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フィジビリティ・スタディとは?事前調査のメリットや評価のポイント・進め方を解説

近年のビジネス市場は、急速な技術発展やグローバル化によってニーズが多様化し、将来の予測が非常に難しい「VUCA(ブーカ)時代」だといわれています。フィジビリティ・スタディは、ビジネスの実現可能性を事前に予測するために行われる調査であり、このVUCA時代において、リスクを正しく評価する手法として確立されています。

事前に十分な調査と分析を行うことで、予期せぬ問題や障害を回避し、スムーズなプロジェクト進行を実現することができます。この記事では、フィジビリティ・スタディの概要とともに、事前調査のメリットや評価のポイント、具体的な進め方について詳しく解説します。

目次

フィジビリティ・スタディとは

フィジビリティ・スタディとは、事業計画やプロジェクトが実現可能かどうかを事前に調査するもので、「実現可能性調査」「実行可能性調査」「成立可能性分析」とも呼ばれる手法です。

技術面、財務面、市場面、運用面など多角的な視点から事業の実現可能性を検証することで、リスクを理解し、想定される失敗を最小限に抑えつつ、成功の可能性を最大化することができます。

つまり、見切り発車でプロジェクトを開始することや、リスクを無視したまま損失が膨らむ事態を避けるための手法とも言えます。変化が激しく先が読めない時代に特に重宝される手法で、プロジェクトの採算性を事前に確認したい場合に非常に有効です。

フィジビリティ・スタディの歴史

フィジビリティ・スタディの歴史は、1933年にアメリカのテネシー川流域開発公社(TVA)によって行われたダム建設プロジェクトから始まります。この河川開発事業は、多額の予算と多くの関係者が関わるため、「失敗できないプロジェクト」として注目を集めました。

プロジェクトのリスクや潜在的なトラブルを事前に可視化するための手法としてフィジビリティ・スタディが評価され、その結果、この手法は現在、大規模な事業だけでなく、より小規模な事業においても広く利用されるようになりました。特に、新規事業の立ち上げや海外進出、大型設備投資などの重要な意思決定の場面で、フィジビリティ・スタディは欠かせない手法として定着しています。

フィジビリティ・スタディとPoCの違い

フィジビリティ・スタディと似た用語に「PoC(Proof of Concept)」があります。PoCは「概念実証」を意味し、両者は共にプロジェクトの実現可能性を評価するという点で類似していますが、PoCは試作・開発途中の段階で行われるという特徴があります。例えば、プロジェクト発足後にシステムのテストリリースや試作品の作成を通じて、実際の顧客の反応を確認します。

一方、フィジビリティ・スタディはプロジェクト発足前に実施されることが特徴で、机上で検討が行われます。このように、フィジビリティ・スタディとPoCは、実施のタイミングにおいて明確な違いがあります。

フィジビリティ・スタディのメリット

フィジビリティ・スタディを実施することで、企業には多くのメリットがあります。ここでは、そのメリットについて詳しく解説します。なぜ多くの事業でこの手法が採用されているのか、その理由を深掘りしていきましょう。

リスクの軽減

フィジビリティ・スタディは、将来において想定されるリスクを洗い出し、それらに対する対策を講じることで、リスクを軽減することが期待できます。「見切り発車で始めたプロジェクトが赤字に転じた」「予想外の問題が次々と発生し、プロジェクトが頓挫した」などのリスクを事前に回避しやすく、損失を未然に防ぐ効果があります。

意思決定の質向上

フィジビリティ・スタディによって得られた情報は、プロジェクトの実現可能性を多角的に評価する基盤となり、より組織的・合理的な意思決定に役立ちます。個人の勘や直感に頼らず、客観的なファクトやデータに基づき判断するため、より精度の高い意思決定を行うことができます。

また、可視化された情報を基に経営陣や関係者間での議論を活性化させることも期待できます。これにより、組織全体の意思決定プロセスが透明化され、より信頼性の高い判断が可能になります。

