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インナーブランディングとは?目的やメリット、進め方、失敗しないための注意点を解説

近年、リモートワークの普及や人材の流動化を背景に、組織内で共通認識を形成する重要性が高まっています。その手段として注目されているのが、企業の理念やブランド価値を社内へ浸透させる「インナーブランディング」です。

この記事では、インナーブランディングの目的やメリット、具体的な取り組み方、成功に導くポイントについて解説します。

目次

インナーブランディングとは

企業のブランド価値を高めるには、組織全体で一貫した行動を取れる体制づくりが必要です。ここでは、インナーブランディングの意味やアウターブランディングとの違い、取り組む目的について解説します。

インナーブランディングの定義

インナーブランディングとは、企業理念やビジョンを社員へ浸透させ、共通の価値観を育むための取り組みです。社員一人ひとりが企業の考え方に共感することで、意識や行動に一貫性が生まれ、組織全体の一体感が高まります。また、すべての社員が同じ方向を向いて業務に取り組むことで、組織としての生産性向上や競争力強化にも寄与します。

アウターブランディングとの違い

アウターブランディングとは、顧客・取引先・市場などのステークホルダーに向けて自社の魅力を発信し、認知度や信頼性を高める取り組みを指します。一方、インナーブランディングは社員を対象に、共通の価値観を浸透させる取り組みです。両者が連携することで、社員の行動と企業の発信内容が一致し、顧客に一貫したブランド体験を提供できるようになります。

インナーブランディングを行う目的

インナーブランディングの目的は、社員の理解・共感を高め、日々の行動や顧客対応に反映させることです。企業が大切にする理念や価値観を社員が実践することで、組織全体で一貫性のある意思決定が実現し、社員のモチベーションや定着率の向上、ひいては企業ブランドの価値向上につながります。

インナーブランディングの成功事例

株式会社ヤッホーブルーイング(toC / 食品・飲料)

クラフトビールメーカーのヤッホーブルーイングは、組織や経営理念の見直しを進める中で、社員の行動指針として「ガッホー文化」を定めました。

2021年11月期には、家飲み需要や小売・ネット通販の拡大などを背景に、19期連続増収と過去最高益を達成しました。こうした組織文化と顧客・ファンとの接点づくりが、同社らしい商品開発やコミュニケーションを支える基盤となっています。

参考:ミッション|採用情報|株式会社ヤッホーブルーイング

株式会社小松製作所(toB / 重工業・建設機械)

グローバルに事業を展開するコマツは、文化や習慣の異なる世界各地の社員が共有すべき価値観として、2006年に「コマツウェイ」を明文化しました。コマツウェイは、創業者の精神や歴代の社員が築いてきた企業の強み・姿勢、企業の基本的な責務などを体系化したものです。

多言語に翻訳した冊子の展開や、社内研修でのグループディスカッションなどを通じて、国内外の拠点へコマツウェイの浸透を進めています。多国籍な組織において共通の価値観や行動基準を共有し、グループ全体の判断や仕事の進め方を揃える基盤を構築しています。

参考:コマツの人的資本に関する取り組み | 人と共に | 環境・社会活動(CSR)|小松製作所

Sansan株式会社(toB / IT・SaaS)

ビジネスDXサービスを提供するSansanでは、組織規模の拡大に合わせ、ミッションやビジョン、バリューズ、プレミスを体系化した「Sansanのカタチ」を策定しました。特筆すべきは、理念を単に提示するだけでなく、社員が複数のチームに分かれて対話を行う「カタチ議論」を実施している点です。こうした自ら考える機会を通じて、共通価値の深い理解を促しています。

加えて、中途採用者向けのオンボーディングプログラム「SCOP」を5日間にわたって実施。企業の在り方や価値観について学び、議論を交わす場を設けることで、入社初期からの円滑な意識醸成を図っています。

参考:Sansanのカタチ | 会社情報
グループ全体でミッションドリブンカルチャーを。今なお「Sansanのカタチ」をアップデートする真意とは
中途入社向けのオンボーディングプログラム「SCOP」 – Sansan株式会社 | 公式メディア「mimi」

インナーブランディングが注目される理由

インナーブランディングが注目される理由として以下の点が挙げられます。

働き方の多様化で組織の一体感が生まれにくくなっている

近年はリモートワークやハイブリッドワークの普及により、社員同士が顔を合わせる機会が減少しています。部門間の情報共有やコミュニケーションの機会が不足すると、組織の一体感や横のつながりが弱まってしまいます。こうした環境では、企業理念や価値観を意識的に共有し、すべての社員が同じ目標に向かって取り組める状態をつくる必要があります。

