DXを推進する「デジタル人材」採用の極意とは〜企業競争力を高める組織・人材戦略〜
2018年に独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が東証一部上場企業1,000社に「デジタルトランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」を実施した。同調査によれば、デジタルを活用した組織・ビジネスモデルの変革(デジタルトランスフォーメーション=DX)の推進を担う人材について、「大いに不足」「ある程度不足」との回答が60%を超える結果になった。

DXを志向する各社にとって推進役となる「デジタル人材」の確保は、喫緊の経営課題となっていると言えるだろう。一方、多くの企業が発掘と採用に知恵を絞っているものの、有効な打ち手が見いだせていない状況だ。

これを受け今回、UI/UXデザイナー、Webディレクター・マーケッターなどクリエイター系のデジタル人材採用支援で多くの実績を持つ株式会社クリーク・アンド・リバー社の執行役員 渡辺 和宏 氏にお話を伺った。デジタル人材の確保及び定着に向け、人材戦略はどのようにアップデートすべきなのか。また、今後、企業のDXはどのような局面を迎えるのか。以下に対談の内容をレポートする。

プロフィール


  • 株式会社クリーク・アンド・リバー社 執行役員 渡辺 和宏 氏

    渡辺 和宏 氏

    株式会社クリーク・アンド・リバー社 クリエイター・エージェンシー・グループ 執行役員

    2002年株式会社クリーク・アンド・リバー社入社。映像分野で活躍する派遣就業クリエイターを担当、また制作受託の営業に従事。その後2005年から人材紹介事業を担当。

デジタル人材が求める2つのポイント

――貴社はクリエイティブ業界向けのデジタル人材エージェントとして、多くの人材と接しています。その中で、デジタル人材がどのような視点で就業先を選んでいるか。近年の志向性や傾向を教えてください。

渡辺氏:大きく2つの傾向が挙げられます。1つめは、就業形態に関する問い合わせが増えたことです。フルリモートなのか出勤と併用なのか、ということが就業先を選ぶ上で一つの判断基準となっています。これは昨年の新型コロナウイルスによる1回目の緊急事態宣言発令時から表れ始めた傾向です。合わせて、副業についても聞かれることが増え、既存の働き方とは異なる働き方が求められるようになったと言えるでしょう。
クリーク・アンド・リバー社渡辺様@
2つめは、事業やビジネスに社会貢献性の高さを求める方が増えたことです。あくまで肌感覚ですが、3年ほど前から医療系のプロダクトやいわゆるソーシャルビジネスに関わりたいという声を多くいただくようになりました。また、キャッシュレス決済など、今までの生活スタイルを変えたり、行動変容を促したりするビジネスに関心を持つ方も多くなりました。

――企業側としてはどのような対応が求められるとお考えですか。

渡辺氏:プロダクトやサービスをすぐに変えるのは困難ですので、就業環境をテコ入れするのは、有効な選択肢の一つだと考えられます。ただし、単純にフルリモートにするのが良いということではないので注意が必要です。また、新たにデジタル人材を採用するとなったら、評価制度も変えなければならないでしょう。

――評価制度を変えるのは難しく、デジタル人材の志向性と自社文化が合わないという声が、特に昔ながらの大手の日本企業などから聞かれます。

渡辺氏:解決策の一つとしては、別会社を作ることです。実際、大手企業などでは「デジタルに特化したグループ会社を設立する」といった運用をしているケースが複数あります。大切なのは、別会社の設立や新制度の導入など、自社なりにベストな形を追求し、それを外部に発信することです。せっかくの取り組みも、自社で閉じられていては意味がありません。情報発信は重要なキーワードの一つです。

自社にとって必要なデジタル人材を定義する

――次に企業側の動向をお聞きします。デジタル人材の採用を試みている企業には、どのような傾向が見られるでしょうか。

渡辺氏:デジタル人材の採用に実績のある、例えば、IT系企業やゲーム会社ではコストのかけ方に濃淡がはっきり出てきました。人材採用を重要な経営戦略の一つと見なす企業もあれば、そうでない企業もあります。採用力に違いが出てきているように感じられます。

――初めてデジタル人材を採用する企業には、どのような傾向が見られますか。

渡辺氏:大きく2つあります。1つめは、何をどうしていいかわからないというケースです。自社のDXにはどのような人材が必要か、スキル要件や給与相場もわからないという企業から相談をいただくことは少なくありません。ただ、まったくわからないと相談を持ち掛けるのは悪いことではないと言いますか、解決に向けて意欲的に取り組んでいただければ、むしろ採用がうまくいくことが多いです。
クリーク・アンド・リバー社渡辺様A
採用に苦労するのが2つめで、何でもできる人材を求めてしまうケースです。一口にデジタル人材と言っても幅広いのですが、デザインやシステム設計、事業運営などすべてできる「スーパーマン」みたいな人材をデジタル人材と定義しているのです。そうした人材は探せばいるのかもしれません。しかし、提示される給与設定が相場から大きくかけ離れていることがほとんどなので、採用はほぼ不可能と言えるでしょう。




この後、下記のトピックが続きます。
続きは、記事をダウンロードしてご覧ください。
●就業環境だけじゃない、「デジタル人材」が企業を選ぶポイントとは
●情報発信がこれからのデジタル人材採用において重要となる
●自社にとって必要なデジタル人材を定義しなければ、採用は成功しない
●企業がデザイン思考を取り入れる際に注意すべき落とし穴
●デジタル人材の採用がうまくいっている企業例の紹介

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