アジャイルを知る!開発から経営まで広がる柔軟なアプローチを解説

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変化を前提とした柔軟なアプローチである「アジャイル」。単なる開発手法にとどまらず、新規事業の立ち上げや組織運営など幅広い分野で注目されています。

この記事では、アジャイルの意味やビジネスでの使い方「アジャイル開発」「アジャイル経営」などの関連するキーワードについてわかりやすく解説します。

目次

アジャイルの意味

アジャイルとは、環境の変化に迅速かつ柔軟に対応しながら、その価値を最大化していくための考え方・手法を指します。もともとはソフトウェア開発の分野で生まれた概念ですが、現在では新規事業開発や組織運営、マーケティングなど、幅広いビジネス領域で活用されています。

アジャイルの特徴は「変化を前提としたアプローチ」である点です。状況に応じて素早く行動し、継続的に改善を重ねていくことが求められます。絶えず変化する環境において、計画に沿って順番に進めることよりも、その時々で臨機応変に対応することを重視しています。

アジャイルソフトウェア開発宣言

アジャイルソフトウェア開発宣言は、2001年に公開された17人のソフトウェア開発者たちによる価値観の指針です。この指針ではソフトウェア開発において重視している価値を次のように表現しています。

  • 「プロセスやツールよりも個人と対話を」
  • 「包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを」
  • 「契約交渉よりも顧客との協調を」
  • 「計画に従うことよりも変化への対応を」

これは、計画を重視する従来のソフトウェア開発に対し、柔軟かつ実践的な「よりよい開発方法」を可能にする考え方です。ドキュメントや計画にも価値があると認めつつ、より効果的に価値を生み出す行動や姿勢を優先しています。

アジャイルのビジネスにおける意味

ビジネスにおけるアジャイルとは、急激に変化するビジネス環境にも素早く適応し、継続的に価値を提供できる組織や経営の在り方を指します。IPA(情報処理推進機構)ではアジャイルを「ビジネス価値の実現にむけて、ITとビジネスにおける複雑・不確実な問題を探索と適応を繰り返して解決するアプローチ」と定義しています(『なぜ、いまアジャイルが必要か?』より)。

先行きが不透明なVUCA時代においては、変化に適応しながら自社の価値を継続的に創出していくアプローチが必要です。従来のトップダウン型経営から脱却し、現場が主体的に意思決定を行うことで、顧客ニーズや市場の変化に対応しやすくなります。刻々と変化する環境のなかで、柔軟性とスピードを兼ね備えた意思決定や価値創出を実現するアジャイルは、市場での競争力を高める経営戦略の一つといえます。

アジャイルに関連する言葉

アジャイルに関連する言葉には以下のようなものがあります。

アジャイル開発

アジャイル開発とはソフトウェア開発における手法の一つであり、短期間の開発サイクルを繰り返しながら機能ごとにリリースしていくスタイルのことです。「アジャイル(Agile)」には「俊敏な」「素早い」といった意味があり、その名の通りスピード感をもって開発を進めながら、リリースまでの時間を短縮することを重視しています。

「プロジェクトには常に変化が伴う」という前提に立ち、小さいサイクルで開発を繰り返すことで、進行途中の仕様変更やスケジュール調整にも柔軟に対応できるようになります。顧客からのフィードバックを素早く反映して改善を図ることができるため、価値創出に直結する顧客中心のアプローチともいえます。

アジャイル開発の代表的な手法:スクラム

スクラムはアジャイル開発の代表的なアプローチであり、短い作業サイクル(スプリント)を反復し、チーム全員で進捗を共有しながら効率的に開発を進める手法です。スクラムチームには「プロダクトオーナー」「開発者」「スクラムマスター」という役割(ロール)があり、メンバーが各々の役割を担いながら協働してプロダクトの価値向上に取り組みます。

各スプリントの期間は通常1~4週間で、その都度成果物を確認し、改善を加えながら次の開発に進みます。原則として延長はなく、スプリント終了時までにリリースの有無を判断できるプロダクトを作り出す必要があります。

アジャイル開発とウォーターフォール開発との違い

アジャイル開発は小さな単位で反復的に開発・リリースを行う手法で、顧客の要望や仕様変更にも柔軟に対応できます。一方、ウォーターフォール開発は各工程を順番に進めていく手法で、全体像の把握やコスト管理がしやすい反面、開発途中での計画変更には対応しづらいという課題があります。

