女性を現場に配属するメリット

──女性を現場に配属することに対する社内の反応はいかがでしたか。

 弊社には女性に無理をさせてはいけないという社風があり、男性中心の現場に女性を入れることを心配する声は多かった。そこで、先に述べた各セクションの人事担当者への働きかけが必要だった。

 ただ、弊社には「良いものは良い」と認める社風もあり、話をすると理解してくれる人が多く、採用・配属を進めることができた。実際の配属に当たっては、もちろん、ハード面、ソフト面での環境設備が必要だった。ハード面はトイレ、更衣室などの整備だ。こちらはわかりやすいこともあり、比較的スムーズに進めることができた。

 見えないだけに難しいのがソフト面だ。こちらについては、最初から全部整えるというわけにはいかなかった。やはりキーになるのは管理者だ。そこで配属をする段階で、どの所長が意図を理解し、女性技術者を育成してくれるかを考えて配属を進めた。

──実際に女性を配属してみて、現場の人たちの反応はどうですか。

 建設業は多重構造であり、現場には弊社の社員だけではなく、協力会社の作業員など、さまざまな人が入ってくる。その100%近くが男性である。「女性を現場に配属して本当に大丈夫なのか。危険ではないのか」などと心配する声があったわけだが、配属された女性技術者からはネガティブな話はまったくといっていいほど出てこない。

 現場に女性がいることが珍しいために作業員がよく声をかけてくれるとか、すぐに名前を覚えてもらった、女性だからといってやりにくいと思ったことはないなど、ポジティブな声がほとんどだ。

 現場でも、女性を配属することでいい点がいろいろと出ている。たとえば、建築現場は仮囲いをしているため、中で何をやっているか、わかりにくいことが多い。しかし、女性社員が現場に出入りしていると、近隣の主婦の方から「何を造っているのですか」といった声をかけられることが増える。近隣の人たちとよい関係を保つことも現場では重要なことだが、女性がいることで安心してもらえるといった効果がある。

男性たちの身だしなみがよくなった

──女性がいることで現場の雰囲気は変わりましたか。

 女性の目があることで気を使うのか、男性たちの身だしなみがよくなったとか、現場内の整理整頓が行き届くようになったといった話が入っている。

 また、男性だけではなかなか改善できなかった長時間労働を見直すきっかけにもなるのではないかと期待している。顧客との契約により工期が決まっているため、時には長時間労働になってしまうこともあるが、決められた時間の中で1日の仕事を終えることが基本だ。

 家庭を持つ女性もいることや、やはり女性は体力面で長時間勤務は厳しいということから、工夫をして早い時間に帰ろうという意識が生まれ、ワーク・ライフ・バランスの向上につながるのではないかと思う。実際、決められた時間内に作業を終えるためにはどうしたらいいかを皆で考えるようになった現場もある。

 弊社の社員はいいものを造ろうという意識が強いあまり、特に現場ではこれまでワーク・ライフ・バランスに対する配慮は後回しになりがちだった。しかし、いいものを造るためにも、本来、ワーク・ライフ・バランスは重要な要素のはずだ。今後、女性の総合職が配属されている現場が増えていけば、大きな効果が期待できるのではないかと思う。

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