現場社員をリクルーター化する「リファラル採用」を成功に導く秘訣は、誘いやすいシステムと社内環境にあり

株式会社MyRefer
代表取締役社長 CEO
鈴木貴史氏

厚生労働省が調査・発表している有効求人倍率は、2018年4月には1.6倍を超え、2018年11月〜2019年4月まで6ヶ月連続1.63倍と高水準が続いている。このデータからも読み取れるように、企業の求人意欲は依然として強い。しかし、企業と求職者の適切なマッチングが実現しているかというと、そう上手くはいっていないのが現状だ。このような採用市場の中で、「リファラル採用」が大きな注目を集めている。リファラル採用とは、現場社員に知人や知り合いから自社の業務やカルチャーにフィットしそうな人材を紹介・推薦してもらうという採用手法。そのため、マッチング精度が高く、潜在層へもアプローチでき、採用単価を抑えることが見込める。今回は、リファラル採用活性化サービスを提供する株式会社MyRefer代表取締役社長 CEO 鈴木貴史氏にインタビューを実施。リファラル採用の現状や課題、未来について話を伺った。

長期的に採用戦略を考える企業がリファラル採用を積極導入している

ここ数年、HRマーケットにおいて「リファラル採用」というキーワードを目にする機会も増えてきました。まずは、現在のリファラル採用の状況についてお聞かせください。

鈴木氏

日本よりHRに関する施策が先行している米国で、リファラル採用は当たり前となっており、過去10年間で最も採用者数が多い手法といわれています。そんなリファラル採用が近年、日本で注目され始めたのは、海外で流行った採用手法が遅れてやってきたという従来の流れに加えて、国内の採用トレンドが大きく変化しているためでしょう。

現在、日本は有効求人倍率が過去最高水準となっており、企業は従来どおりの求人広告や人材紹介を利用した採用活動中心では、狙った人材の獲得が難しくなっています。そのため、社員の繋がりから、狙った人材を発掘し、確実にアプローチできる方法に企業が着目し始めました。その一つが、リファラル採用です。

一方、個人に目を向けてみると、求人情報の取得方法が、かつての紙中心からWebでの求人媒体、そしてリアルへと移行しています。最近では、口コミサービスなどのCGM(Consumer Generated Media)のみでなく、TwitterやInstagramなどより身近な知人の透明性の高い情報を重視する傾向が高くなっており、求人票では分からない「現場で働く人の生の声が聞きたい」というニーズが高まってきていると見て取れます。その点、社員がアプローチするリファラル採用であれば、求職者は直接仕事や職場について情報を得られます。

つまり、企業と求職者のニーズが一致していることが、リファラル採用が注目されている背景にあるといえるでしょう。

大手企業からスタートアップまで、日本国内でも様々な企業がリファラル採用を取り入れています。実際活用している企業には、どのような共通点がありますか?

鈴木氏

短期的なKPIを注視し、「母集団形成」を重視するのであれば、人材紹介会社に依頼したり、求人広告を出稿したりと採用を外部化するほうが効果的でしょう。そうではなく、自社採用力を用いて「潜在的な優秀層にアプローチしていきたい」、「社員の定着率やエンゲージメントを高めていきたい」といった長期的に組織戦略を考える企業がリファラル採用を活用している印象があります。

具体的にどのような企業が取り組んでいるのでしょうか?

鈴木氏

たとえば、国内最大手のITベンダーである富士通社は全社員約3万3,000人を巻き込んだリファラル採用に取り組んでいます。一般的に「Facebookの友達数は平均200名」といわれていますので、それだけの社員がいれば、理論上は約600万人を超える巨大な人的ネットワークができあがる計算になります。そのネットワークの中から、潜在的な優秀層に対してアプローチを仕掛けています。同社では、非常にニッチなスキルを要求するポジションが多く、それこそ長期的な視点で組織作りを行っています。

また、通信事業やコンテンツ配信事業を手がけるUSEN-NEXT HOLDINGS社は、新卒・中途ともにリファラル採用に積極的です。リファラル採用では、誘いをかける社員の定着率やエンゲージメントがとても重要です。自分が「よい会社」だと思っていないと友達は誘いにくいですよね。ですので、同社では長期的な視点でこれらの向上を狙った取り組みも平行して行っています。

インタビューはまだまだ続きます。

  • 『MyRefer』を通して、エンゲージメント向上も期待できる
  • 個人間の信頼による採用は、ますます加速していく

鈴木 貴史氏
株式会社MyRefer
代表取締役社長 CEO

パーソルキャリア株式会社(旧社名:株式会社インテリジェンス)入社後、中途採用を支援するリクルーティングコンサルタントに従事。2014年度グループ歴代最年少で社内ベンチャー制度を通過し、国内初のリファラル採用事業であるMyRefer(マイリファー)を立ち上げる。2018年、事業譲渡によりMBOを経てパーソルキャリア株式会社から完全独立。株式会社MyReferを設立し、代表取締役社長 に就任。

HRサミット2019での講演情報
B3 9/18(水)12:55-13:55 HRTechによるリファラル採用とエンゲージメント向上
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