【HRサミット2016】日本最大級の人事フォーラム 5月11日・12日・13日開催!

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タレントマネジメントの未来

〜IoT時代を勝ち抜くためには〜

株式会社サイバーエージェント 執行役員 人事統括本部長 曽山哲人氏
日本GE株式会社 人事部長 谷本美穂氏
多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授 須東朋広氏(モデレーター)

IoT時代を勝ち抜くために、人事部門はどのような仕組み・仕掛けをつくるべきなのか。また、どのようなタレントマネジメントが効果的なのか。そこで今回は、タレントマネジメントの未来を探るべく、株式会社サイバーエージェントおよび日本GE株式会社の人事トップにお越しいただき、独自の革新的な取り組みについてご紹介いただきました。

【第一部/株式会社サイバーエージェント】
業績と人事ステージの変遷

サイバーエージェントは、タレントマネジメントという切り口で言いますと、広告事業、メディア事業、ゲーム事業と事業範囲が多岐に渡っており、スーツ姿の社員からTシャツ姿の社員まで、多様な人材を抱えております。また平均年齢も29歳と若く、20代の中から才能のある人材を見つけることが重要なテーマです。そうした中、タレントマネジメントを行うに当たって、タレントマネジメントだけを切り離して考えるのは良くないと思っています。経営戦略や人事戦略など会社の流れに合わせてタレントマネジメントを行うことが、重要ではないでしょうか。弊社の業績と人事ステージの変遷を見てみると、人員数は2000年が100人、2005年が1284人、2010年が1822人、2015年が3566人、売上は2000年が約32億円、2005年が約432億円、2010年が約966億円、2015年が約2500億円と、いずれも大幅に伸びています。

ではこの5年毎のステップに何を行ったか。2000年の創業期は、まだまだ混とんとしていたため、何でも試してダメだったら止めるということを繰り返していました。この時期に重要なのは、人事がやりたいことでなく、経営がやってほしいことを人事が担うということです。次のステップ、2005年から2010年までは、社員の急増により、社員の不満も増大。この時期に重要視したのは、「しらけのイメトレ」というキーワードです。この制度を作ったら、社員からどんな不満の声が出るか、この仕組みを導入したら、どんなマイナスが生まれるか。このマイナスイメージに対して、手を打っていくことが大切です。そして次のステップ、2010年から2015年の間は、アメーバブログが黒字化し、人事としては、次世代の育成に本格的に力を入れ始めました。さらに2015年以降は、スマホの拡大を背景に、事業人事の強化という新たな人事ステージに入っています。

社内ヘッドハンター 〜挑戦者のセーフティネット〜

ここで弊社が行っているタレントマネジメントの事例をご紹介しましょう。その一つが、社内ヘッドハンターです。2013年に社内ヘッドハンティング部門を設置。ヘッドハンターが社員と頻繁に面談をし、適材適所を経営陣に提案していきます。「キャリアエージェントグループ」の設置、タレントマネジメント・データベースの構築、さらにデータベースはオンライン化し、月1回更新するなどして、部門新設2年で300名が異動しました。

CA8〜サイバーエージェントの8人〜

その他にチャレンジしている取り組みとしては、2年に1回、取締役8人のうち、2人を入れ替えています。事業戦略にあわせた役員構成とし、経営人材を多く保有することで、強い会社組織体を作り、事業拡大を目指すのが目的です。抜けた人は降格ではありません。私も6年間取締役を務め、その後抜けましたが、役員の権限を持ったまま仕事ができます。つまりこれは若手に経営の経験を積ませるために席を譲るという意味合いです。さらに、執行役員を10人プラスしたCA18というものもあり、これは1年に1回、3人入れ替わります。これに選ばれると2〜3カ月に1度の役員会に参加できます。

あした会議〜経営陣も自ら新規事業を創る〜

タレントマネジメントと新規事業をセットで行っている仕組みが、「あした会議」です。これは新規事業、コストダウン案、人事制度など、毎回20〜30の案を、役員対抗のバトル形式で競い合い、結果順位は社内外へと公表されます。会議はホテルを使って1泊2日の合宿形式で実施。タレントマネジメントのポイントとしては、役員1人がドラフト会議を行って4〜5人のチームを編成するところにあります。例えば人事の私の場合、人事の案を提案してはいけないというルールがあり、他部門の課題を見つけるために、他部門で働くデザイナーや営業、エンジニアなどを集めないといけません。結果、優秀な人材がどこにいるのかがわかるだけでなく、部署横断での人材と情報交流も活発になります。