プロジェクトの方向性明確化

複数のシナリオに基づいてフィジビリティ・スタディを行うことで、最も実現可能性が高く、かつ収益性が期待できる手法を選び取ることができます。これにより、プロジェクトの方向性が明確になり、次に取るべき行動が明らかになります。

また、チーム全体の意思統一を図ることができ、リスク軽減以外にも多くのメリットが得られます。例えば、プロジェクトの目標や期待される成果を明確に定義することで、関係者間のコミュニケーションが円滑になり、効率的な資源配分が可能になります。さらに、長期的な視点でプロジェクトの成功基準を設定することで、進捗管理や成果評価がしやすくなるという利点もあります。

フィジビリティ・スタディの4つの評価ポイント

フィジビリティ・スタディで評価すべきポイントは、主に「技術面」「財務面」「業界・市場面」「運用面」の4つです。この4つの観点から詳細な検討を行い、プロジェクトの実現可能性を多角的に分析します。ここでは、この4つの評価ポイントについて詳しく解説します。

ただし、各評価ポイントは、プロジェクトの特性や規模に応じて重要度が変わることがあります。例えば、新技術を活用する革新的なプロジェクトでは技術面の評価が特に重要になるでしょう。一方、大規模な設備投資を伴うプロジェクトでは、財務面の評価により重点が置かれることがあります。

技術面での評価

計画中のプロジェクトが「技術的に実現可能かどうか」を、生産に必要なソリューションや設備、ノウハウ、知識の面から分析します。また、新しい設備投資や人材の採用が必要な場合は、それにかかるコストや時間も試算に含めます。

技術的な要素が確実でなければ、プロジェクトの成功は難しいため、ここでの評価は非常に重要です。さらに、技術の進歩が急速な分野では、将来的な技術トレンドも考慮に入れる必要があります。現在は実現困難でも、近い将来に実現可能となる技術があれば、それも含めて評価することが求められます。

財務面での評価

プロジェクトを実施するために必要な全体コストを可視化し、財務面で無理がないかをシミュレーションします。コストの評価だけでなく、ROI(投資収益率)も綿密に計算し、「この投資に見合う価値があるのか」「投資額を回収できるか」といった点も慎重に評価します。

財務面での評価では、主に以下のような項目を分析します。

  1. 初期投資額 : プロジェクト開始に必要な資金
  2. 運転資金 : プロジェクト進行中に必要となる資金
  3. 予想収益 : プロジェクトから得られると見込まれる収入
  4. キャッシュフロー : 資金の流れと時期
  5. 損益分岐点 : 収支が均衡するポイント
  6. 投資回収期間 : 投資額を回収するまでの期間

これらの項目を多角的に分析することで、プロジェクトの財務的な実現可能性を正確に把握できます。また、複数のシナリオを想定し、最悪の場合や最良の場合など、様々な状況下での財務シミュレーションを行うことも重要です。

財務面での問題があるとプロジェクトの継続が困難になるため、正確なシミュレーションと慎重な評価が求められます。特に、長期的な視点からの財務評価は、プロジェクトの持続可能性を判断する上で欠かせません。

業界・市場面での評価

競合他社の動向や市場の変化、国内外の経済情勢を基に、自社の現状と比較して総合的に評価します。また、法規制や最新の技術動向も加味し、プロジェクトをリリースするタイミングが適切かどうかを慎重に判断します。

例えば、「国内では競合が多く難しいが、海外市場であれば成功の見込みがある」といった市場の選定にも役立ちます。さらに、将来的な市場の成長性や、自社の製品・サービスが市場ニーズに合致しているかどうかも検討できます。

業界・市場面での評価では、以下のような点に特に注意を払う必要があります。

  1. 市場規模と成長率 : 対象市場の現在の規模と将来の成長予測を分析
  2. 競合状況 : 主要な競合他社の製品・サービス、市場シェア、戦略を調査
  3. 顧客ニーズ : ターゲット顧客のニーズや購買行動を理解
  4. 規制環境 : 関連する法規制や政策の動向を把握
  5. 技術トレンド : 業界における技術革新の動向を分析

