【HRサミット2016】日本最大級の人事フォーラム 5月11日・12日・13日開催!

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テクノロジーの進化による働き方の変革

〜AI・ロボットの働き方へのインパクト〜

一般社団法人日本RPA協会 代表理事/RPAテクノロジーズ株式会社代表取締役社長 大角 暢之氏
日本アイ・ビー・エム株式会社 技術理事 ソーシャル事業部 行木 陽子氏
慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授 岩本 隆氏(モデレーター)

第4次産業革命が引き起こす就業構造の変化にどう対処すべきか

岩本

まず私から少し話をさせていただきます。今、経済産業省に産業人材政策室ができていまして、第4次産業革命により、今後、日本の就業構造はどう変わるかを議論しています。まず、現状を放置するとどうなるか。優秀な人材が海外に流出する一方、従来型のボリュームゾーンである低付加価値な製造ラインの工員、営業販売、バックオフィスといった仕事はAIやロボットで代替されて、多くの仕事が低賃金化すると経済産業省では見ています。では、目指すべき姿はというと、AIやロボットを創って新たなビジネスのトレンドを創出し、優秀な人材を逆に内外から集積させる。そして、ボリュームゾーンに関しては、データサイエンティストのサポート業務など、AIやロボットを使って共に働く仕事を創ったり、あるいは、人にしかできない高付加価値な営業・販売やサービスなどの仕事にシフトしたりすることで、雇用を増やし、生産性も高めていく。そういう方向に向かうよう、経済産業省では政策的に手を打とうとしているところです。

今日は、このAIやロボットといった分野をリードされているお二方にいろいろお聞きしたいと思っていますが、まず、お二人がどのような活動をされているのか、大角さんからお話しいただけますか。

RPAとはホワイトカラーのルーチンワークを代行するデジタルレイバー

大角

RPAテクノロジーズの代表取締役社長、日本RPA協会の代表理事を務めている大角です。RPAとはロボティック・プロセス・オートメーションの頭文字を取った言葉です。RPAテクノロジーズはRPA事業をスタートして10年、国内No.1のRPAカンパニーであり、現在、「BizRobo! (ビズロボ)」という国内初のロボットソリューション製品を中心に事業を展開しています。欧米に比べると、まだなじみが薄いRPAですが、日本でも今年に入ってRPA導入の波が大手企業などの間で急速に高まり、企業の人手不足や将来の労働力人口の減少に対する解決策として、RPAの普及が急がれるとの要請がありました。そこで、2016年7月に日本RPA協会を設立し、日本型RPAの普及活動に取り組んでいるところです。

今、人類はAI、ロボットをキーテクノロジーとした第4次産業革命の入口に立っています。第3次産業革命までは生産工程の自動化や高度化などが図られましたが、第4次産業革命では初めてホワイトカラーの生産性革命が起き、10年から20年後、日本で働いている人の約半数の職業が機械やAIによって代替することが可能だと言われています。その中心技術がRPAであり、AIといった認知技術を活用することにより、人間の補完として業務を代行することが可能です。このことは、企業の中に新たな概念の労働者、デジタルレイバー(仮想知的労働者)が出現することを意味しています。

大手生保ではロボット事務センターを開設し、圧倒的な効率化を実現

大角

このRPAを、私たちはBizRobo!によるロボット・ソーシング事業として2010年頃から本格展開しており、現在では100社、4,000ロボットを超える導入実績があります。ロボットといっても要はマクロファイルで、オフィスで人がパソコンを操作して行っていらっしゃるルーチンな事務業務を、その操作を記録したマクロファイルを使って作業代行するという仕組みです。導入されたお客様からは、スピード、正確性、人件費や管理コストの面でも、圧倒的な効率化が図れると評価をいただいています。

例えば、大手生命保険会社のお客様の事例ですと、従来、保険商品の販売に伴って、不備がないか点検したり、データを登録したりといった煩雑な事務業務をされていました。そこで、ロボット事務センターを5年前に開設され、そうした業務をロボットが代行することで、人は総合的な判断だけすればよくなり、約80名だったスタッフは13名に減りました。

