【HRサミット2016】日本最大級の人事フォーラム 5月11日・12日・13日開催!

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戦略人事の未来

〜変化に対応し続け企業成長に寄与する人事の求心力と遠心力のあり方〜

日本電気株式会社 人事部長 田代康彦氏
ソニー株式会社 人事センター 人事1部 統括部長 北島久嗣氏
多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授 須東朋広氏(モデレーター)

技術革新や経営環境の変化が加速する昨今、事業の成長と発展を図るためには、新たなイノベーションを起こすための「遠心力」と、グループとしての一体感を保持するための「求心力」――この2つのバランスをいかに取るかが重要です。そこで、日本を代表するグローバル企業の人事トップにご登場いただき、人事の遠心力と求心力のあり方や、戦略人事を実現するための取り組み事例などをお話いただきました。

【第一部/NECグループ】
組織の壁を超えるコミュニケーション施策展開

NECグループの連結業績推移を見てみると、売上高は1988年には約3兆円だったのが、2000年には5兆4000億円と最高額に達しました。この数字を支えていたのは、半導体やパソコン、携帯電話の事業でしたが、その後、事業の選択と集中を進めてきた結果、売上は年々下がり、現在に至っています。

2011年度決算において、約1100億円の当期純損失計上、2012年度には、1万人の人員削減等、構造改革を断行。これが一つの大きな転機となり、以降、「次の100年の成長に向けて、経営基盤を創り直す」を合言葉に、役員合宿が始まり、経営陣全員が不退転の決意のもと、繰り返しベクトル合わせを行っています。そうした中、社長がすべてを決定するのではなく、社長以外の役員が“社長の分身”となって、みんなで一枚岩になろう、相互の信頼関係を保持しよう、相互の情報を共有しよう、というコミュニケーション施策を始めました。この活動を通じて、自分たちのアセットを最大限に活用できる事業は何なのかを議論し、官公庁・公共、企業向けシステム、通信業者向けシステムといったITとネットワークの技術によって社会の基盤を支える社会ソリューション事業に注力し、それをグローバル展開していくという方針を確立してきました。

その後、トップマネジメント層だけでなく、執行役員、事業部長・関係会社社長・地域統括会社・海外現地法人の幹部にも同様のコミュニケーション施策を展開し、「面の経営」を拡大させています。今後は、管理職層全体や主任・担当者まで含めて、コミュニケーション文化の定着をはかっていきたいと考えています。

次世代リーダーの発掘と育成

幅広い経験を持った将来の幹部人材を、国内外を問わず発掘・育成・任用しています。国内外の主要ポジションを「NECグループ・キーポジション」と定義。そして社内の事業部長経験者が、「人材育成ファシリテーターによる後継候補者の発掘」および「社内コーチ“キャリアコーチ”によるサポート」を実施しています。

「人材育成ファシリテーターによる後継候補者の発掘」は、社内の事業部長経験者が、人材育成ファシリテーターとして、将来の幹部候補者への直接のインタビューを通じて、本人へのキャリアアドバイス、各職場の組織・人材開発機能の支援を実施するものです。またキャリアアドバイスだけでなく、後継候補者間の交流会も実施するなど、候補者間の深い人脈形成にも寄与します。

一方の「社内コーチ“キャリアコーチ”によるサポート」は、グローバルなコーチ養成トレーニングを受講し、コーチングスキルを習得済の社内事業部長経験者が、社内コーチとなって新任の事業部長を半年間にわたって支援するものです。1対1のコーチングだけでなく、コーチングを受けている他の事業部長、前年度コーチング経験者、キャリアコーチとのワークショップや懇親会も実施します。

価値創造人材の発掘と育成

私たちは事業成長に向けた取り組みを、新しい価値創造のために市場・エリア・顧客をいかに拡大させていくか、新しい製品・サービスをいかに拡大していくか、この2つの軸で考えています。これまでの取り組みとしては、ビジネスイノベーション統括ユニットの設置、社会ソリューション事業を推進する人材をビジネスイノベーション統括ユニットで集中育成、事業開発プロセスの実行を加速させる人材の育成、ビジネスモデル文化が全社に定着するためのプログラムの開始…などがあります。

