出産した女性が職場復帰の際にハードルとなるのが、子供の保育所探しである。子供を預けて働きたいが、満員のため保育所の入園の空きを待っている待機児童は全国数万人のぼるといわれている。
特に平成20年秋のリーマンショック以降、働く女性の増加と共に、急激な保育所需要の高まりで社会問題化した。政府が「待機児童ゼロ」を目標に対策をまとめたのは、01年の小泉政権が発端であり、その後も歴代政権が待機児童対策に取り組んでいる。
特に平成20年秋のリーマンショック以降、働く女性の増加と共に、急激な保育所需要の高まりで社会問題化した。政府が「待機児童ゼロ」を目標に対策をまとめたのは、01年の小泉政権が発端であり、その後も歴代政権が待機児童対策に取り組んでいる。
女性の復職訓練のための助成金は6割増の27億円
安倍政権は2017年度までに、「待機児童ゼロ」を目標に掲げ、潜在数も見込んで計40万人分の保育の受け皿を整備するとしている。保育の受け皿を集中整備するため、自治体支援策も用意し、いち早く待機児童解消に成功した横浜市にならい、土地所有者と保育所事業者とをマッチングするなどの施策やミニ保育所の支援策も盛り込んでいる。都市部を中心に深刻な問題となっている待機児童解消を加速化させるため、2013年4月に「待機児童解消加速化プラン」を策定し、待機児童解消に意欲的に取り組む地方自治体に対してはその取組を全面的に支援することとしている。
「待機児童解消加速化プラン」では、2013~2014年度を「緊急集中取組期間」とし、2年間で約20万人分の保育の受け皿の確保を目指した。子ども・子育て支援新制度のスタート予定である2015年度を「取組加速期間」とし、保育ニーズのピークを迎える2017年度末までに、潜在的な保育ニーズも含めて、約40万人分の保育の受け皿を確保し、待機児童の解消を目指すこととしている。
これまで両立支援助成金の休業中能力アップコースでは、育児休業者や介護休業者を円滑に職場復帰させることを目的とした助成金が支給されてきた。規定の職場復帰プログラムを実施した中小企業や事業主を対象に、上限21万円が支給されている。しかしその制度が廃止され、新たに平成26年3月から、キャリア形成促進助成金の政策課題対応型訓練に、「育休中・復職後等能力アップコース」が創設された。
事業主が雇用する労働者に対して職業訓練等を実施した場合に、訓練の経費や賃金の一部を助成するキャリア形成促進助成金がある。その助成金の助成対象訓練コースとして、育児休業中や復職後の能力アップのための訓練や、妊娠・出産・育児等により離職していた女性の再就職後の能力アップのための訓練に対する助成コースが新たに設けられた。つまり女性の育児休業中や復職後・再就職後の能力アップのための訓練に取り組む事業主に対する支援策である。このコースは、中小企業、大企業ともに助成金の対象となる。企業や事業主には、3分の1以上の経費の助成や、1時間あたり400円以上の賃金の助成がなされる。
大阪府では女性のMiraiプロジェクトとして復職を支援している。資格があるけどブランクなどで自信がない女性や、育児や家事の悩みを抱える女性に対し、適性診断や個別カウンセリング、復職訓練や職場実習を実施するなどして女性の職場復帰をサポートする体制が整えられている。
復職する女性のために人事ができること
企業の発展のためにも、女性の離職を防ぎ、雇用を継続していくことが必要である。すでに女性の復職支援のための取り組みを実施している企業があり、子育て支援策や介護支援策を拡充し、各個人のライフステージに合った働き方を実現するための環境が整備されてきた。保育施設が確保できない女性に対し、復職支援金制度の導入や、保育料の補助金支給、ベビーシッター等費用補助制度の導入がなされている。親の介護などで休業している女性に対しては、介護支援策として、介護休業の分割取得制度の導入や、介護休業の一部を有給化し、有給の介護休暇日数を増加させるなどの対策がとられている。
そういった企業の取り組みを参考にするなどして、人事としてできることには何があるかを考えて実施していくことが今後重要となってくる。
女性の雇用拡大や職場復帰の流れは国の政策として推進されているため、一旦育児や介護などで離職した能力のある女性が、復職しやすい環境を整えていくための制度改革などが、今後企業や人事担当者に求められていくだろう。
HRプロ 編集部