今はまさに人手不足の時代ですから、このように、まずルーチンワークからホワイトカラーの方々を解放し、その方々に教育を行って、より高度な業務にシフトしていただくということを私たちはご提案していますし、このお客様をはじめ、多くのお客様がそのように取り組まれています。

岩本

ありがとうございます。次に行木さん、お願いします。

ITツールを活用し、「どこで働いてもOK」を実現しているIBM

行木

日本IBMの行木です。テクノロジーが働き方をどう変えるかということで、まず、私たち自身がさまざまなITツールを使って実現している、自由で柔軟な働き方をご紹介したいと思います。

当社では1990年代半ばから、モバイルツールの活用やオフィスのフリーアドレスなど、さまざまなワークスタイル変革へのチャレンジを続けてきました。今、社員の多くはオフィスに自分の席を持っていませんし、会社に来なくてもいい、どこで働いてもOKだと言われています。自宅でもいいですし、都心のいくつかのターミナル駅にサテライトオフィスがありますから、お客様先に行った後、箱崎の本社に戻らずにサテライトオフィスで仕事をして、自宅に帰ってもかまいません。そういう働き方を、Web会議やチャットといったリアルタイムコミュニケーションのツールや、私の専門エリアであるソーシャル・ネットワークのテクノロジーを使ったいろいろなコミュニケーションを柔軟に行うためのITの仕組み、あるいはモバイルツールといったものを活用しながら実現しています。

コグニティブ、AIを取り入れたツールで、働き方を大きく変える

行木

次に、さらに新しい働き方の実現に向けて、今、当社がお客様にご提供しているソリューションと、開発中のテクノロジーについてご紹介します。私が所属しているソーシャル事業部では、コラボレーション・ソリューションとして、メールやカレンダー、企業内SNS、情報共有といった機能を一つにまとめ、グローバルで活用いただくコラボレーション基盤をご提供しています。このコラボレーション基盤にコグニティブ、AIを結び付けて、新しい働き方のもう一歩先を目指しているのが、現在の私たちの活動です。

コグニティブ(Cognitive)とは、知識を得たり、思考、経験、感覚などを通して理解する、知的活動やプロセスの意味です。データベースで管理されている構造化データだけでなく、メールやソーシャルメディア、動画、画像などの非構造化データを含め、全て理解して推論し、学習し、私たちの意思決定を支援するのが、Watson(ワトソン)に代表されるIBMのコグニティブ・コンピューティングです。

これをコラボレーション基盤に取り入れて、例えば、メールが来ると、秘書がやってくれるようなサポートをWatsonが行うという技術を、来年のリリースを目指して開発しています。送信者や緊急度などによってメールを仕分けし、重要な文章を取り出して教えてくれたり、メールの内容から必要なアクションを判別して、ミーティングをする必要があるなら、誰を呼ぶのか、その人たちのスケジュールはいつ空いているのか、また、ファイルの送信を求められているなら、そのファイルの候補を探して教えてくれたりします。そういうことを、ユーザーが使えば使うほど高精度でやってくれるわけです。ほかにも、「フォーラム」というソーシャルのツールでは、誰かが何か質問したとき、ほかの人が答えるのではなく、Watsonが答えてくれます。こうした機能を付加して、企業の方々の生産性をより向上させるような世界を実現していきたいと考えています。

AIやロボットで人の仕事を奪うのではなく、逆に増やしていく

岩本

では、ディスカッションに移ります。大角さんからRPAについてお話をいただきましたが、企業の事例は先ほどの金融機関のほかにどういうものがありますか?