マカロンパッケージ

タレントマネジメントには、チャレンジだけでなく、安心も必要です。そこで直接的なタレントマネジメントではありませんが、それを支える労務的なアプローチとして、「マカロンパッケージ」というものがあります。これは出産や育児を支援する制度です。具体的には、妊活休暇(不妊治療の通院等に。月1日、当日取得も可)、妊活コンシェル(専門医、保健師の個別カウンセリング)、キッズ在宅勤務(子供の看護や通院時等に)、キッズデイ休暇(学校行事や誕生日などの記念日に)、エフ休(女性の有給取得申請はすべてエフ休に統一。上司や周囲に利用用途が分からないよう配慮)などがあります。
ということで、ここまで駆け足でしたが、弊社の取り組み事例としてご紹介させていただきました。ありがとうございました。

【第二部/日本GE株式会社】
GEの人材育成「リーダーシップ育成へのこだわり」

はじめにGEの事業内容について簡単にご説明いたします。私たちは何をやっているかと言うと、要は「でっかいもの」を作っている会社です。インフラ事業を中心に、例えば、発電所のガスタービンや風車、航空機のエンジンなど。世界170カ国で、130年の歴史を持っています。総売上高は約14兆円、営業利益は約2兆円。目標の営業利益率は10数%と、製造業としては高い数字を目指しているのが特徴です。

そこで本日は、GEの人材育成に対する考え方についてお話いたします。この130年の歴史の中で大事にしてきたのが、「リーダーシップを大事にしよう」というカルチャーです。GEの中では、リーダーシップは役職に関わらず、新入社員からベテラン社員まで、全員が持つものだと考えられています。しかもリーダーが次世代のリーダーを育てるという考えも根づいており、経営陣の人材育成に対する意識は非常に高いです。

People Review(セッションC)

タレントマネジメントに関して大事にしているのが、People Review(セッションC)と呼ばれるタレントレビューです。ビジネスリーダーが自分の組織の人事権を持ち、チームをどのように成長させていくか、個々のタレントレビュー、育成プラン、サクセッションプランなどを発表。1年に1回、全社をあげて取り組んでいます。

タレント育成に関しては、80%がストレッチな業務アサインメントなどの経験を通じて、スキルを習得し、残りの20%は集合研修などでサポート。ビジネスのラインマネージャーには、日々の業務の中で部下をコーチングしていくことを、強く意識づけしています。

新たな組織文化をつくる〜ものづくりの未来を変えるために〜

GEが今、大々的に打ち出している戦略が、「デジタル・インダストリアル・カンパニー」を目指すということです。私たちは130年の歴史の中で、苦しみながらも持続的な成長を続けてきましたが、一方で10年前にはなかったような新しい会社が急成長する姿を見たり、テクノロジーの融合によるビジネスモデルの変化などを目の当たりにして、大きな危機感を感じています。そこで今、私たちが一番力を入れているのが、ガスタービンや航空機のエンジンなどGEの製品に、センサーを付けてデータを取得し、その膨大なデータを解析することで、お客様に新しい付加価値を提供するような取り組みです。2年前にカリフォルニアに大規模なソフトウェアセンターを立ち上げ、1600人近いエンジニアを外部から採用。会社全体で「デジタル・インダストリアル・カンパニー」を目指しています。

それを実現させるためには、単に事業を改革するだけなく、社員の意識改革も必要です。これまでは製品に絶対的な自信があるがため、コストは下げないなど、上から目線な営業をしてきました。しかし今の時代、そういうスタンスでは難しいでしょう。もっとお客様目線にならなければいけません。実際、シリコンバレーなどでイノベーションを起こしている会社は、バリューの一番上に顧客視点を掲げています。また会社が大きくなってくると、どうしても官僚的になりがちですが、そういった点からも脱却し、無駄を省いて柔軟にスピードを持ってビジネスを進めるように、意識づけしています。

企業文化を変えるための3つの施策

そこでGEでは現在、企業文化を変えるために、3つの施策を行っています。1つ目は、「GE Beliefs」。これはGEの社員が重視すべき行動指針です。2つ目は、「Fast Works」。これは「GE Beliefs」で掲げた行動指針を、実際の行動に変えるためのフレームワークです。そして3つ目は「Performance Development」。これは業績管理のシステムで、社員の行動の変革を促進するものです。では、それぞれについて具体的にご紹介しましょう。

1.「GE Beliefs」

GEは従来、「GE Growth Values」という成功パターンに基づいた行動指針を掲げてきました。それを2014年に大きく改変。「お客様に選ばれる存在であり続ける」、「より速く、だからシンプルに」、「試すことで学び、勝利につなげる」、「信頼して任せて、互いに高め合う」、「どんな環境でも、勝ちにこだわる」という5つの価値観を制定しました。これを会社側から一方的に社員に押しつけないように、この英語版「GE Beliefs」をどう訳すか、社員から日本語訳を公募し、チームで話し合いながら、みんなで日本語版を作りました。

