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HRBPとは?マネーフォワード・カゴメの実例、導入メリット・手順を解説

近年、経営戦略と連動した人材戦略である「戦略人事」の実行を担うHRBP(HRビジネスパートナー)が注目されています。しかし、HRBPという仕事の役割や実態を十分に把握していない方も多いでしょう。

本記事では、HRBPの仕事内容や導入メリット、導入手順から、実際の企業の導入事例まで解説します。

目次

HRBPとは

HRBPは「Human Resource Business Partner(人事ビジネスパートナー)」の略称です。経営者や事業責任者のビジネスパートナーとして、人と組織の視点から事業成長を支援する人事機能、またはその役割を担う役職を指します。

採用業務や人事制度の設計を担当することもありますが、HRBPの役割はそれだけに留まりません。組織開発や人材育成など、多様な手段を通じて事業戦略の実現をサポートします。ただし、HRBPの定義や具体的な役割は企業によって幅があり、日本企業では特にその傾向が強く、導入済みの企業間でも実態は大きく異なります。

HRBPは、1996年に米国で提唱されて以来、海外では人事の中核機能として定着してきました。米大手人材会社の調査では、2026年にますます重要性を増していく人事関連の職種としてHRBPが挙げられており、日本でも大手企業を中心に注目されています。

HRBPの役割

HRBPの役割は、経営や事業の課題解決、目標達成に向けて、人と組織の力を最大限に引き出すことです。

経営層や事業部門の責任者と対話しながら組織課題を把握し、人事施策を企画・提案します。加えて、施策を現場で実行・浸透させ、成果につなげる役割も担います。人事の専門知識を活かしながら、事業成長を支えるパートナーとして機能する点が特徴です。

HRBPの概念を提唱したデイビッド・ウルリッチ氏は、人事機能を主に次の3つに分類しています。

  • CoE(Center of Expertise)

人事制度の設計や人材開発、採用など、高度な専門性が求められる領域を担うエキスパート。各領域の知見をもとに人事施策を設計し、HRBPの人事戦略の実現や課題解決を支援します(評価制度のひな型や研修プログラムを用意し、HRBPが現場で使いやすい形に整えるなど)。

  • HRBP(HR Business Partner)

事業部門や現場に近い立場で、人・組織に関する課題を把握し、解決に向けた施策を企画・推進します。CoE(人事の専門知識を持つエキスパート)が設計した制度や施策を活用しながら、現場の状況に合わせて実行・定着を支援する役割です。

  • HR Ops(HR Operations)

給与計算、勤怠管理、社会保険手続きなど、人事に関する定型的なオペレーション業務を担います。正確かつ効率的に業務を運用することで、人事機能全体を支えます。

HRBPと人事やCHROとの違い

HRBPへの理解を深めるには、従来の人事部門やCHRO(最高人事責任者)との違いを押さえることが重要です。それぞれの役割や責任範囲、事業との関わり方には違いがあります。

HRBPと人事の違い

従来の人事は、採用、労務管理、給与計算、勤怠管理などのオペレーション業務を中心に、組織を適切に管理・運営する役割を担ってきました。人事施策の企画・実行にも携わりますが、一般的には事業戦略の立案や実行に深く関与するケースは多くありません。

一方、HRBPは、事業戦略と人事戦略を結びつける役割を担います。事業部門の責任者や現場と連携し、組織・人材面の課題を把握したうえで、採用、配置、人材育成、組織開発などの施策を企画・推進します。

つまり、HRBPは人事の専門性を活かしながら、現場の課題解決や事業目標の達成に直接関わる点に特徴があります。

HRBPとCHROの違い

CHROは「Chief Human Resources Officer」の略で、日本語では最高人事責任者を指します。経営チームの一員として、全社的な人事戦略や人材方針、人事制度などを統括する役割です。

一方、HRBPは、特定の事業部門や組織に寄り添い、人事施策を現場で実行・浸透させる役割を担います。経営が示す方針と現場の実情をつなぎ、事業目標の達成に向けた組織・人材面の支援を行います。

観点HRBPCHRO
主な役割事業部門の人・組織課題を解決し、事業目標の達成を支援する全社の人事戦略・人材戦略を統括する
主な対象担当する事業部門・組織会社全体
主な業務現場課題の把握、施策の企画・推進、制度運用の支援人事方針の策定、人事制度の設計・統括、経営への提言
責任範囲担当部門における組織・人材課題の解決全社的な人材戦略、人事制度、人事機能の成果
経営との関わり経営方針を現場施策へ落とし込む経営戦略と連動した人事戦略を策定する

なお、企業規模や組織体制によっては、HRBPがCHROの方針策定を支援したり、CHROが一部の事業部門を直接担当したりすることもあります。

HRBPの主な仕事内容

HRBPの仕事は、経営側の意図を汲み取り、現場が動ける形にして届けることです。大きく分けると、次の3つに整理できます。

①現場の課題を把握・可視化する

HRBPの仕事は、担当部門の現場の状態を掴むところから始まります。データを見ればある程度のことは把握できますが、チームの空気感やマネジメントの偏りなどは数字だけでは見えてきません。

データと突き合わせながら、現場の社員と対話をしたり業務の様子を観察したりして、どこに手を打つべきかを見極めます。

②組織戦略に反映し、経営陣へ提言する

現場の実態を踏まえた上で、事業目標達成のための組織戦略を組み立て、経営陣に提言します。さらに、経営陣からの求めに応じて、根拠を提示して説明することもHRBPの重要な仕事です。

