勤怠管理
どのような規模・業種の企業であっても、人事担当者が必ず携わる「勤怠管理」。多様な働き方が増えてきた今、その管理方法や注意点も様変わりしている。特に、コロナ禍によって、人事や上長が目視で確認できない状況でも、継続的に、ふさわしい管理をおこなう工夫が必要となった。ここでは、テレワークや法改正といった状況変化に対応し、適切な「勤怠管理」をおこなうために押さえておきたい、「勤怠管理」の意味や必要性、企業が負う義務、そして求められる手法などをまとめて解説する。

「勤怠管理」の意味や“就業管理”との違いは?

そもそも「勤怠管理」とは、企業が、従業員の日々の労働時間を正確に把握するための仕組みのことだ。主な管理項目としては、下記が挙げられる。

・出勤、退勤、休憩時間
・欠勤・遅刻の状況
・休日の取得状況

●「就業管理」との違い

企業がおこなう従業員の管理で、「勤怠管理」に似たものとして「就業管理」がある。これは、企業の従業員が作業する開始時刻や就業時刻、休憩時間などを「統一」することを指す。従業員の労働時間や休暇、休日などに関し、「法律に則したルール」を定めなくてはならない。企業は、従業員の働き方が不均衡にならないように配慮し、生産性やパフォーマンスを向上させなければならないため、「勤怠管理」のほかに「就業管理」が必要なのである。

「就業管理」として企業が管理する内容は、以下のとおり。

・従業員の出勤時間や欠勤状況
・休暇の取得状況を把握し、企業の就業規則の遵守状況について
・管理の記録に基づいた給与・残業代の計算、有給休暇の取得日数などの管理


「勤怠管理」と「就業管理」の違いとは、管理システムで例えると、「就業管理システム」は、従業員の出社時刻や退勤時刻、休憩時間の「統一」を管理することを指す。一方、「勤怠管理システム」は、従業員の勤務時間や欠勤日数などの数字的情報の管理をおこなうためのものだ。

「勤怠管理」で管理する内容とは?

では、勤怠管理の基本として、管理対象者と、管理する項目について紹介しよう。

●対象者

勤怠管理の対象である従業員は、企業の規模・業種に関わらず、管理監督者以外の「雇用している全従業員」が該当し、例外はないとされてきた。ここでいう「管理監督者」とは、従業員の労務管理において一定の責任がある者(部長や事業所長、経営層の秘書など)を指し、経営に関わる業務を請け負っている従業員が含まれる。

ただし、2019年4月に改正された「労働安全衛生法」では、「事業者は、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない」という条文が追加された。これによって、「管理監督者」は「労働時間を適正に把握すること」が義務化されているので注意が必要だ。

また、厚生労働省の「ガイドライン」によると、「労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適応される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間性が適用される時間に限る。)を除くすべての労働者」とある。この、「労働基準法第41条に定める者」が、上述の「管理監督者」といった事業所の責任者を指す。

なお、「みなし労働時間制」には、「事業場外労働のみなし労働時間制」、「専門業務型裁量労働制」、「企画業務型裁量労働制」が含まれる。例えば「高度プロフェッショナル制度」は、「みなし労働時間制」には当たらないが、健康確保措置は求められ、年間104日の休日取得状況の把握が必要となる。それぞれの制度によって、配慮すべき項目があるため、細かな内容を確認しておく必要があるだろう。

●「勤怠管理」で管理する項目

前述の通り、「勤怠管理」は、労働時間が適性に守られていることを管理する仕組みだ。「労働基準法」の第32条では、法定労働時間は「1日8時間、1週間に週40時間を超えない範囲内」と定められているため、この範囲を遵守するよう管理する必要もある。ここでは、管理項目を確認していこう。

・出勤日、欠勤日、休日出勤日
1ヵ月単位でこれらの勤務状況を把握しなければならない。これは、給与計算にも影響するため、適切な管理が必要だ。また、従業員の健康を管理する上で、従業員が適切に休日を取得できているか、休日出勤があった場合は、その分の代休や振替休日をきちんと取得できているかなどの情報は欠かせない。

・始業・終了時刻、労働時間、休憩時間
1日の労働時間も正確に把握する必要がある。この記録をとっておくことで、遅刻や早退が多い従業員に、適正な業務指導や部署移動・配置換えといった対処をする際、根拠として示すことができる。また、給与面でも、賃金算定のために始業・終業について「1分単位」で管理する。

