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デジタルウェルビーイングとは?意味・背景・企業が考えるべき理由や押さえておくべきポイントをわかりやすく解説

デジタルテクノロジーの普及によって人々の生活が便利になる一方、スマートフォンの常時接続や情報過多による疲労・ストレスといった課題も顕在化しています。こうした状況のなかで注目を集めているのが、デジタルとの健全な関係を目指す「デジタルウェルビーイング」です。

この記事では、デジタルウェルビーイングの意味や注目される背景、企業が取り組むべき理由についてわかりやすく解説します。

目次

デジタルウェルビーイングとは?

デジタルウェルビーイングとは、スマートフォンやデジタルサービスが人々の生活・心身の健康・幸福に与える影響を踏まえ、こうしたテクノロジーとよりよい関係を築こうとする考え方です。デジタル技術が生活や仕事に深く浸透する現代において、過度な利用による負担を軽減し、心身の健やかさを保つことを目的としています。

デジタルウェルビーイングの啓発に取り組むJDWA(一般社団法人 日本デジタルウェルビーイング協会)では「身体的、精神的、社会的にも良好な状態を保ちながら、デジタル(テクノロジー、デバイス)を利用すること」と定めています。

参考:Digital Well-beingとは|一般社団法人 日本デジタルウェルビーイング協会

そもそも「ウェルビーイング」とは何か

ウェルビーイングとは「満たされた状態」を意味し、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること指す概念です。一時の楽しさや満足感といった短期的な幸福だけでなく、精神的な豊かさや生きがいなど、将来にわたって続く持続的な幸福まで含んでいます。

HR領域においては、健康経営や従業員満足度、働きがいなどと関連して語られることが多く、デジタルウェルビーイングはこうしたウェルビーイング概念の延長線上に位置づけられています。

なぜデジタルウェルビーイングが注目されているのか

近年、デジタルウェルビーイングへの関心が高まっている理由として以下の点が挙げられます。

SNSやデジタルデバイスの普及

スマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスは、今や生活や仕事に欠かせない存在となっています。特にSNSの普及によって、時間や場所を問わず情報を得たり、他者とつながったりできる環境が一般化しました。

一方で、新しい情報や友人の動向が気になり無意識にスマホを見てしまう、ビジネスチャットの通知に常に気を取られてしまうなど、長時間の利用や情報過多による心身への影響が懸念されるようになりました。こうした状況から、デジタルデバイスとの距離感や使い方、テクノロジーとの向き合い方を見直す動きが広がっています。

テクノロジー企業やメディアによる問題提起

デジタルウェルビーイングの取り組みは、複数の著名なテクノロジー企業の幹部が、ユーザーを過度に引きつける「中毒性のある製品開発」に関与してきたことへの後悔を表明した時期に始まりました。

元Google社員のトリスタン・ハリス氏は、テクノロジーが人の注意と時間を奪っていることに警鐘を鳴らし、Googleのような大規模企業こそがデジタルウェルビーイングを主導すべきだと主張しています。また、Googleが2018年に開催したイベントで、人々がスマートフォンから離れられるよう設​​計されたツールを発表し、それが大きくメディアで取り上げられたことも社会的関心を高める契機となりました。

スマホ・デジタル機器利用の現状

ここでは総務省の調査データをもとに、スマートフォンやデジタル機器、インターネットの利用状況について解説します。

デジタル機器の保有状況

2024年の情報通信機器の世帯保有率は「モバイル端末全体」が97.0%、端末別では「スマートフォン」が90.5%と突出しています。一方で「パソコン」の保有率は減少傾向にあり、日常的なデジタル利用がスマートフォン中心へと移行していることがうかがえます。

参考:
令和7年版情報通信白書|総務省
令和6年通信利用動向調査の結果|総務省

インターネット・SNSの利用状況

2024年のインターネット利用率(個人)は85.6%に上り、端末別ではスマートフォンの利用率が74.4%と、パソコンの46.8%を大きく上回りました。主なメディアの平均利用時間は、全年代で平日・休日ともに「インターネット利用」が最も長く、特に10代(平日243.4分/休日316.1分)20代(平日257.2分/休日302.7分)の若年層で突出しています。

主なソーシャルメディアの利用率は、全年代で「LINE」が91.1%と最も高く、「Instagram」(52.6%)や「X(旧Twitter)」(43.3%)も幅広い年代で利用されています。また、動画サービスでは「YouTube」が全年代で80.8%と高い利用率を示し、若年層を中心に「TikTok」の利用も拡大しています。

参考/出典:
令和7年版情報通信白書|総務省
令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(概要)|総務省情報通信政策研究所

過度なデジタル使用がもたらす主なリスク

デジタル機器・サービスの普及によって社会生活が大きくオンライン化する一方、利用時間の長時間化や常時接続の常態化が課題として指摘されています。ここでは、過度なデジタル使用がもたらすリスクをご紹介します。

デジタル疲労と集中力の低下

デジタル疲労とは、デジタル機器を長時間使用することで、心身に蓄積される慢性的な疲労をいいます。特に、スマートフォンを一日中使い続ける生活では、絶えず情報処理を行うことで脳が十分に休息できず、疲労が回復しにくい「過労」の状態に陥ります。また、画面を見続けると目に大きな負担がかかり、頭痛や吐き気を伴う眼精疲労を引き起こしやすくなります。こうした脳や身体の疲れは集中力の低下を招き、日常生活にも支障を及ぼす可能性があります。

デジタルコミュニケーションの心理的負担

デジタル技術の発展は、時間や場所に縛られない柔軟な働き方を可能にした一方で、常に仕事の連絡を受けられる状態にもなってしまいます。メールやチャットなどのデジタルコミュニケーションが増加し、即時の返信や業務時間外の連絡を求められることや、テキスト中心のやりとりで認識のズレが生じやすくなったことに、心理的なプレッシャーやストレスを感じる人も少なくありません。

