eラーニング
人材育成のために「eラーニング」を導入している企業は想像以上に多い。日本能率協会マネジメントセンターが行った調査では、国内企業360社のうち、eラーニングを実施している企業は80%だったという(e ラーニングに関する実施状況調査:2016年)。社員教育や研修もオンライン化できるeラーニングとは何か、そのメリットとデメリットについて解説する。

「eラーニング」とは? 近年の傾向とあわせて解説

「eラーニング」とは、パソコンやタブレットを用いてインターネット上で行う学習や研修のことを指す。eラーニングは場所や時間に関係なく学習ができるため、企業側も従業員側も学習にかかる負担を軽減できる。

近年、eラーニングを導入する企業が増えている。eラーニングが普及した理由に、多数の社員の同時教育が可能であること、手軽に社員教育を行えることがある。教材も豊富で、さまざまな分野の教育を行えるのも魅力だろう。

多数の社員を同じ場所に集めて学習や研修を行う従来型の集合研修は、コロナ禍においては実施が難しい。ウィズコロナ・アフターコロナの時代でも人材育成を進められるeラーニングは、これからますます注目されるに違いない。

eラーニングの手法は技術の進歩によって進化しており、近年では動画による学習が一般的だ。また、自社の教育方針に沿った学習を行える教材コンテンツの内製化が進んでいる。

加えて、集合研修とあわせて活用できる「ブレンディッド・ラーニング」やわずかな時間を利用して学習できる「マイクロラーニング」、楽しみながら学習できる「ゲーミフィケーション」などの新たな手法も登場している。

・ブレンディッド・ラーニング:事前・事後学習をeラーニングで行い、実践的な研修を集合研修で行うなど、eラーニングと集合研修を掛け合わせた手法
・マイクロラーニング:5分程度の動画や細分化されたWebコンテンツ教材を用いた、短時間の学習を実施できる手法
・ゲーミフィケーション:学習を進めるとポイントやレベルアップ報酬などが受け取れる、ゲーム感覚を取り入れた学習の手法
・体験型学習:VRを使用した学習や、学習者本人の考えと正しい答えの突き合わせを繰り返すロール・プレイング型の学習
・アクティブラーニング:会話主体のレッスンなど、能動的に学べる学習方法


最近では、学習者本人が能動的に学べるアクティブラーニングが終始される傾向にある。

「eラーニング」の種類と導入に必要なもの

「eラーニング」システムは学習教材と学習管理システムの2つで構成されている。それぞれの特徴と、導入の際に用意しなければならないものについて説明する。

【「eラーニング」の種類とは】

●学習教材
学習教材は、静止画、動画、音声、文章を組み合わせ、効果的に学習できるよう作られた電子教材を指す。「eラーニング」ではコンテンツとも呼ばれる。

教材の質が学習効果に直結するため、学習教材を選択する際はコンテンツの内容を精査して導入する必要がある。

●学習管理システム(LMS)
学習管理システム(LMS:learning management system)とは、「eラーニング」を実施するためのシステムのこと。LMSはいわばパソコンのOSのようなものだ。LMS内にはeラーニングに必要な機能が搭載されており、複雑な操作を行うことなく学習を進められるようになっている。

LMSの導入によって、受講者の登録・管理や教材のダウンロードと配信、学習の進捗状況の把握と管理等を一括で行えるようになる。

【導入に必要なものとは】

●学習教材の導入に必要なもの
学習教材を用意する方法は3つある。

・既製品を購入する
・自社に合ったコンテンツを製作してもらう
・自社でコンテンツを作成する


今すぐ「eラーニング」を導入したいのなら、既製品を購入して活用するといいだろう。ビジネスマナーからパソコンスキル、営業スキルなど、ビジネスパーソンに必要なスキルを習得できるコンテンツが多数用意されている。

自社に合ったコンテンツを導入したいのなら、eラーニングを提供する会社にオリジナルの教材を製作してもらうこともできる。価格や内容、対応できるコンテンツは提供会社によって異なるため、依頼の前に確認しよう。

自社でコンテンツを作成する場合でも、eラーニング提供会社の支援を受けられる。Eラーニング提供会社に自社でコンテンツを作りたい旨を伝え、どのような支援を受けられるのか確認してみよう。

