経験上重要視したことは、採用コストをいかに的確に管理していくか

--実際に人財獲得のお仕事もされたことがあるとお聞きしましたが、ご経験上重視されたことは何ですか?

第44回 オラクル・コーポレーション バイスプレジデント バートランド・デュサート氏に聞く HCM、タレントマネジメントの潮流
私は、アメリカンエクスプレスやUBSという金融機関にも在籍しておりましたが、両方の組織において、新規の人財獲得の仕事をした経験があります。これまでの経験上重要視してきたのが、「採用のコストをいかに的確に管理していくのか」ということです。採用コストをうまく管理していくために必要なことは、必要な人財についての予測を的確に立てるということだと考えていました。
どのようなデマンド(需要)があるのかということを先駆けて把握、的確に予測を立て、人財を獲得する。早めにプランをして、適切な予算の配分を受けるということによって、より採用のコスト効率を高めることができますし、より信頼性が高い人財の調達ができるということがわかっています。デマンドの予測ができなければ、人財の環境の変化、マーケットの変化に対して、事後の対応になってしまいます。そうなると適切な人財を獲得するためのコストが高くなってしまい、必要のないリスクを抱えることにもなってしまいます。

大企業が実現したいと考えているトップタレントの「見える化」

--大規模なグローバル企業を担当なさっていますが、こうした大企業の傾向で目立つことは何でしょうか?

多くの従業員を抱える大企業、またグローバルに数カ国に事業展開をしている企業というのは、上位5%、10%など、ごく限られた数のトップタレントに対しての「見える化」をもっと実現したいと考えています。これは各拠点だけでなく、事業全体を見通せるトップタレントの「見える化」「可視化」です。各事業拠点において、現在どういった機能を持った人、タレントがいるのかということを判断するだけでなく、人財を適切に流動的に動かす、再配置を行うということが必要であるということになります。それにより、適材適所の最適な配置を行いたい、そのために適切なITソリューションを活用したいということになるわけです。
これらをクラウドで行うことが望ましいという点がいくつかあります。まずは所要コストを、クラウドで行うことによって相対的に抑えることができます。また展開のスピードが早くなるということ、新しく生まれてくるイノベーションをうまく活用しやすいという点がクラウドで行う利点と言えます。

採用手法は「コンシューマーデジタルマーケティング」の世界へ

--採用の仕方もここ数年、世界的にも変わってきていると思いますが。

第44回 オラクル・コーポレーション バイスプレジデント バートランド・デュサート氏に聞く HCM、タレントマネジメントの潮流
採用の仕方、リクルーティングのあり方というのも、過去5年くらいの間でしょうか、多くの国で変わってきていると考えています。
特にアメリカ、アジアではインドのマーケットにおいて、離職率の高さが多くの企業経営者の悩みになっています。離職率が高い、人が頻繁に入れ替わるということが、事業オペレーション上の大きな問題になってきています。
ビジネスのニーズに対しての適切なリクルーティングを行うということと、今後、デマンドがどのくらいあるのかということに対しても予測能力を持つということ、また、離職にまつわるリスクがどのくらいあるのかということを的確に知るって対応していくということができるように、ソリューションをクラウド上に実装していくということを提案していきたいと思っています。
変わってきた採用の手法。それは「コンシューマーデジタルマーケティング」の世界に近づいてきていると思います。いままでのリクルーティングは、求人の募集をいろいろなメディアでかけて、あがってくる情報を一元化、1ヶ所に集めるというのが基本手法でした。いまや社員ひとりひとりがソーシャルなコンタクト先を持っており、これは「ソーシャルのシンジケーション」とも言えるものですが、これからは、どんな求人があるのかを社員が知り、この人物がソーシャルメディアを通じて、自分の会社がどういった人を探しているのかをコンタクト先に知らせ、それを知った人がまたその情報をお互いに発信し合って拡散していく。そうして求人情報が広がっていくという時代が訪れていると感じています。
「コンシューマーデジタルマーケティング」の世界においては、お客様を知らなければいけないですし、コンテンツを的確に作らなければいけません。マーケットのセグメンテーションを的確に行っていくという手法も必要です。また、そこから得たインサイトの特定をするという手法が必要だったのですが、そういった施策が人事の世界、求人の世界にも起ころうとしていると考えているのです。チーフHRオフィサーが、チーフマーケティングオフィサーのような考え方を持たなければいけない時代になっていると言えると思います。
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