10月以降の内定辞退が増えた大企業

次に、「(採用活動を)終了した」企業を対象に、「終了した時期」を確認してみましょう。企業規模により、終了時期には違いが見られます[図表3]
[図表3]2022年新卒採用活動の終了時期
大企業では「2021年6月」に32%でピークを迎えますが、「2021年6月まで」(「2020年12月以前」~「2021年6月」の合計、以下同様)に終了した企業の割合は、大企業では41%と4割を超えますが、中堅企業22%、中小企業23%と、まだ2割強にとどまります。

中堅企業は「2021年8月」に22%で終了時期のピークを迎え、中小企業は1カ月後の「2021年9月」に21%でピークを迎えます。ただ、中堅企業と中小企業の動きは似通っており、「2021年6月まで」とそれぞれのピークである「2021年8月まで」と「2021年9月まで」に終了した割合の推移を見てみると、中堅企業が22%→48%→67%、中小企業は23%→49%→69%となっており、この間に45~46ポイントほど伸びています。

一方、大企業はというと、41%→59%→73%といずれも中堅・中小企業を上回っているものの、この間の伸びは32ポイントしかありませんので、「2021年6月まで」では中堅・中小企業と20ポイント近くあった差は、4~6ポイントの差しかなくなっています。大企業では、「2021年11月」にも23%と「2021年6月」に次ぐ二つ目の山が来ています。

次に、「10月以降の内定辞退率」について前年との比較を聞いてみた結果が[図表4]です。全体をはじめ、どの企業規模でも「(前年と)変わらない」とする回答が圧倒的に多く、8割を超えています。ただ、「増えた」企業と「減った」企業の割合を比較してみると、企業規模による違いが見られます。
[図表4]10月以降の内定辞退率の前年比較
意外にも、大企業のみが「増えた」12%に対して、「減った」が6%と「増えた」企業の割合のほうが多くなっています。しかもダブルスコアです。一方、中堅企業は「増えた」の7%に対して「減った」が12%、中小企業は「増えた」の5%に対して「減った」が9%と、逆に「減った」のほうがダブルスコアに近い差で多くなっています。

前項で見たように、大企業では採用活動の終了時期(内定を出し終えた時期)が早い企業が多く、当然、内々定・内定期間が長くなりますが、その間のコミュニケーションの密度や内容に課題があったのかもしれません。また、早期に内定した学生は、大学3年のインターンシップ参加を起点に、内定取得まで企業と長期にわたるコミュニケーション機会があったのに対して、採用活動の後半で内定した学生は、企業との最初の接点から内定までの期間が短く、コミュニケーションの密度においても内容(質)においても、入社後の不安を払しょくできるほど十分ではなかったとも考えられます。大企業ほどオンライン選考のみで内定に至った内定者が多く、企業と学生の関係性(グリップ)の弱さもあったのではないでしょうか。いずれにせよ、内定辞退防止は、大企業にとっても次年度に向けた大きな課題となりそうです。

内定辞退率が「増えた」企業と「減った」企業について、採用担当者からの考察コメントを紹介します。

【増えた】
・複数内定者を抱えたまま就活継続する学生が増えた。オンライン化浸透により学生側の就活負担が減ったせいで、応募者母集団は増えたが、内定者母集団(各社競合多重内定者)も増え、学生側も一通り就活が一段落した後に承諾を出す傾向が強まった(メーカー、1001名以上)
・Web応募が多くなり、滑り止めで当社を受ける学生が増加した(建設・住宅、1001名以上)
・対面接触が限られたこと(商社、1001名以上)
・志望意思が低い企業へ活動しているように思う(IT・インターネット、301~1000名)
・オンライン面接により、会社への思い入れが以前と比較して薄まった(メーカー、300名以下)
・志望度を上げきれなかった、内定出しの遅れ(メーカー、300名以下)

【減った】
・内定者フォローのきめ細かい実施(流通、1001名以上)
・グリップ力の向上(流通、1001名以上)
・企業理解度を採用前から例年以上にした(建設・住宅、301~1000名)
・アウトソーシング等で進捗管理等事務作業を効率化し、学生との接点を増やせた結果と考えている(メーカー、301~1000名)
・内定時期が例年よりも遅くなった(メーカー、300名以下)

「ターゲット層の集客」に苦労した企業

この記事にリアクションをお願いします!