「フィードバック」とは、従業員の業務内での行動や言動に対しての評価を、口頭または文章にて伝える方法を指す言葉だ。一般的には、1on1ミーティングのように上司と部下の1対1の形式で実施される。フィードバックは、人材育成や人事評価の場面で用いられることが多い。ただし、フィードバックは全体の目標達成に必要な行動を促すために、「次につながる情報」を共有するもので、一方的に従業員を評価するものではない。ここでは、「フィードバック」がなぜ企業に必要なのか、その意味と目的、人材育成における効果や手法まで解説する。

「フィードバック」の意味とは? コーチングと何が違う?

ビジネスにおける「フィードバック」とは、“目標達成のために行われた、各人の行動による結果を情報として伝えること”を指す。上司と部下、あるいはマネージャーとチームメンバーが1対1の状況で行うのが一般的である。

フィードバックの際には、その人の性格や行動を責めたり叱ったりするのではなく、その行動によってどのような結果になったのかという情報を伝えていく。フィードバックを受けた者が次の行動に活かせるよう、しっかりとした根拠のある情報に基づいて、改善点や良かった点を相手に伝えることが大切だ。

●「フィードバック」が近年注目されるようになった背景

「フィードバック」が多くの企業に注目されるようになった背景には、さまざまな要因がある。

・雇用形態の多様化
年功序列や終身雇用など、日本型雇用と呼ばれる雇用形態が崩壊しつつある今。雇用形態が異なる者同士でも適切なコミュニケーションを図り、組織の一体化を目指す必要がある。

・上司と部下のコミュニケーション不足
経営の効率化のために管理者層の業務の幅が広がっていることで、上司が部下一人ひとりとコミュニケーションをとる時間が減ってきていることも理由の一つに挙げられる。お互いをよく理解するために、フィードバックのように1対1で向き合う時間が必要なのだ。

・価値観の多様化
従業員の価値観が多様化したことによって、それぞれの価値観を理解して、目標達成に近づく行動を個々に促す必要性も高まっている。

このように企業を取り巻く環境は今大きく変化しており、企業側には従業員に対する姿勢や企業文化の変革が求められている。内部から組織を強化し、新たな企業風土を醸成する効果を求めて、フィードバックを導入する企業が増えていると考えられる。

●「フィードバック」とフィードフォワードの違い

「フィードバック」と似たものにフィードフォワードがある。フィードバックが事実に基づいた指摘を行うのに対し、フィードフォワードでは目標に対して自分たちができることは何か、目標達成に向けて何をすべきかを話し合うことを指す。フィードフォワードは解決策を重視し従業員のやる気や自主性を育てていく。

●「フィードバック」とコーチングの違い

「フィードバック」が起こった事実に対する結果を伝えるのに対し、コーチングでは相手に問いかけ、傾聴を中心としたコミュニケーションを取っていく。上司が部下に対して行動を指摘するのではなく、部下自身が自分の中にある問題点や選択肢に気づいて行動できるよう促すのがコーチングだ。

●「フィードバック」とマネジメントの違い

マネジメントは、組織で目標を達成するために行う手法のすべてを指す。「フィードバック」はマネジメントにおける一つの手法と言い換えることができるだろう。

フィードフォワード、コーチング、フィードバック。いずれも「目標達成に向けて人材を育成する」という目的は同じだが、とる手法が異なるのだ。そしてこれらは、すべてマネジメントの手法の一部と捉えることができる。

気になる「フィードバック」の目的や効果とは

なぜ多くの企業が「フィードバック」に着目し、導入するのだろうか。ここからは、フィードバックの目的や効果について説明する。

●目標達成

「フィードバック」は、組織全体やチームの目標を達成するために行われる。行動が成果につながっているのか、チームや個人が成長しているのかを適宜振り返ることで、組織やチームのモチベーションを保ちながら効率的な目標達成を目指せるようになる。

●人材育成

「フィードバック」は人材育成にも有効な手段だ。上司が部下に対して定期的にフィードバックを行うことで、適切なコミュニケーションを図れるほか、部下の課題を上司が把握し、行動の改善を促すことができる。

●モチベーションアップ

「フィードバック」では問題点を指摘するだけでなく、良かった行動、成果につながった行動も本人に直接伝えていく。定期的なフィードバックによって、自分の行動を冷静に振り返ることができ、業務に対する自信を持てるようになるだろう。

