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日本の未来をつくる経営戦略、人材戦略

〜混迷するGlobalizationの中での企業経営のあり方〜

元中華人民共和国駐箚特命全権大使/前伊藤忠商事株式会社 取締役会長 丹羽宇一郎氏
ProFuture株式会社 代表取締役社長/中央大学大学院戦略経営研究科 客員教授 寺澤康介

一昔前、世界はアメリカの覇権下にありました。しかし現在、中国の台頭もあってアメリカ一国では成り立たなくなり、混迷の時代へと突入しています。そのような状況の中で、日本の経営者、人事部はどのような経営戦略を練り、また人材戦略を進めていくべきなのか――。元中華人民共和国駐箚特命全権大使/前伊藤忠商事株式会社 取締役会長 丹羽宇一郎氏が、混迷する世界情勢を解説し、経営者と人事部の方々にこれから進むべき道を語り、後半にはProFuture代表の寺澤康介とスペシャルトークセッションを繰り広げました。

人事部は経営の中枢である

今回のテーマである「人事×経営」というものを見まして、私は「人事=経営」と思っています。というのも、人事部というのは経営の中枢です。それでは、経営の中枢とはどういうことでしょうか? 今の大企業や中小企業で人事部がどのような仕事をされているのでしょうか? 私が視聴者になって、皆さんのお話をお伺いしたいほど、今の人事部の仕事はどのようなもので、経営とどれほど関わっているのか、私は大変疑問に思っています。

したがって本日、お話させていただくのは、日本の企業経営はどうなるのか、日本の国の姿はどうなるのか、あるいは世界の情勢はこれからどのように変わっていくのかというものですが、簡単には分かりません。とりわけ、日本においてはグローバリゼーションの波は、皆さんの生活にはかなり及んできていますが、心の中、精神、知識、あるいは情報の中に及んできているのでしょうか? 日本人はそれを受け止めているのでしょうか? それも大変疑問です。物質的にはグローバリゼーションを意識するかしないかに関わりなく、世界中に広がっていきます。しかし、心とか知識とかは別です。それを企業の経営者は自覚しなければなりません。

世界が混迷するというのはどういうことか

皆さんが得ている情報は、グローバルな情報でしょうか? 誰がその情報を伝えているのか、私は心配しています。もちろん、いろいろな情報があります。アメリカの大統領選挙に出馬している(ドナルド)トランプさんは、日本で報道されているような人なのでしょうか? 現在、報道されているような政策をするとは、私は到底思いません。アメリカの常識や良識がどこかで働くはずです。トランプさん自身も、それなりの常識や良識があるでしょう。外交というのは継続です。日本や中国に対しての個人的な意見とは違うはずです。皆さんも、人事部員の時と人事部長の時では、考え方は違うでしょう。過去の歴史やあり方を考えて発言しなければなりません。恐らく、トランプさんは変わってくるでしょう。そうしなければ、アメリカはもちません。もし、このままいけばアメリカを脱出する人が出てきて、アメリカという国が崩壊するかもしれません。そうなると、日本、中国、欧州にも影響が出てきます。混迷するということはそういうことです。

私が一番初めに混迷という言葉を使い始めたのは、アメリカの覇権が弱まり、徐々に衰退してきた頃です。これはイギリスの覇権の衰退と同時に、アメリカの覇権が広まり、パックスブリタニカからパックスアメリカーナに移ってきました。アメリカがくしゃみをすれば世界中が風邪をひく時代があったのです。しかし、今はアメリカがくしゃみをしても、どこの国も風邪をひかないでしょう。すでに、アメリカで統治する時代は終わりました。次の世界の仕切り役はどの国なのかといえば、いません。それが混迷のもとです。中国が著しく台頭してきましたが、中国だけでは何も決まりません。しかし、中国なくして世界は何も決めることはできなくなってきました。そのような状況の中で、日本はどのような立ち位置を取るのかが重要です。世界が変わろうとしている時に、日本は変わろうとしているのでしょうか? 私にはそう思えません。

