Vol.06

「NEXT HR」キーパーソン特別インタビュー

ソフトバンクが推進する人材オープンイノベーション 多様なコミュニティと対話が企業成長を加速させる【前編】

ソフトバンク 人事総務統括 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長 源田泰之氏
インタビューアー:ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介

多様な組織の中でいかに人事制度を構築するか?

寺澤普通M&Aというと、買収する側の方に買収する側を合わせさせようとするものですが、ガラッとソフトバンク流に変えさせるのではなく、それぞれの会社の良さは残しながら、連合体を組んでいくようなイメージなのですね。

源田おっしゃる通りです。例えば、『ソフトバンクユニバーシティ』という研修制度があるのですが、それはもともと日本テレコムが持っていた研修制度を母体として始めました。当時ソフトバンク自体には、しっかりした立て付けの研修制度がなかったため、日本テレコムの素晴らしい制度を活用することで、人材育成の面で非常に大きな武器が得られたと思っています。

寺澤人事に関しても普通は買収した側がイニシアティブを持つケースが多いと思うのですが、御社の場合はいろいろな企業の出身者が混ざり合って、それぞれのポジションで適材適所に活躍されているわけですね。

源田そうですね。私自身もボーダフォンの出身ですし、例えば人事では部長職以上だと、ソフトバンク出身者がほぼいなくなります。もはや誰がどこの出身なのかわからないような状態で、さらに年次や国籍や性別や年齢なども、ほぼ関係なく働いています。そんな中で各ポジションに一番適した人を配置するとなると、やはりできるだけシンプルでクリアな制度を導入しないと、うまくいかないでしょうね。

人との繋がりを生み出す未来人材推進室の取り組み

寺澤続いて、未来に向けた取り組みについてお聞かせください。『未来人材推進室』と『未来実現推進室』という組織があるそうですが、それぞれどのような役割があるのでしょうか?

源田実は両方とも従来の人事の役割を超えた位置づけなのですが、まず『未来実現推進室』の方はもともと未来探索室という名でスタートしました。これは、HRテックやディープラーニングなどのテクノロジーによって将来の働き方がどのように変わるのかを探索・研究する組織でしたが、ただ研究するだけでは仕方がないので、『未来実現推進室』と名称を変え、現在は世の中のHRテックをどんどん試し、使い倒しています。 一方の『未来人材推進室』ですが、従来の人事が社員や社員予備軍である学生、入社の可能性がある人を対象にする組織だとすると、それとはまったく関係なく、もっと世の中のさまざまな人材と広く繋がりを持つことを目的とした組織です。具体的には、孫正義の後継者を発掘・育成する『ソフトバンクアカデミア』や、社内起業制度である『ソフトバンクイノベンチャー』などがそれに当たります。

寺澤『ソフトバンクイノベンチャー』は、社内だけでなく社外からも幅広く新規事業のアイデアを募集しているわけですね。

源田はい。内定者やソフトバンクグループ外との共同提案が可能なため、さまざまな業界・業種より幅広い提案が寄せられています。これまでに応募件数は6,200件、審査通過案件が60件、事業化案件が13件で、そのうち4件が会社化されました。

ソフトバンク 人事総務統括 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長
源田泰之氏

1998年入社。営業を経験後、2008年より現職。新卒及び中途採用全体の責任者。 グループ社員向けの研修機関であるソフトバンクユニバーシティおよび後継者育成機関のソフトバンクアカデミア、新規事業提案制度(SBイノベンチャー)の責任者。 ソフトバンクグループ株式会社・人事部アカデミア推進グループ、SBイノベンチャー・取締役を務める。 孫正義が私財を投じ設立した、一般財団法人孫正義育英財団の事務局長。 採用では地方創生インターンなどユニークな制度を構築。幅広い分野で活躍する若手人材と、企業の枠を超え、国内外問わず交流を持つ。 教育機関でのキャリア講義や人材育成の講演実績など多数。