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エフェクチュエーションとは?優れた起業家に共通する5つの原則と実践方法をわかりやすく解説

先行きが不透明なVUCA時代に注目が高まっている「エフェクチュエーション」。成功した起業家たちに共通する思考様式のことで、彼らは従来とは異なるアプローチをおこない、望ましい結果を創り出していました。

この記事では「エフェクチュエーション」を取り上げ、優れた起業家が実践する5つの原則やトレーニング方法についてわかりやすく解説します。

目次

エフェクチュエーションとは

エフェクチュエーションとは、先行きが不透明で不確実性の高い状況において、「今、自分が持っている手段(スキルや人脈など)」を起点に、新たなビジネスや価値を創り出していく思考・行動プロセスです。

優れた起業家に共通するパターンとして、アメリカのバージニア大学のサラス・サラスバシー教授によって体系化されました。従来のビジネスでは、情報収集や分析をもとに「未来を予測」し、そこから計画を立てていくアプローチが重視されてきました。

一方でエフェクチュエーションでは、未来を前提にするのではなく、「手持ちの手段で何ができるか」という視点から出発します。そのため、大きな資源や実績がない段階でも行動を起こしやすくなります。

また、試行錯誤を重ねながら、自ら結果をつくり出していく点にも特徴があります。不確実な状況において実践しやすい考え方として、さまざまな場面で活用されています。

エフェクチュエーションとコーゼーションの違い

「コーゼーション」とは、あらかじめ設定した明確な目標から逆算して、最適な手段を考える一般的なアプローチです。

例えば、「来期までに自社製品の売上を120%にする」という目標を立て、そのために「どの市場を狙い、どれくらいの予算と人員を投じるか」を予測・計画するのがコーゼーションにあたります。これまでのビジネスシーンで広く用いられてきた有効な手法です。

一方、エフェクチュエーションは「今ある手持ちの手段」からスタートし、行動しながら新たなゴール(未来)を創り出していくアプローチです。

状況に応じて使い分けることが重要 

この2つのアプローチは、どちらが優れているというものではありません。

  • 市場データが揃っており、予測可能な状況 = コーゼーション
  • 前例がなく、先行きが不透明な状況 = エフェクチュエーション

このように、ビジネスの場面や状況に合わせて使い分けることが成功への近道となります。

エフェクチュエーションが注目されている理由

エフェクチュエーションが現代で注目を集めている背景には、不確実性の高い環境でも行動に移しやすいという特性があります。将来の見通しが立てにくい状況においても、今ある手段をもとに動き出せる点が評価されています。

従来のように、明確な目標を設定し、そこから逆算して手段を考える「コーゼーション」のアプローチは、市場の変化が予測できる場合に有効です。一方で、数ヶ月先の見通しさえ立てづらい現代では、計画の精度を高めること自体が難しくなっています。

その結果、計画に時間をかけすぎることが機会損失につながるケースも見られます。エフェクチュエーションでは、変化を前提としながら、小さく試し、状況に応じて柔軟に軌道修正していきます。あらかじめ許容できる範囲を見極めたうえで行動するため、大きなリスクを抱えにくい点も特徴です。

こうした特性から、新規事業を担う担当者や起業を目指す個人にとって、実践しやすいアプローチとして関心が高まっています。不確実な環境のなかでも、一歩を踏み出すための考え方として広く活用されています。

エフェクチュエーション3つの資源

エフェクチュエーションを実践するための第一歩は、「今、自分自身がすでに持っている手段(手持ちのカード)」を正確に把握することです。

ここでいう資源や手段とは、大規模な資金や設備のことではありません。起業家自身の内面や経験、人間関係に基づいた「3つの資源」を指します。 まずは以下の3つの問いを通して、自分の手持ちのカードを棚卸ししてみましょう。

私は誰か

自分のアイデンティティを資源とする考え方です。
自分自身の属性や能力、個性、価値観などを指します。自分がどのような人物で、どのような強みを持っているかを考え、それを資源として活用できる方法を検討します。

私は何を知っているか

自分の知識を資源とする考え方です。
各人が持っている知識や経験、スキルはそれぞれ異なります。これまでの経験を振り返り、自分が培ってきた知識や専門性を活用できる方法を検討します。

私は誰を知っているか

自分の人脈を資源とする考え方です。
家族や知人、自分が頼れる人やアプローチできる人など、自分自身の社会的ネットワークを洗い出し、目的を達成するために他者が持つ手段を活用できるか検討します。

エフェクチュエーション5つの原則

エフェクチュエーションは以下の5つの原則から構成されています。

手中の鳥の原則(Bird in Hand Principle)