睡眠の質の低下

海外の研究では、デジタル機器の使用と睡眠の質との関連が報告されており、就寝前のスクリーン利用が入眠の遅れや睡眠時間の短縮、睡眠の質低下と関連する可能性が指摘されています。日本においても、スマートフォンの長時間使用によって中高生の就寝時刻が後退しているという調査結果があり、早い段階からデジタル機器の使い方を見直す必要性が高まっています。

実際、データを見てもその傾向は顕著です。一般社団法人日本リカバリー協会「ジュニアリカバリー白書 2025 レポート Vol.1」によれば、スマートフォン・携帯電話の使用時間は1時間以上の長時間利用が、中学生は80%以上、高校生は90%以上を占めます(表①)。それに伴い就寝時刻でも、23時以降に就寝する割合が平日で中学生は35.7%、高校生は72.6%まで上昇しています(表2)。

表①スマートフォン・携帯電話の使用時間(単位:%)
表②平日の就寝時刻(単位:%)

デジタルデバイスの長時間利用が、物理的に就寝時刻を押し下げ、生活リズムを乱す主因となっていることがこれらの数値からも裏付けられます。

参考/出典:一般社団法人日本リカバリー協会「ジュニアリカバリー白書 2025 レポート Vol.1

デジタルウェルビーイングが企業・組織にもたらす影響

経済産業省では、健康経営を「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と定義しています。仕事においても多くのデジタル機器やITツール、インターネットが活用されるなか、企業がデジタルウェルビーイングに取り組むことは、過度な利用による負担を軽減し、従業員の心身の健康を守ることにつながります。結果として、健康経営の推進にも寄与すると考えられます。

そのほかにも、デジタルウェルビーイングへの取り組みは企業や組織に以下のような効果をもたらす可能性があります。

情報過多による創造性や判断力の低下防止

デジタル機器を常時使用する環境では情報過多に陥りやすく、創造性や判断力が低下することにより、革新的な業務遂行を妨げるおそれがあります。使用方法を見直すことで、情報処理から距離を置き、創造的な業務に集中するための心身の余裕を取り戻すことが期待されます。

デジタル技術の戦略的・効率的な活用促進

デジタルウェルビーイングへの取り組みは、どのツールが業務に有効かを見極め、適切な使用方法を戦略的に見直すきっかけとなります。単にデバイスの使用を減らすだけでなく、デジタル技術の価値を見極め、業務効率や成果を高める使い方へと最適化するための機会となるでしょう。

労働時間とオフタイムのバランス確保

デジタル機器の普及は、労働時間と休息時間の境界を曖昧にし、十分な休息を確保しにくい状況を生んでいます。例えば「業務時間外の連絡を控える」など、デジタルウェルビーイングを意識した働き方のルールを整えることで、社員の疲労やストレスを軽減し、業務意欲の維持・向上につながることが期待されます。

押さえておくべき「つながらない権利」

「つながらない権利(Right to Disconnect)」とは、業務時間外にスマートフォンやメール、チャットツールなどを通じた業務連絡への対応を強制されない権利を指します。デジタルツールの普及により、業務時間外の連絡や即時対応が暗黙の了解となるケースが増え、仕事と私生活の線引きが曖昧化している点が問題視されるようになりました。こうした状況を受け、フランスでは2016年の労働法改正で「つながらない権利」を定め、やむを得ない場合には労使で協議し合意することを求めています。

日本でも法制化の可能性

日本においても、勤務時間外の業務連絡への対応を拒否できる「つながらない権利」について検討が進められています。2026年以降の労働基準法改正を見据え、その制度化の行方に注目が集まっています。

テクノロジー企業のデジタルウェルビーイングへの取り組み

デジタルウェルビーイングは利用者の自己管理に委ねるだけでなく、テクノロジー企業が自社のプロダクト設計に取り入れる動きも広がっています。

Googleが進める「Digital Wellbeing」の取り組み

GoogleがAndroid に搭載している「Digital Wellbeing」は、スマートフォンの利用時間やアプリからの通知を自ら管理できる機能です。特定アプリの使用時間を制限する「アプリタイマー」や、通知を抑えて休息や集中を促す「おやすみ時間モード」「フォーカスモード」などが搭載されています。スマホの使いすぎを自覚しているユーザーに対し、普段の生活の中で無理なく利用習慣を見直すきっかけを提供しています。

参考:Android スマホの Digital Wellbeing ってなに? その機能の概要や利用方法を解説|Android Magazine

Appleが導入したスクリーンタイムなどの機能

Appleでは、2018年リリースのiOS12からデジタルウェルビーイングを意識した機能を導入しています。ユーザーがデバイス利用状況を把握できる「スクリーンタイム」や、作業の中断を減らす通知のコントロール機能に加え、新しくなった「おやすみモード」では操作を促されるまで画面表示を抑える機能が追加されました。

参考:iOS 12に作業中断を減らし、画面を見ている時間を管理するための新機能が導入|Apple

まとめ

デジタルウェルビーイングは、デジタル端末やテクノロジーを排除するのではなく、心身の健康とのバランスを取りながら上手に活用していくための考え方です。過度な利用による疲労やストレスを防ぐことは、社員の健康を守るだけでなく仕事の集中力や創造性を高める効果もあり、健康経営の推進や組織全体の生産性向上に寄与します。

HRインスティテュートでは、組織マネジメントの視点から働き方の「質」の変革を支援するプログラムを提供しています。あるべき姿と現状とのギャップを明らかにし、その差を埋めるための人事制度設計や、教育体系構築など様々な施策の設計・実行をサポートします。

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