・時間外労働時間、深夜労働時間、休日労働時間
企業は、「時間外労働」や「深夜残業」、「休日出勤」をおこなった従業員に対して、「割増賃金」を支払う義務がある。また、「法定労働時間」を超過した労働時間も支払い義務があるため、企業の人員コストに大きく影響する。それぞれ割増率は異なるため、「勤怠管理」で正確に時間を把握・管理することが必要だ。

・有休取得日数・残日数
2019年4月に「労働基準法」が改正され、「年次有給休暇の取得」も義務化された。従業員を休ませる(有給休暇を取得させる)ことも、使用者としての企業が負っている義務であると明文化された形だ。従業員が適切に有休を取得できているかを把握するためにも、勤怠管理をしっかりおこなうことは重要である。

なぜ企業にとって重要なのか、「勤怠管理」の必要性を解説

企業にとって「勤怠管理」が重要な理由には、下記のようなものがある。

●使用者側の義務

企業に勤怠管理が求められる理由として、従業員の過重労働を防止する目的が挙げられる。「労働基準法」の「法定労働時間(原則として、1日に8時間、1週間に40時間)」の遵守というコンプライアンス面と、政府が推し進める「働き方改革」を推進する面でも、企業は「勤怠管理」について義務を負っているといえる。

また、「働き方改革」にともない、2019年4月1日に改正された「労働安全衛生法」によって、労働時間の把握は「客観的な方法」によっておこなうことも義務化された。このことから、企業は従業員の勤怠状況に関して、タイムカードやICカード、もしくは勤怠管理システムを用いた客観的な記録をとり、3年間の保存が必要となった。

●正確で明瞭な給与計算

「勤怠管理」は企業の義務ではあると同時に、メリットももたらす。正しい労働時間の確認による正しい給与計算の算出は、コストカットに役立つだけでなく、透明性のある給与支払いにもつながる。反対に、勤怠管理が正しくおこなわれていなければ、残業代の正確な把握ができず、保険料や税金の計算に支障をきたす恐れもある。「未払い残業代」に関する問題が取りざたされている昨今、2年間さかのぼって後から支給することが認められているとはいえ、もとから正しく支払うことで、従業員とのトラブル回避にも役立つ。

●コンプライアンスによる健全化

近年、過酷な長時間労働や残業手当の未払いを起こす、いわゆる「ブラック企業」が社会問題となった。このような悪質な企業は、適正な労務がおこなわれておらず、コンプライアンス遵守の精神に反している。勤怠管理が正しくおこなわれ、労働時間と賃金支払いに透明性が確保されていることは、法令遵守と健全経営が徹底されているというクリーンな企業イメージにもつながる。

●トラブル防止

特に、従業員数や企業規模が大きいほど、従業員一人ひとりに目を配って管理することは難しいのが現実だ。勤怠管理によって、問題のある労働について早期の対策が打てれば、過重労働や訴訟といった企業トラブルを未然に防ぐことにもなる。長時間労働を減らすことで、従業員の心身の健康維持、モチベーション・生産性の向上もはかることができるだろう。

「勤怠管理」の主な手法(方法)と、メリット・デメリットとは?

「勤怠管理」の具体的な手法としては、アナログなものから、現在推奨されているテレワークにも対応できるものまであり、自社に合ったものを選ぶ必要がある。

・「紙の出勤簿」と「タイムカード」

「勤怠管理」をする上で、最もアナログな手段としては、「紙の出勤簿」と「タイムカード」が挙げられる。

「出勤簿」は、カレンダー仕様の紙のフォーマットを用い、出勤時刻・退勤時刻、残業時間、休憩時間、遅刻、早退、休日取得など、あらゆる勤務情報を書き込む。1枚のシートにすべての情報をまとめて管理できることはメリットだ。しかし、この方法では従業員の手書きによる「自己申告」が主となるため、不正申告やサービス残業を引き起こしやすい。

「タイムカード」は、紙の打刻シートをタイムレコーダーに差し打刻する方法だ。1ヵ月分の勤怠状況を、1人当たり1枚のシートで管理する。打刻する端末(レコーダー)を1台〜数台購入すれば、あとは用紙を補給するだけで済むためコストは比較的低く、複雑な操作もいらない。ただし、操作が単純な分、記録できる内容も始業・終業時刻に限られているものが多く、休日や残業時間の管理、勤怠データ使った分析といったことには向かない。

