「ロジカルシンキング」とは、情報を整理したり、分析したりしながら、筋道を立てて結論を導き出そうとする思考法を指す。多様な価値観を持つ従業員が増えていくなか、考えの異なる相手を納得させるロジカルシンキングは、組織のパフォーマンスを最大化させるうえで重要なスキルといえる。本記事では「ロジカルシンキング」を深掘り、習得することによるメリットや手法、役立つフレームワークなどを解説していく。

「ロジカルシンキング」の意味、クリティカルシンキングとの違い

「ロジカルシンキング」とは、情報を感情的に、もしくはそのまま受け取るのではなく、情報を分解・整理し、道筋を立てて結論を導き出す思考を指す。日本語では、「論理的思考」と訳されることが多い。

「ロジカルシンキング」は、様々なビジネスシーンで活用され、プレゼンや商談の場面だけでなく、コミュニケーション、文書作成、そして企業の課題の解決にも使われている。

従業員がロジカルシンキングを習得できれば、問題解決能力や生産性の向上が期待できるため、企業全体の質の向上にも繋がるというわけだ。

●クリティカルシンキングやラテラルシンキングとの違い

思考法では、「クリティカルシンキング」や「ラテラルシンキング」も比較的有名であるが、これらとロジカルシンキングの違いはどのような点にあるのだろうか。

・クリティカルシンキング
クリティカルシンキングとは「批判的思考」と言われるものである。物事や情報を「本当に正解なのか?」と批判的に見て正解を導き出す思考法だ。物事をその時々で批判的・客観的に考え、正解に導いていく思考法であるため、始めから結論まで一貫性を保ち、筋道を立てながら思考するロジカルシンキングとは異なる。

・ラテラルシンキング
ラテラルシンキングは日本語で「水平思考」と呼ばれる思考法だ。既成概念を一度捨て、既存の方法や考えにとらわれず新しい方法やアイデアを生み出していくというものである。ラテラルシンキングでは、1つの結果にたどり着くまで、「Aという方法がよく使われるが、A2という方法もあるのでは?」と考えるため、思考の末の結論も変わる可能性がある。反対にロジカルシンキングでは結果は既に決まっており、その結果に行きつくまでの過程を論理的に積み重ねていくものとなる。

「ロジカルシンキング」を構成する6つの要素

「ロジカルシンキング」を構成するのは以下の6つの要素だ。1つずつ解説していこう。

(1)意見や主張に筋道が通っている

「ロジカルシンキング」では考えや意見に筋が通っていることが重要となる。これは意思決定、コミュニケーションを取る際に必要な部分となる。基本になるのは「演繹的思考と「帰納的思考」である。

(2)バイアスを避けながら、全体をバランスよく捉えている

「ロジカルシンキング」では、バイアス、つまり「偏り」なく対象を見ることも必要である。他の印象に引っ張られる、もしくは結論のイメージに影響されることなく、バランスよく捉えることを心がけねばならない。

(3)合理的思考

「何が重要なのか?」を見極めるために必要な能力が合理的思考である。合理的思考を持っていると、問題が発生した際でも、誰が対応したらいいのか、そしてどう対応すればいいのかを効率的に考えることができるはずだ。

(4)物事の適切な分解

問題解決では、発生した問題を分解することで問題点や原因を見つけることができる。問題点をはっきりさせると良い解決法も生まれることだろう。なお、問題点を分解する時は「漏れ」や「重複」を避けるという意味の「MECE」というフレームワークを意識すると良いだろう。

(5)因果関係の適切な把握

因果関係を適切に把握することは、問題解決では非常に重要である。原因と結果を結びつける因果関係を把握することで、問題をしっかりと捉えられるのだ。

(6)言葉や数字を適切に扱っている

「ロジカルシンキング」に限ったことではないが、言葉や数字の意味を知って、誰もが知る基準で問題点を考えることが重要である。これはクリティカルシンキングでも同様である。

「ロジカルシンキング」がもたらす5つのメリット

ロジカルシンキングを習得することでもたらされるメリットには何があるのだろうか。ここでは次の5つについてご紹介する。

(1)分析力が向上する

「ロジカルシンキング」を習得することで分析力の向上が期待できる。ロジカルシンキングでは問題点がある場合、「問題を分ける」、「因果関係や相関関係を明らかにする」、「分析や解明から適切と思われる解決策や判断を探す」ことが可能になる。

