スキルマップの作り方|基本手順と活用法、無料テンプレートを紹介

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社員一人ひとりのスキルや習熟度を可視化する「スキルマップ」。単なるスキルの一覧ではなく、社員の成長段階や組織内での役割を把握する重要なツールとなり、適切な運用によって組織全体の底上げを図ることができます。

この記事では、スキルマップの作り方を5つのステップで詳しく解説します。作成時の注意点や活用方法もまとめていますので、これからスキルマップを作りたい方はぜひ参考にしてください。

目次

スキルマップとは

スキルマップとは、業務に必要なスキルと社員一人ひとりの習熟度を一覧化した管理ツールです。組織内におけるスキルの現状を可視化し、計画的な人材育成や適材適所の人材配置、さらには組織力の強化を図るために活用されます。作成したスキルマップは定期的に見直しを行い、現場の実態や組織の方針に即した内容にアップデートし、継続的な活用を図ることが重要です。

ISO9001・ISO14001の力量管理に必須

ISO9001(品質マネジメントシステム)やISO14001(環境マネジメントシステム)における力量管理では、業務遂行に必要な知識やスキル、資格情報などを明確に記録することが求められます。

社員一人ひとりの能力を可視化したスキルマップの活用により、力量の証明や教育訓練計画の立案、監査対応まで一貫した力量管理を実現できます。組織全体として品質・環境マネジメントシステムの向上を図るうえでも、スキルマップを用いて社員の力量を適切に把握し続けることが重要です。

スキルマップの活用方法

スキルマップは社員のスキルを可視化するだけでなく、人材育成や目標管理、モチベーション向上など幅広く活用できます。
ここではスキルマップを実践的に活かす方法をご紹介します。

能力・スキルの可視化・育成計画への活用

スキルマップの活用により、社員一人ひとりのスキル状況を一覧で把握できます。個々の能力がどのレベルにあるのか、現状の習熟度を可視化することで、組織全体として「達成しているスキル」「不足しているスキル」が明らかになります。

不足しているスキルに対しては、具体的な育成計画を立案・実行し、個々のスキル向上を促進しましょう。これにより、効率的な人材育成が実現し、適切な人材配置や組織全体のパフォーマンス向上にもつなげることができます。

目標管理や評価制度への活用

スキルマップの導入により、社員の成長プロセスやスキルの習熟度が可視化され、目標設定や評価基準がより明確になります。目標管理制度と連動させることで、評価の透明性と一貫性が高まり、公平で納得感のある人事評価が実現します。このように社員の努力や成長が正当に評価される仕組みは、継続的なスキル向上や能力開発の促進にも大きな効果を発揮することが期待できます。

社員のモチベーション向上

作成したスキルマップは社員と共有し、現在の能力レベルや強化すべきスキルを認識してもらうことが大切です。自身の現状を客観的に把握することで、目指すべき目標や今後のキャリアパスを具体的にイメージできるようになり、主体的なスキルアップや自己成長に取り組むモチベーションが向上します。

スキルマップの作り方

スキルマップの作成手順は次のとおりです。

以下でスキルマップの作り方をステップごとに詳しく解説します。

【1】必要な業務内容やスキルの洗い出し

まずは現場の業務フローを洗い出し、実際に業務を担う社員へのヒアリングやアンケートを行いながら現場目線で必要なスキルを抽出していきます。この工程はスキルマップ作成の土台となるため、抽出したスキルは業務ごとや職種ごとに分類し、複数人で確認しながら抜け漏れのないように整理する必要があります。

【2】スキルマップのフォーマット設計

洗い出した業務内容とスキルをもとに、スキルマップのフォーマットを設計します。

縦軸に業務内容やスキル項目、横軸に社員名を配置した一覧表形式が一般的であり、誰がどのスキルをどのレベルで保有しているかが一目で把握できます。既存のテンプレートを参考にしつつ、自社特有の業務や評価基準を取り入れてカスタマイズし、実務に即したスキルマップを作成することが大切です。

【3】スキルの評価基準・レベル設定

各スキルの「習熟度」を示す評価基準を設定し、3~5段階程度でレベル分けを行います。

単なる「できる/できない」だけでなく「補助を受けて実施できる」「1人で実施できる」「他者を指導できる」といった段階的な基準を設けることで、社員一人ひとりの習熟度をより正確に把握できます。一方で、レベル設定が細かくなると管理や評価の手間が増えるため、自社の運用目的や管理体制に合わせて最適なレベル数を検討することが重要です。

