人手不足や非効率な業務構造など、物流業界が抱える深刻な課題を解決し、未来を切り拓く──オプティマインドの挑戦

物流業界はいま、多くの課題を抱えています。EC需要の拡大による物流件数の増加、トラックドライバーの高齢化とそれに伴う人手不足、そして「2024年問題」と呼ばれる労働時間規制の強化により、特に個人宅配を担うラストワンマイル領域で深刻な課題が現場で顕在化しています。そのような物流業界に革新をもたらしているのが、名古屋大学発のスタートアップである株式会社オプティマインドです。

AIを活用したラストワンマイル配送のルート最適化サービス「Loogia(ルージア)」を主軸に、大きな社会課題の解決に挑む同社の事業は、現場の効率化にとどまらず、配送計画の高度化や業務の標準化など、物流全体の未来を変えていくものです。

今回は、創業の原点や「Loogia」をはじめとする同社サービスの強み、さらに環境・グローバルを見据えたビジョンまで、テクノロジーを社会に実装するオプティマインドの歩みを紹介します。

目次

アルゴリズムで社会を変える、オプティマインドの軌跡

ラストワンマイル配送の効率化に挑むオプティマインド

株式会社オプティマインドは、2015年に松下健氏が創業した、名古屋大学発のスタートアップ企業です。物流業界に特化したAIルート最適化サービス「Loogia(ルージア)」を主軸に、アルゴリズムと現場の知見を融合させたサービスを展開し、物流の最終段階であるラストワンマイル配送の効率化に挑んでいます。

同社が掲げるミッションは「新しい世界を、技術で創る」です。近年ますます深刻化する物流業界の人手不足や非効率な業務構造を根本から変革することを目指し、テクノロジーによる持続可能な社会の実現に貢献しています。スタートアップでありながら、既に多くの企業への導入実績を誇る同社の原動力は、名古屋大学で培った高度な技術研究力と、現場との徹底的な対話によって磨かれた実装力にあります。

「組合せ最適化アルゴリズム」で社会貢献すべく起業

オプティマインド創業の原点には、代表取締役社長である松下健氏の学生時代の経験があります。松下氏は名古屋大学在学中に「組合せ最適化アルゴリズム」に出会いました。これは、膨大な選択肢の中から最も効率的な組合せを導き出す数学的手法で、物流をはじめとする多くの業界課題に応用可能な学問です。

この「組合せ最適化アルゴリズム」に惚れ込み、社会に役立てたいという想いから、松下氏は大学4年生の頃、研究仲間と共に企業への提案活動を始めました。しかし最適化アルゴリズムを単独で導入しても、現場の課題は必ずしも解決しないという現実に直面します。技術そのものではなく、社会実装の重要性に気づいた松下氏は、自らビジネスとして社会に届けるべく、起業を決意します。そして名古屋大学大学院に進学した直後の2015年6月、最適化のコンサルティング事業を行う会社として、オプティマインドを設立したのです。

物流の配送ルート最適化事業への特化を決め、成長期へ

起業後も、松下氏は多くの企業と積極的に対話を重ね、顧客課題の解像度を上げていきました。その中で浮かび上がってきたのが、物流業界における深刻な課題です。時間指定や再配達など、配送業務には複雑な制約が積み重なります。さらに人手不足やドライバーの高齢化も加速しており、業界全体が疲弊していました。そんな状況を目の当たりにした松下氏は、アルゴリズムでこの構造を変えられないかと考えたのです。

さらに2017年、「物流クライシス」の言葉が世の中に広まり、問題が一層注目されるようになります。この時期にオプティマインドがエントリーしたのが、日本郵便が主催するオープンイノベーションプログラム「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」です。そして100社を超えるエントリーから4社の採択企業に選ばれ、2018年2月の成果発表会「Demo Day」では、最優秀賞を受賞しました。松下氏をはじめとするメンバーで議論を行い、「物流の配送ルート最適化事業への特化」を決めた同社が、この頃開発を始めたのが、事業の要であるサービス「Loogia(ルージア)」です。