日本ではなぜグローバリゼーションが進まないのか

ドイツの経済諮問委員会の委員長は、「日本の二の舞にならないように、悲惨な結果にならないように注意しなければいけない」と発言しています。「日本をバカにするな」と言いたいところですが、バカにされても仕方ありません。日本のアベノミクスの3本の矢は一体、どうなったのでしょう。金融緩和、財政の改革、経済の改革などは、ほとんど停滞したままです。肝心の改革なくして、今のままいけば悲惨な結果になるのは目に見えています。日本の皆さんも、世界の新聞が日本について何を書いているのかを知らないでしょう。日本ではアベノミクスは成功したと言っていますが、世界はそうは思っていません。消費税の増税についても迷っています。自分に都合のいい学者の意見ばかり聞いてきましたが、上手くいっていません。上手くいったのは円安と株価だけです。これだけでは、国民の生活は少しも良くなりません。株価が上がれば経済が良くなっていると感じるかもしれませんが、それは一時的なカンフル剤に過ぎません。円安も同じです。財政出動をまだ行うのでしょうか? 同じ薬を3年も飲んで、効果が表れないからといって、もっと強い薬を飲んだとしても副作用が出ます。副作用が出た時に、また薬を飲むのでしょうか? これだけ効かない薬を何年も飲んでいたら、あちらこちらに副作用が出てきます。しかし、日本ではどの新聞を見てもいい話しか書いていません。これは、グローバリゼーションが進んでいないことの表れです。それというのも、現場の情報を見ていない、あるいは見た情報をしっかり書いていないからでしょう。皆さんは日ごろ、このようなことを考えていないかもしれません。しかし、経営に関わることですから、経営者や人事部の方々は考えなければいけません。これだけ何十年も、ほとんどといっていいほど日本の実力は変わっていません。むしろ、経済成長率は落ちていますから、国力が落ちていると言えます。

混迷する世界の中で日本の立ち位置を考えるべき

国際情勢に目を転じると、世界の考え方が一致していません。アメリカや中国が何かを言ったとしても、一致しないのです。今度、日本でG7が行われますが、そこに中国やロシアは入っていません。戦後、世界を動かしてきたのは英米仏です。この戦勝3カ国が中心になって、戦後のレジーム体制を作り上げてきました。このレジーム体制が傾きかけてきたのは、中国なしには語れないという世界の常識とかけ離れているからです。レジーム体制を変革する時が来ていると言っていいでしょう。そこで、対抗するG20が出てきましたが、私はそれでも何も決めることはできないと思います。やはり、国連の常任理事国のようなものが必要です。しかし、国連の常任理事国にはドイツと日本は入っていません。戦後70年経ち、これだけ世界の状況が変わっているにもかかわらずです。これは、世界の激変に対する体制ができていないことを示しています。

こうなると、これからの国際情勢を考えるうえで、我々が気をつけなければいけないのは世界が日本をどう思っているのか、世界が日本をどう見ているのかということです。私が言うことだけが正しいわけではありません。しかし、誰が考えてもこれでは世界は回っていきません。そのような中で、日本はどうすればいいのでしょうか? 国際的に日本は立ち位置をはっきりと発言をする国、国民でなければなりません。日本は少子高齢化が進んで労働力が低下していきますが、そうなった時に誰を頼ればいいのでしょうか? アメリカや中国ではありません。ましてや遠い欧州でもない。最も頼ることができるのは我々です。それだけの危機感を持たなければいけません。

国の、企業の最大の資産は人である

そのような中で、日本の企業はどうすべきでしょうか? 皆さんに覚えていただきたいのは、「信なくして国立たず」ということです。信なくして企業も立ちません。信用や信頼がなければ、国も社会も企業も成り立たないのですが、その信用が今、世界的に揺らいできています。

さて、企業の一番の資産は何でしょうか? それは人です。国の最大の資産も、資源でも鉄鋼業でもなく人です。なぜならば、機械にしても土地にしても鉱山にしても資源にしても、動かしているのは人だからです。有能な人がいなくて、どうして国が栄えますか? 企業が栄えますか? 企業でその資産を動かしているのが人事部である皆さんです。人を動かし、人を採用し、人を育成しているのが人事部でしょう。その気概も夢もなくて、どうやって人事の話をするのでしょうか? 私が一番申し上げたいのは、人は最大の資産であり、その資産を採用する時から勝負は始まっています。それが、試験や面接の結果だけでいいのか。私が採用をした時に、2つのことを聞きました。それは、「最近、読んだ本はありますか?」と「お酒はどれくらい飲めますか?」ということです。読んだ本がなければ「ない」と言えばいい。酒が飲めなければ「飲めない」と言えばいいのです。嘘をつくのが一番悪いと思ったから、その質問をしました。

