新年度が始まって数か月が過ぎたある日のこと、この春から異動で新たに配属されたAさんの部署に、部長が様子を見にやってきて……
部長「Aさんの様子はどうかな?」
同僚「何となく元気がないですね。表情が暗いというか、口数も少ない気がします。」
部長「そうなのか?まあ何か問題があったら本人から言ってくるだろう。」
同僚「だといいんですが……」
部長「Aさんの様子はどうかな?」
同僚「何となく元気がないですね。表情が暗いというか、口数も少ない気がします。」
部長「そうなのか?まあ何か問題があったら本人から言ってくるだろう。」
同僚「だといいんですが……」
配置転換などによる仕事の質や量の変化、昇進等による責任の増大、人間関係、等々、職場はストレスの宝庫である。大抵は一過性のもので、そのうち回復するものと考えられていて、特に問題視しないケースが多いが、うつ病等精神疾患に発展するリスクもあり、無対策でいることは労務管理リスクが高いかもしれない。
最近、裁判所においてメンタルヘルスに関するある判断が出されている。(最高裁H26.3.24判決 東芝重光事件)
注目したいのは、その判決文の中で、
『使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っている』
と、従来の企業の安全配慮義務の考え方を改めて確認している点である。「労働者が何も言ってこなかったから」などという言い訳は通らず、積極的な企業側の配慮、行動が求められている。このことから考えると、前述の部長のような対応には問題がありそうだ。事態が深刻になる前に、しっかりとした対策を取りたいところである。
では、企業としてどのような取り組み、対策があるだろうか。最も大事なのはメンタルヘルス不調を未然に防ぐ「予防」の観点であろう。業種や仕事内容により取組みは様々であるが、どの職場でも共通して当てはまり、かつすぐにでも始められる予防のポイントを3つ挙げてみたい。
(1)労働時間管理を適切に行う
何といってもこれが大原則である。長時間労働が精神疾患など健康障害を引き起こすリスクを高めることは明らかであり、労働時間管理を適切に行うことは基本中の基本である。具体的にはタイムカード等により労働日ごとの始業就業の時刻を確認して、記録することになる。(行政通達H13.4.6基発第339号)こうして毎月、長時間労働をしている労働者をチェックして、場合によっては面談の実施や業務の見直しなども検討する。尚、月100時間を超える時間外・休日労働をした労働者から申し出があった場合は、会社は医師による面接指導を行う義務がある。(労働安全衛生法第66条の8第1項、労働安全衛生規則第52条の2第1項)
(2)労働者からのサインを見逃さない
メンタルヘルス不調が起こった場合、行動面に変化が起こることが多いとされている。例えば「ミスが多くなった」「声が小さくなった」「身嗜みが乱れてきた」などが挙げられる。そして普段からその人のことを見ていないとこれらの変化に気付くことは難しい。目配り、気配り、心配りの精神で職場のメンバーに接し、メンタルヘルス不調のサインを見逃さないようにしたい。
(3)メンタルヘルス研修を実施する
定期的に、職場においてメンタルヘルス研修を実施することもおすすめである。ストレスに対する気付きや対処方法などの個人レベルの対策(セルフケア)を知ることで、大きな予防の効果が期待できる。
人間、健康が何よりの宝物である。そしてその宝物を守るのは自分自身である。いくらメンタルヘルス不調について企業側に強い安全配慮義務があるとっても、実際に自分が病気になってはつまらない。自分なりの健康法を探すのも大切なことだ。因みに私はよく「青空を見る」ということをしている。青空を見ると、心がスッと軽くなり前向きな気分になれる(ような気がする)。晴れの日であればいつでも出来るし、何より何度試しても無料である。是非お試しあれ。
出岡社会保険労務士事務所 出岡 健太郎
最近、裁判所においてメンタルヘルスに関するある判断が出されている。(最高裁H26.3.24判決 東芝重光事件)
注目したいのは、その判決文の中で、
『使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っている』
と、従来の企業の安全配慮義務の考え方を改めて確認している点である。「労働者が何も言ってこなかったから」などという言い訳は通らず、積極的な企業側の配慮、行動が求められている。このことから考えると、前述の部長のような対応には問題がありそうだ。事態が深刻になる前に、しっかりとした対策を取りたいところである。
では、企業としてどのような取り組み、対策があるだろうか。最も大事なのはメンタルヘルス不調を未然に防ぐ「予防」の観点であろう。業種や仕事内容により取組みは様々であるが、どの職場でも共通して当てはまり、かつすぐにでも始められる予防のポイントを3つ挙げてみたい。
(1)労働時間管理を適切に行う
何といってもこれが大原則である。長時間労働が精神疾患など健康障害を引き起こすリスクを高めることは明らかであり、労働時間管理を適切に行うことは基本中の基本である。具体的にはタイムカード等により労働日ごとの始業就業の時刻を確認して、記録することになる。(行政通達H13.4.6基発第339号)こうして毎月、長時間労働をしている労働者をチェックして、場合によっては面談の実施や業務の見直しなども検討する。尚、月100時間を超える時間外・休日労働をした労働者から申し出があった場合は、会社は医師による面接指導を行う義務がある。(労働安全衛生法第66条の8第1項、労働安全衛生規則第52条の2第1項)
(2)労働者からのサインを見逃さない
メンタルヘルス不調が起こった場合、行動面に変化が起こることが多いとされている。例えば「ミスが多くなった」「声が小さくなった」「身嗜みが乱れてきた」などが挙げられる。そして普段からその人のことを見ていないとこれらの変化に気付くことは難しい。目配り、気配り、心配りの精神で職場のメンバーに接し、メンタルヘルス不調のサインを見逃さないようにしたい。
(3)メンタルヘルス研修を実施する
定期的に、職場においてメンタルヘルス研修を実施することもおすすめである。ストレスに対する気付きや対処方法などの個人レベルの対策(セルフケア)を知ることで、大きな予防の効果が期待できる。
人間、健康が何よりの宝物である。そしてその宝物を守るのは自分自身である。いくらメンタルヘルス不調について企業側に強い安全配慮義務があるとっても、実際に自分が病気になってはつまらない。自分なりの健康法を探すのも大切なことだ。因みに私はよく「青空を見る」ということをしている。青空を見ると、心がスッと軽くなり前向きな気分になれる(ような気がする)。晴れの日であればいつでも出来るし、何より何度試しても無料である。是非お試しあれ。
出岡社会保険労務士事務所 出岡 健太郎