介護をしながら会社で働き続けるのは、①正社員で働くパターンと②勤務時間を変更して柔軟な勤務パターンにする、の2パターンがある。
中小企業のための『仕事と介護』を提案します[3]

家族に介護が必要になった社員の選択肢

1)介護をしながら働き続ける選択肢

 ①正社員で働き続けるのをさらに細かく分類すると、ⅰ)これまで通り働く、ⅱ)年次有給休暇を使いながら働く、ⅲ)一定期間お休み(介護休業)をして復帰して働くという、3つのパターンになる。どのパターンでも、会社は正社員に対して相応の配慮は必要になる。
例えば、介護認定や通院への付き添いは平日に行われることが多いので、半日単位の有給休暇制度があれば、社員には使い勝手のよいものになる。このケースでは、社員の有給休暇の取得状況を会社は把握しておきたいものである。

一定期間お休みをして、介護する体制を整えるための制度を介護休業という。『平成25年度雇用均等基本調査の概況(平成26年8月19日 厚生労働省発表)』によれば、平成25年度介護休業取得者は1.4%である。いわゆる正社員の介護休業者の割合は、男性社員は0.02%、女性社員は0.11%と介護休業はほぼ利用されていないが、『介護休業』という選択肢があることは社員に伝えておきたい。

 介護の状況に合わせて、正社員から②勤務時間や勤務日数を変更して柔軟な勤務パターンにするのはお勧めである。これからは、親の介護は誰にでも起こりうる時代なので、柔軟な勤務パターンがもっと必要になる。
柔軟な勤務パターンは、基本給・賞与・退職金・昇給という重要な労働条件を就業規則にどのように定めておくかがポイントになる。①正社員と②柔軟な勤務パターンの双方向で身分変更できるような制度設計にすれば、中小企業の『仕事と介護』に必要な柔軟な運用ができるだろう。

2) 退職後、外注化へ

 担当者(介護離職予定者)を変更したら、既存の顧客が取引を打ち切ると言っているケースでは、退職後の外注化も検討したい。ただ、外注化は、会社と社員との間の信頼関係に左右されるので、いつでも外注化を提案できるわけではない。将来会社に復帰することが前提になるが、特に優秀な社員が介護離職してしまいそうなケースでは有効な選択肢になりうる。
 外注化する業務範囲を明確にした場合、介護をしながら在宅でもできるかどうか検討してみる。『雇用』から『外注』に切り替わるので、確定申告等の税務上の手続き・請求書の発行等の手続きが必要になる。事前に必要な手続きを社員本人に説明して、外注化のフォローは重要だ。


3) 介護を理由に退職してしまう

 社員が介護を理由に退職を申し出ている場合は、会社に不満があって辞めるかどうか、本音の退職理由を確認しておきたい。中小企業では、退職理由を本人に確認しないで離職してしまっているケースがまだまだある。
ベテラン社員や管理職クラスの社員が介護離職してしまったら、中小企業では、現場の大幅な戦力ダウン、他の社員のモチベーションダウンにつながる。できるだけ社員本人とコミュニケーションをとって、『仕事と介護』を両立させる方法を一緒に考え、柔軟な勤務パターンや外注化を提案していきたい。また、本人が退職を決意している時は、担当業務の引き継ぎやマニュアルの作成を最低限準備させたいものだが、中小企業では満足になされない場合が多々あるようだ。マニュアルの作成は、スマホのアプリなどでも簡単に作成できるので、ぜひ活用したい。


ふくすけサポート社会保険労務士事務所 社会保険労務士 
産業カウンセラー 森大輔

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