人材の流動化により、企業への共感づくりが重要になっている

終身雇用を前提としない働き方が広がるなか、待遇や仕事内容だけではなく「なぜこの会社で働くのか」という意味や価値観への共感が重視されています。人材の流動性が高まる時代では、自社の理念や存在意義を明確に伝え、社員のエンゲージメント向上や長期的な定着につなげることが求められます。

多様な人材をまとめる判断軸が必要になっている

中途採用者や専門人材、外国人材など、異なる経験や価値観を持つ社員が増えるなか、従来の社風だけでは意思決定にばらつきが出やすくなります。多様な人材を活かすには、共通の理念や行動指針を浸透させ、組織として一貫性のある行動を取れる環境を整える必要があります。

顧客に届けるブランド体験の一貫性が求められている

現在では、商品やサービスの性能だけでなく、接客・営業・情報発信などを含めた顧客体験が企業評価に影響します。社員が自社の価値を理解していないと、顧客対応や発信内容にばらつきが生じ、顧客からの信頼を損ねる恐れがあります。これを防ぐには、インナーブランディングによって共通の理解を育み、企業が伝えたいブランド価値と社員の行動を一致させることが重要です。

変化の激しい時代に、現場が自律的に動く土台が求められている

市場環境や顧客ニーズが激しく変化するなか、経営層からの指示だけで組織を動かすことは困難になっています。しかし、現場の社員が迅速に行動するには、判断のよりどころとなる共通の方針が必要です。社内に理念やビジョンが浸透していれば、社員が自律的に判断しながらも、組織としてぶれない行動を取りやすくなります。

インナーブランディングの5つのメリット

インナーブランディングに取り組むと、社員の意識や行動に変化が生まれ、組織の成長につながります。ここでは、企業が得られる主なメリットをご紹介します。

1. 社員の共感やモチベーションを高められる

企業理念やビジョンへの理解が深まることで、社員は自社で働く意義を実感しやすくなり、会社への愛着や誇りが生まれます。これが仕事に対する前向きな姿勢や主体的な行動を促し、社員のエンゲージメントやパフォーマンスの向上につながることが期待できます。

2. 組織の一体感が生まれ、部門間の連携がしやすくなる

社員が共通の価値観や判断軸を持つことで、部署や職種を越えた連携がスムーズに進みます。これにより、組織が拡大したり働き方が多様化したりしても、全員が同じ方向を向いて行動できるようになります。社内イベントや社内報、対話の場などを通じて理念を共有し、社員同士のつながりを強化することが重要です。

3. 離職防止や採用力の向上につながる

企業の価値観に共感している社員は、給与や待遇などの条件面だけでなく、組織との心理的なつながりから帰属意識を持ちやすくなります。また、理念や文化が浸透している組織の魅力は社外にも伝わりやすく、自社の価値観に合う人材との接点が生まれ、採用力の強化や入社後のミスマッチ防止にもつながります。

4. 顧客に伝わるブランド体験に一貫性が出る

社員が企業のブランド価値を正しく理解していると、営業・接客・広報などの顧客接点において一貫したメッセージを伝えることができます。企業が発信する内容と実際の顧客体験が一致することで、顧客からの信頼を得やすくなり、ブランド価値の向上や継続的な関係構築にも寄与します。

5. 自律的な行動やコンプライアンス意識が育つ

企業理念や価値観が浸透すると、社員が業務上の判断を行う際の基準が明確になります。細かな指示がなくても、社員が自発的に望ましい行動を選びやすくなり、企業倫理やコンプライアンスを意識した行動を促進できます。また、社員一人ひとりが企業の方向性に沿って自ら判断することで、自律的に行動できる組織づくりにつながります。

株式会社プログリットの事例から見るメリット

英語学習サービスを提供する株式会社プログリットは、2019年に社名・ミッション・バリューを刷新した際、「創業祭」と銘打った全社員参加の泊まりがけの場で新しい方向性を発表しました。経営陣が背景を丁寧に説明したうえで、社員をグループに分けて感じたことを話し合う機会を設け、経営への質問や批判的な意見も含めて意見交換を実施。こうした双方向のプロセスを通じて、社員の間に一定の納得感が醸成されたといいます。