今度は、その資産をどうやって育てるのか? 国で言えば、労働力をどのように育てるのかということになります。非正規社員など全廃すればいい。これは、人事部が提案すべきです。同一労働、同一賃金などというのは、機械の代わりになってする仕事です。そのようなものは、ロボットにさせればいい。流れ作業はそれでいいでしょう。しかし、人は仕事を覚えていけば、どんどん分野を広げているはずです。全員が同一のことをしている仕事が、日本にそれほどはないでしょう。非正規社員を全廃して、全員を正規社員にすれば企業の皆さんの負担は増えるかもしれません。しかし、それは仕方がないことです。人は最大の資産なのですから。非正規社員は資産ではないとみなして教育もしなければ、明日はどうなるか分からない。それで、人事部と言えるでしょうか? 従業員から「この仕事をやってきて良かった」と言ってもらうようにするためには、悩みを一緒に考えてあげることです。それが人事部の仕事だと思っています。

人事部は経営の中枢であり、会社の最大の資産を動かしているのです。人事部の皆さんには、それを自覚して、生きがいを持って企業の改革に挑戦していただきたいと思います。

[スペシャルトークセッション]21世紀は心の時代である

寺澤 現在、国際情勢は混迷しており、何が起こるか分からないという状況の中で、企業は考えていかなければなりません。「信なくして国立たず」、「信なくして企業立たず」というお話がありましたが、経営者に対してこのような混迷の時代だからこそ、どのような経営の仕方をしなければならないかというアドバイスを具体的にいただけますでしょうか?
丹羽  私は、「21世紀は心の時代」だと思っています。というのも、人間の心が行動を大きく支配する時代に入りました。つまり、心が弱っていたり、強い心を持っていないと、経営者はすぐに傲慢になります。成功は自分のしたことですが、損失を出したら人の責任にしてしまう。それは、日本の経済と一緒です。悪いのは中国の株が暴落したからと言ったりするでしょう。人間はだいたいそうです。それは私も同じで、会社に入った頃、課長に言われたことがあります。「君は自分で自分を評価している」と。私はその通りで、ドキッとしました。自分で自分を評価すると、だいたい100点満点で140点や150点をつけます。人事部や上司が点数をつけると70点や80点なのにです。だから、人事異動や給料にいつも不満がある。そこで、経営者が一番、考えなければいけないのは、経営者がまず心を強くして、心を鍛えることです。心を鍛えるのは、アリストテレスや孔子、孟子の時代から二千数百年続いた問題です。孔子や孟子は心の鍛え方をいろいろ言っています。心のあり方として、孔子は五常と言われる「仁・義・礼・智・信」を言っています。孟子も「仁」を最も大事にしています。経営者は自分の心に謙虚になり、自分の心に嘘をついてはいけません。そして虚栄心と傲慢な心を抑えるような修業をしなければいけません。今、大企業の経営者が問題を起こしているのは、嘘ばかりついているからです。透明度を高めて、説明責任を果たし、責任を明確化することが全くできていない。だからこそ、経営者は初心に戻ることです。自分の実績ばかりに目を向けるのではなく、社員に喜んでもらう経営をすることが大事でしょう。
寺澤 現在、国際情勢は混迷しており、何が起こるか分からないという状況の中で、企業は考えていかなければなりません。「信なくして国立たず」、「信なくして企業立たず」というお話がありましたが、経営者に対してこのような混迷の時代だからこそ、どのような経営の仕方をしなければならないかというアドバイスを具体的にいただけますでしょうか?
寺澤 混迷する時代の中では端的な見方になって、利益や物質に目が向きがちですが、そういう時こそ心が大事で、初心に戻って経営をすることが重要ということですね。
丹羽 『三国志』に出てくる蜀の初代皇帝である劉備玄徳は、息子に対する遺言で「悪小なれど、これ成すことなかれ。善小なれど、これ成さざることなかれ」と言っています。どんな悪いことでも小さなことだから大したことないと思うのではなく、どんなに小さなことでも悪いことはしてはいけない。良いことは小さいことでもした方がいい。私も心の鍛え方として、自分のできることからすべきだと思います。