③現場に浸透させ、実務レベルで支援する

組織戦略の実行に伴って、評価制度の運用ルールのすり合わせを行います。1on1やチームビルディングなどを通じて、チーム運営そのものを見直すことも必要です。こうして組織戦略を現場に浸透させ、実務レベルでの支援も行います。

また、組織戦略により大きな方針転換をすることもあるでしょう。そのような局面では、現場の社員が不安や不信感を抱かないように、丁寧な説明を行います。

企業にHRBPが必要とされる背景

企業にHRBPが必要とされる背景には、経営環境の急激な変化と人材獲得競争の激化が挙げられます。

テクノロジーの進化に加え、グローバル化やリモートワークの普及により、ビジネス環境は非常に激しく変化しています。そのため、従来の人事管理では経営環境の変化に対応しきれないのが実情です。

また、少子化による労働人口の減少やDX人材の需要増加が、人材獲得競争に大きく影響しています。優秀な人材の確保が難しくなり、人材難に直面している企業も少なくありません。

こうした状況下、経営戦略と人事施策を結びつける「戦略人事」の重要性が高まる中で、その実行を担う存在としてHRBPが求められています。

HRBPを導入するメリット

企業がHRBPを導入することで得られる主なメリットは、以下の3点です。

経営戦略と連動した人事施策の実現

HRBPは経営者に近い視点を持ちながら、各事業部の現状も詳細に把握しています。そのため、各事業部の目標や課題を踏まえて人事計画を組み立てることができ、事業戦略と連動した人事強化を進めやすくなります。

また、各事業部に合った制度運用ができる点もメリットです。現場の状況が変化した場合でも、それに応じて人事施策を柔軟に見直すことができます。

現場の課題のスピーディーな把握・解決

HRBPが現場の状況を継続的に把握することで、データの数値だけでは見えにくい実情を拾い上げることができます。これにより、個人の思い込みや偏った認識に左右されない課題解決策を実行できるのがメリットです。

現場の課題を客観的に認識できるようになるため、意思決定にかかる時間の短縮や、判断精度の向上につながります。

従業員エンゲージメント・生産性の向上

現場の状況を継続的に把握することで、エンゲージメントの低下や離職の兆しを早い段階で察知できます。

これにより、各社員が能力を発揮しやすい環境を整備するなど、早期に対策を講じることが可能です。結果として、エンゲージメントや定着率、生産性の中長期的な安定・向上につなげられます。

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HRBP導入の手順

HRBPを導入する際には、以下の4つの手順で進めることを推奨します。

1.人事戦略の策定

まずは自社の事業環境や経営環境を踏まえ、「どのような人材が必要か」「どのような組織にしていきたいか」を整理します。さらに、必要な人材を確保するための採用や育成の具体的な計画を立てます。

この段階で「HRBPにどこまで任せるか」を事前にすり合わせておくことで、その後の導入プロセスをスムーズに進められます。役割の重複や権限範囲の曖昧さを防止できるため、重要です。

2.実行体制の構築

人事戦略の方向性が固まったら、それを実行するための体制づくりに進みます。その中で、誰をHRBPに任命するかを具体的に決定します。

HRBPは専門性の高い役割であるため、社内に適任者がいないという状況も十分あり得ます。その場合には、既存の社員の中から育成するか、外部から採用するなどの選択肢を検討しましょう。

3.トライアルの実施

初めての試みであるため、導入直後は現場が混乱してしまう可能性もあります。そのため、最初から全社的に正式導入するのではなく、期間や対象部門を絞った上でトライアル実施することをお勧めします。

HRBPの効果を十分に発揮するためには、経営層と現場の双方との信頼関係が不可欠です。少しずつ信頼関係を築きながら、徐々に導入範囲を広げていきましょう。

4.導入後の効果検証・改善

トライアル期間が終了したら、実施した部門からフィードバックを収集し、効果検証を行います。その結果、十分な効果が見込めると判断できれば、本格運用へと移行し、全社展開を検討します。

また、本格運用後も制度や体制の見直しは必要です。継続的に改善を重ねていくことが、HRBP導入の成功につながります。

HRBPを導入している企業の事例

マネーフォワード

マネーフォワードがHRBPを導入したきっかけは、事業の成長に伴い採用数が急増したことです。これまでの人事体制や採用手法では対応が難しくなり、改善策を模索する中で、COO直下にHRBP室が設立されました。

設立直後は採用機能に注力していましたが、その後は人員も増加し、タレントマネジメントやミドルマネジメント支援なども行っています。現場の社員と連携しながら計画を策定・運用してきたことで、一定の成果につながりました。

その後も、HRBPを役割ごとに分けるなど、さらなる改善を重ねています。

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カゴメ

カゴメでは、ジョブ型人事制度への移行を進める施策の一環としてHRBPを導入しました。HRBPとして3人の社員が選任されていますが、いずれも人事部門ではなく、ビジネス側の社員であるのが特徴です。これには、現場のことを理解している人に担ってもらうという意図があります。

実際の活動に関しても、本社内で行う活動は少なく、支店に赴いて現地の社員と面談するなど、現場での活動が中心です。社員の希望や生活環境などを考慮して、キャリア開発の支援を行っています。

まとめ

HRBPを導入することで、社内の人材と組織の力を最大限に発揮できるようになり、変化の激しい環境にも対応しやすくなります。エンゲージメントの向上により、生産性の改善も期待できるでしょう。採用活動や人材育成などが芳しくない場合にも、HRBPの導入で打開できる可能性があります。

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