安倍首相が本部長を務める日本経済再生本部で進めている「国家戦略特区」で、岩盤規制と言われているうちの焦点であった「雇用特区」について雇用規制の大幅な緩和が見送られることとなった。

「雇用特区」の概要は、以下の通りであった。
1.解雇ルール
そもそも特区とは、東京、大阪、愛知の3大都市圏を想定。契約内容について規制は設けるものの解雇の条件や手続きを定めておけば解雇が適用できる。その場合、外国人の従業員比率が一定以上(例えば3割)で創業5年以内の企業、士業などの専門資格や修士号・博士号などの資格者を対象とする、といったもの。
2.労働時間法制
ホワイトカラー・エグゼンプションの導入。
3.有期雇用制度の見直し
現行制度の有期雇用5年で無期雇用へ移行の権利を放棄し、ずっと有期雇用のままで継続させられる。
これに対し、解雇ルールについて“解雇特区”や“ブラック特区”といった表現で連日報道され批判が相次いだ。「世界で一番ビジネスをしやすい環境を創出する」ために、解雇の条件に合致した人材を解雇し流動化を図る、ということは、企業にとって都合よく人材を入れ替えたいということになる。多くの国民は、企業の本音を垣間見た気がしたのと、特区と言いながら、なし崩し的に範囲が広がるような不安を覚え、感情的にノーという気運が高まったように思える。実際、無期雇用の転換制度は今年4月に導入されたばかりであるにもかかわらず、7年後のオリンピック開催に対応するために有期雇用5年を最長10年にし、しかも特区ではなく全国へ導入する方針、と早速特区解除の動き。確か4月導入の制度は、安定雇用に向けた無期雇用転換が主旨だったはずである。
1.解雇ルール
そもそも特区とは、東京、大阪、愛知の3大都市圏を想定。契約内容について規制は設けるものの解雇の条件や手続きを定めておけば解雇が適用できる。その場合、外国人の従業員比率が一定以上(例えば3割)で創業5年以内の企業、士業などの専門資格や修士号・博士号などの資格者を対象とする、といったもの。
2.労働時間法制
ホワイトカラー・エグゼンプションの導入。
3.有期雇用制度の見直し
現行制度の有期雇用5年で無期雇用へ移行の権利を放棄し、ずっと有期雇用のままで継続させられる。
これに対し、解雇ルールについて“解雇特区”や“ブラック特区”といった表現で連日報道され批判が相次いだ。「世界で一番ビジネスをしやすい環境を創出する」ために、解雇の条件に合致した人材を解雇し流動化を図る、ということは、企業にとって都合よく人材を入れ替えたいということになる。多くの国民は、企業の本音を垣間見た気がしたのと、特区と言いながら、なし崩し的に範囲が広がるような不安を覚え、感情的にノーという気運が高まったように思える。実際、無期雇用の転換制度は今年4月に導入されたばかりであるにもかかわらず、7年後のオリンピック開催に対応するために有期雇用5年を最長10年にし、しかも特区ではなく全国へ導入する方針、と早速特区解除の動き。確か4月導入の制度は、安定雇用に向けた無期雇用転換が主旨だったはずである。
一方で、グローバル対応が急務な現況下において、日本固有の労働行政と雇用慣行はガラパゴス人事と言われ、グローバル化を阻害している事実も否めない。しかし、今回の特区案は、労働基準法や労働契約法によって保障されてきた最低限の労働基準の根幹を揺るがす内容であったことも事実であり、また、企業は多様な雇用形態の人材を抱え、どういった人員体制で業績を上げるべきか頭を悩ましている状況で、法律が改正される度に人材のポートフォリオは複雑化するばかりである。
政府には、グローバル化が加速する中で国力を上げるために、柔軟さも大事だが国としての労働の基準のあり方や労働者の権利についてコアとなる本質的な議論からスタートし、その考えに整合的な制度構築を求めたい。その際には、経済界主導ではなく、より広く有識者や労使など、多方面からアプローチを行い、あるべき姿を模索すべきである。
HR総合調査研究所 客員研究員 芝沼芳枝
政府には、グローバル化が加速する中で国力を上げるために、柔軟さも大事だが国としての労働の基準のあり方や労働者の権利についてコアとなる本質的な議論からスタートし、その考えに整合的な制度構築を求めたい。その際には、経済界主導ではなく、より広く有識者や労使など、多方面からアプローチを行い、あるべき姿を模索すべきである。
HR総合調査研究所 客員研究員 芝沼芳枝