人財マネジメントを支える人事機能の変革

こうしたさまざまな施策を進める中、人事はどうあるべきなのか。まだまだ試行錯誤を続けている途上ですが、取り組みの一例をご紹介します。NECには、事業領域や横断的機能単位にユニット呼ばれる組織があり、それぞれの中に人事がいます。ところが制度は一緒ですが、運用の仕方などが微妙に違い、やっていることはユニットごとにバラバラです。そこで、人事・総務・経理・調達・経営管理等のスタフ業務をすべてNECマネジメントパートナー社に集約させて、主にNECグループ向けにワンストップのサービスを提供。人事に関しても、制度づくりやオペレーションの機能は、すべてNECマネジメントパートナー社に移行しました。ではNECに残った人事は何をやるのかというと、「ビジネスパートナー人事」として、むしろラインに密着したサポート機能だけに特化させようとしています。

では、いかにビジネスパートナー人事へと変革させるか。そこで、事業部幹部複数人によるラウンドテーブルを設定して、評価とフィードバック内容を議論する場づくりを開始。そこに人事部門も参画し、情報整理やフィードバックなどの支援を行っています。これにより評価を通じた個人・組織の意識や行動の変化が見られるようになりました。

さらにプロセスの標準化と人材の可視化により、グローバルにリソースマネジメントが行える基盤構築のために、今年4月から新人材情報システムを導入。評価育成プロセスやツールの標準化、各種人事情報を集約し、一元管理するなどして、ラインマネジメントをサポートする基盤づくりを行いました。

キーワードは「腹落ち」と「枠を超える」

NECは、比較的先進的な制度を取り入れてきた会社だと思いますが、果たしてそこに魂が込められていたか、という反省があります。そして制度に魂を込めるためには、「腹落ち」と「枠を超える」というキーワードが不可欠でしょう。ラインの人たちが事業の方向性や人材育成について本当に腹落ちしているか。腹落ちをして具体的行動に移していくためには、組織の壁を超えるコミュニケーション施策を展開しないといけません。どんなに優れたアプリケーションを導入しても、OSが変わらなければ、まともに動かないわけです。要するに根っこの部分を変えていこうと。そのために我々人事は何をすべきなのかが問われていると思います。

【第二部/ソニー株式会社】
激しい変化に対応するために

ソニーは現在、成長フェーズに入ろうということで、全社的にさまざまな取り組みを実施しています。外部環境の激しい変化の中で、企業としてどんな取り組みをしているのか。今回のテーマである「遠心力」と「求心力」という切り口から、「事業組織」の分社化、組織を超えた新規事業支援、新たなリソースマネジメント施策、改めて「企業価値」を考える――という4つのお話をさせていただきます。

「事業組織」の分社化

現在ソニーグループが展開している事業は、主に金融、音楽、映画、デバイス、ホームエンタテインメント、イメージング・プロダクツソリューション、ゲーム&ネットワークサービス、モバイル・コミュニケーションの8つです。それぞれに色々なブランドを立てながら事業を行っていますが、この中でイメージング・プロダクツソリューション以外はすべて分社化を進めています。では分社化の狙いは何なのか。分社化に向けた組織変革の基本方針としては、意思決定の迅速化と事業競争力の強化や、持続的な利益創出を念頭においた経営、結果責任・説明責任の明確化…などが挙げられます。人事的な側面から言いますと、分社化を推進しつつも、社員の内向き思考を打破すること、社員の意識をしっかりと外に向けていくことがポイントになります。

組織を超えた新規事業支援

私たちは2014年度から、「Seed Acceleration Program」という制度を導入しています。これは新規事業のアイデアを事業化に繋げるためのプログラムで、オーディションに合格すれば、年齢や職歴を問わずプロジェクトリーダーとして事業化に挑戦していける仕組みです。これまでにスティック型のアロマディフューザーや、文字盤&ベルトの柄が変わるフェスウォッチなど、ユニークで画期的な製品が次々と生み出されています。