この成功を機に、本格的な事業展開へと舵を切ったオプティマインドは、次々と資金調達を実施します。2018年6月にはティアフォー、寺田倉庫からの出資を受け、2019年10月にはシリーズAとして総額約10億1300万円を調達、さらに2022年12月にはシリーズBで約20億円の調達を実現しました。また、2020年には松下氏が「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」に選出され、次世代の日本を代表するイノベーターの一人として、注目を集める存在となりました。

物流の未来を支える技術。「Loogia」が変える運送現場

2024年問題の先にある、物流業界の変革

日本の物流業界は今、かつてない危機に直面しています。2024年問題に代表される法改正や労働時間の規制強化はドライバー不足を一層深刻化させました。特に個人宅配を中心とした「ラストワンマイル領域」は、配車業務の属人化など非効率な業務構造や、再配達による負担が集中し、効率化が喫緊の課題となっています。

こうした中で注目を集めているのが、オプティマインドの提供するAIルート最適化サービス「Loogia」です。「Loogia」は、配送ルートを最短化するだけでなく、荷物の量、配達時間指定、ドライバーのスキル、道路状況など、複雑な現場の要件を考慮しながら、最も効率的な配車プランを導き出すクラウド型ソリューションです。同社は配送現場が直面するリアルな課題に耳を傾け、「Loogia」を物流全体の構造改革に寄与するソリューションとして育ててきました。当初はラストワンマイルに特化していたこのサービスも、現在では輸配送全体の最適化に向けて機能拡充が進み、物流DXを担う存在となっています。

「現場主義」が貫くLoogiaの設計思想と機能

「Loogia」の最大の特長は、単にアルゴリズムで課題を解決しようとするのではなく、「現場主義」を徹底していることです。理論上の最適解ではなく、現場で本当に使えるサービスであるかどうかを重視し、ユーザーの声を丁寧に聞きながら開発を進めてきました。その成果は、「Loogia」が提供する多様な機能へと活かされています。

  • Loogia 配車作成:AIが複雑な条件下でも最適なルートと車両割り当てを瞬時に生成。
  • Loogia 動態管理:リアルタイムで車両の現在地や進捗状況を可視化し、現場管理の負担を軽減。
  • Loogia コンサルティング:導入後の検証・改善を支援し、単なるツール提供に終わらない伴走型サポートを実現。

これらの機能を組合せ、顧客企業ごとに最適な形で導入することが可能です。実際の現場で「使える」ことを第一に考える設計思想が、Loogiaの高い信頼につながっています。

フィールドサービス最適化ツール「ScaLe」

Loogiaの開発を通じて蓄積された最適化技術は、物流以外の分野にも展開されています。その代表例が、保守点検や機器設置工事などフィールドサービス業向けに開発されたクラウドソリューション「ScaLe(スケール)」です。

点検・工事・訪問販売など、スタッフが顧客先へ訪問する業態では、スケジュールや人員配置の最適化が収益に直結します。「ScaLe」は、こうしたフィールドサービスに特化し、以下のような機能を展開しています。

  • 訪問スケジュールの効率化:AIが移動距離と所要時間を考慮し、最も効率的な順番と時間割を提示。
  • 業務拡大の支援:訪問件数を最大化し、同一リソースでより多くの顧客対応を可能に。
  • 現場負荷の軽減:余分な移動や待機時間を削減し、スタッフの働きやすさを向上。
  • 顧客満足度の向上:依頼から日程確定までのリードタイムを短縮し、離脱リスクを減少。

この「ScaLe」もまたオプティマインドらしく、顧客との対話からみえた課題から開発されたサービスです。顧客課題を起点とする技術開発という姿勢が、物流以外の現場でも着実に成果を上げつつあります。

