Vol.10

「NEXT HR」キーパーソン特別インタビュー

企業と人の関係は「終身雇用」から「終身信頼」へ
企業と人の新たな関係性と“つながる力”【後編】

ONE JAPAN 共同発起人・共同代表 濱松誠氏
インタビューアー:ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介

「One Panasonic」や「ONE JAPAN」を立ち上げ、ここまで育て上げてきた濱松氏は、愛着のあるパナソニックを辞めることに葛藤はありながらも、最後は迷いがなかったと語る。なぜならそれは、新しい働き方や企業と人の関係づくりを自ら実践して伝えたいという思いがあったからに他ならない。今後日本で働き方はどのように変わっていくのか。そして濱松氏自身は、将来を見据えてどのようなビジョンを掲げているのか。濱松誠氏のロングインタビュー後編は、企業と人の新たな関係と、「ONE JAPAN」および濱松氏のこれからの活動について触れていく。

辞めるか、染まるか、変えるか

寺澤さきほど大企業病という言葉もありましたが、そういうネガティブな部分を見て、辞めるという選択肢がある一方で、濱松さんの場合は会社に居ながらにして変えるという選択をされました。そして自分やこのメンバーが特別なのではなく、ある意味誰でも一歩踏み出せば変えることができるという意識を浸透させてこられました。しかしそこで突然退職されたと。辞めた理由としては、冒頭でも伺ったように奥様の夢を叶えるという思いがあったにせよ、ここまで築いてきたものをいったん置いて、辞めるという決断をしたのは、相当な勇気が必要だったのではないですか?

濱松『辞めるか、染まるか、変えるか』私はこの言葉が好きで、ずっと言い続けてきました。大企業に所属する人たちに与えられた選択肢は、まさにこの3つの選択肢しかないんです。そして僕が2006年にパナソニックに入社し、2018年に退職するまでの12年間に同期や先輩後輩など大勢の人たちが辞めていきました。そしてこの間、僕自身も「辞めて独立しようか」なんて考えたこともありました。しかし、そういう人たちを大勢見てきたこともあり、むしろ「会社に居続けて変える」という試みに挑戦するほうが、当時誰もやっていなかったし、面白そうだと思ったんです。こうして何年もかけてコミュニティづくりに励んできたわけですが、「One Panasonic」に関しては、自分の中ではやり切ったという思いもあるし、後輩も育ってきたので任せてもいいのではないかと。一方の「ONE JAPAN」については、今も共同発起人・共同代表として関わっていますが、これまでずっと日本の大企業のことばかり見続けてきたので、世界一周の旅に出て、見聞を広めることで、自分自身の視野もさらに広がるのではないかと考えました。そしてもちろん持ち帰ってきたものは、「ONE JAPAN」の活動にも大いに活かせると思っています。
いずれにせよ、パナソニックを辞めたことは大きな決断ではありましたが、辞めるのも自由だし残るのも自由だと、僕自身ずっと言い続けてきたことなので、葛藤はありながらも割とすんなり決断できましたね。「One Panasonic」の活動を通じて、アルムナイの概念や出戻りできる風土も作ってきましたから、今後も僕がパナソニックに何かしら貢献できる機会が訪れるかもしれませんし、出戻りすることだってないとは言い切れません。辞めること=裏切りではないのです。

寺澤会社を辞めることで関係性が切れるわけではなく、もっと違った協力の仕方があり得るかもしれないと。濱松さんのキャリアを振り返ると、パナソニックに入社されたときから今日に至るまで、“繋がり”という言葉が一貫したキーワードになっているように感じます。一つの企業に終身雇用で貼り付けられるのではなく、そこから自由に羽ばたいたとしても、信頼関係がなくなるわけではない。まさにそれが、濱松さんがこれまでいろいろな場面で発信されてきた『終身信頼』ということなんですね。

濱松そうなんです。だから今回世界一周の旅に出たときも、SNSで常に情報発信をしていましたし、帰国したときも、パナソニックの幹部をはじめ複数の方々に報告させていただきました。こうして繋がり続けることで、お互いに影響を与えたり、与えられたりする関係が理想ではないでしょうか。そういう意味では、まさに終身雇用から終身信頼へ、という表現がぴったりだと思います。

ONE JAPAN 共同発起人・共同代表
濱松 誠 氏

1982年京都生まれ。2006年パナソニックに入社。海外マーケティング、人材・組織開発、そしてベンチャー出向等を経て、2018年の末、パナソニックを退職。2012年、本業の傍ら、組織活性化をねらいとした有志の会「One Panasonic」を立ち上げる。その後、志を同じくする仲間たちと出会い、2016年「ONE JAPAN」を設立、代表に就任。現時点で54社・1500名が参画。共創、人材育成、土壌づくり、意識調査等に取り組む。日経ビジネス「2017年 次代を創る100人」に選出。2019年、夫婦の夢だった世界一周を実現。現在は企業のアドバイザーなどをしながら、起業準備中。