新規事業において大切なPMF|基本から測り方・実践方法まで完全ガイド
PMF(プロダクト・マーケット・フィット)は、スタートアップや新規事業の成功に欠かせない重要な概念です。市場に適合するプロダクトを提供できているかどうかを示す指標であり、その達成度が事業の成長やスケーリングに大きく影響してきます。
この記事では、PMFの重要性や到達までのステップ、達成度の測り方についてわかりやすく解説します。
PMFとは?基本概念と注目される理由
PMF(プロダクト・マーケット・フィット)とは「市場に受け入れられる製品やサービスを提供できている状態」のことです。スタートアップや新規事業の成功を左右する重要な要素であり、プロダクトの開発方針や資金調達、事業をスケールさせられるか否かにも関わります。変化の激しい市場環境において、的確な需要予測と迅速な適応が求められるなか、PMFは「本当に必要とされるプロダクトかどうか」を見極めるための有効な手段として注目されています。
PMFとプロダクト開発の関係
PMFは単なるマーケティング用語ではなく、プロダクト開発の基盤となる概念です。課題発見から価値提案、検証、改善といったプロセスを繰り返しながら、ユーザーに必要とされるプロダクトかどうかを追求していきます。これにより「作りたいもの」ではなく「使われるもの」に焦点が当たり、市場に適合したプロダクトを生み出せるようになります。
PMFの誕生と広まった背景
PMFという概念は2007年、アメリカの著名な投資家であるマーク・アンドリーセン氏によって提唱されました。スタートアップが失敗する多くの理由は「市場に求められていないプロダクトを作っていること」にあり、その課題を解決する手段としてPMFが注目されるようになりました。
なぜ今、PMFが重要なのか?
現代は市場環境の変化が激しく、顧客ニーズも常に移り変わる不確実性の高い時代です。このような環境下では、PMF検証を通じて顧客と市場に受け入れられるプロダクトを早期に見極めることが、無駄な開発や過剰投資のリスクを抑える手段として重要視されています。スタートアップのみならず、大企業の新規事業開発においても、PMFの価値が強く認識されるようになっています。
ビジネスにおけるPMF達成のメリット
PMFを達成することは、ビジネスの成長に多くのメリットをもたらします。市場の需要に応える製品・サービスの提供によって営業活動やマーケティングコストが低減されるほか、自然な口コミや紹介を通じてプロダクトの価値が広がることも期待できるでしょう。
さらに、満足度の高いプロダクトは継続利用につながりやすく、収益の安定化にも寄与します。明確な実績があれば投資家からの評価と信頼を得やすくなり、資金調達の成功率が高まることも期待されます。
PSFとは
PSF(プロブレム・ソリューション・フィット)は、PMFを達成する前に確認すべき重要な要素です。これは「顧客の課題に自社のソリューションが的確に応えている状態」を指し、次のステップであるPMFに進むための基盤となります。PSFが崩れていると、いくら市場にプロダクトを投入してもPMFに到達することはありません。
PSFとPMFの違い
PSFは「顧客」と「企業」の関係性に焦点を当て、自社の解決策が顧客の課題にどれだけ適応しているかを見極める段階です。一方、PMFは「顧客」「企業」「市場」の3つの要素を考慮し、その解決策が顧客と市場の両方に受け入れられている状態、つまりその解決策に一定の需要がある状態を指します。PSFはPMF達成の前提となる要素であり、PSFの達成後に市場での反応や需要を加えたPMFに進むことができるようになります。
PSF達成までのステップ
PMFに取り組む前に、まずはPSFを確実に達成することが重要です。
以下でPSF達成までのステップを解説します。
Step1:課題を見つける
まずは社会や顧客が抱える課題を見つけることから始めます。
課題特定のポイントは、その課題を解決したいと考えている顧客が実際に存在するかどうかという点です。アンケートやインタビューを通じて潜在的なニーズを探り、顧客が本当に求めている解決策を導き出すことが重要です。
Step2:プロトタイプを作成する
特定した課題の解決策を考案し、プロトタイプ(試作品)を作成します。
このとき、以下の観点を意識した解決策を設計するとよいでしょう。
プロトタイプは、実際に動くシステムや製品まで開発されている必要はなく、紙のプロトタイプでも問題ありません。課題解決のイメージが湧くようなものを準備します。
- 顧客の課題を解消できるか
- 顧客にとって理解しやすいか
- 自分たちのリソースで実現できるか
- 新たな課題や混乱を引き起こさないか
- 既存ソリューションとの明確な差別化ポイントがあるか
Step3:課題が解決しているか検証する