2.「Fast Works」

顧客にとって最も重要なことに集中すべく、以下を課題とするフレームワークを策定。

  • もっとも重要なことをより速く、よりスマートに。
  • 仮説を検証して学ぶ。
  • 早い段階から顧客のニーズを把握し、立証する。
  • ビジネスの成功に向けた新たなソリューションの創出。
  • よりシンプルに、よりスムーズに皆で協働できる体制。

3.「Performance Development」

こうして現在、「GE Beliefs」や「Fast Works」を推進・実行しておりますが、最終的に個々人に影響を与えるためには、一体その人がどのような形で評価されているのか、目標管理されているのか、そこにメスを入れないといけません。従来の目標管理システムは、社員が成果をあげることを促しているか。年に2回のフィードバックはパフォーマンスをあげるのに効果的か。目標は誰のため、何のためにあるのか。評価を決めるために使っている時間は生産性の高い時間の使い方か。そもそも評価制度は何のためにあるのか。社員のやる気を引き出しているのか。こうした目線から、従来のパフォーマンスマネジメントを改革し、「Performance Development」という新しい仕組みを作り上げました。

これは従来のような目標管理システムではなく、パフォーマンスを促進するための成果支援システムです。上司と部下の間で、お客様に一番インパクトを与えるプライオリティは何なのかを明確にし、それに対してお互いにフィードバックしながら、常に自分の立ち位置を確認。環境変化の速い時代ですので、途中でプライオリティが変わることがあれば、それはそれで対応し、タイムリーにフィードバックする。そういう仕組みになっています。

制度を浸透させるカルチャーにする

この制度を浸透させるために、現在いろいろと試行錯誤していますが、やはりポイントになるのは、リーダーが率先してやってみせることです。リーダーがロールモデルにならない限り、カルチャーとして浸透していかないでしょう。そこでリーダーが率先して自分にフィードバックを求めるようなセッションを実施。また今年のGEのキーワードは、「Trust」なのですが、良いフィードバックだけでなく、「もっとこうしたほうがいい」といった提案も含め、お互いが言いたいことを言い合えるような信頼関係の構築にも、人事として力を入れています。

では人事の役割、付加価値とは一体何なのでしょうか。人を活かすということは、制度づくりではないと考えています。一方的に何かを押しつけるのではなく、もっと違う意味での付加価値があるのではないか。そんな風に新鮮な目で見つめなおしているところです。駆け足になりましたが、本日はありがとうございました。

曽山 哲人 氏)

曽山 哲人 氏
株式会社サイバーエージェント 執行役員 人事統括本部長

1974年神奈川県横浜市生まれ。上智大学文学部英文学科卒業。 1998年伊勢丹に入社、紳士服配属とともに通販サイト立ち上げに参加。 1999年、20名程度だったサイバーエージェントに入社。 インターネット広告の営業担当として入社し、後に営業部門統括に就任。 2005年に人事本部設立とともに人事本部長に就任、2008年から取締役を6年務め、2014年より執行役員制度「CA18」に選任。 2015年に人材開発本部、人事統括本部を新設。 著書に「クリエイティブ人事」、「最強のNo.2」など。


谷本 美穂 氏

谷本 美穂 氏
日本GE株式会社 人事部長

慶応大学卒業後、日本企業を経て2000年GEに入社。国内金融部門の人事採用担当を経て、人事リーダーシップ・プログラム(Human Resource Leadership Program)に選抜され国内並びに米国の金融部門、本社部門で業務ローテーションを行う。2008年プログラム卒業後は米国金融部門の人事担当、日本GE本社部門の採用リーダーや組織開発マネージャーを歴任。2011年〜2014年の間は米国コネチカット州のGEグローバル本社にて次世代グローバル人事リーダー開発担当マネジャー。帰国後は日本地区の組織開発・人材育成リーダーを経て、2016年2月より日本GE人事部長として国内人事の責任者を務める。


須東 朋広 氏<

須東 朋広 氏
多摩大学大学院 経営情報学研究科 客員教授

2003年、最高人事責任者の在り方を研究する日本CHO協会の立ち上げに従事し、事務局長を経て、2011年7月1日より現職。 多摩大学大学院 客員教授、青山大学・専修大学 非常勤講師、HR総研 客員研究員を兼任。2012年より、経済産業省「人を活かす産業」懇談会の委員も務めるなど、様々な委員会で活躍。 著書に『CHO〜最高人事責任者が会社を変える』(東洋経済新報社、2004年共著)、『人事部の新しい時代に向けて』『人事部門の進化;価値の送り手としての人事部門への転換』『キャリア開発とその成果』(産業能率大学紀要、共著)など。学会発表や人材関連雑誌など寄稿多数。