ストレスチェック制度が義務化されたことはこれまでにもお伝えしてきた。ストレスチェックは、50名以上の事業所で義務化されている。では、50名未満の事業所でどうなっているのであろうか?
50名未満の場合は「努力義務」
その答えは、努力義務となっている。努力義務ということは、別に実施しなくても行政から罰せられないことを意味している。将来労働基準監督署が来ても、ストレスチェックを実施していないことによる是正勧告はまずないということである。事業主の方にとって、義務では仕方がないが、努力義務であればやらなくてもよいのではないかと考える方も多いのではないだろうか。当事務所では、努力義務だからやらなくてもよいという考え方には反対の立場をとっている。なぜなら、1000名の企業で1名が体調を崩すことによるインパクトと、30名の会社で1名が体調を崩すことを比較した場合、明らかに30名の会社の方が影響は大きいからである。また、メンタルヘルス対策は非常に費用対効果が大きい(当事務所の試算ではROIが2=投資した分の倍の効果がある)ため、実施をお勧めしているところである。
では、50名未満の事業所でどのようにストレスチェックを実施すればよいだろうか?2つのパターンをご紹介したい。
パターン1 基本料金がないストレスチェック業者へ委託する
ストレスチェック制度が義務化されて以来、多くのストレスチェックを提供する業者が存在する。いまのところ一人当たり250円から5000円ぐらいの料金の幅があるようだ。例えば30名で一人当たり1000円であるとすると、総額は3万円である。年間1回と考えるとそれほどコストが高いとは感じられないのではないだろうか。ただ、注意する必要があるのが、多くの業者では、「基本料金(セットアップ費)+一人当たりいくら」という料金設定になっていることが多い、ということである。先の例でも、仮に基本料が10万円とすると合計13万円になってしまう。この場合、少し高めに感じられるのではないだろうか。業者選定の際には基本料など含むすべてでいくらであるかをよく確認し実施することが大切なのである。
パターン2 厚生労働省が提供しているストレスチェック実施プログラムを利用する
厚生労働省では、ストレスチェックを社内環境で実施することができるプログラムを無料で配布している( http://stresscheck.mhlw.go.jp/ )。
〔図:厚生労働省のストレスチェック画面〕
これを利用すると無料でストレスチェックを実施することができる。残念な点は結果通知が見づらいことと、医師を自社で確保しないといけない点である。ただ、50名未満の事業所なので今回は医師による判定を敢えて行わない運用も現実的には考えられる。その際には、きちんと個人情報が確保されるよう注意しながら実施することが大切である。会社に個人の情報が筒抜けであると従業員が感じていると、なかなか素直に答えづらいのが現状であると言えるからだ。社内の総務か人事担当のみが結果を見られるようにし、プライバシー確保がされていると伝えることで社内での実施への理解も得られるのではないだろうか。社内LAN内に設置して設定すれば使えるので、PCに詳しい方がおられる比較的導入が容易であると言える。半面セキュリティ確保に気を使い続ける必要があるとも言える。
いずれのパターンでもストレスチェックのみを実施するだけでは意味がない。ストレスチェック自体にはそれほど職場の問題解決効果は期待できないからである。それどころか、ストレスチェックを実施したのにその後会社は何もしてくれないと逆効果になることすらある。その後の人事制度の変更や、社外相談窓口の設置、研修の実施等その後何か次の一手を打って、それにつなぐためのきっかけとしてストレスチェックを利用していただければと考える。大事なのは次の施策につなぐ、ということなのである。
Office CPSR臨床心理士・社会保険労務士事務所 代表
一般社団法人ウエルフルジャパン 理事
産業能率大学兼任講師 植田 健太