横行する面接での禁止質問

次は、「内定」というキーワードからは外れますが、学生の生の声を抜粋してお届けしたいと思います。今後の採用活動の参考にしていただければ幸いです。

まずは、「説明会や面接を通じて、企業の社員や人事に言ってほしくなかった言葉」です。企業側にその意図はなくても、学生は圧迫面接だと受け取ってしまうこともあります。社員や人事の好印象は、学生の志望度向上に大きく寄与する半面、悪印象は逆に志望度を後退させてしまうリスクもはらんでいますので、注意が必要です。

・(ガクチカ=学生時代に力を入れたことに対して)それはすごいことなの? すごさがよく分からない(上位国公立大・理系)
・他の人と比べて2歩も3歩も足りていない。期待を超えてこない(その他国公立大・文系)
・君の夢は無理だと思う(その他国公立大・理系)
・君はうちでは活躍できないと思うよ(早慶クラス・文系)
・研究内容を説明したら、全然分かんないと言われ、高校の部活を話したら、その高校は強いイメージないと言われた(旧帝大クラス・理系)
・男性の多い業界で、「あなたは女の子だからねぇ」と言われたこと。女性が技術職に就くことに対して、何か思ってしまうことは百歩譲っても、このご時世でその言葉が喉で止まらない倫理観に驚いた(上位国公立大・理系)
・逆質問をした際に、「それ聞く必要ある? 意味なくない?」と馬鹿にしてきたこと(上位私立大・文系)
・3人の集団面接なのに、面接官が1人のみに「お待ちしています」などと合格を示唆する言葉をかけていて不快に感じた(上位国公立大・文系)
・面接官の方の志望動機を伺った際に、「自分たちの時代は特にやりたいことがなくても入ることができたので」と言ったこと(早慶クラス・文系)
・その会社の施策にとても共感していたのに、面接官はあまりいい印象を持っておらず、その施策をけなしていたこと(上位国公立大・理系)
・他の企業の評価を下げ、自社を持ち上げる言葉(旧帝大クラス・理系)
・グループディスカッションで大学名を言うことは、グループの発言裁量が低くなるので大学名は伏せてほしかった(中堅私立大・文系)

職業安定法では、「本人に責任のない事項」と「本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)」の11項目については、就職差別につながる恐れがあるとして面接選考で質問することを禁止していますが、実際の面接現場では横行しているようです。特に多いのが「家族に関すること」です。人事以外の部署の人が面接官となることも多いでしょうから、面接官研修を実施するなり、面接の進め方と禁止事項の資料を配布するなり、周知を徹底させる必要がありそうです。

・家族の職業や家族構成を聞かれて幻滅した(上位私立大・文系)
・銀行系の企業で家族構成や家族の仕事や勤務地について質問された(その他私立大・文系)

言葉自体が悪いわけではないものの、選考結果が決まっているわけではないのに期待をさせるような発言へのコメントも少なくありません。

・「ぜひ一緒に働きたいです」という言葉。結果は不合格だったのに、変に期待させることを言わないでほしい(中堅私立大・理系)
・二次面接で、次の面接を期待させるような言動をされたことです。あまりに具体的だったので次を期待しましたが、結局不合格となり精神的につらかったです(上位私立大・文系)

また、言葉だけでなく、表情や態度にも注意が必要です。

・言葉はあまりないのですが、明らかに話が伝わっていないような表情をされると、不安になりました(上位国公立大・文系)
・面接の時間に遅れて来る面接官の方は、「最初から採用する気がないのだな」と思い、気分を悪くしました(上位私立大・文系)
・言葉には出さないが態度が悪かったり、自分が言ったことに対して嘲笑されたり、嫌な雰囲気を醸し出された時に嫌悪感を抱いた(その他私立大・文系)

本当に気になるのは「福利厚生・給与・休日」

最後に、学生が会社説明会や面接で、質問したくてもできなかった内容についても紹介します。

・コロナ禍で影響を受けている業界に「どんな影響を受けて、これからの課題はあるか」と聞きたいが、オンラインだとなかなか聞きづらく感じた(上位私立大・文系)
・本当に誰もが納得する自分の会社しかない強みってなんだと思いますか(旧帝大クラス・文系)
・マスクを着用した面接官が画面越しで何を話しているのかわからない場面があったが、聞き返すことができなかった(中堅私立大・理系)
・社内結婚率はどれくらいですか(その他私立大・文系)
・転職する人はどれくらいいますか(上位国公立大・文系)
・入社してから他の会社に入社したいと思いましたか(上位国公立大・理系)
・働いている社員の生きがい(早慶クラス・文系)
・最終面接の方の名前と役職(中堅私立大・文系)
・今までの社会人生活で犯した失敗にどう対処してきたか(早慶クラス・理系)
・実際どのくらい転勤があるのか。ゴネれば転勤しなくても済むのか(上位私立大・文系)
・今後の詳しい選考スケジュール(旧帝大クラス・文系)
・リモートワークで地元から勤務することは可能か(出社の場合、新幹線通勤は可能か)(その他国公立大・理系)
・女性の産休などが、昇進に影響するのか(上位国公立大・理系)
・結婚や出産は、海外への駐在に関しては、関係ないのか(上位国公立大・理系)
・中間層の社員が少ない理由(その年代の採用数が少なかったのか、転職者が多いのか)(上位国公立大・理系)
・どれくらい内定承諾を待ってくれるか(旧帝大クラス・理系)
・その会社を辞めた人たちの共通点(旧帝大クラス・文系)
・他社と比較した上での弱みや改善点(上位私立大・文系)

ただ、なんといっても多いのは「福利厚生」「給与・待遇」「休日・残業」に関する内容で、回答者全体の8割以上を占めています。

・どの程度実際に休みを取ることができるのか、給料の幅(どれだけ頑張ればどの程度稼げて、頑張らなかったとしたらどの程度か)(早慶クラス・文系)
・給与について。説明会で採用担当の方はNGなしで!と言ってくれるけれども、やはり抵抗があった(中堅私立大・文系)
・福利厚生・年収モデル(タブーとされる質問内容であるが、10、20年後の働き方の想像を求めるのであれば年収や福利厚生のことも考慮するのは当然なのではないかと感じた)(旧帝大クラス・文系)
・給料や休日のことなど、もう少し詳しく知りたいと感じても、印象が良くないと思われてしまうことが怖くて質問できなかった(その他私立大・理系)
・休日や有休消化率については聞きたくても聞きづらかった(その他私立大・文系)
・福利厚生について詳しく聞きたかったけど、志望度が低いと思われると思って聞けなかった(その他私立大・理系)

「福利厚生」「給与・待遇」「休日・残業」を気にするような学生は要らん、と言ってしまうのではなく、そういう時代なのだと理解してあげることも大切です。「福利厚生」「給与・待遇」「休日・残業」だけをテーマにした会社説明会やセミナーを実施してみるのはどうでしょうか。他社との大きな差別化につながるだけでなく、応募者のモヤモヤ感をすっきりさせてあげることで志望度向上にも大いに貢献するのではないかと考えます。

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