●学習管理システム(LMS)の導入方法
LMSには、自社サーバーにLMSを設置するオンプレミス型と、提供会社が用意するプラットフォームを利用するクラウド型の2種類がある。

オンプレミス型の場合、LMSを導入するには自社サーバーが必要になる。自社サーバーに「eラーニング」提供会社のシステムをインストールして使用すればよい。これでeラーニングの運用・管理も自社内のみで行えるようになる。

クラウド型の場合、企業側はインターネットとインターネットに接続できる機器があればLMSを導入できる。コンテンツや運用データはクラウド上に保存され、学習者と管理者はクラウドにアクセスするだけでLMSを利用できる。

「eラーニング」は企業、従業員それぞれにどのようなメリットがある?

「eラーニング」を利用することで、企業と従業員はどのようなメリットを享受できるのだろうか。Eラーニングの導入によって得られるメリットを紹介する。

●企業側の6つのメリット

(1)運用の効率化
「eラーニング」の導入によって、企業側は社員教育にかかる手間を軽減でき、運用を効率化できる。社員教育をすべて人の手で行っていた際は、担当者が研修のスケジュールを決めて通達し、参加者の管理を行い、終了後は受講者の成績を記録して会社に報告するという実務を行っていた。

eラーニング(LMS)を導入することで、これら社員研修にかかる作業を自動で行えるようになるのは大きな利点だ。テキストを用いて行う座学も、大人数を一ヵ所に集めて行う必要がなくなる。マイクロラーニングを導入すれば、個々人がそれぞれ自分の好きなタイミングで自由に学習を行えるようになる。

(2)低コストによる研修の実施
これまでの集合研修では、かかるコストが大きくなりがちだ。集合研修の場所を用意してトレーナーを用意する集合研修では、「eラーニング」による研修の約4倍のコストがかかるといわれている。

(3)学習履歴を活用した体系的な学習の提供
自社に必要なスキルを有する人材を育成するために、企業側は従業員一人ひとりがこれまでどのような学習を行い、これからどのような学習を行うべきかを確認する必要がある。「eラーニング」を導入することで、どの従業員がいつどのような学習を行ったのかという学習履歴を簡単に残せるようになる。

学習履歴には、どのような教材を用いて学習を行い、テストの結果はどうだったのかまで詳細に記録されるため、学習の達成度や次に必要な学習がすぐにわかるようになるのだ。eラーニング(LMS)の導入で、自社の人材育成計画に沿った効率的な学習を手間なく提供できるのは企業にとって大きなメリットだろう。

(4)多くの従業員への均質的な教育の提供
集合研修では、1回の研修に参加できる従業員数が限られてしまう。また、研修を開催する日程によって講師が変われば、研修の質も変わるだろう。「eラーニング」なら、すべての従業員に同品質の教育を施せるようになる。

(5)独自性のある教育施策の提供
「eラーニング」に使うコンテンツは、自社で内製したり、eラーニングの提供会社に自社に合ったコンテンツを作成したりしてもらえる。自社の人材育成プランに沿った教材を作成しておけば、効率的で的確な教育を行えるだろう。

(6)教育のフロー化
すべての従業員に充実した教育機会を与え、優秀な人材を育てたいのなら、新入社員から段階を踏んで確実にステップアップできる教育体制を構築する必要がある。

基本的なビジネスマナーから始まり、コミュニケーション能力の向上、リーダーシップ力の向上など全ビジネスパーソンに共通するスキルに加え、専門分野についての学習を行うなど、教育をフロー化することでメリハリのある学習が可能になる。

●従業員側の3つのメリット

(1)時間や場所に縛られない
時間や場所にとらわれずに学習を行えるのは従業員側にとって大きなメリットだ。日時や場所を決められた研修は、一時的に集中して学習できるが、従業員が自主的に継続して学習することができない。

自宅や通勤時にも、スマートフォンさえあれば隙間時間を使って学びを深められる。もちろん、秘匿性の高い情報が入ったコンテンツは社外でのアクセスを制限するなどの措置をとるができる。

(2)学習の実績が企業に届きフィードバックが受けられる
自分がどれだけ熱心に学習しているのかを会社に知ってもらえるのも利点だろう。学習の実績が企業に届き、学習に対するフィードバックも受け取れる。スキルアップ・キャリアアップに熱心であることを、学習を通して人事側に伝えられるようになるのだ。