また、自分の日ごろの行動を上司やチームメイトにしっかりと見てもらえていると感じることで、業務や目標達成へのモチベーションが高まっていく。

●パフォーマンス向上

「フィードバック」を重ねることによって、フィードバックを受けた側は効率や生産性を考え自主的に行動できるようになる。また、自身の行動がどのように組織に反映されているかを理解できれば、「目標達成において効果的ではなかった行動」を自然と避けられるようになる。ただし、従業員のパフォーマンスを向上させるフィードバックには、フィードバックを行う側の技術が必要となる点も覚えておきたい。

「フィードバック」にはどのような種類や手法があるか

「フィードバック」をより効果的に行い、導入の目的を果たすためにも、フィードバックを行う前にその種類や手法について理解しよう。

●「フィードバック」の種類

「フィードバック」の種類には、主に次の2つがある。

・ネガティブ・フィードバック
ネガティブ・フィードバックは、「フィードバック」を受ける側の行動や言動に対して否定的な表現を用いて行うフィードバックのことを指す。自分の行動や言動をいったん否定されることで、従業員は自分自身の問題を自分で考える力を身につけられる。

ネガティブ・フィードバックは基本的には使われない手法だが、リーダーや幹部候補など、より主体性が求められる人材の育成には効果的だと考えられている。ネガティブ・フィードバックはあえて否定的な表現を用いるため、実施側はかえって従業員のやる気をそがないように“言葉を選ぶ”、“対象者を絞る”など注意しながら実践する必要があるだろう。

・ポジティブ・フィードバック
ポジティブ・フィードバックは、「フィードバック」を受ける側の行動や言動に対して肯定的かつ前向きな表現を用いて行うフィードバックのことを意味する。従業員の承認欲求を満たし、自己肯定感を高めて意欲を向上させる効果がある。

ただし、ポジティブ・フィードバックを意識するあまり、従業員が現状で満足してしまう言葉選びにならないよう注意しなければならない。

●「フィードバック」の手法

「フィードバック」の手法には、主に次の3つがある。

・サンドイッチ型
サンドイッチ型では、「ほめる・改善点を伝える・ほめる」というように、ポジティブなフィードバックにネガティブなフィードバックを挟みながら実施していく。サンドイッチ型を用いれば、モチベーションを低下させずに改善点を伝えられるようになる。シンプルな方法のため、特段の技術も必要なく実施できるのが利点だ。

・SBI型
SBI(Situation Behavior Impact)型は、フィードバックをS(Situation:状況)・B(Behavior:行動)・I(Impact:影響)の順に行うフィードバックの方法だ。順序立ててフィードバックの内容を伝えることで、フィードバックを受ける側が理解しやすいという利点がある。

例えば、「今回のプロジェクトで(状況)」「スケジュール通りに業務を遂行できていたので(行動)」「チーム全体の士気が向上した(影響)」というように、具体的に内容を伝えるのがSBI型の特徴だ。

・ペンドルトンルール
ペンドルトンルールでは、フィードバックを受ける側が主体的に行動プランを考えられるよう促す手法だ。実際に行ったことに対する評価を確認しながら、良かった点をほめつつ「さらに状態をよくするために行えることはあったか」など問いかけ、自分で改善点に気づけるよう導いていく。

場面別「フィードバック」の重要性

「フィードバック」をうまく活用すれば、人材育成あるいは人事評価の場面で大いに役立つ。ここでは人材育成と人事評価の場面でフィードバックを利用する重要性について説明する。

●人材育成

人材育成のために「フィードバック」を利用することで、部下が抱える課題や悩みに気づき早い段階でフォローできるようになる。フィードバックを通して、部下は上司が自分と向き合い1対1で会話をする場が定期的に設けられている安心感を得られるだろう。それが「この上司がいれば大丈夫」という心強さにつながり、個々人が安心して挑戦できる環境を構築できるはずだ。

●人事評価

人事評価のためにフィードバック面談を行う企業も多くある。フィードバック面談とは、上司と部下で人事評価の結果を共有する面談のことだ。フィードバック面談を通して、部下がその評価に対して納得できるように、また良い点を伸ばし悪い点を改善できるように促すことができる。