今、手元にあるものを最大限に活かして何ができるかを考える原則です。

目的達成のために、外へ新しいアイデアや方法を探しにいくのではありません。以下の「すでに自分が持っている3つの手段」を活用し、新しいチャンスを生み出します。

  • 私は誰か(自分のアイデンティティや特性)
  • 私は何を知っているか(これまでの知識・経験)
  • 私は誰を知っているか(頼れる社会的ネットワーク・人脈)

許容可能な損失の原則(Affordable Loss Principle)

「うまくいかなかった場合」を想定し、あらかじめ許容できる損失(リスク)の範囲を決めておく原則です。

リターンの大きさよりも、「どこまでなら失っても大丈夫か」を基準に行動します。

  • はじめから大きなリターンを狙わない
  • 許容できるリスクの範囲内で小さくスタートする
  • 「超えてはいけないライン」を決め、致命傷を防ぐ

これにより、仮に失敗してもそれを学習の機会とし、次のチャンスを探ることができます。

クレイジーキルトの原則(Crazy Quilt Principle)

関わるあらゆる人たちをパートナーと捉え、協力して新たな価値を生み出す原則です。

色や形の異なる布を縫い合わせる「クレイジーキルト」のように、多様な関係者と良好な関係を築きます。

  • 予測による市場分析よりも、他者との協力を重視する
  • 時には競合企業さえもパートナーとして巻き込む
  • 相手の「手持ちの手段」も組み合わせ、新しいゴールを目指す

レモネードの原則(Lemonade Principle)

予期せぬトラブルや逆境を「チャンス」と捉え、新たな創造につなげる原則です。

「酸っぱいレモンを与えられたら、甘いレモネードを作れ」というアメリカの言葉に由来します。

  • 思い通りに進まない状況を否定しない
  • 失敗や不運を「学習の機会」として活用する
  • 工夫を凝らし、より良い状況へ転換を図る。

パイロットの原則(Pilot in the Plane Principle)

「未来は予測するのではなく、自らコントロールして創り出すもの」という原則です。

飛行機を操縦するパイロットのように、常に状況を把握し、臨機応変に対応します。

  • 未来を先回りして準備するのではなく、今の自分にできることに集中する
  • 環境の変化に合わせて、柔軟に軌道修正していく

不確実な状況下において、最も望ましい結果を引き寄せるための考え方です。

エフェクチュエーションの実践方法

エフェクチュエーションの思考を身につけ、ビジネスに活かすための具体的なアクションを紹介します。

小さく行動し、フィードバックを得る

はじめから完成度の高い事業計画を目指すのではなく、手持ちの手段で実行できることから着手します。たとえば、試作品を身近な顧客に試してもらう、小規模にテスト販売を行うといった方法が考えられます。

実際の反応をもとに改善を重ねることで、アイデアの精度が徐々に高まっていきます。行動と修正を繰り返すプロセスが重要です。

自ら働きかけ、協力を引き出す(アスキング)

アスキングとは、他者に働きかけて協力を得るための行動や交渉を指します。不足しているリソースを補うために、顧客や知人、場合によっては他社にも積極的に声をかけていきます。

こうした働きかけを通じて関係性が構築され、新たなパートナーシップの形成につながります。結果として、活用できる手段の幅も広がっていきます。

自分のビジョン(アイデンティティ)を発信する

周囲から協力を得るためには、自分が何を目指しているのかを明確に伝えることが欠かせません。自身の考えや方向性を言語化し、外部に発信していくことが求められます。

SNSでの発信やイベントでのピッチなどを通じて共有することで、共感する相手とのつながりが生まれます。その結果、取り組みの方向性が定まり、継続的な推進につながります。

まとめ

エフェクチュエーションとは、成功した起業家たちに共通する思考・行動パターンを体系化した論理です。将来の予測が困難なVUCA時代では、目標を設定してから手段を考える従来のアプローチ方法では限界が来ており、手持ちの手段を活用しながら新たな未来を創っていくエフェクチュエーションに注目が集まっています。

エフェクチュエーションは新規事業開発にも活用できる論理です。HRインスティテュートでは、新規事業プランの創出を支援する「新規事業開発ワークアウト」を提供しています。アウトプットを重視したプログラムで、新規事業立案に向けた課題設定からコンセプト立案、現実の事業化までを現役コンサルタントが並走し、新規事業開発をリードできる人材を育成します。

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監修者
稲垣 一郎
アメリカ大学留学を経て関西学院大学卒業後、アーサーアンダーセン/朝日監査法人、コンサルティング部に入社。事業会社において新規事業立ち上げ等を経験後、HRインスティテュートに参画。事業戦略の立案、組織活性化のための仕組み/制度、組織カルチャーづくりなどを得意とする。中京大学非常勤講師。内部監査士、Global Mindset認定コーチ。
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