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日本の新卒採用変革会議

〜規制に縛られない採用へ

学習院大学 キャリアセンター担当事務長 淡野健氏
東洋経済新報社 編集局編集委員 田宮寛之氏
ProFuture株式会社 代表取締役社長/中央大学大学院戦略経営研究科客員教授 寺澤康介(モデレーター)

2年連続で採用スケジュールが変更され、企業、学生、大学ともに混乱している2017年の新卒採用。形骸化が進む就活指針は、果たして誰のために、何のためにあるのか。企業や学生にとって本当に必要なものなのか。そこで今回は、これまでの採用のあり方を見直すべく、学習院大学キャリアセンター担当事務長の淡野氏と、東洋経済新報社の編集委員で就活事情に詳しい田宮氏をお招きし、大学・企業それぞれの立場から、タブーのない、本音の議論を展開していただきました。

2017卒採用を振り返ってみて、どのように感じられますか?

淡野

結論から言うと、企業の選考スケジュール(6月開始)というルールが遵守されず、就活スケジュールを煽り、学生が困惑した2017卒の就活でした。これは大学も企業も官庁も就職情報会社も、ほぼ同じ認識でしょう。私はこれを『4つの領域の罪』と呼んでいます。そこで今回ご提案したいのは、責任論を問うのではなく、情報過多のネット社会の就活において、減少する次世代の若者のための就活システムになっているかという実態を議論・理解し、なぜこのような実態になり、今後どうするべきかを各領域の方々は真剣に考えるべきだということです。

3月からの採用広報開始と、6月からの選考開始が今年の採用スケジュール(ルール)であり、これは経団連の指針および文科省の推奨で企業・大学にも通達されています。経団連は企業に対し、通知書を配布。ルール遵守の徹底を図りました。一方、文科省は大学に対し、企業へ文書の手交を指導。文書の内容は、3月採用広報開始と6月選考開始ルールの徹底を確認すること、6月選考では学事日程を考慮すること、選考時における早期の履修履歴取得を促進すること、この3点です。しかし、ほとんどの企業や大学はこれらを守っていません。つまり決まりごとをまったく守れない大人たちが、学生に対して「ルールを守りなさい」と言えるのでしょうか。

採用ルールは実際どのような点が問題なのでしょうか?

田宮

そもそも日本において、採用ルールや就職協定などはまったく必要ないと思います。というのも、日本は自由経済の国であり、採用に関する規制があること自体、おかしいのです。経営の3要素である「人」「モノ」「金」で言うと、日本の経済では「モノ」と「金」は自由ですが、「人」の採用となると細かい規制が入ります。日本は共産主義国家ではなく、自由経済の国ですから、採用も自由であるべき。よって日本に採用のルールや就職協定が馴染まないのは当たり前なのです。日本において最初に就職協定が作られたのは、1928年のこと。88年も前の話です。88年もの歳月をかけて、色々と議論を重ねながらも、結局は守れていない。この先どんなルールを作ったところで守れないと思います。

最近は外国人採用が増加し、また秋入学の学生も増えてきており、一括採用のルールを作るのはどんどん困難になってくるでしょう。企業は、自分たちにとってベストな採用手法を取ればいいのです。それは一括採用であるかもしれないし、通年採用であるかもしれない。一括採用も開始日を3月、6月にこだわる必要はなく、当社は2月、7月がいいとか、5月、8月がいいなど、各企業にとってやりやすい方法でいい。それが自由主義経済の根本だと思います。

淡野

やはり企業が求めているのは、偏差値が高い大学の学生でしょう。しかも、その中で例えば、部活など積極的にやっていたり、自分で何かを発信できたり、課題感を持って頑張れるような学生です。しかし、そんな学生が日本に何人いるでしょう。そこをみんなで採りにいったら、混乱するだけです。もはや学生をひと括りにする時代ではありません。携帯電話も一人一台と、まさに個の時代になってきているのに、なぜ採用市場だけ一律のルールに縛られているのか、そこが大きな問題です。ではなぜ撤廃できないのでしょうか。撤廃すべきだと長年議論をしていますが、何も変わっていません。また2000年以降、採用活動はネットに移行しました。かつて紙メディアの時代、就職情報会社は一部の国公立や私学生・男子のみなどにだけ大量に広告本を送って、それ以外の大学や女子学生には情報量が少量しか送っていなかったという現象もありましたが、ネットになった現在でも、特定の大学の学生だけメールDMを送るという現実があります。採用したい学生だけに集中しているのが現状なのです。

学歴フィルターや就職ナビなど構造的な問題についてはどう思われますか?

田宮

就職ナビはよく非難の対象になるのですが、それはそれで情報源として割り切って使えばいいと思います。あれに完全に依存してしまうから問題になるのです。一方、学歴フィルターに関しては、大学のキャリアセンターが学生にもっとはっきり言うべきです。うちの大学はこのレベルの企業には入れるけれど、このレベルの企業は難しいですよと。そこのところを曖昧にしているキャリアセンターが多いので、学生が高望みしてしまって、無駄な労力を使うケースが後を絶たないわけです。

学生だけでなく大学側も就職ナビなどに依存している部分はありませんか?

