Vol.11

「NEXT HR」キーパーソン特別インタビュー

VUCA時代に「越境リーダーシップ」がなぜこれほど求められるのか
サントリー人事出身者が、自ら越境を続ける中でたどり着いた次世代リーダー育成の鍵

一般社団法人ALIVE 代表理事/合同会社CONNECTIVE 代表社員/一般社団法人 組織変革のためのダイバーシティOTD普及協会 代表理事 庄司弥寿彦氏
インタビューアー:ProFuture代表/HR総研所長 寺澤康介

「越境」がこれからの人事やリーダーに求められる

寺澤先の見えないVUCAの時代において、会社と個人の関係は大きく変わってきました。終身雇用は崩壊し、もはや自分のキャリアは自分で作っていかなければなりません。これまでがんじがらめだった会社との関係性を再構築しつつ、一方で社会の中に新たに自分の居場所を見つける必要もあります。そうした中でこれからの人事は、社会との接点を取り戻したい社員を下支えするような仕組みや場を提供していくことが求められますよね。

庄司これまでは多くの企業が効率化を追求してきました。しかし昨今は、効率化だけでなく事業を通じて社会貢献を目指すような、外の世界に目線を向けた企業も増えてきています。そうした中、これからの人事は自ら率先して外に出ていく、あるいは外に出ていく人材を育成することが求められるでしょう。会社が簡単に変われないように、人事が変わることも容易ではありません。変わりたいけれど変われない、そんなジレンマを抱えている人事の方も少なくないと思います。であるなら、なおさら外に出ないと。目線を外に向けて、思い切って一歩踏み出せるかどうか。それが「変われる人事」と「変われない人事」の決定的な差になるかもしれません。その点、ALIVEに参加している人事の皆さんは、他社との横の繋がりや社会課題との繋がりを持つことで、価値観や視点が大きく変わってきているように感じます。

寺澤まさに、それこそが越境の意義ですね。まずは人事が越境する。それが化学反応を起こし、変化の時代に対応できる組織をつくっていくことにつながるのでしょう。また、企業と個人の関係性が変わり、組織の在り様も変わっていく中で、これからの時代に求められるリーダーシップはどのようなものだとお考えですか?

庄司私たちは先ほどもお話ししたようにリーダーシップを、「リード・ザ・セルフ(Lead the Self)」、「リード・ザ・チーム(Lead the Team)」、「リード・ザ・ソサエティ(Lead the Society)」というプロセスでとらえています。なかでも重要なのはリード・ザ・セルフ、つまり人をリードするのではなく、自分をリードするということ。これはその時々の環境に合わせて内省する、もしくはフィードバックをオープンに受け入れると言い換えることもできるでしょう。世の中や会社の組織が刻々と変わる中、自分はどう変わるべきなのかを謙虚になって考える。そういったスタンスこそが、これからのリーダーには求められると思います。
実はALIVEでは、リーダーシップの型や定義はあえて教えていません。それは、環境や人によってリーダーシップの在り方は異なるからです。私たちは内省とフィードバックをきちんと行うことで、人それぞれのリーダーシップは身に付くと確信しています。

寺澤リーダーシップの型や定義を教えないリーダー研修というのが、非常に象徴的だと感じます。ビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変わる中、現場の人たちはその都度、柔軟に変化に対応していかなければなりません。であるなら、現場を指揮するリーダーはなおさら、状況に応じて自らを変化させることが求められます。そういう意味でも、型にとらわれないということはとても重要ですね。

庄司型にはとらわれないけれど、ある意味こだわり、決して流されない。そしてそれを内省していくというスタンスが重要だと思います。そのためには、やはり外の世界に出ていかなくてはいけない。越境して、多様な人たちと接し、経験することで、内省するための多くの材料が手に入れられますから。

寺澤では最後に、ALIVEの今後のビジョンについてお聞かせください。

庄司ALIVEの活動を通じて実現させたいことは主に2つあります。1つ目は、量のインパクトを与えること。おかげ様でこうした取り組みの中では日本最大級の規模に広がってきましたが、それでもまだまだ点に過ぎません。世の中に強いインパクトを与えるためにも、取り組みの輪をさらに拡大させ、石を投げたらALIVE経験者にぶつかるくらいの状況にしていきたい。それが私の夢です。

そして2つ目は、ALIVEをプラットフォームにしてもっと多様な活動を派生させること。現在私たちはALIVE以外にも、地域版ALIVEとして、今後10年で100地域においてALIVE型の導入プログラムで100個の事業を作ることを目指す「100DIVE」という新しいプロジェクトを立ち上げています。それに加えて50歳以上の成熟層に向けて行う異業種混合型の活躍支援プログラム「REVIVE」、東大のバリアフリー教育開発研究センターと組織変革のためのダイバーシティ研究会「OTD」などを展開しています。今後はALIVEを中心にこうした活動もより一層強化して、社会的団体の想いにビジネスのリソースを繋げ、企業や世の中に変化を巻き起こしていきたいと思っています。

寺澤壮大な目標ですね。でも、庄司さん、ALIVEならできそうだなと思わせてくれます。
本日は長時間ありがとうございました。

一般社団法人ALIVE代表理事/合同会社CONNECTIVE 代表社員/
一般社団法人 組織変革のためのダイバーシティOTD普及協会 代表理事
庄司 弥寿彦 氏

1995年サントリー株式会社入社。人事課長時に、ALIVEの前身となる次世代リーダー研修「モルツ・プロジェクト」を企画。その際、「社会的団体の想いに、ビジネスのリソースをつなぎ、変化を巻き起こす」ことをライフワークとして強く認識。2017年ALIVEを立ち上げ、無報酬のプロボノながら駐在中のNYから参画。2018年4月サントリーを退社しALIVEの代表理事に就任。社会課題解決等のプロジェクトマネジメントの受け皿として合同会社CONNECTIVE創立。2019年にALIVEから派生した、一般社団法人OTD普及協会を設立し代表理事就任。

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