「日本版ティール組織」を実践する極意とは?
倒産寸前から25期連続黒字を達成した
日本レーザー近藤会長に聞く

株式会社日本レーザー
代表取締役会長
近藤宣之氏

インタビュアー:ProFuture株式会社 代表取締役社長 寺澤康介

社員数わずか65名ほどの規模でありながら、無借金経営、25期連続黒字を達成し、一方で離職率は10年以上ゼロと、高い従業員エンゲージメントも誇る、株式会社日本レーザー。そんな驚異的な実績の背景には、「何よりも社員を大切にする」という確固たる経営理念がある。倒産寸前だった同社を再建させた代表取締役会長の近藤宣之氏は、「社員のモチベーションがすべて」と大胆な組織改革を進め、オーガナイザーとして組織をまとめてきた。「日本版ティール組織」とも呼ばれる先進的な組織作り----------その極意とは一体何なのか。

大幅な権限委譲で自主経営を実現する

まずは御社の概要や事業内容についてご紹介いただけないでしょうか。

近藤氏

私たち日本レーザーは1968年の創業以来、レーザー技術の進歩とともに歩んできた日本で最古かつ最大のレーザー機器の専門商社です。世界のトップメーカーによる最先端の理化学用レーザーから、安定性の高い産業用レーザー、さらにレーザー加工装置や光を利用した分析装置まで、多岐にわたる製品を取り扱っております。また、お客様の高度なニーズに応えるべく企画・設計・開発を担当する技術部門も充実させ、応用分野における技術的提案を強化するなど、トータルサポートを推進しています。

御社では何よりも雇用を、そして社員を大切にされておられますが、会社と社員の関係性についてそもそもどのような信念をお持ちなのでしょうか?

近藤氏

よく「会社は誰のものか?」と聞かれるのですが、会社は株主のものであると同時に、社員のものでもあります。現在弊社には、パート社員と派遣社員を除くと、嘱託雇用を含めて50数名のフルタイム社員が在籍しており、そのすべてが株主です。会社にとって顧客満足は確かに大事なことですが、自らが所属する会社に満足することなく、また自らが提供する商品やサービスに満足できずに、どうしてお客様に満足していただけるでしょうか。私はこれまで社長として、現在は会長として、何よりも社員が満足できる企業を目指してきました。それが結果的に、お客様のご満足に繋がると信じているからです。

近年「ティール組織」が次世代型の組織モデルとして注目されていますが、一方で日本では「ティール組織」的な組織運営を実践できている企業は、現状ほとんどないとも言われています。そうした中、御社が実践されている組織作りは、日本で唯一の、まさに「日本版ティール組織」と呼ぶに相応しいものですね。

近藤氏

我々は初めから「ティール組織」を目指してきたわけではありません。ただ当たり前の組織作りに取り組んできた結果、「ティール組織」的なものに近づいたということです。『ティール組織』の著者、フレデリック・ラルー氏は、組織経営の進化形態について、「衝動型(レッド)=オオカミの群れ」と、「順応型(アンバー)=軍隊」、「達成型(オレンジ)=機械」、「多元型(グリーン)=家族」、「進化型(ティール)=生命体」の5つに分類し、組織はこの順番で進化していくと語っています。多くの日本企業は、「順応型(アンバー)=軍隊」の段階は超え、今日では「達成型(オレンジ)=機械」の組織が一般的ではないでしょうか。弊社も当初はレッドから始まり、少しずつ組織形態を進化させてきました。現在は「達成型(オレンジ)」が5割、「多元型(グリーン)」が3割、「進化型(ティール)」が2割くらいのバランスになっています。

御社の組織作りは、具体的にどのような点が「ティール組織」的なのでしょうか?

近藤氏

「ティール組織」には、階層などに頼ることなく仲間との関係性の中で動く「自主経営」、合理的な部分だけでなく、精神的、情緒的、直感的な部分も含めて、各メンバーが個人として全人格で仕事に向き合う「全体性」、組織それ自体が生命と方向感を持っている「存在目的」という3つの特徴があります。弊社の場合、権限委譲がかなり進んでおり、組織体系もフラットで上下関係がほとんどありません。部長、課長、係長といった肩書は一応存在しますが、それらは職位呼称ではなく、単なる資格呼称です。そういう中で、各メンバーは自主的に判断し、動く「自主経営」を実践しています。もちろん「全体性」や「存在目的」も重視しており、完璧な「ティール組織」であるとは言えませんが、かなりそれに近い状態であるとは言えるでしょう。

「自己組織化」を生み出す4つの条件

「ティール組織」に似たものとして「自己組織化」という概念があります。御社はこの「自己組織化」も積極的に進めておられるそうですが、そもそも「自己組織化」とはどのような状態のことを指すのでしょうか?