こういった新しい製品がどのような仕組みで生み出されるのかと言いますと、クリエイティブラウンジという誰でも入れるスペースを社内に設置し、ラウンジのSNSも設けて、ワークショップを開催します。

では、事業化推進の判断は誰がするのか。現在では社内の人間だけではなく、ベンチャーのCEOや、他社の新規事業責任者など、外部の人たちにも参加いただき、厳しい目で審査をしていただいています。

新たなリソースマネジメント施策

ソニーの「求心力」を高めるリソースマネジメント施策として、さまざまな取り組みを行っておりますが、そんな中、「社内募集」という取り組みを50年近く続けております。これは社内で公開された求人に対し、上司の許可を得ずに社員が応募・異動できるという仕組みです。個人の意志・チャレンジマインドを尊重するものです。

昨年、この「社内募集」のバリエーションをさらに増やすべく、「FA制度」、「社内募集→兼務/PJ型募集」、「キャリア登録」という構成に整備し直しました。
「FA制度」とは、「適材適所というのは自分で決めるものだ。働く場所は自分で選べ」という創業からの精神を体現したものです。

実績をあげた長期在籍社員にFA権を付与し、まずは今までの自分を振り返り、今後のキャリアについて考えてもらいます。そこでFA権を行使するか、あるいは現職場で引き続き活躍するか、どちらかを選択。FA権を行使する場合、権利行使者リストを各組織で共有し、受入希望部署との面談、本人が希望する部署との面談、自部門でのリテンションオファーなど、マッチングを経て、本人の最終判断へと至ります。

改めて「企業価値」を考える

弊社は1946年5月7日に東京通信工業鰍ニして設立。今年でちょうど70年を迎えます。そんな中、井深大と盛田昭夫という二人の創業者が残した数々の言葉の中で、今でも社員がよく口にしているのが、「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」、「ソニーは開拓者」という言葉。他のすべてを変えても、絶対に変えられないもの――それが「自由闊達」と「開拓者」なのです。我々にはソニーというブランドがありますが、人の言葉を借りれば、ブランドとは一貫性であり、それに伴う信頼性であると。組織の外に対して示すブランドが一貫性や信頼性であるならば、組織の内に対して示すブランドは、「自由闊達」「開拓者」といったキーワードになるかと思います。現・社長の平井からも「ソニーだからできる、新たな感動の開拓者になる」というメッセージを出してもらいました。こうしたコミュニケーションの積み重ねから、社内外における組織的な「求心力」、あるいはそれが発展する形で「企業価値」そのものが形成されるものと考えております。以上、現状の取り組みや考えを発表させていただきました。ご参考になれば幸いです。

田代 康彦 氏)

田代 康彦 氏
日本電気株式会社 人事部長

1984年4月NEC入社。 本社労務関係部門を中心に、内部監査部門やグループ会社人事総務部門等を歴任し、 人事労務の立場からグループ全体の事業構造改革に取り組む。 2014年4月人事部長就任。 NECグループにおける業務革新推進やコミュニケーション促進をベースとした文化、風土改革に取り組む。


北島 久嗣 氏

北島 久嗣 氏
ソニー株式会社 人事センター 人事1部 統括部長

1989年大学卒業後、ソニー株式会社入社。 労務、人事、採用などを本社・事業所等を経て2015年より現職。


須東 朋広 氏<

須東 朋広 氏
多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授

2003年、最高人事責任者の在り方を研究する日本CHO協会の立ち上げに従事し、事務局長を経て、2011年7月1日より現職。 多摩大学大学院 客員教授、青山大学・専修大学 非常勤講師、HR総研 客員研究員を兼任。2012年より、経済産業省「人を活かす産業」懇談会の委員も務めるなど、様々な委員会で活躍。 著書に『CHO〜最高人事責任者が会社を変える』(東洋経済新報社、2004年共著)、『人事部の新しい時代に向けて』『人事部門の進化;価値の送り手としての人事部門への転換』『キャリア開発とその成果』(産業能率大学紀要、共著)など。学会発表や人材関連雑誌など寄稿多数。