この点、アジャイル開発は柔軟性とスピードに優れていますが、全体の進捗把握やスケジュール管理が難しくなる傾向にあります。それぞれの特徴を理解したうえで、プロジェクトの特性に応じた手法を選ぶことが重要です。

アジャイル経営

アジャイル経営とは、少人数の自律的なチームによる迅速かつ柔軟な意思決定で、顧客ニーズや外部環境の変化に素早く対応する経営手法です。経営スピードの向上や環境適応力の強化、イノベーションの促進などが主なメリットであり、不確実性の高い時代でも持続的に顧客へ価値を提供することが可能になります。

アジャイル経営の導入には、従来の階層的な意思決定構造から脱却し、現場の裁量を尊重する組織文化への転換が求められます。そのためには、マネジメント層の理解と支援、組織が一丸となってアジャイル(=俊敏な)経営に取り組む姿勢が欠かせません。初期段階では小規模なパイロットチームから始め、実践を通じて得られた知見や経験をもとに徐々に全社へ展開していくのが望ましいでしょう。

アジャイル組織

アジャイル組織とは、変化への迅速かつ柔軟な対応を目的として設計された組織構造です。現場に権限を分散し、短いサイクルでの実行と改善を繰り返す仕組みが特徴であり、フラットな組織体制や自律的な意思決定、メンバーのエンゲージメント向上といったメリットがあります。メンバー個人の自律性や主体性を尊重し、変化を前提とした対応力を高めていきます。

また、リモートワークなどの多様な働き方を受け入れやすく、DX(デジタルトランスフォーメーション)との親和性も高いとされています。変化の激しい環境において、スピードと柔軟性を両立させながら確実に成果を生み出す、これからの時代に適した組織の形といえるでしょう。

アジャイル思考

アジャイル思考とは、小さな単位で試行と修正を繰り返し、短期間でPDCAサイクルを回して変化に柔軟に対応する考え方をいいます。はじめから完璧を目指すのではなく、試行錯誤を通じて少しずつ改善しながらゴールに近づく姿勢が基本です。

失敗を恐れずトライ&エラーを重ね、素早い実行とフィードバックを重視しながら、目標達成や問題解決の精度を高めていきます。ソフトウェア開発に限らず、企画や営業、人材育成などあらゆるビジネス分野で効果を発揮する考え方であり、組織全体の柔軟性や対応力を高めるための基盤として注目されています。

アジャイルに対する誤解

アジャイルは柔軟でスピード感のあるアプローチとして重視されていますが、その特性ゆえに誤った理解が広がることもあります。ここではアジャイルに対する誤解と、正しい捉え方をご紹介します。

ドキュメントや計画が不要

アジャイルソフトウェア開発宣言では「包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを」「計画に従うことよりも変化への対応を」といった価値観が示されていますが、これは決して資料や計画が不要という意味ではありません。アジャイルでも従来の価値は尊重されており、それらを補完する形で新たな価値が重視されているのです。

速く安くよいものが必ずできる

アジャイルは短いサイクルでスピーディーに対応できる特性を持つため「速く・安く・よいものが必ずできる」と期待されがちです。しかし、あくまで変化に対応しやすい仕組みを提供するものであり、すべての課題を解決できる万能なアプローチではありません。アジャイルとはチームが効果的に協働し、変化に柔軟に対応するための実践的な手法です。成功には、アジャイルへの正しい理解と組織文化の変革、そして継続的な改善が欠かせません。

まとめ

アジャイルとは、変化の激しい環境でも迅速かつ柔軟に対応し、価値を最大化していくアプローチのことです。ソフトウェア開発だけでなく、新規事業の立ち上げや経営手法、組織づくりにも応用され、競争力を高める手段として広がりを見せています。まずは小さな実践から始めて、PDCAサイクルを回しながら段階的に取り入れていくことが成功のポイントです。

HRインスティテュートが提供する「新規事業開発ワークアウト」は、仮説検証プロセスを実践しながら、チームで現実的かつ実効性の高い事業プランをアウトプットとして策定できるプログラムです。短期間での試行錯誤サイクルを通じて、柔軟な発想と迅速な意思決定を促進し、中長期的な新規事業開発をリードする人材を育成します。アジャイル組織や新規事業開発に関心のある企業様は、以下のリンク先より本プログラムの詳細をご確認ください。

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