大角

あらゆる細かいルーチンワークが対象ですから、企業のコストセンターの事務処理など、システム化が難しい現場の些末な業務を代行されるという事例は幅広い業種で数多くあります。また、そこがかなり進んできたお客様においては、現場の方々のアイデアで新しいことにチャレンジされる事例も出てきました。アパレルのEC事業のお客様ですと、商品の回転率が何パーセントを切ったら死に筋になるという経験則をお持ちなので、ロボットをつくって、一定の回転率を切ったら、その商品のデータをEコマースのシステムから削除する、あるいはタイムセールのサイトに登録して、ロボットがツイッターやフェイスブックで情報を出し、売り切っていくという仕組みをつくっていらっしゃいます。

岩本

なるほど、ソーシャルメディアもあわせるといろいろな使い方ができますね。行木さんからは新しいテクノロジーを使った働き方についてご紹介いただきましたが、すでに実践している企業の事例はありますか。

行木

例えば、海外では、自動車部品大手グローバルメーカーのお客様が、イノベーションを起こしていくために企業内SNSの仕組みをつくって、組織の壁を取り払い、社員だけでなくビジネス・パートナーも含めて意見交換をされています。また、中南米のセメント会社のお客様は、以前はセメントのグローバルブランドをつくる際に複数の国で別々に取り組んでいたのを、フォーラム上で国や組織を超えてディスカッションすることによって3分の1くらいの工数でブランドを立ち上げられました。日本でも、事業を全国展開されているお客様が、北海道でのその日一番のベストプラクティスを、その日のうちに東京でも沖縄でもシェアできるといった形で、企業内SNSを使った新しい働き方を推進されています。このようなデジタル上のオープンなコミュニケーションを推進することにより、業務に関する重要なデータが日々蓄積されます。そして、そのデータからAIやコグニティブ・システムが業務を理解し、業務効率の向上を支援してくれます。一人ひとりの社員が持つ知見をデジタル化し蓄積していく仕組みを考える事が、AIやコグニティブ技術を有効に活用し働き方を変革するための最初のステップになるのではないでしょうか。

岩本

AIやロボットで人の仕事が減るといった側面の報道が多いですが、今日のお二人のお話で、逆にいろいろな仕事を増やせることがイメージできたのではないかと思います。今日はありがとうございました。

協賛:株式会社無限

大角 暢之氏

一般社団法人日本RPA協会
代表理事 /
RPAテクノロジーズ株式会社
代表取締役社長
大角 暢之氏

一般社団法人日本RPA協会 代表理事 / RPAテクノロジーズ株式会社 代表取締役社長 早稲田大学を卒業後、アンダーセンコンサルティング株式会社(現アクセンチュア株式会社)に入社。 2000年オープンアソシエイツ株式会社を設立し取締役に就任、セルフスプロデュース事業としてビズロボ事業部発足(創業)「BizRobo!」としての商標登録を実施 。 2013年ビズロボジャパン株式会社 (現 RPAテクノロジーズ株式会社)を設立し、代表取締役社長に就任。 ホワイトカラー業務の代行を実現するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を推進するリーディングカンパニーとして活動。 急速な少子高齢化に伴う労働生産人口の減少・不足という大きな課題に対する直接的な解決策としても大きく期待を集めるなか官公庁や民間企業の要請もあり、2016年7月一般社団法人日本RPA協会を設立、代表理事に就任。


行木 陽子氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
技術理事 ソーシャル事業部
行木 陽子氏

製造業のお客様担当のSEとして日本IBMに入社。その後、サービス事業部を経てコラボレーション・ソフトウェア製品を担当。コラボレーション分野における最新テクノロジーのエバンジェリスト(伝道師)として活動すると共に、お客様の次世代コラボレーション基盤の設計・導入に従事。2016年技術理事に就任し、現在に至る。


行木 陽子氏

慶應義塾大学大学院
経営管理研究科 特任教授
岩本 隆氏

東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)工学部材料学科Ph.D.。 日本モトローラ株式会社、日本ルーセント・テクノロジー株式会社、ノキア・ジャパン株式会社、株式会社ドリームインキュベータ(DI)を経て、2012年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)特任教授。