最近、雇用関係の法改正や新しいルールが議論されているのが頻繁に目につく。いわゆる「残業代ゼロ法案」や「限定正社員」といわれる働き方がマスコミ等で賛否両論の議論がなされているが、派遣法の改正についても見逃せない。
派遣は労働者にとってメリットがある働き方であり、企業にとっては最早なくてはならない雇用形態である。しかし、派遣についてはメリットよりもデメリットや弊害が多いため、いままさに派遣労働者の正社員化へのルール作り等を法改正によって実現しようとしている。
企業経営にはヒト・モノ・カネの三要素が必要である。その中でも、企業経営にとって一番大切なものはヒト=マンパワーであろう。私は主に、そのヒトの部分で企業のお手伝いをしているが、昨今は少子高齢化等の影響もあって募集しても人がなかなか集まらず、たとえブラック企業でなくても中小企業では採用への苦労が多々見受けられる。
これまでは、新卒採用や中途採用、アルバイトにパート等雇用形態は種々あるが、短期の穴埋め(臨時の人手不足に対応する)のために派遣労働者を採用する企業が多かった。
また、派遣労働者を派遣する派遣会社にも少しではあるが変化の兆しが見える。当然のことであるが、派遣会社は派遣労働者を派遣することによって利益を上げる。よって、雇用している派遣社員数の増減がそのまま会社の業績に反映される(もちろん、その他様々な要因があることは重々承知している)。その派遣社員を他の派遣会社や派遣先の会社に引き抜かれたりすることを警戒していたのも事実である。
ところが、派遣会社としては派遣社員が他社で正社員化されることを、むしろ積極的に行っているのではないかと感じることがある。
いま議論されている派遣法改正案が施行されると、
(1)専門分野の派遣社員でも一般業務も担当させる
(2)3年ごとに派遣労働者を交代させる
など、企業側にとって都合よく解釈することも可能で、実際そう解釈し運用しようとする会社も多いだろう。
しかし、この改正法案はそのような類のものではない。一般的に、これまでの派遣労働者についての理解は先ほども述べたが企業の業績が悪化した場合や派遣社員の能力が不足している場合は契約が終了する。「派遣切り」は決してほめられたものではないが、派遣社員は社会的必要悪である。
そして、正社員を採用するより断然リスクが少ない。加えて、派遣期間が3年経過したら新しい派遣労働者に交代してもらえばいい、と考えがちではないだろうか。
確かに、改正法案では、3年経過した派遣労働者とは契約を打ち切り、別の派遣労働者に交代することができる。また、同じ会社でも他の部署と契約することにより、引き続き同じ会社で働くことも可能である。しかし、当然ながら企業は派遣労働者のみに頼ることは出来ないので、正社員の募集・採用も考える。
こうした場合に、改正法案では同じ部署で正社員を募集する場合、1年以上勤務している派遣労働者に正社員を募集している事実を伝える義務があるとしている。今いる派遣社員を正社員にせず、別途正社員を募集する明確な理由が求められる。つまり、「派遣社員は3年後には正社員にしてください」というのが今回の派遣法改正の狙いである。
派遣法の改正によって、これまでの派遣労働者の在り方に対する理解や、業務・役割に新たな考え方も必要になってくるのではないだろうか。
社会保険労務士たきもと事務所 代表・社会保険労務士 瀧本 旭
企業経営にはヒト・モノ・カネの三要素が必要である。その中でも、企業経営にとって一番大切なものはヒト=マンパワーであろう。私は主に、そのヒトの部分で企業のお手伝いをしているが、昨今は少子高齢化等の影響もあって募集しても人がなかなか集まらず、たとえブラック企業でなくても中小企業では採用への苦労が多々見受けられる。
これまでは、新卒採用や中途採用、アルバイトにパート等雇用形態は種々あるが、短期の穴埋め(臨時の人手不足に対応する)のために派遣労働者を採用する企業が多かった。
また、派遣労働者を派遣する派遣会社にも少しではあるが変化の兆しが見える。当然のことであるが、派遣会社は派遣労働者を派遣することによって利益を上げる。よって、雇用している派遣社員数の増減がそのまま会社の業績に反映される(もちろん、その他様々な要因があることは重々承知している)。その派遣社員を他の派遣会社や派遣先の会社に引き抜かれたりすることを警戒していたのも事実である。
ところが、派遣会社としては派遣社員が他社で正社員化されることを、むしろ積極的に行っているのではないかと感じることがある。
いま議論されている派遣法改正案が施行されると、
(1)専門分野の派遣社員でも一般業務も担当させる
(2)3年ごとに派遣労働者を交代させる
など、企業側にとって都合よく解釈することも可能で、実際そう解釈し運用しようとする会社も多いだろう。
しかし、この改正法案はそのような類のものではない。一般的に、これまでの派遣労働者についての理解は先ほども述べたが企業の業績が悪化した場合や派遣社員の能力が不足している場合は契約が終了する。「派遣切り」は決してほめられたものではないが、派遣社員は社会的必要悪である。
そして、正社員を採用するより断然リスクが少ない。加えて、派遣期間が3年経過したら新しい派遣労働者に交代してもらえばいい、と考えがちではないだろうか。
確かに、改正法案では、3年経過した派遣労働者とは契約を打ち切り、別の派遣労働者に交代することができる。また、同じ会社でも他の部署と契約することにより、引き続き同じ会社で働くことも可能である。しかし、当然ながら企業は派遣労働者のみに頼ることは出来ないので、正社員の募集・採用も考える。
こうした場合に、改正法案では同じ部署で正社員を募集する場合、1年以上勤務している派遣労働者に正社員を募集している事実を伝える義務があるとしている。今いる派遣社員を正社員にせず、別途正社員を募集する明確な理由が求められる。つまり、「派遣社員は3年後には正社員にしてください」というのが今回の派遣法改正の狙いである。
派遣法の改正によって、これまでの派遣労働者の在り方に対する理解や、業務・役割に新たな考え方も必要になってくるのではないだろうか。
社会保険労務士たきもと事務所 代表・社会保険労務士 瀧本 旭