インパクト投資とは?ESG投資との違いやメリット・デメリット、注目される背景
インパクト投資は、社会貢献と投資収益の両方を目指せる一方で、実践するうえではいくつかの課題もあります。こうした側面も踏まえ、自社にとっての意義や活用の方向性を検討することが重要です。
この記事では、インパクト投資の特徴や注目される背景、実践するメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
インパクト投資とは
インパクト投資は、社会課題の解決と財務的な利益の両立を目指す手法です。まずは、インパクト投資の定義とESG投資との違いについて解説します。
インパクト投資の定義
インパクト投資とは、財務的リターンと並行して、測定可能なポジティブな社会的・環境的インパクトを意図的に生み出すことを目的とした投資手法です。投資対象には、貧困対策、教育、医療、環境保全、地域活性化など、さまざまな社会課題の解決につながる事業が含まれます。投資によって生まれた社会的・環境的な変化を測定し、成果として可視化する点が特徴です。
インパクト投資とESG投資の違い
ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の取り組みを投資判断の基準に含め、投資リスクの管理や中長期的なリターンの持続性・向上を主眼とする手法です。一方、インパクト投資は社会的・環境的な課題解決による成果の創出を目的とする手法であり、投資を通じて生まれた変化を測定・可視化することを重視します。
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インパクト投資の現状と課題
インパクト投資は市場の拡大が期待される一方、日本では欧米に比べて認知や理解はまだ途上です。ただし、政策や業界団体の動きを通じて、関心と制度整備は急速に進んでいます。また、投資家や事業者、評価機関などのプレーヤーも不足しており、社会的・環境的な成果を評価するための指標も十分に確立されていません。
一方で、日本におけるインパクト投資の市場規模は年々増加しています。最新の「2025年度調査」によると、国内の投資残高は前年度の17兆3,016億円から約1.3兆円増(前年比108%)となる18兆6,531億円に到達しました。2021年度末時点(5兆8,480億円*2022年度調査)と比較すると、わずか数年で市場規模が約3倍へと急拡大しており、大手金融機関がこの力強い成長を牽引しています。

今後、市場をさらに拡大していくためには、インパクトの測定・開示に関する仕組みを整備するとともに、投資家や事業者を支援する体制を充実させることが求められます。
参考:https://impactinvestment.jp/data/media/resources-pdf/gsg-2022.pdf
日本における インパクト投資の現状と課題
インパクト投資の企業事例
五常・アンド・カンパニー株式会社
五常・アンド・カンパニーは、途上国の低所得層や零細企業向けにマイクロファイナンスを提供するスタートアップです。2024年3月時点でインドやカンボジアなど5カ国に展開し、顧客数は240万人(うち96%が女性)を突破しています。良質な金融サービスを低価格で届ける「金融包摂」をミッションに掲げ、実質的な貧困削減と自立支援という測定可能でポジティブな社会的インパクトを創出し続けています。
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第一生命保険株式会社
第一生命保険は、2017年度から気候変動などの社会課題解決をテーマにインパクト投資を行っています。2024年度には、国際基準(PCAF)に基づき算出された年間約300万トンの温室効果ガス削減貢献を達成しました。他にも持続可能な医療体制構築に向け、調剤薬局向け電子薬歴システムを開発するスタートアップへ5億円を投資するなど、機関投資家として多角的な環境・社会的インパクトを創出しています。
参考:スタートアップ投資|機関投資家として|第一生命保険株式会社
インパクト投資が注目される背景
日本では欧米に比べてインパクト投資の認知はなお途上ですが、関心が高まっている理由として以下の要因が挙げられます。
社会課題の解決に民間資金が求められている
気候変動や貧困、医療格差、教育機会の不足など、社会が抱える課題は年々複雑化しています。しかし、これらの課題解決には行政による取り組みや寄付だけでは難しく、民間からの資金を活用する動きが広がっています。こうした背景から、リターンを得ながら社会課題の解決に貢献できる手法としてインパクト投資が注目を集めています。
投資判断に「社会的価値」を重視
従来の投資では「リスク」と「リターン」を主な評価軸とし、投資先が生み出す社会的・環境的な価値は必ずしも投資判断の中心にはありませんでした。しかし近年は、社会や環境にどのような良いインパクトを生み出すかも重視されており、こうした変化を測定・可視化するインパクト投資への関心が高まっています。
SDGsやESG投資の広がりが後押し
SDGsやESG投資の浸透により、企業や投資家の間で社会課題への取り組みを重視する動きが強まっています。その中でもインパクト投資は、社会課題の解決による具体的な成果の創出を目指す投資手法であり、企業の社会的意義と事業成長を両立する考え方として広がりを見せています。
企業にも社会的成果の可視化が求められている
