昨年度の人事イベント動員数No.1。日本中の人事部が認めた日本最大級の人事フォーラム・カンファレンス HRサミット2015

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Vol.4

Vol.2

'ものづくり'から'ものこと&ひとづくり'へ Open Innovation時代の企業のGlobal人材戦略

東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授
田中 芳夫氏

低迷の理由は、通用しなくなった日本のビジネスモデル

2014年4月に「ものこと双発学会」と「ものこと双発協議会」が設立されました。この協議会、学会は、2009年に経済同友会に設けられた「もの・ことづくり委員会」の活動を踏まえて設立され、田中先生は委員会、協議会、学会のいずれにも世話人や理事として関わってこられました。まず教えていただきたいのは、なぜ、いま「ものこと」という視点が必要なのかということです。日本が抱える課題について教えてください。

戦後日本は「もの」を追求することで成功をおさめました。QCD(品質:Quality、価格:Cost)、納期:Delivery)にこだわり、「いいものは売れるはずだ」という信念を持ち、高品質の製品を大量にかつ廉価に提供することが企業の役割だと考えてきました。そして1980年代に世界一の技術大国になったのです。しかし1990年代から世界一の座は揺らぎはじめました。そして今世紀に入ってから日本の地位は下がり続け、世界のトップを走っていた製造業は低迷し、苦しんでいます。

 

その理由は日本のビジネスモデルが通用しなくなったからです。ICTがすさまじい速度で進歩普及したことにより、日本が得意としていた「品質・コスト・大量供給」は強みではなくなったのです。今世紀に存在感を増し台頭しているアップル、グーグル、フェイスブックなどは新たな仕組みあるいは価値提案をして成長しました。

 

これに対し、わが国は、ICTによるグローバルなビジネス展開の波に乗りきれておらず、新たなニーズ、ビジネスのあり方を提案するというよりは、他国が切り拓くICTインフラを部分的に享受する「ものづくり」に留まっている面が大きいと思います。いまだに日本メーカーの製品は評価されていますが、大きな利益を上げていません。

 

たとえばiPhoneです。初期のiPhoneはほとんどが日本製部品で製造されていました。しかしiPhoneによって膨大な利益を上げたのはアップル社でした。また現在のiPhoneは台湾、韓国、中国の部品と組み立てメーカーによって製造されています。

技術を自社内に囲い込もうとした日本メーカーの衰退

1990年の頃の半導体産業で日本の存在感は圧倒的でした。またつい10年前までは日本の液晶産業は世界に冠たる水準にありましたが、いずれも優位性を失いました。なぜ衰退したのでしょうか?

半導体も液晶も、技術の強みは製造ノウハウにあります。製造装置はどの国のメーカーでも買うことはできますが、シリコンに添加物をどの温度でどのくらいの時間で加工するかのパラメーターがわからなければ製品を作れません。だから製造ノウハウが奪われまいと日本メーカーは必死だったのです。シャープの亀山工場は窓のない工場として有名で、万全の技術流出対策が施されていました。しかし、液晶の製造ノウハウは他国のメーカーに流出しました。ノウハウを知るエンジニアがスカウトされて、製造パラメーターが流出したからです。

エンジニア流出によって日本メーカーの競争力が低下したのは、1990年代の半導体産業でも起こったことです。技術を自社内に囲い込もうとした日本メーカーが、自社エンジニアの流出で優位性を失ってきたことは皮肉な構図とも言えます。

このように、日本ではエンジニア流出がメーカーの競争力低下という致命的な結果をもたらしていますが、欧米企業ではそのような例をあまり聞きません。アップルやグーグルでは1週間に数百人以上のエンジニアが入社し、その半数以上が辞めていくそうです。人材の流動性がきわめて高いのです。

GEは「インダストリアル・インターネット」、ドイツ政府は「インダストリー4.0」

日本では企業内に閉じる開発が主流ですが、欧米ではまったく異なるイノベーションモデルが提唱されているそうですね。

世界最大のコングロマリットであるGEは、「インダストリアル・インターネット」という概念を提起しています。GEは世界最大のジェットエンジンのメーカーですが、センサーが常時エンジンを監視し、故障を予測できれば、エンジン負担を軽減し、燃料費も節約でき、また遅延によるコスト負担も軽減できます。GEはヘルスケア分野にも進出しており、同様の仕組みが使えます。つまり製造業がサービス業に変貌し、この仕組みはIOT(Internet of Things)と呼ばれることもあります。GEは「世界最大のITベンダーになる」と言っています。

ドイツ政府は「インダストリー4.0」という言葉を使い、ドイツの主要企業を含む産官学の多くの組織や団体が参加する、新たなモノづくりの形を提起しています。意味するものは第4次産業革命です。

3Dプリンタの登場も革命的です。コンシューマーの多様なニーズがあっても、製品にするには時間とコストがかかりました。しかし3Dプリンタが普及すると、ニーズに基づいてただちに製造することができます。一つひとつ異なる製品を一人ひとりのコンシューマーに提供できるのです。

しかし、日本メーカーは、このような変化を理解していません。あるいはそうなって欲しくないと考えているのかもしれません。

インタビューはまだ続きます。

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HRサミット2015/経営プロサミット2015での講演情報

東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授
田中 芳夫氏

1973年東京理科大学工学部電気工学科卒業、同年、住友重機械工業(株)に入社、Online system設計などのシステム開発に従事、1980年に日本IBMの研究開発製造部門に入社。世界向けの製品・サービス・ソフトウエアの開発、マネージメント、および 副社長補佐。1998年にIBM Corporation R&D Asia Pacific Technical Operation担当。2001年研究開発部門 企画・事業開発担当理事。2005年マイクロソフトCTO就任。2007年(独)産業技術総合研究所参与、青山学院大学大学院ビジネス法務客員教授。2009年東京理科大学大学院教授、国際大学GLOCOM 上席客員研究員、日本工学アカデミー会員