2020卒ペースの内々定率に

次に、3月中旬段階での内々定率について見てみましょう。2021卒採用を振り返ってみると、新型コロナ感染症が拡大する中で、説明会や面接選考が中止や延期となったり、あるいは新卒採用自体の見直しが実施され、新卒採用の中止や採用数の減少を打ち出す企業が現れたりしたのは3月以降のことで、前半戦は2020卒採用よりも却って早いペースで内々定出しが進行していました。そのため、3月時点での調査結果では、2020卒よりも2021卒のデータのほうが内々定率では先行していたわけです。

前述のセミナー・説明会や面接と同様に、内々定取得社数についても文理別に過去3年の調査結果を比較してみたのが、[図表11][図表12]のデータになります。
第123回 マーケティングを意識したインターンシップの設計が求められる時代
文系では、内々定取得社数が「0社」と回答した学生が76%で、77%だった2020卒とほぼ同じ結果になっています。「0社」が76%とは、裏返せば「1社以上」の内々定取得者が残り24%、すなわち内々定率24%を意味します。前半戦が早いペースで進行していた2021卒は、内々定率が29%でしたので、3月時点では昨年より内々定出しのペースが遅いと言えます。社数の内訳を比較しても、これまでよりも多くの企業で内々定出しが進んでいることはうかがえません。

一方、理系の内々定率(「0社」を除いた割合)は42%で、2020卒の32%よりも2021卒の45%に近い数値となっています。内々定率はわずかに昨年に及ばないものの、「3社」と回答した割合は昨年よりも2ポイント、一昨年と比べると4ポイントも高くなるなど、理系は極めて早いペースで選考、内々定出しが進行していることがうかがえます。

今度は、内々定取得時期で過去3年間の結果を比較してみましょう。内々定取得者を対象に、[図表13]は文系、[図表14]は理系について、すべての内々定を取得した時期を複数選択方式で回答してもらった結果の比較データになります。
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文系では、2020卒と2022卒の「3年生3月」がともに48%となり、「同2月」の20%、29%から大きく伸びているのに対して、2021卒は「同2月」が2022卒と同じ29%であったものの、「同3月」は32%とほとんど伸びることなく、選考・内々定出しのスピードに急激なブレーキがかかったことがうかがえます。

もう一つ、2021卒は2020卒と比べて「3年生2月」までは極めて早いペースで内々定出しが進んでいたわけですが、「同12月」以降は2022卒もそれに近いペースで内々定出しが進み、「同3月」では逆に2021卒を大幅に上回るペースで内々定出しが行われています。

理系もほぼ同様です。「3年生2月」までは2021卒が上回っていますが、「同12月」以降は2022卒もそれに近いペースで内々定出しが進み、「同3月」で大きく逆転しています。この後、2021卒はしばらく内々定出しのスピードが停滞しますので、2022卒の内々定率が今後どんどん引き離していくことが予想されます。現に、就職ナビ各社が発表する月次の内定率調査では、2021卒を大きく上回り、2020卒並みかそれ以上に回復してきているとしています。

■2022年卒業予定の大学生・大学院生の5月末時点での内々定率は59.9%(前年比11.9ポイント増)、平均内々定保有社数は2.0社(前年比0.3社増)であった。内々定率は新型コロナウイルス感染拡大以前の2020年卒並みとなっている。また、全体の31.4%が活動を終了したと回答した(マイナビ 2021年6月7日発表)

■6月1日時点の大学生(大学院生除く)の就職内定率は、68.5%(+11.6ポイント)となりました。引き続きコロナ禍以前の2020年卒と同水準となっています(リクルート 2021年6月7日発表)

■6月1日現在の学生モニターの内定率は 71.8%。先月調査(5月1日、58.4%)からの1カ月間で13.4ポイント上昇し、前年実績(64.0%)を7.8ポイント上回った。今期は序盤から早いペースで進行。前年のみならず、新型コロナウイルスの影響がなかった2年前に比べてもかなり高い水準で推移してきたが、選考解禁のこのタイミングで2年前(2020年卒者、71.1%)とほぼ同水準になった(ディスコ 2021年6月7日発表)

採用活動はマーケティング活動へ

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