労働者のメンタルヘルスの悪化が社会問題となっている。厚生労働省の調査によると、労働者の半数以上が不安を抱えた中で就労し、精神障害による労災認定件数は3年連続で過去最多を更新した。
こうした状況の中、2014年6月に改正労働安全衛生法が公布され、2015年12月より労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)の実施が義務付けられた。
施行まであと半年となり、厚生労働省が、「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」と「ストレチェック制度 Q&A」を公表した。
忙しい実務担当者の為に、最低限知っておきたい事項についてまとめてみたのでご参考頂きたい。
こうした状況の中、2014年6月に改正労働安全衛生法が公布され、2015年12月より労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)の実施が義務付けられた。
施行まであと半年となり、厚生労働省が、「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」と「ストレチェック制度 Q&A」を公表した。
忙しい実務担当者の為に、最低限知っておきたい事項についてまとめてみたのでご参考頂きたい。
ストレスチェック制度の概要とポイント
ストレスチェック制度の概要は以下のとおりである。①対象となる事業場
労働安全衛生法の他の規定と同様常時使用する労働者が50人以上の事業場が対象となる。なお、派遣労働者を受け入れている事業場については、その派遣労働者の人数も合わせて50人以上かをカウントし、実施については、自社の従業員について行う事となる。
②実施回数
毎年1回定期的に検査を行わなければならない。平成27年12月1日の施行後については、1年以内に、ストレスチェックを実施(結果通知や面接指導は含まない)する必要があるので注意が必要である。
③検査項目
(1)職場におけるストレスの原因に関する項目
(2)ストレスによる心身の自覚症状に関する項目
(3)職場における他の労働者による支援に関する項目
上記3つの領域が含まれていれば、独自に自由記述欄を設けたり項目を増やしたり減らしたりしても問題はないが、実施者の意見の聴取、衛生委員会等での調査審議を行う必要がある。
④実施者
(1)医師
(2)保師
(3)厚生労働大臣が定める一定の研修を修了した看護師または精神保健福祉士
検査を受ける労働者に対し人事権を有する者(例えば病院長等)は実施者にはなれないので注意が必要である。
⑤検査結果の通知
検査を実施した医師等から直接本人に通知され、本人の同意なく事業者に提供されることは禁止される。
⑥個人情報の管理
ストレスチェックの結果は、厳密な個人情報の取り扱いが必要となり、違反については、安衛法119条1号の罰則(6月以下の懲役または50万円以下の罰金)の定めが適用される。なお、この守秘義務が課される検査または面接指導の実施の事務に従事した者には、検査等を実施する医師・保健師のほか、労働者の同意がある場合に個々の検査結果を職制上当然に知り得る立場にある者も含まれるものと解される。また、守秘義務に反した場合、民事責任として慰謝料請求を受ける可能性もあるので、情報の取り扱いには注意したい。
⑦面接指導の実施
検査の結果、高ストレス者と選定された者であって面接指導を受ける必要があると実施者が認めた者に対して、労働者からの申出に応じて医師による面接指導を実施しなければならない。申出がない場合面接指導はもちろん不要であるし、申出を理由とする不利益な取扱いは禁止される。
⑧面接指導の結果に基づく就業上の措置
面接指導の結果に基づき、医師の意見を聴き、必要に応じ、労働者の実情を考慮し、就業場所の変更、作業の転換、時間外労働削減を含めた労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の就業上の措置を講じなければならない。
⑨ストレスチェック結果の記録・保存
事業者は、労働者の同意を得て検査結果の提供を受けた場合、この結果の記録を作成し、5年間保存しなければならない。それ以外の場合は、検査を行った実施者による検査結果の記録の作成、検査の実施の事務に従事した者による記録の保存が適切に行われるよう、必要な措置を講じなければならない。
⑩労働基準監督署への報告
1年以内ごとに1回、「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を所轄労働基準監督署に提出しなければならない。これは、労働安全衛生法第100条に基づくものであり、違反の場合には罰則がある。50人未満の事業場については、ストレスチェックを任意に行っていても報告義務はない。
本制度施行によって職場環境不良によるメンタルヘルス不調は改善されるかもしれないが、メンタルヘルス不調は本人のストレス耐性の弱さに起因する場合もある。企業としては、職場環境を改善するとともに、従業員のストレス耐性の向上も視野に入れたいところである。
松田社労士事務所
特定社会保険労務士 松田 法子