効果が出るまで一定の時間がかかることを企業が理解し、効率的かつ継続的に取り組むことが大切です。そのためには、長期的な視点を持ち、リスキリングを人材育成戦略の中核に据えることが求められます。日本では、他の先進国と比べると、リスキリングに取り組む企業や個人の割合はまだ少ないのが現状ですが、リスキリングに関する情報や事例を積極的に収集して人材戦略に取り組みましょう。
関連記事:eラーニングが学習に効果的な理由とは?社員教育におけるメリットとおすすめサービスを紹介
まとめ
変化の激しいビジネス環境に対応するための人材戦略・経営施策として、近年多くの企業に注目されている「リスキリング」。労働力不足、とりわけDX人材の不足が深刻化するなかで、自社の社員がリスキリングで何を学ぶかを戦略的に捉えること、その学びにより企業の付加価値を向上させて優位性を持つことが重要視されています。
リスキリングの導入は、DXに必要なデジタル人材を社内で育成できることに大きなメリットがあります。特に、AI、ビッグデータ、クラウドコンピューティングなどの先端技術に関するスキルを社員が習得することで、企業の競争力を高めることが期待できます。
また、リスキリングは単なるスキル習得にとどまらず、従業員のキャリア発展やエンゲージメントの向上にも寄与します。新たなスキルを身につけることで、従業員は自信を持って新しい役割や責任に挑戦できるようになります。
さらに、リスキリングを通じて組織全体のデジタルリテラシーが向上することで、企業全体のDX推進がスムーズに進むことも期待できます。これにより、業務効率化やイノベーションの創出につながり、企業の持続的な成長が実現できるでしょう。
企業はリスキリングを単なるトレンドではなく、長期的な人材育成戦略の一環として継続的に取り組むことが重要です。
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