業界・市場面での評価プロセスを通じて、当初の計画の修正や改善点を見出すこともできるため、フィジビリティ・スタディの重要な観点となっています。

運用面での評価

フィジビリティ・スタディでは、長期的な運用の視点からもプロジェクトを評価します。「リリース後、運用が追いつかない」といった事態を防ぐため、顧客の期待に長期にわたって応えられるか、持続可能性も考慮に入れて判断します。運用面での課題を事前に洗い出し、それらに対する対策を検討することで、プロジェクトの長期的な運用が可能になります。

具体的には、以下のような点を評価しましょう。

  1. 人材リソースの確保 : 必要な技術や経験を持つ人材が十分に確保できるか
  2. システムの拡張性 : 将来的な需要増加に対応できるシステム設計になっているか
  3. 保守・メンテナンス : 定期的な保守やアップデートの計画が適切か
  4. コスト管理 : ランニングコストと利益が適切に見積もられているか

これらの要素を総合的に評価することで、プロジェクトの実行可能性だけでなく、長期的な運用の可能性も判断することができます。

フィジビリティ・スタディの進め方

ここでは、フィジビリティ・スタディの進め方について詳しく解説します。プロジェクトを成功させるためには、事前にリスクを十分に可視化し、しっかりと準備を整えることが大切です。以下のステップに従って、計画的に進めましょう。

事前リサーチ

まず、フィジビリティ・スタディを始める前に、プロジェクトに必要な情報を徹底的にリサーチします。主に、「技術面」「財務面」「業界・市場面」「運用面」という4つの評価ポイントに分けて情報を収集します。情報が多ければ多いほど、後の課題を正確にリストアップできる基盤が作られ、対策の精度も上がります。

このリサーチ段階では、既存の統計データや市場調査レポート、業界専門家へのヒアリング、競合他社の動向分析など、多角的なアプローチが求められます。また、自社の内部資源(人材、技術、資金など)についても詳細な棚卸しを行い、プロジェクトの実現可能性を多面的に評価するための材料を集めることが重要です。

事前リサーチの質と量は、フィジビリティ・スタディ全体の精度に直結するため、十分な時間と労力をかけて実施することが望ましいでしょう。

課題のリストアップ

次に、リサーチした情報をもとに、自社のプロジェクトと照らし合わせ、明確な課題をリストアップします。課題は「技術面」「財務面」「業界・市場面」「運用面」の4つの評価ポイントに分け、それぞれの課題や問題点を洗い出します。この段階で具体的な課題が整理できれば、今後の対策や代替案の検討がしやすくなり、プロジェクトの方向性が明確になります。

各分野の専門家や関係者を交えたブレインストーミングセッションを行うことで、多角的な視点から課題を抽出することができます。また、過去の類似プロジェクトの事例を参考にすることで、見落としがちな課題を発見することも可能です。

課題をリストアップする際は、優先順位をつけることも重要です。例えば、プロジェクトの成否に直結する重要度の高い課題や、解決に時間を要する課題などを上位に設定することで、効率的な問題解決につながります。さらに、各課題に対して想定される影響度や発生確率を評価することで、リスク管理の観点からも有用な情報を得ることができます。

打ち手の策定

課題ごとに適切な対策(打ち手)を策定します。課題解決に必要な方法を全てリストアップし、各方法にかかるコスト、必要な人員、所要期間を可視化します。実現可能性が高くかつ効果的な方法を優先的に実行することが重要です。最適な解決策を見つけ出すためには、メリットとデメリットをしっかり比較する必要があります。必要ならば、関係者と十分な議論を重ねて意思決定を進めます。