作成したプロトタイプを顧客に使ってもらい、機能の有効性や使いやすさなどをヒアリングします。提供したプロダクトが顧客の課題を本当に解決しているかどうかを検証するとともに、顧客の購買意欲を調査して製品化後の需要予測も行います。この段階で得られたデータをもとにMVPの開発を行い、市場での需要を正確に見極めることが重要です。
PMF達成までのステップ
PMFを実現するには、市場での検証・改善のサイクルが不可欠です。
以下でPMF達成までのステップを解説します。
Step1:MVPをつくる
まずは最小限の機能だけを備えた製品(MVP=Minimum Viable Product)を作成し、顧客の反応を観察します。この段階では完璧さを求めるよりも、素早く市場に投入し、顧客のリアルな声から学びを得ることを優先しましょう。ただし、「実用最小限」とはいっても、顧客が価値を実感できるだけの完成度は必要です。
Step2:サービスの価値、市場の価値を検証する
MVPに触れた顧客にインタビューを行い、機能や使い勝手に関する率直な反応を聞き出します。数よりも質の高い反応を重視し、事前の仮説と実際の反応とのギャップを明らかにすることが重要です。あわせて、ユーザー数やコンバージョン率といった定量的なデータも分析し、プロダクトに対する市場の反応を多角的に検証していきます。
Step3:改善ループをまわす
顧客から得たフィードバックをもとにプロダクトを改良し、再び市場に出して顧客の反応を検証します。このサイクルを繰り返し、小さな調整を積み重ねることで、PMFの達成へと着実に近づいていきます。この改善ループを丁寧にまわし続けることが、顧客から本当に求められるプロダクトを生み出す近道となるのです。
PMFの達成度の測り方
PMFの達成度は顧客の反応や利用状況から判断します。
具体的には以下のような測定方法があります。
①Product/Market Fit Survey(PMFサーベイ)
PMFサーベイは顧客の満足度や製品への依存度を測定する方法です。「その製品が使えなくなったらどう感じるか」という質問に対し、次の選択肢から最も当てはまる回答を選んでもらいます。
- 非常に残念
- やや残念
- 残念ではない
- 使用していない
調査対象のうち40%以上が「非常に残念」と答えた場合、その製品は市場で強く支持されており、今後も継続して顧客を獲得できると判断されます。つまり、PMFに達している状態と考えられるのです。
②NPS(ネットプロモータースコア)
ネットプロモータースコアは顧客ロイヤリティを測る指標です。「その製品を他人に勧める可能性」を0から10のスコアで評価してもらい、回答結果に応じて顧客を次の3つに分類します。
- 0〜6点:批判者(Detractors)
- 7〜8点:中立者(Passives)
- 9〜10点:推奨者(Promoters)
推奨者の割合から批判者の割合を差し引いた数値をNPSスコアとします。このスコアが高ければ高いほど、製品が強い支持を得ている証拠となり、PMFの達成度を測る目安となります。
③リテンションカーブ
リテンションカーブは、製品の継続利用率を時系列で視覚化した指標です。リテンション率を縦軸、リリースからの時間経過を横軸にしたグラフで、どのくらいの顧客が製品を利用し続けているかを表します。
グラフが横ばいに推移している場合、その製品が安定して利用されていることを示し、PMFが達成された状態と考えられます。一方、グラフの線が急激に下がる場合は顧客が離脱している証拠となり、PMFには未達であると判断されます。
④エンゲージメントデータ
エンゲージメントデータは、顧客がプロダクトをどの程度利用しているかを測るものです。主な指標として、購入数や契約数、利用頻度、継続率、満足度などがありますが、物理的な製品であれば「購入数」、形のないサービスであれば「契約数」など、製品・サービスの性質によって適切な指標を選ぶことが大切です。これらのデータは顧客との関係性の深さや継続的な価値提供の有無を示し、PMF達成に向けた重要な判断材料となります。
まとめ
PMF(プロダクト・マーケット・フィット)は、顧客に必要とされる製品・サービスを適切な市場に提供できている状態をいいます。潜在顧客が多い市場では将来的な購買の可能性が高く、PMFを達成することでその市場での成長が加速され、事業の拡大が期待できます。
PMF達成を目指すうえではPSF(プロブレム・ソリューション・フィット)への取り組みが不可欠です。まずは顧客の課題を解決するプロダクトかどうかを検証し、そこで得られた評価をもとにPMFへとつなげていくことが重要です。自社事業のさらなる成長・拡大を目指し、その基盤となるPSF・PMFの達成に取り組みましょう。
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