また、社内に設置されたレコーダーを使用するため、テレワークや遠隔地での勤務、直行直帰する場合には「リアルタイムに打刻して記録を残せない」ことがデメリットになる。毎月の集計作業では別の表計算ソフトを使用しなければならず、人事・労務担当者の労力と時間的負担があり、転記ミスといったリスクもある。

これら2点の紙媒体を使用した管理方法については、記入や修正する際は手書きであること、基本的に従業員からの申告であることから、厚生労働省の「ガイドライン」に定める「客観的な記録」にはなりにくいといえる(ただし、この「ガイドライン」には、自己申告制の特例措置についても定義されており、クリアできていれば「客観的な記録」として認められる場合もある)。

・エクセル管理

表計算ソフトの「エクセル」を使って、従業員が出退勤時刻を入力する手法だ。セルに数式を設定しておけば、自動的に労働時間を計算でき、打刻から集計までを同時におこなえる即時性はメリットである。また、フォーマット(テンプレート)はインターネット上で、無料で入手できるものも多く、パソコンにエクセルがインストールされていれば、コストをかけずに、すぐ使用できる。また、休憩時間や休日、遅刻・早退などを細かく分類し、自社の実情・働き方に合わせてカスタマイズすることも可能だ。

しかし、基本操作は従業員自身がおこなうため、入力ミスや不正申告の可能性は否めず、これも「客観的な記録」とはいいがたい。また、テレワークなど勤務形態によっては対応できない可能性もある。また、可能な記録が単純計算・集計に留まるため、例えば、勤怠記録を利用してアナリティクスをおこないたいといった場合、せっかくデータ化されていても分析の材料としては不十分だ。さらに、法改正があると、残業の割増率の変更にともない定期的に計算式を確認・変更する手間も発生する。

・勤怠管理システム

勤怠管理システムでは、タイムレコーダーやスマートフォン、パソコンなどと連携して打刻から集計、分析まで一貫してシステム管理がおこなえる。メリットとしては、リアルタイムで打刻管理ができ、集計や分析にかかる手間も少ないことが挙げられる。給与システムとも連携できるので、転記する手間がなく給与計算ミスの防止にもつながる。個別の勤務状況にアラート機能を設定すれば、労働過多になっている従業員を割り出したり、適切な対応をすぐにおこなったりすることができる。

また、打刻手段にはICカードの他にも指紋・指静脈・顔の認証や、GPSを使うといったさまざまな方法があり、デバイスも、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットが利用できるなど、選択肢の幅が広いことはポイントだ。テレワークや社外での業務が多い従業員がいる場合でも、インターネットに接続できれば、クラウド型のシステムとスマートフォンやタブレットを組み合わせることで、オンタイムで簡単に管理がおこなえる。

ただし、こういった「勤怠管理システム」の導入にはコストがかかりやすい。システム選びの際には、操作性やセキュリティ面など、注意が必要な点もあることを忘れてはいけない。

●「勤怠管理」を“客観的な記録”にするために

先述の通り、勤怠管理は、原則的に「客観的な記録」であることが必要条件だ。従業員数を含めた企業規模、雇用形態などさまざまな要件から、自社の状況や従業員にとって一番適した管理方法を選ぶことが肝心である。管理方法を検討する際には、以下の点をチェックしておくとよいだろう。

(1)打刻忘れのミスを防止でき、従業員にとって操作性は簡便か
(2)給与計算や勤怠データの集計といった他の管理業務にも流用でき、人事担当者の負担にならないか
(3)従業員数や雇用形態、導入コストなど、自社の実情や働き方に即した方法で管理できるか

「勤怠管理」で注意すべきポイント

ひとつの企業内でさまざまな働き方をしている従業員がいたり、雇用形態がまちまちであったりする現在、多様な働き方に対応した「勤怠管理」も求められている。

●多様な働き方の従業員、契約社員、非正規雇用の従業員

多様な働き方が広がっている今、勤務形態ごとに適切な勤怠管理をおこなうことが求められている。「変形労働時間制」や「みなし労働時間制」などが適用される従業員の場合、出勤簿やタイムカードなどのアナログ手法では管理が難しい。また、契約社員は、契約通りに勤務しているかを把握するために、正規従業員と同等の勤怠管理をおこなわなければならないため、働き方に合わせて、始業・終業時刻を正確に記録し、給与計算に反映できる勤怠管理を導入する必要がある。

