一度も守られたためしのない就職協定

この会場に来られた皆さんの頭の中は2015年卒の新卒採用のことで一杯でしょうが、今日は2016年卒の話をします。2016年卒の新卒採用はスケジュールが大幅に後倒しになります。どんな影響があるでしょうか。
その前に、新卒採用の歴史的な動きを整理しましょう。「就職協定」は1952年に文部省(当時)の通達によって始まりました。岩戸景気で人手不足になり協定を守らない企業が続出し、1960年には「青田買い」という言葉が使われ始めました。就職協定は、最初から守られたためしがないのです。1982年には労働省が関与を止め、産学だけの取り決めになりました。1992年には大学も離れ、産業界の紳士協定になりましたが、一貫して守られません。
1997年には経団連の根本二郎会長(当時)が、就職協定はもはや形骸化していると廃止を決定。しかし何らかのガイドラインは必要だろうと、1997年から「倫理憲章」が始まっています。現状は12月1日広報開始、4月1日選考開始です。
ところが安倍政権の要請を受け、2016年卒から4カ月後倒しとなり、3月1日の広報開始、8月1日の選考開始となります。
新ルールは守られるのか?

就職協定の時代に、8月選考をしていました。だから「昔に戻るだけ、対応できるだろう」という見方もありますが、私は難しいと見ています。理由の一つは、学生数が増えたことです。また新卒を採用する企業も増えました。多くの学生の選考には時間が必要ですが、限られた時間でできるでしょうか。
もう一つは、過去に就職協定は守られたことがないという事実です。現行の「4月1日選考開始」は「建前を捨て、本音レベルで守れる期日」という現実的な線なのです。新ルールに関して、現状では企業の公式な回答は「守る」が7割と多数派ですが、有力企業が1社でも破れば、バラバラと後追いする企業が続出するでしょう。実際に守られるかどうかは、やってみないと分からないでしょう。

採用活動の後倒しは多くの問題をはらむ

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