雇用改革には現場を知る人事部の声を聞くべき

寺澤 安倍政権が持続的な成長を可能にするために、雇用改革が必要だということで、雇用に関するいろいろな施策を打ち出してきています。雇用改革の内容は多岐にわたっていますが、このアベノミクスの雇用改革については、どのように感じていますか?
丹羽 口だけでほとんど進みませんね。なぜならば、政治家は民間の現場を知らないからです。それなら、経済界のトップが現場を知っているかと言ったら、ほとんど知らない。誰が知っているかと言えば、それは人事部です。だからこそ、人事部の声を聞かなければいけません。北海道から沖縄まで全国一律の政策も大間違いです。地域によって違うのですから、地方分権で地方に任せることが必要でしょう。一つの法律をつくってこれに従えというのは、独裁的でやりやすいかもしれませんが、それは間違っています。また、政治主導はよくない。経済界が引っ張っていくのが理想です。
寺澤 今までの人事政策を変えていく時に、人事部が最も現場を知っているわけですから、一律ではなくきめ細かく改革の視点を持って、人事が経営課題を担って動かしていく主役にならなければいけないということでしょうか?
丹羽 例えば、女性の管理職比率を上げていくのもよいでしょう。しかし、最初にやらなければいけないことは、女性がここで働いて良かったと思うようにしなければいけません。そのためには、入社した時に男女ともに同じ名刺を作らせて、正社員として同じように仕事をさせるべきです。男性も女性も同じような能力を持っています。女性が出産する時は育児休暇を取得しますが、それは企業によって違いますし、仕事によっても地域によっても違うでしょう。それに見合った方策を取れば、女性の管理職も増えてくるはずです。それを人事部が提案して実行しなければいけないと思います。

企業内カウンセリングにシニア層を活用すべき

寺澤 もう一つ、シニア社員の活性化は多くの企業で大きな課題になっていますが、丹羽さんが伊藤忠で社長をされていた時に、キャリア支援、キャリア開発ということでシニアの支援を精力的にされていました。その時の経営の決断について、お話しいただけますでしょうか?
丹羽 当時、アメリカの会社で社員が辞める最大の理由は、給料が低いからではなく、上司との折り合いが悪いということでした。あまりにも社員が辞めるようならば、上司を替えた方がいい。その上司には相手の立場に立つとか、相手の気持ちを分かるようにする教育をするべきです。教育しても分からないならば、クビにしてもいいでしょう。人事部として強い人にヘラヘラするのは誰にでもできます。弱い者に寄り添っていく気持ちを持たなければいけません。人は企業にとって最大の資産なのですが、悪い資産にしてしまっては企業にとってマイナスです。そうした社員を教育するには、シニア層が適切でしょう。だから、私は定年を70歳ぐらいにすべきだと考えています。その年齢に近づいてきたら、経験のある人がカウンセリングをしていけばいい。しかし、そこで、若い人たちと競争したり、偉そうなことを言ってはいけません。若い人に部長や課長を任せたならば、そこは尊重すべきでしょう。
寺澤 最後に、まさに「経営=人事」で、これから心を大事にして改革を進めていく人事の皆さんにメッセージをお願いします。
丹羽 言うのは簡単ですが、私が申し上げたことを実行しようとすると、周囲から生意気だと言われるでしょう。しかし、皆が批判ばかりしていたら、何も変わりません。若い人の特権は、自分の周りに危険を感じても主張していくことです。もちろん、同僚に相談や根回しは必要となりますが、そこで一歩踏み出せば、景色が変わります。思い切って一歩を踏み出してください。じっとしていたら自分の心も自分の人生も何も変わりません。そのまま年をとってしまったら、意味がない人生になってしまいます。特に、人事部の方々には「人は最大の資産」だということをベースにして、人事と書いてある本はすべて読むつもりで勉強していただきたいと思います。

丹羽 宇一郎 氏

元中華人民共和国駐箚特命全権大使 / 前伊藤忠商事株式会社取締役会長
丹羽 宇一郎 氏

1939年 愛知県生まれ。1962年3月名古屋大学法学部卒業、 同年4月伊藤忠商事入社、主に食料部門に携わる。 1998年4月 同社社長、2004年 会長に就任。 2010年6月〜2012年12月 中華人民共和国駐箚特命全権大使。 現在 早稲田大学特命教授、グローバルビジネス学会会長、 日中友好協会会長。 2006年10月〜2008年10月 経済財政諮問会議民間議員、 2007年4月〜2010年3月 地方分権改革推進委員会委員長。 主な著書 「人は仕事で磨かれる」 文春文庫刊/ 「汗出せ、知恵出せ、もっと働け!」 文藝春秋刊/ 「新・ニッポン開国論」 日経BP刊/ 「負けてたまるか!若者のための仕事論」 朝日新書刊/ 「北京烈日」 文藝春秋刊/ 「負けてたまるか! リーダーのための仕事論」 朝日新書刊 「中国の大問題」 PHP新書刊/ 「危機を突破する力」 角川新書刊/ 「人を育てよ」 朝日新書刊/ 「人類と地球の大問題」 PHP新書刊