また、採用面でも、ミッション・バリューを軸にした取り組みを重視し、「ミッションに共感している人しか採用しない」と明言しており、バリューへの適合も選考基準としています。採用段階から価値観に合う人材選ぶことで、入社後のミスマッチ防止や離職防止にもつなげています。

また、バリューのひとつに「Own Issues―課題は自ら解決に導こう」を掲げ、社員が主体的に課題解決に取り組む文化を育んでいます。ミッションを体現する行動を称える仕組みを通じて、細かな指示がなくても社員が自ら望ましい行動を選び取れる、自律的な組織づくりにつながっています。

このように、理念への共感を軸にした組織づくりや、価値観に合う人材の採用、社員の自律的な行動を後押しする仕組みづくりを進めた結果、同社は2022年9月に東証グロース市場への上場を果たすなど、さらなる成長を続けています。

関連記事:ミッションを実現し、バリューを体現する組織の創り方~世界で活躍する人を増やすプログリットの経営哲学(前編)
ミッションを実現し、バリューを体現する組織の創り方~世界で活躍する人を増やすプログリットの経営哲学(後編)

インナーブランディングを活用した組織開発の進め方

インナーブランディングを活用した組織開発の進め方を4つのステップに分けて解説します。

STEP1. 自社の組織の現状確認

まずは自社の組織の現状を把握し、何を解決するためにインナーブランディングを行うのかを明確にします。例えば、組織生産性サーベイなどを実施し、今の組織の強み・弱み、課題を洗い出しましょう。

STEP2. 問題点のあぶり出し・組織課題の言語化

次に、インナーブランディングの軸となる企業理念やビジョン・バリューを社員がどの程度理解しているのか、そしてそれが実施されているのか明らかにします。理解度と実施度のギャップを理解することで、目指すべき姿のベクトルが見えてくるでしょう。

STEP3. 具体的なアクションの策定と実施

方向性が定ったら実際の改善策を具体的に決めていきます。例えば、経営層や社員へのインタビュー、企業理念やビジョン・バリューの見直し、理解浸透のためのワークショップを行うなど、一方的な発信ではなく、社員自身が理念について考えたり、意見を交換したりする機会をつくることで、自分ごととして捉えられるようにすることが重要です。

STEP4. 施策結果の測定と改善

施策を実施し始めたら、その結果をモニタリングしながら、さらにその結果を反映した施策へとブラッシュアップしていきましょう。例えば、社員アンケートやエンゲージメントサーベイ、1on1などを活用し、社員の理解度や意識の変化を把握し、施策を見直していきます。

インナーブランディングで失敗しないための注意点

インナーブランディングを成功させるには、施策の内容だけでなく企業の取り組み方にも注意が必要です。ここでは、実践する際に意識すべきポイントをご紹介します。

短期的な成果だけを求めない

インナーブランディングは、企業理念や価値観を少しずつ浸透させ、組織文化として定着させる取り組みです。すぐに数値成果を求めると、施策が一過性のものになりやすく、社員の本質的な理解・共感にはつながりません。短期間で成果が出る施策ではないと理解し、中長期的な視点で継続することが求められます。

経営層からの一方的な発信にしない

企業理念やビジョンを経営層から伝えるだけでは、社員の理解や主体的な行動にはつながりにくくなります。社員に自分ごととして捉えてもらうには、対話や意見交換の機会を設け、現場の声を反映しながら進めることが重要です。

自社らしさに合わない施策を選ばない

他社で成功した施策をそのまま取り入れても、自社で同じ成果が得られるとは限りません。企業ごとに組織文化や社員の働き方は異なるため、自社に合わない施策では形骸化しやすくなります。まずは自社の課題や価値観を明確にし、自社らしさに合わせた施策を設計しましょう。

効果を振り返り、改善を続ける

インナーブランディングは、一度の実施で終わるものではありません。社員の理解度やエンゲージメントの変化を定期的に確認し、取り組みの結果を踏まえて改善を重ねることが求められます。組織の状況に応じて柔軟に施策を見直し、理念や価値観が定着する仕組みを育てていくことが大切です。

まとめ

インナーブランディングに取り組む際は、社員の理解や共感を深め、日々の行動につなげる仕組みづくりが必要です。単なる情報共有にとどめず、社員が自分ごととして捉えられるよう、対話や意見交換の場を設けることが求められます。

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