注意したいのが、一方的に下された評価をそのまま評価者が伝えた場合、部下のモチベーションの低下につながってしまうことがある。部下一人ひとりに対して上司が丁寧にフィードバック面談を行えば、部下自身が自分の評価を冷静に受け止めることができるだろう。

「フィードバック」を実施するうえでの注意点

「フィードバック」を実施する際、いくつか注意したい点がある。フィードバックの効果を得られるよう、次の点に気を付けよう。

●目標と関連付ける

目標が定まらない状態で「フィードバック」を行っても、フィードバックによるメリットを受ける側は享受できない。まずは目標を定めて、その目標に関連したフィードバックを部下やメンバーに適宜行おう。「目標を達成するための行動ができていたか」「行動はうまく機能していたのか」など、フィードバックの内容を目標と関連付けて行うことが大切だ。

●具体的に話す

あいまいな「フィードバック」を避け、できるだけ具体的な内容を伝えるようにしよう。フィードバックを実施する側は、常に部下やメンバーの行動・言動に注視して、記憶しておく必要がある。

「商談が成立してよかったと思う」など、具体性に欠けるフィードバックは避けなければならない。「見込み客の気持ちを理解して、予算感にマッチする取引内容を提示できていた。プレゼン資料も具体的な数字やわかりやすい図表が含まれていて、伝わりやすかった」といったように、より具体的なフィードバックを行おう。

●実現可能な「フィードバック」をする

実現不可能な「フィードバック」には意味がないばかりか、反発心を生み部下のモチベーションを低下させてしまうことがある。例えば、失敗した部下に対して、業務時間終了間際に「今日中に資料を作り直すように」などと伝えるのはフィードバックの体をなしていない。

部下の失敗に対して言及するフィードバックを行う際は、「次に同じような場面が発生したときにどう行動すればよいのか」、「なぜ失敗してしまったのか」を部下自身に気づかせるよう促そう。

●タイムリーに実施する

より効果的に行うために、「フィードバック」は対象者の行動後なるべく早い段階で実施するようにしよう。行動から時間が経つほど、互いに記憶があいまいになりフィードバックの効果が薄れてしまうからだ。

記憶が新鮮なうちに行動を振り返り、よかった点と改善点を具体的に伝えよう。前回のフィードバックを活かせていたか、次はどのような行動をすればよいのかをより明確に伝えられるようになる。

●信頼関係を築いたり、建設的な態度を取ったりする

「フィードバック」では、実施する側と受ける側の間に信頼関係が構築できるよう努力する必要がある。特にネガティブ・フィードバックを行う際には、信頼関係がない状態では否定的なフィードバックを感情的に受け取られてしまうこともあるため注意したい。

またフィードバックを行う上司やマネージャーは、伝える内容が建設的かどうか常に考えるようにしよう。受ける側が前向きな気持ちになり、改善点に自ら気づけるよう、成長を後押しするような態度・姿勢を心がけたい。

●主体的な行動に促す言葉を考える

「フィードバック」は、上司が部下を思い通りに動かすために行うものではない。フィードバックを受ける部下やメンバーが、自主的に動けるよう手助けするものだ。否定的な意見にネガティブになりすぎてしまう部下に対しては、萎縮しないように、否定意見をなるべくポジティブな言葉に言い換えて伝えるなどの工夫をしよう。

●客観性を大事にする

相手にとって耳の痛い指摘を行う場合には、人格やその人の持つ性質を否定するような言動を避けるようにしよう。思わず怒りが湧いてしまうような場面でも、冷静かつ客観的に事実を伝える必要がある。

例えばいつも同じようなミスをする部下に対して指摘する際、怒りの感情のまま、ただミスだけを叱責しないようにしたい。主観を取り除き、「どうすればミスを防げるのか」を伝えるようにしよう。
正しく「フィードバック」を実施すれば、従業員のモチベーションや能力の向上のほか、組織の目標達成にも大いに役立つ可能性がある。フィードバックを導入する際は、どのような効果を求めて導入するのか、どのような場面で活用するのかを明確化するようにしよう。また、フィードバックを実施する側が間違ったフィードバックを行わないよう、正しい方法を身につけさせる必要がある。適切なフィードバックを定期的に実施できる環境を整えるために、例えば管理職向けに研修を実施するのも一つの施策として有効だろう。
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