Vol.02

NEXT HR キーパーソン特別インタビュー

「雇用」の概念がなくなる!?
働き方の変化が企業や人事の在り方を変える(後編)

学習院大学 経済学部 守島基博教授
インタビューアー:ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介

人事部門はどう変わらなければならないのか?

寺澤「人事の創造力」を発揮するために人事パーソンは何を学習し、何を学習棄却しなければならないでしょうか?

守島ベーシックなところで二つあります。一つ目はビジネスを理解する力とビジネストレンドを理解する力です。事業部長クラスレベルが把握している詳細までは必要ありません。現場のリーダーと話をして、大体こうなるだろうとある程度想定できることです。

もう一つは働く人の気持ちがわかり、働く人の気持ちにどこまで寄り添えるかです。
労務関係について知っていなくてはならないというのが、日本企業の人事ではベーシックな要素だと思われており、最近でも人や組織を巡る法律関係の知識が重視されていますが、今後そこは法律家に任せればいいと思います。アメリカでは法律関係は完全に法律家に任せています。それよりも重要なのは働く人の心がわかることです。

二つを実践するためには、一般的になりますが、コミュニケーションスキル、財務諸表を読める力、戦略論がわかっていること、EQ共感力といったところが重要となってくるのではないでしょうか。ビジネスの先端は知っていなくても、現場リーダーとビジネス言葉でコミュニケ―ションでき、信頼され、ビジネス目標を実現するために、人に関する課題を解決してもらえると思われることが重要です。また、現場の方々からも同様に人事に相談すれば解決してくれる、解決までいかなくても不安がなくなると思われるようにならなくてはいけません。

今の人事パーソンは人事制度設計を巡る知識についてよく学んでいますが、その先にあるものとは何か、また基礎にあるものは何かを考えて、上記に挙げさせていただいたことを深く学ばれるといいかと思います。

未来において、私は制度設計という仕事は人事部がやらなくてもいいと思っています。企業の人の状況やビジネスの状況がわかっていれば、制度設計はアウトソーシングしてもいいのではないでしょうか?現在、所属している社員や仕事に関わっている人達は、こういう人達で、取り組んでいるビジネスの状況はこうなっていると理解できている。経営や現場から人材調達の要請があればマッチングする、といったプロセスの理解があり、運用ができれば、制度設計はコンサルタントに任せて全然問題ないのではないかと思っています。

人事部の仕事から制度設計がなくなる世界というものもあるのではないか。この意味するところは5年〜10年後の未来において、人事部門は、ビジネス目標や働く人の理想の状態を実現することやシナリオを描く創造力を発揮することが必要だからです。人事部門の本来の存在理由は、ビジネスの成長や人材を活性化させることで、これらは制度設計業務を凌駕する重要な仕事であるからです。

学習院大学 経済学部経営学科 教授
守島 基博 氏

86年米国イリノイ大学産業労使関係研究所博士課程修了。人的資源管理論でPh.D.を取得後、カナダ国サイモン・フレーザー大学経営学部Assistant Professor。慶應義塾大学総合政策学部助教授、同大大学院経営管理研究科助教授・教授、一橋大学大学院商学研究科教授を経て、2017年より現職。厚生労働省労働政策審議会委員などを兼任。著書に『人材マネジメント入門』、『人材の複雑方程式』(共に日本経済新聞出版社)、『人事と法の対話』(有斐閣)などがある。

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