淡野

我々キャリアセンターはもっと学生視点に立つべきです。学生が混乱しているのに、なぜキャリアセンターはもっと声を大にして、「おかしいじゃないですか!」、「うちは学歴フィルターがかかっていますよね?」と言えないのか。その要因の一つに、大学の職員自体の力量があります。大学の職員も、例えば学生課からいきなり就職課に異動するなど、いろいろな部署を回るわけです。そうなると、「私は詳しい事情がわからない」となり、結果的に就職情報会社に丸投げになる。企業説明会なども就職情報会社がすべて代行してくれるので、大学にノウハウが残りません。要するに大学も就職情報会社にうまく丸め込まれているのが現実なのです。もっとキャリアセンター側も勉強して、積極的に企業を訪問し、学生目線でどんどん訴えかけるべきだと思います。

キャリアセンターと教授との関係にも問題がありますよね。

田宮

私は年間80回くらい大学で講演を行っており、キャリアセンターやキャリア教育を行っている教授の方と頻繁にお話をさせていただくのですが、この両者はいがみ合っていることが多いです。この2者が連動している大学は問題ないのですが、連動していない大学は、基本的に就職指導はキャリアセンターに一本化すべきだと思っています。そうしないと、学生が混乱するだけでしょう。またキャリア教育を担当している教授も3パターンあって、1つ目は学生のために一生懸命やっている教授で、言うまでもなくこれが理想です。2つ目は、本当は違う学問をやりたいのに、たまたまキャリア教育を任されている、単にやる気がない人。こういう教授は、私のような外部の人間に講演をさせるなど丸投げするので、それはそれで就職指導が成り立っており、まだマシな方です。しかし最悪なのは3つ目で、キャリア教育に学問的アプローチをしている教授。要するにキャリアの分野で何か論文を書いて、認められて、教授としてのし上がっていきたい、そう考えている人も少なからずいます。そういう教授は学生のことなど考えておらず、単に自分が評価されることだけを考えています。つまり、学生は研究対象に過ぎないのです。学生のことを考えれば、3つ目のパターンの教授を就活に関わらせてはいけないと思います。

経団連の指針に対して、企業はどのような対策を立てるべきでしょうか?

淡野

経団連は18年卒採用も6月選考開始と発表済みです。では、どうしたらいいのか。方法は大きく分けて3つあります。1つ目は、企業が経団連の指針を遵守するか、否かを明言すること。企業のサイトにスケジュールを提示して公開すればいいと思います。2つ目は、遵守しない場合のルール作りをすること。17卒のような遵守した企業がデメリットを感じるのはNGでしょう。そして3つ目は、企業も大学もスケジュールの形骸化を認識して、公表すること。3月からの企業広報において学生に明言すべきです。

田宮

私としては撤廃が理想ですが、いきなり撤廃するのは難しいですよね。ですから企業がホームページにきちんと採用スケジュールを発表して、その通りに進めていくこと。そこから始めていくしかないと思います。

企業はどこの大学から採用しているのか明確に情報開示すべきではないでしょうか?

淡野

どこの企業にとっても本音の部分を言うのは難しいでしょう。実はうちの学生にも例えば「○○銀行の頭取はみんな国公立出身だよ。私学はなかなか難しいよ。そういう現状をわかってる?」と言うのですが、「わかってます。それでもあえて挑戦したいんです」と学生から言われると、もうそれはそれでいいのではないかと思ってしまいます。キャリアセンターもそういう学生を止める権限はありませんから。確かに企業が情報開示することで、学生が無駄に大量のエントリーシートを送ることを防ぐことはできるかもしれませんが、現実的には難しいというのが私の見解です。

田宮

情報開示に関しては、大学側も学生がどの企業に入ったのか、結構うやむやにしているケースが多いです。過去において有名企業に入った事例をずっと掲載していたりする一方で、何年にどこの企業に一般職で何名入ったのか、といった情報はあまり開示しない。企業の情報公開も不十分ですが、大学もはっきり開示すべきだと思います。そうすることで学生も誤りのない判断を下せるのではないでしょうか。

2018卒以降の具体的な対策や展望についてお聞かせください。

淡野

私が学生たちに言っているのは、今は景況だし、2018卒、2019卒までは企業の採用意欲も高いだろう。しかし2020年のオリンピック前から景気は必ず悪くなるよということです。今は企業が大学に足を運んでくれますが、3〜4年後を見据えると、やはり一括採用は無理だろうという声が必ずあがるはず。ということで、19卒に関しては、いきなりノールールでは企業も就職ナビ会社も大変だと思うので、まずは3月〜企業広報開始だけを最初に決めたらどうですかと提言したいです。その後の6月〜選考は自由(撤廃)にしましょうと。そして21〜22卒くらいになったら学生数もだいぶ減ってきますので、Noルールに切り替える。その際に大事なのは、ぜひ就職活動が学業に影響しない前提で大人の気配りをしてください。さらにもう一つのポイントが、インターンシップです。欧米はジョブ型雇用なのでインターンシップも非常に効果的ですが、日本はメンバーシップ型雇用なので、インターンシップの役割も大きく異なります。しかし一方で、世界でも例のない日本独自の非常に良い採用手法だとも思っています。