問題が生じた場合、なんとなく考え出した解決策や、成り行きに任せた対応策ではなく、問題をしっかり考え理解し、課題を考えることができるようになるのだ。

(2)問題解決能力が向上する

問題を解決する際は、まず、どこが問題なのか、および原因を突き止めることが必要だ。フレームワークを用いることで、どこに問題があるか原因を突き止めることが可能になる。

従業員に、行き当たりばったりの解決方法ではなく、根本的に問題を解決する力を身につけてもらいたいのならば、「ロジカルシンキング」の習得を促すようにしたい。

(3)提案力が向上する

会議や交渉の場など、仕事をする中で異なる意見をぶつけ合う機会も少なくないだろう。ロジカルシンキングには「論理的に意見を組み立てることができる」、「筋道を立てた説明ができる」というメリットがあるため、従業員が身につけておくとスムーズに自分の意見や考えを伝えることができ、ビジネス上でも有利に物事を進められるようになるはずだ。

(4)コミュニケーション能力が向上する

「ロジカルシンキング」を習得していれば、自分の意見を論理的に構築することができるため、考えを的確に伝えることが可能になる。また、相手の意見を理解する力がつくことも期待できる。

(5)生産性が向上する

「ロジカルシンキング」では論理的に物事を考えるため、問題点や課題の本質をしっかり見ることも可能になる。そのため、無駄なプロセスを省いて物事も進められるようになるだろう。無駄が無くなれば、それだけ生産性の向上も望めるはずだ。

「ロジカルシンキング」にはどのような手法がある?

「ロジカルシンキング」の手法には下記のようなものがある。詳しく解説していこう。

●帰納法

帰納法とは複数の出来事から共通のルールを見つけ出し、結論を導き出す方法だ。例えば、「A社は今期の業績が上がった」、「B社も今期の業績が上がった」という事実から、「業界の景気は好転している」という結論を導き出すということである。

●演繹法

演繹法は決まった一般論や法則に出来事を当てはめて結論を導き出すという方法だ。例を挙げると、「紙は燃える」という一般論に対し、「新聞は燃える」という出来事を当てはめると、「新聞は紙である」という結論が導き出せるということである。なお、有名な哲学者・デカルトの「我思うゆえに我あり」も演繹法を使ったものである。

●弁証法

ひとつの物事に対し、反対意見を出し、そこから解決案を導き出すというのが弁証法だ。例えば、「酒を飲みたい」と意見があるとしよう。それに対し、「酒は健康に悪い」という反対意見が出た場合、「アルコール度数の低い酒を飲む」という解決案が出せるのではないだろうか。このように、矛盾する2つの意見・事柄からより良い解決案を出すのが弁証法だ。

「ロジカルシンキング」のフレームワーク

「ロジカルシンキング」のフレームワークについて4つ紹介したい。

●ピラミッドストラクチャー

ピラミッドストラクチャーは、簡単に言えばピラミッド型のフレームワークのことだ。結論を頂点にし、その下に根拠・理由を置く。帰納法はこのピラミッドストラクチャーに当てはまるものである。

●ロジックツリー

ロジックツリーは問題点をツリー型にして表すフレームワークを指す。次の3種類で成り立っている。

要素分解:問題全体を把握し、要素に分解する
原因究明:問題の原因を究明する
問題解決:問題の解決策・改善案を出す

●MECE

MECEとは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略であり、日本語では「漏れなく重複なく」という意味の言葉だ。「ロジカルシンキング」を活用して問題解決する際はMECEを意識しておくことが必要である。もし、MECEを意識せず解決法に漏れがあれば、本当の解決とはいかない。また、重複があれば、再度同じような問題が生じた時に今までの解決法を再度試すなど、効率が悪くなることも予想される。

●So What?/Why So?

「ロジカルシンキング」では、「So What?(つまり)」・「Why So?(なぜ)」を繰り返し問い続けることが重要だ。繰り返し問うことで問題の深堀が可能となる。また物事の本質を捉えるのにも必要な作業といえるだろう。


「ロジカルシンキング」とは、問題点を論理的に考えることによって、問題解決に導く手法のことである。「ピラミッドストラクチャー」、「ロジックツリー」といったフレームワークを用いることで、問題を分解し、原因究明や解決に導きやすくなる。また、「MECE」のフレームワークは問題をもれなく重複なく把握するために役立ち、再度同じような問題が起こった場合でも、効率よい解決に導いてくれることだろう。なお、ロジカルシンキングは批判的思考と呼ばれる「クリティカルシンキング」や水平思考と呼ばれる「ラテラルシンキング」と使い分けることも重要だ。従業員にはこれら3つの特徴をしっかりと把握することも促す必要があるだろう。
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