例えば、技術面での課題に対しては、既存の技術で対応可能か、新技術の開発が必要か、外部からの技術導入が適切かなどを精査します。財務面では、初期投資額や運用コストを細かく試算し、ROIを計算します。市場面では、顧客ニーズの充足度や競合他社との差別化ポイントを明確にします。運用面では、必要な人材の確保や教育訓練の計画を立てます。こうした綿密な検討により、プロジェクトの実現可能性を高め、成功への道筋を明確にすることができます。

代替案の検討

フィジビリティ・スタディでは、理想的な解決策が見つからない場合に備えて、代替案を複数用意しておきます。代替案があることで、プロジェクトの方向性を柔軟に調整し、進行を続けられる可能性が高まります。計画段階から複数の選択肢を考えておくことが、プロジェクトの成功の鍵となります。

代替案を検討する際は、リスクを分散させることや、よりコスト効率の良いものはないか、柔軟に対応できるものかなどの点に留意しましょう。複数の選択肢を持つことで、予期せぬ障害に直面しても、プロジェクトを継続できる可能性が大きく向上します。

調査結果に対する評価

フィジビリティ・スタディの最終段階として、これまでの調査結果を総合的に評価し、プロジェクトの実現可能性を判断します。技術面、財務面、業界・市場面、運用面から分析を行い、リスクと利益のバランスを慎重に考慮します。評価結果に基づき、プロジェクトを予定通り進めるか、計画を修正するか、代替案を採用するか、または中止するかを決定します。

この段階では、フィジビリティ・スタディで得られた全ての情報を統合し、客観的な視点で評価することが必要です。例えば、技術面では実現可能性が高くても、財務面でコストが予想を大幅に上回る場合は、プロジェクトの継続が難しいと判断される可能性があります。

また、市場動向や競合他社の状況、法規制の変更なども考慮に入れ、長期的な視点でプロジェクトの可能性を検討します。運用面では、プロジェクト完了後の維持管理やサポート体制についても評価し、持続可能性を確認します。

最終的な評価結果は、経営陣や関係者に詳細に報告され、プロジェクト実施の可否を決定する重要な判断材料となります。この評価プロセスを通じて、組織全体でプロジェクトのリスクと可能性を共有し、より確実な意思決定につなげることができます。

フィジビリティ・スタディの事例

フィジビリティ・スタディの成功事例として、バングラデシュで実施された小規模電力供給プロジェクトがあります。十分な電力が供給されていなかった地域で、太陽光発電と蓄電装置を設置するプロジェクトが提案され、フィジビリティ・スタディによる高い実現可能性が認められた後、実行に移されました。

このプロジェクトでは、技術面、財務面、市場面、運用面から綿密な調査が行われました。特に、現地の気候条件や電力需要、維持管理の可能性などを詳細に分析し、その結果、プロジェクトの実現可能性が高いと判断され、投資決定に至りました。

プロジェクトが実施された結果、電力のなかった地域で生活する低所得者層の利便性が大幅に向上し、地域への大きな貢献を果たす事業として今も高く評価されています。

まとめ

フィジビリティ・スタディは、新規プロジェクトや事業計画の実現可能性を多角的に評価する重要な手法です。「実現可能性調査」「実行可能性調査」「成立可能性分析」とも呼ばれるこの手法は、プロジェクトの成功確率を高めるために不可欠です。技術面、財務面、業界・市場面、運用面の4つの評価ポイントからプロジェクトや自社の状況を分析することで、より客観的で合理的な意思決定が可能となります。

本記事で紹介したフィジビリティ・スタディの進め方を参考に、ぜひ新たなプロジェクトの実現可能性を評価してみてください。事前リサーチから始まり、課題のリストアップ、打ち手の策定、代替案の検討、そして最終的な調査結果の評価まで、各ステップを丁寧に実施することで、プロジェクトの成功確率を大幅に向上させることができます。

プロジェクトの成功を目指す皆様には、フィジビリティ・スタディの手法を積極的に取り入れ、綿密な準備と分析を行うことをおすすめします。これにより、見切り発車のリスクを回避し、より確実な成功への道筋を立てることができるはずです。

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