田宮

先ほど淡野さんから4つの罪のお話がありましたが、私はもう一つ、学生にも罪があると思っています。学生は企業研究を就活解禁前からできるのに、やらない。私はいろいろな大学で学生に話を聞くのですが、ほとんどが新聞を読みません。テレビのニュースも観ません。それでいて世の中にどんな企業があるのかわからない、何をしたらいいのかわからないと言っている。日頃から情報収集していないのだから、わからないのが当たり前ですよね。企業研究なんて大げさな言葉でなくても、日頃からやるべき情報収集をしていれば、後になって困ることはありません。普段から新聞くらいは読んで、きちんと社会勉強をして、自分の進路を考えておく。そういう姿勢が大切だと思います。

 

インターンシップに関しては、まだまだやっていない学生もいますので、もっと積極的にやるべきだと思いますし、3〜4年生になってからバタバタやるのではなく、1〜2年生のうちから時間のある学生はどんどん取り組んでほしいです。またインターンシップの受け入れをスムーズにするために企業側も体制を整えるべきですし、大学側も学生が積極的にインターンシップを行うよう、指導・斡旋していく必要があると思います。

最後にまとめとして、ひと言お願いします。

淡野

就職活動に正解はありません。私は社会の縮図だと考えております。正解は一つでないからこそ、知恵を使って、いろいろな方法で議論を重ねて、より良いものを見つけていく努力を続けなければなりません。本学にはまだまだ未内定の学生がおります。本学では4年生の3月31日までに決まっていない学生が一人でもいれば、企業様にご紹介いたします。私はお電話1本いただければ、必ずお伺いしてお会いする主義ですので、ぜひご連絡ください。短い時間でしたが、ありがとうございました。

田宮

採用はそれぞれの企業によってベストな方法でやっていただくのがよいと思います。私個人の考えとしては、大学1〜2年生で内定を出してもいいと思っているほどです。早めに就職活動させると勉強しなくなるという声もありますが、逆に言うと、早めに決まれば、その後に落ち着いて勉強できるということもあるでしょう。最近は経済的に苦しい学生も多いですから、先に経済的な安定を与えてあげることで、落ち着いた学生生活を送ることができると思います。採用は企業の将来や学生の人生に関わる重要な問題であり、官庁や業界団体からあれこれ言われる問題ではありません。皆さんもぜひ、企業にとってベストな方法で進めてください。本日はありがとうございました。

淡野健氏

学習院大学キャリアセンター担当事務長
淡野健氏

1985年学習院大学経済学部卒業後、(株)リクルート入社。新規事業、総務採用、営業事業部長を歴任。その間、モチベーションマネージメントや就活での企業講演・OB講演を経験し、入社3年目に新卒採用経験を活かし、母校の『面接対策セミナー』を創設。以来卒業生と大学との協働のセミナー運営に携わり、28回目を迎える。2010年4月母校の就職支援部署に戻り、学生の就職相談・講座ファシリテーター・セミナー運営・企業関係構築を図る。米国CCE,Inc認定 GCDF-キャリアカウンセラー【04136JP】資格、文部科学省NPO法人『人財創造フォーラム』第2期社会人ゼミメンバー。


田宮寛之氏

東洋経済新報社編集局編集委員
田宮寛之氏

東洋経済新報社に入社後、企業情報部記者として自動車、生・損保、食品、コンビニ業界などの取材を担当し、『会社四季報』『就職四季報』などに執筆。その後、『週刊東洋経済』編集部デスクを経て『オール投資』編集長。2009年「東洋経済HRオンライン」を立ち上げて編集長となる。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。現在は編集局編集委員。近著に『みんなが知らない超優良企業』(講談社)。


寺澤康介

ProFuture株式会社代表取締役社長 / 中央大学大学院戦略経営研究科客員教授
寺澤康介 氏

1986年慶應義塾大学文学部卒業。同年文化放送ブレーン入社。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。常務取締役等を経て、07年採用プロドットコム株式会社(10年にHRプロ株式会社、2015年4月ProFuture株式会社に社名変更)設立、代表取締役社長に就任。約6 万人以上の会員を持つ日本最大級の人事ポータルサイト「HRプロ」、約1万5千人が参加する日本最大級の人事フォーラム「HRサミット」を運営する。約25年間、大企業から中堅中小企業まで幅広く採用、人事関連のコンサルティングを行う。週刊東洋経済、労政時報、企業と人材、NHK、朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、アエラ、文春などに執筆、出演、取材記事掲載多数。企業、大学等での講演を年間数十回行っている。