【4】スキルごとの具体的な行動や基準の明確化

評価のバラつきを防ぐためには、各スキルに対する具体的な行動例や達成基準を明確にする必要があります。

たとえば「顧客との関係構築」というスキル項目があれば「積極的なコミュニケーションを通じて良好な関係性を構築している」「状況に応じて適切なコミュニケーションツールを選択している」など、評価基準を具体的な行動に落とし込みます。スキルの定義や評価ポイントを補足資料としてまとめ、評価者間の認識を統一することで、より公平で一貫性のある評価を行うことができるようになります。

【5】スキルマップへの記入と運用開始

設計したフォーマットに沿って、社員一人ひとりのスキルレベルを記入します。直属の上司による評価が一般的ですが、本人による自己評価を組み合わせたり、他部署の上司や人事担当者を評価に加えたりする場合もあります。

運用開始時は一部の部署やチームで試験的に導入し、実際の運用を通じて見えてきた課題や社員からのフィードバックを反映しながらブラッシュアップを行います。その後、内容や運用ルールを整備したうえで全社的に展開することで、より実態に即したスキルマップ運用が実現します。

スキルマップを作る上での注意点

スキルマップを作る上で注意すべきポイントを以下にまとめました。

スキルマップの目的やゴールの明確化

スキルマップを作成する前に、導入の目的と最終的なゴールを明確にしておくことが重要です。計画的な人材育成や適材適所の人材配置、公正な人事評価など、組織のビジョンや数値目標とも連動させた目的・ゴールを設定しましょう。「何のために作成するのか」を全社員に共有し、全員の認識を統一させることで、スキルマップのスムーズな運用と成果につなげることができます。

評価頻度やフォローアップの設定・実行

スキルマップを継続的に運用するためには、評価の頻度や評価後のフォローアップをあらかじめ設定し、運用ルールとして組み込むことが大切です。半年ごとや1年ごとにスキルチェックを実施し、その結果をもとに研修や面談などのフォローアップ施策を行うことで、個々のスキル向上や目標の再設定を効果的にサポートできます。

スキルマップの定期的な更新

企業の体制や業務内容の変化に合わせて、必要なスキルや評価基準を追加・修正し、常に実態に即した最新のスキルマップを維持することが重要です。定期的な見直しと内容のブラッシュアップを行うことで、社会情勢の変化や組織の方針転換にも柔軟に対応できるようになり、組織全体の競争力を高めることにもつなげることができます。

スキルマップの無料テンプレート

スキルマップの作成に役立つテンプレートを2つご紹介します。
どちらも無料でダウンロードできますので、業務に必要なスキルや評価基準を設定する際の参考にしてください。

職業能力評価シート(厚生労働省)

厚生労働省が提供する「職業能力評価シート」は、職務遂行に必要な能力をチェック形式で評価できるテンプレートです。職種・職務・レベル別の評価シートを活用することで、社員一人ひとりの能力レベルと組織全体の育成課題が明らかになります。多様な業種に対応しており、自社の実状にあわせて柔軟なカスタマイズが可能です。

参考資料:職業能力評価シート|厚生労働省

デジタルスキル標準(経済産業省・IPA)

経済産業省とIPA(情報処理推進機構)が策定した「デジタルスキル標準」は、DX時代に求められる能力や役割を体系化した指針です。すべてのビジネスパーソンが身につけるべき能力を「DXリテラシー標準」、DXを推進する人材に求められる役割・能力を「DX推進スキル標準」として定義しています。生成AIなど最新技術との向き合い方にも対応しており、企業のDX推進や人材育成の基準となるテンプレートです。

参考資料:デジタルスキル標準|経済産業省・IPA

まとめ

スキルマップは作成すること自体が目的ではなく、運用を通じて継続的に活用していくことが求められます。必要なスキルの洗い出しから運用開始後の改善まで、各ステップを着実に進めることで、実務に即した効果的な運用が可能となります。

作成後も定期的な見直しを行い、業務や組織の変化に応じて柔軟に更新することが重要です。自社の目的や状況に合わせたスキルマップを構築し、戦略的な人材育成・組織力強化に役立てましょう。

スキルマップの作成や運用において、専門的な知識やノウハウが必要な場合は、外部の専門機関を活用することも効果的です。例えば、HRインスティテュートは、組織・人材開発の分野で豊富な経験と実績を持ち、企業の課題に応じた人材育成プランや制度設計を提供しています。スキルマップの導入や運用に関する具体的なアドバイスを受けることで、より効果的な人材育成と組織力の向上を実現することが可能です。

関連プログラム:人材育成プラン・制度設計 – 組織・人材開発のHRインスティテュート

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