近藤氏

「自己組織化」を成り立たせるためには、4つの条件が必要です。1つ目は、組織やチームの在り方を問うよりも、創造的な個の営みを優先させること。つまり個々人の自己実現を支援するような組織作りをしなければなりません。2つ目は、揺らぎを秩序の源泉とみなすこと。創造的な個の営みを優先すると、既存の型からはみ出す「揺らぎ」が生じてしまいます。この「揺らぎ」を受け止め、受け入れ、大切にして、新しいルールや規律の源泉にしようということです。3つ目は、不均衡および混沌を排除しないこと。「揺らぎ」を受け入れると、例えばA君は認めるが、B君は認めないといったような不均等が生じ、組織の中に不協和音が起こります。しかしリーダーは、そういった混沌や意見のぶつかり合いを恐れず、ストレスや不安に耐えるだけの精神的強さを持って、うまくマネジメントしていかなければなりません。そして4つ目は、コントロールセンターを認めないこと。コントロールセンターとは「会社の中枢=トップ」のことですが、これを認めないというのは、つまりトップダウンを認めないということであり、もっと言えば、組織のメンバーの自由度を広げるということでもあります。では、トップは何をしたらいいのか。私は、トップの役割とは、組織のオーガナイザーであり、サーバントであるべきだと考えます。ちなみに私は現在、CEOを名乗っておりますが、自己紹介する際は「Chief Entertainment Officer」の略だと言っています。これは半分冗談であり、半分本質でもあるのです。社員を持ち上げ、いい気持ちにして、必要に応じて予算をつけて、でも何かを押し付けることはなく、自分でやってみろと背中を押し、失敗したらアドバイスして、落ち込んでいたら励ましてあげる。そういうリーダーシップがあれば、自己組織化は実現できるのです。

御社では自己組織化を実現するために、社員全員に圧倒的な当事者意識を持たせているそうですね。

近藤氏

よく「会社は誰のものか?」と聞かれるのですが、会社は株主のものであると同時に、社員のものでもあります。現在弊社には、パート社員と派遣社員を除くと、嘱託雇用を含めて50数名のフルタイム社員が在籍しており、そのすべてが株主です。会社にとって顧客満足は確かに大事なことですが、自らが所属する会社に満足することなく、また自らが提供する商品やサービスに満足できずに、どうしてお客様に満足していただけるでしょうか。私はこれまで社長として、現在は会長として、何よりも社員が満足できる企業を目指してきました。それが結果的に、お客様のご満足に繋がると信じているからです。

近年「ティール組織」が次世代型の組織モデルとして注目されていますが、一方で日本では「ティール組織」的な組織運営を実践できている企業は、現状ほとんどないとも言われています。そうした中、御社が実践されている組織作りは、日本で唯一の、まさに「日本版ティール組織」と呼ぶに相応しいものですね。

近藤氏

現在弊社が取り扱っている製品は、世界14カ国、およそ100社から仕入れており、その数は何十万種類にものぼりますが、それをトップがコントルールし切れるわけがありません。私はもちろん、営業部長だってわかりませんよ。それをわかっているのは唯一、現場で働く当事者たちなんです。だからこそ社員一人ひとりに当事者意識を持たせ、好きなようにやらせています。

2015年のラグビーワールドカップの日本対南アフリカ戦で、3点リードされていた日本は終了間際にエディー・ジョーンズHCがペナルティーゴール(3点)で引き分け狙いを指示しましたが、選手たちはそれを無視。スクラムを選択し逆転トライ(5点)を狙い、最終的に大逆転勝利を収めました。現場で起こっていることに関しては、選手自身が考え、決断する、そんないい事例だと思います。

近藤氏

おっしゃる通り、まさにトップの命令に単純に従うなという、いい例ですね。しかし、だからこそ現場を任されている人間には、状況判断力や論理的思考力も欠かせません。私たちは単に仕事を任せるだけでなく、そういったさまざまなスキルを身につけられるよう、人材育成にも力を入れております。

「ティール組織」ですら日本ではほとんど実践できている企業がない中、ある意味「ティール組織」を超えたオリジナリティのある組織体系だと感じました。ぜひもっと詳しいお話をHRサミット2019でお聞かせいただければと思います。

近藤氏

この話は本当に奥が深いので、続きはHRサミット2019でたっぷりお伝えしたいですね。講演は、「人を大切にしながら、どうしたら利益を継続して出すことができるのか」、「そのために企業とその経営者はどうあるべきか」、「企業が生き残るために経営者と社員が共有すべき意識とは何か」といった内容を予定しております。ぜひご期待ください。

近藤 宣之氏
株式会社日本レーザー
代表取締役会長

1944年生まれ。慶應義塾大学工学部電気工学科卒業後、日本電子株式会社入社。1989年、同社取締役米国支配人就任。1994年、子会社の株式会社日本レ一ザー代表取締役社長に就任。2018年、同社 代表取締役会長(CEO)に就任。人を大切にしながら利益を上げる改革で、就任1年目から黒字化させ、現在まで25年連続黒字、10年以上離職率ほぼゼロに導く。2007 年、ファンドを入れずに役員・正社員・嘱託職員が株主となる日本初の「MEBO」で親会社から完全独立。2011年、第1回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞の「中小企業庁長官賞」 など、経済産業省、厚生労働省などから受賞多数。著書に「倒産寸前から25の修羅場を乗り切った社長の全ノウハウ」(ダイヤモンド社刊2019年)、「未踏の時代のリーダー論」(日本経済新聞出版社 共著2019年)等多数。

HRサミット2019での講演情報
A4 9/18(水)14:10-15:20 皆が幸せに働きながら常に黒字を維持できる経営
メディアパートナー
企業と人材
人事実務
人事マネジメント
労政時報
月刊総務
経済界