(3)反復学習ができる
集合研修による学習では、学ぶ機会は1回きりになってしまう。使用したテキストを後日開く機会はほとんどないだろう。「eラーニング」なら、1度しか受けられないテスト等を除き、同じコンテンツを何度でも繰り返し利用できる。自分が完全に理解したと自信を持てるまで反復学習ができる。

「eラーニング」のデメリットを企業、従業員別に紹介

企業側だけでなく従業員にも多くのメリットがあるeラーニング。とはいえ、注意しておきたいデメリットが存在しているのも確かだ。ここからはeラーニングのデメリットを紹介する。

●企業側の4つのデメリット

(1)従業員同士の交流機会の減少
多くの従業員が集まる集合研修は、社員間コミュニケーションの場にもなる。普段は接することのない別部署の従業員と会話し、情報を交換する機会が、「eラーニング」では減少してしまう。

eラーニングを導入する際は、LMS内に社内SNS機能を付加し、社員間のコミュニケーションを促すといいだろう。

(2)質疑応答やディスカッションがしづらい
集合研修では、講師の話に耳を傾け、疑問があればその場で質問したり、社員同士で議論したりと周囲の力を借りて疑問を解消できる。ところが「eラーニング」は個人学習になるため、疑問があっても自分自身で答えを探すほかない。

この問題を解消するために、ロール・プレイング型のeラーニングを導入する、社内SNS機能を活用してディスカッションを可能にするなどの対策を取ろう。

(3)モチベーションコントロールの難しさ
集合研修では、他に参加している従業員がいるためモチベーションを向上させやすく、集中力も持続しやすい。一方、「eラーニング」は学習の頻度が従業員のやる気によって左右されやすい。従業員のモチベーションを保つための対策を行う必要があるだろう。

全従業員に一斉メールで受講を促す、ゲーミフィケーションを導入して受講に応じてポイントを付与する制度を作るなどして、従業員のモチベーションをコントロールしよう。

(4)環境の整備
自社内に「eラーニング」による学習を提供できる環境があるだろうか。インターネット環境があり、社員それぞれにパソコンやタブレットを支給している企業であれば導入は容易だが、そうでない場合、大きなコストがかかってしまう。

個人にデバイスを支給していない企業の場合、個人のスマートフォンでも受講できるサービスを利用する、共用デバイスを用意するなどの対策が必要だ。

●従業員側の3つのデメリット

(1)受講に対して強制感を抱きやすい
時間や場所にとらわれず学習できる環境を用意すると、「いつでも学習しなければならない」という意識を芽生えさせてしまうことがある。企業側は、従業員が学習にストレスを感じないよう対策を取ろう。

「あれもこれも」と教材を用意しない、実施期間を過ぎても受講しなかった従業員に対しては救済措置を講じるなど、従業員に負担をかけすぎない学習体制を構築しよう。

(2)モチベーションの維持
業務とは異なる雰囲気で、大勢の中で学習をする集合学習とは違い、個人で学習を進める「eラーニング」ではやる気が出ない、集中力が持続しない従業員が少なからず出てくる。コツコツ学習を進めるのが苦手な従業員に対しては、企業側のデメリットで挙げた対策を講じてみよう。

(3)環境の整備
「eラーニング」にはインターネット環境とデバイスが必要だ。従業員それぞれにデバイスを支給している企業は導入もスムーズだろう。eラーニングのために従業員自身がデバイスを購入しなければならないような事態は避けたい。
「eラーニング」を活用して、自社の戦力となる優秀な人材を輩出していくためには、効果的な学習体制の構築がポイントになる。集合研修は企業側にかかる負担が大きく、効率的な学習方法とはいいづらい。リモートワークが急速に普及している今、「大人数で集まる必要がない」eラーニングのニーズはますます高まっていくだろう。

企業側はeラーニングの導入に必要な機器等を把握するとともに、教育を円滑に進められるよう、学習の目標・目的を明確化し、よりよいコンテンツを用意する必要がある。スピーディかつ効果的な学習を可能にするeラーニングは、人材育成の課題を解決する一つの手法となるため、利用の検討や運用の見直しをしてみてはいかがだろうか。

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