インパクト投資では、事業を通じてどのような変化を生み出したかを測定・開示することを重視します。利益の創出だけでなく、社会や環境に与える影響への説明が求められる中、投資によって生まれた社会的・環境的な成果を可視化することで、投資家やステークホルダーからの信頼獲得につなげることができます。
インパクト投資の4つの特徴
インパクト投資には、一般的な投資とは異なる以下の4つの特徴があります。
意図性
インパクト投資では、社会課題や環境課題の解決に貢献することを目的に、明確な意思を持って投資先や投資方法を選定します。社会や環境に配慮した事業に投資するだけではなく、投資によって具体的な成果を生み出すことを意図している点が特徴です。
財務的リターン
インパクト投資は、社会的・環境的な成果だけを追求するのではなく、投資として一定の財務的リターンを得ることも目指します。社会への貢献と収益性を両立させることで、事業を継続しながら安定した資金提供につなげていきます。
多様な投資対象
インパクト投資では、株式や債券、融資、ファンドなど、さまざまな資産や手法を通じて投資を行うことができます。投資家は多様なアセットクラスから、目的やリスク、期待するリターンに応じて適した投資対象を選択します。ただし、財務的リターンの獲得も目指す手法のため、寄付や補助金・助成金などは投資対象に含まれません。
インパクトの測定
インパクト投資では、投資によって生まれた社会的・環境的変化を測定し、その成果を確認・改善することが重視されます。具体的な指標を用いて定量的・定性的に効果を把握し、測定した結果をもとに事業や投資方針を見直すことで、より大きな社会的・環境的成果の創出につなげます。
インパクト投資の4つのメリット
インパクト投資は、社会・環境への貢献と投資収益の獲得を両立する手法です。ここでは、企業が得られる主なメリットを5つご紹介します。
社会課題の解決に貢献できる
インパクト投資では、さまざまな社会課題の解決を意図した事業に資金を投じ、社会や環境によい変化を生み出すことができます。投資先の事業成長を支えることで、雇用の創出や福祉サービスの充実、環境負荷の軽減など、具体的な社会的・環境的成果につながる可能性があります。
企業価値やブランド向上につながる
社会的・環境的な意義のある事業への投資を通じて、企業として社会課題の解決に積極的に取り組む姿勢を示すことができます。こうした取り組みは、顧客や投資家、取引先、従業員など、自社を取り巻くステークホルダーからの信頼を高めるとともに、企業の社会的な評価やブランド価値の向上にもつながります。
SDGs・ESGへの取り組みを具体化できる
インパクト投資には、実際の投資を通じて社会課題の解決に向けた取り組みを具体化し、SDGsやESGの実現に向けた活動を後押しできるメリットもあります。理念としてSDGsやESGを掲げるだけでなく、社会課題の解決につながる企業や事業に資金を投じることで、社会や環境への貢献を具体的な投資行動として実践できます。
新しい事業機会の創出につながる
社会課題の解決を目的とした投資を通じて、これまで接点のなかった事業や成長可能性のある市場と出会い、新たな事業機会の創出につながることが期待できます。環境問題や高齢化、地域課題などを背景に、新たなニーズや市場が生まれている分野も多く、社会課題を起点に将来性のあるビジネスを発掘する機会にもなります。
インパクト投資の4つのデメリット
インパクト投資はさまざまなメリットが期待できる一方、投資先の選定や成果の測定など、判断にあたって考慮すべき点もあります。ここでは、インパクト投資を行う際に知っておきたいデメリットについて解説します。
成果が出るまでに時間がかかる
社会課題の解決は短期間で成果が現れるとは限らず、事業の成長やサービスの普及を通じて徐々に変化が生まれるケースも少なくありません。企業としては、短期的な成果だけで投資先を評価するのではなく、長期的な視点で事業の成長や社会的・環境的な成果を見守る姿勢が求められます。
インパクトの測定が難しい
社会的・環境的な成果は数値化しにくく、投資によってどの程度の変化が生まれたのかを客観的に評価することが難しい場合があります。評価方法が統一されていないと結果にばらつきが生じる可能性があるため、投資による成果を正確に把握するには、客観性や比較可能性を確保する評価基準の設計が必要となります。
財務リターンが確実ではない
寄付や助成金とは異なり、社会的成果とあわせて投資による財務的リターンの獲得も目指せる点がインパクト投資の特徴です。投資先の事業成長によって収益を得られる可能性があるため、社会課題の解決に貢献しながら同時に資産形成も行い、社会的な価値と経済的な価値の両方を追求できます。しかし、社会的意義の高い事業が必ずしも安定した収益を生み出すとは限らず、期待したリターンを得られない可能性があります。企業には、投資によるインパクトを追求しつつ、事業性やリスクも踏まえた慎重な投資判断が求められます。
専門的な知識や調査が必要になる
インパクト投資を実践する際は、投資先の事業性や収益性だけでなく、社会的・環境的な成果がどのように生み出されるのかまで確認する必要があります。対象となる社会課題やインパクトの測定方法に関する知識も求められるため、必要に応じて専門家や外部機関の知見を活用しながら投資先を多角的に評価することが重要です。
まとめ

社会課題の解決には一定の時間を要し、投資による成果が短期間であらわれるとは限りません。インパクト投資を実践する際は目先の成果だけでなく、投資先の事業成長や社会的・環境的な変化を中長期的な視点で捉える力が求められます。
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