組織の強さは「人」に宿る。挑戦と成長を支える環境

フラットでオープンなコミュニケーション文化

チームの力を最大限に引き出す組織文化も、オプティマインドの大きな強みです。同社では、年齢や役職に関係なくフラットに意見を交わせる環境づくりを大切にしています。たとえば経営指標や会議の議事録といった情報も社員に積極的に共有され、情報の非対称性を最小化しています。

このような風通しの良さは、スピーディーな開発や施策の実行にもつながっています。日常的に意見交換ができるフラットな土壌が、現場主義のプロダクト開発にも好影響を与えているのです。

一人ひとりに目を向ける、柔軟な働き方と成長支援

オプティマインドは「社員の幸せこそが会社の成長につながる」という考え方のもと、多様な働き方や成長を尊重しています。

たとえば、リモートワークやフレックスタイム制度といった柔軟な勤務体系が整備されており、ライフスタイルや価値観に合わせた働き方が可能です。また、外部コーチによるコーチング制度や、個人のスキルアップに使える「成長支援予算」など、社員のキャリア形成やメンタルヘルスをサポートする制度も充実しています。社員一人ひとりの可能性に寄り添い、引き出していこうという姿勢が、オプティマインドという組織をかたちづくっているのです。

社会課題解決に向けて──オプティマインドが描く未来図

物流の意思決定を担う存在へ

創業以来、ラストワンマイルから物流全体の最適化へと歩みを進めてきたオプティマインドが見据えるのは、「物流業界全体の効率化」という、大きなビジョンです

現在、自動運転技術や配送ロボットといったハード面の進化が注目される一方で、誰がいつ・どこに・何を届けるかという判断は、まだ属人的に行われています。オプティマインドが目指すのは、そうしたモビリティの意思決定そのものを、アルゴリズムが担う未来です。「Loogia」や「ScaLe」がそうした判断を担うことで、人間はより創造的な仕事に集中することができます。

進化し続けるアルゴリズムで、技術革新を

変化の激しい世の中に対応するには、技術そのものも進化を続けていかねばなりません。オプティマインドでは、AIやアルゴリズムの研究投資を惜しまず、応用範囲を拡大しています。

「Loogia」も進化を続けています。CO₂排出量を加味したエコ配車、荷主とのリアルタイム連携機能、さらにはAIによる予測需要にも取り組み始めています。これは、単に効率を上げるだけではなく、環境負荷の軽減やサステナブルな社会づくりにもつながる試みです。

グローバル市場への挑戦と社会的インパクト

オプティマインドが目指すのは、日本国内にとどまらないグローバル展開です。物流課題は日本だけでなく、世界中で共通する社会課題となっています。特にアジアや欧州では、今後さらなる効率化が求められる分野です。

すでにオプティマインドは、海外パートナーとの連携を模索しながら、プロダクトの多言語化対応や現地物流の調査・実証を進めています。将来的には、各国の都市インフラや文化に最適化された「Loogia」が、世界各地の配送網に組み込まれていくことが期待されています。

その進化の先にあるのは「世界のラストワンマイルを最適化する」というビジョンです。「組合せ最適化アルゴリズム」に魅せられたひとりの学生から始まったオプティマインドは、これからも高度な技術と現場課題を重視する姿勢で、社会課題の解決に挑んでいきます。

【協力企業様のご紹介】
株式会社オプティマインド
所在地:〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄2丁目11番30号セントラルビル9F
代表者:代表取締役社長 松下 健
事業内容:ラストワンマイル配送におけるルート最適化サービスの開発と提供
企業URL:https://www.optimind.tech/

【代表プロフィール】
・松下 健氏
株式会社オプティマインド 代表取締役社長
岐阜県岐阜市出身。名古屋大学大学院情報学研究科博士後期課程を単位取得満期退学し、現在は同大学大学院 情報学研究科 招へい教員。
技術と実社会の架け橋になりたいという想いから、2015年にオプティマインドを創業。トヨタ自動車、三菱商事、などから約31億の資金調達を実施。

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