「100年企業を支えるJTBの人財力」〜創立100年を超えたJTB。これからの100年を支える人財力とは〜

創業から続くおもてなしの心とホスピタリティの精神

これまで、100年を超えて発展を続けてきたJTBですが、それがどうして可能になったのか。また、今後は変化が激しい時代になりますが、これからの100年を支える人財力をどのようにつくっていくのかについてお聞かせ下さい。まず、創業から100年を振り返ってですが、これほど歴史ある企業が発展を続けるには多くの秘訣があると思います。その中でも、どのようにして人財力の強化に努めてきたのかをお話いただけますでしょうか?

当社の根底には日本古来の「おもてなしの心」、「ホスピタリティ」の精神があります。ですから、人のために貢献することを重視してきた会社です。第2次世界大戦当時、ドイツのナチス軍に追われたユダヤ人が4000人ほどロシアから日本に渡ってきました。そうした方をお世話したのも私どもの先輩たちです。このようなDNAが脈々と流れているところがJTBの良さでしょう。

また、JTBは国策でつくられた会社だけに、どちらかというと官僚的な会社というイメージがあると思います。しかし、社風は自由闊達で、どんなことにもトライさせてくれますし、およそ官僚的な要素とはかけ離れている会社です。例えば、私は30代で社内ベンチャーとなるJTBモチベーションズという会社の立ち上げに関わりました。当時の社内からすれば、前代未聞かもしれませんが、社長の社内公募が行なわれ、当時の役員からの薦めで立候補し、結果的に社長に就任したのが39歳。私たち若い社員の意見も採用してくれる度量の深さが当社にはあります。

とはいえ、100年の歴史の中には、何度か経営危機に陥ることもありました。JTBは国鉄の駅の中に旅行センターを持ち、定期券や時刻表も独占販売していましたが、国鉄民営化に伴って、その多くを失いました。主だった事業を失ったわけですから、会社が倒産するのではないかとさえ思ったほどです。そうした危機も、社員の結束で乗り越えてきました。そんな適応力の高い社員を育てているのが、旅行で起こる様々なトラブルへの対処です。「飛行機が飛ばない」、「ホテルが取れていなかった」、「お客様がケガをする」、「パスポートが盗難に遭う……」など、旅行におけるトラブルを挙げればキリがありません。そうした事象に対応していると、自然にコミュニケーション能力や解決能力が身に付きますし、メンタルも強くなります。JTBの100年を支えたのは、そうした人財力です。

“人流”から“金流”へ。お金を動かす仕組みをつくる

激動の時代にあって変化に対応できたのも、おもてなしの心とホスピタリティを持ち、いろいろなことにトライしてきたからこそですね。それでは、これからの100年ということを考えた時に、日本は厳しいグローバルな戦いに打って出なければなりません。現在は、多くの企業が同じ危機に直面しています。このような状況の中で、長期的なビジョンについて御社はどのように取り組もうとしているのでしょうか?

確かに、日本の企業を取り巻く環境は厳しくなっています。しかし、世界を見渡してみると、100年以上存続している企業は、日本が圧倒的に多いのです。1400年前の飛鳥時代から何代も続いている老舗旅館もありますし、呉服店から発展を続けている百貨店もあります。おそらく、100年企業は約2万8千社にも上ると言われています。これは、日本の企業が変化に対応してきたことを意味しています。今、近視眼的に10年、20年の時間軸で見て、「日本の企業はダメだ」と言われていますが、もっと長い時間軸で見るべきでしょう。

そうは言っても、今は流通の構造も大きく変わってきていますし、IT時代を背景に時間の流れが昔よりもずっと早くなっていることは事実です。そうした中で、JTBがこれからの100年を生き残っていくためには、今まで以上にグローバル展開をして行かなければならないと考えています。

JTBでは「2020年ビジョン」として、「アジア市場における圧倒的NO.1ポジションの確立」を掲げています。日本を発着する旅行事業に加え、アジアを中心とした世界的視野に立った事業を成長ドライバーとし、アジアの圧倒的なリーディングカンパニーとしての地位を目指していきます。そのためには、お客様にご満足いただけるサービスを世界のどこに行っても受けられるようにしなければなりません。それをJTBはこれまで培ってきたおもてなしの心とホスピタリティをベースに実現してまいります。

これは、JTBが目指す「交流文化事業」にも直結します。従来、日本から発信することを中心に考えてきた交流から、アジアを中心に「世界発・世界着」のビジネスモデルを本格的に展開することで、JTBブランドをグローバルブランドにしていきたいと思っています。私たちのJTBブランドを磨いていくことが、海外の方々にも利用していただけるようになり、JTBの競争優位性が発揮しやすいアジアが世界の“人流”の中心になっていくことで、私たちの事業領域の拡大に繋げていきたいと考えています。

その次は“金流”です。人流だけのビジネスには自ずと限界がありますから、従来型のビジネスのスキームとは別に、どのように利益を生み出すのかを考えなければなりません。世界を見据えて、人流から発生するお金の流れをつかむ仕組みをつくることが、JTBの成長に繋がるはずです。そうしたこともあり、JTBではグローバルに海外で活躍できる人財を育てるための研修や教育にも力を注いでいます。その経験とJTBのグローバルネットワークを活かしたグローバル人財育成研修をお客様に提供させていただいています。

インタビューはまだ続きます。
「100年企業を支えた人財力」、「これからの100年を支える人財力」について、気になる内容の続きはこちらよりダウンロードください。

続きをダウンロードする

  • 川村 益之氏

    株式会社ジェイティービー 常務取締役
    川村 益之氏

    日本交通公社(現ジェイティービー)入社。企業・学校を対象とした法人営業畑を長年務めた後、本社市場開発室の新規事業開発マネジャー、日本初の動機付け専門のコンサルティング会社㈱JTBモチベーションズを立ち上げ、代表取締役社長に就任、旅行事業以外の新事業開発・販売を目的とした本社ソリューション事業部の初代ソリューション事業部長、JTB法人東京常務取締役、同社代表取締役社長などを歴任した後、2012年に㈱ジェィティービー常務取締役兼執行役員(JTBコーポレートセールス 代表取締役社長)に就任。 現在、企業イノベーション・ホスピタリティ・モチベーションやMICEに関連する講演活動や研修講師をする傍ら、国のMICE国際競争力強化委員のメンバーも務める。