ただし、非正規社員の中でも「派遣社員」の場合は、勤怠管理は派遣元企業がおこなうため、派遣先の企業は勤務時間の把握・管理ができていれば問題ない。

●パート・アルバイトの従業員

パートやアルバイト従業員のシフト管理にも「勤怠管理」が必要だ。パート・アルバイト従業員が多い職場では、勤務日や勤務時間が一人ひとり異なるため、休憩時間や勤務時間などをしっかりと把握することが重要だ。また、個々に時給も違うため、給与計算も手間がかかる。適正で客観的な記録と、手間をかけずに勤怠データ収集がおこなえるよう、正規雇用の従業員と同様に勤怠管理の方法を検討した方がよい。

また、シフト管理では、1日の人件費や本人の勤務希望日なども考慮しなければない。シフト作成業務にもかなりの労力を要するため、業務希望日を反映しながら自動でシフト作成もできる勤怠管理システムなど、時間と手間を省く管理方法の検討も必要だ。

●「扶養控除内」を希望する従業員

従業員が「扶養控除内」での勤務を希望している場合は、扶養控除内に収まるように配慮した勤怠管理をおこなわなければならない。配偶者の扶養に入っている従業員の場合、年収や週の労働時間の規定範囲を超えると、扶養から外れてしまう可能性があるからだ。いわゆる、所得税が発生する「103万円の壁」、従業員が501人以上の企業で勤務日数・時間など諸条件によって個人で社会保険加入義務が発生する「106万円の壁」、配偶者の社会保険の扶養から外れる「130万円の壁」である。

まずは、従業員がどの「扶養控除内」を希望しているのか確認して、従業員にとって損害とならないよう、配慮ある管理をおこなうことが重要だ。

テレワークにおける「勤怠管理」の方法と注意点

2020年春から急速に拡大した新型コロナウイルス感染症の影響から、テレワークを導入する企業が増大した。テレワーク下の勤怠管理では、タイムカードや出勤簿といった、アナログな紙媒体での管理は難しい。そのため、オンラインでの打刻、従業員の自己申告制を採用する企業が一般的だろう。

●テレワーク下で、自己申告制の勤怠管理をおこなうには

テレワーク下の勤怠管理では、人事労務の担当者や上司が、直接、従業員の勤務状況を把握することはできない。そのため、社内ルールを徹底させるよう対策が必要となった。勤怠管理の方法としては、基本的に「自己申告制」によるものとなる。自己申告制をとる場合は、従業員に対し適正に記録をおこなうことを周知・指導し、必要に応じて実態調査もおこなう必要があるだろう。

また、テレワークに適した勤怠管理システムを導入することも検討が必要だ。その場合には、インターネットに接続できればどこでも使えるクラウド型で、スマートフォンなどのデバイスを組み合わせて使用できるような、できるだけ手間がなく、操作性も簡単なものを検討する必要がある。

●テレワーク下の勤怠管理における注意点

・違法な長時間労働を防止
企業は、本来は全従業員の実労働時間の実態を適切に把握しなければならない。しかしこれが徹底されず、法定労働時間を超えた長時間労働を従業員に強いてしまうケースがあり、社会問題化している。特にテレワーク下では人事や上長の目も届きにくいため、こうしたリスクは高まる。

例えば、勤怠管理システムと社内の各システムを連携させ、退勤後は業務に関連するシステムへのアクセス制限をおこなうといった施策で、長時間労働や隠れ残業を防ぐことができる。勤怠管理を応用した施策によって、長時間労働をおこなってしまうような社内風土を廃し、健康被害などで問題が顕在化する前に対策を打つことにもつなげられる。

・年次有給休暇取得の義務付け
勤怠管理システムの中には、年次有給休暇などの各種休暇の取得を管理する機能を備えたものもある。この「休暇管理機能」を活用することで、各従業員の休暇取得状況を一覧で管理することが可能になり、従業員自身も休暇の取得日数・残日数・年次有給休暇取得率をリアルタイムで確認できる。

●チェックしておきたいテレワーク下の「勤怠管理」システムに必要な機能

・「勤務時間の管理」ができること
最低限、始業時刻・終業時刻・休憩が打刻でき、従業員それぞれ雇用形態に則したルールが適用できることも必要だ。

・「作業状況の管理」ができること
勤怠管理ツールには、オフィス外で働いている従業員の作業中のパソコン画面をスクリーンショットできるといった、作業状況が把握できたり、営業職にはGPS機能を使って立ち寄った先を把握できたりするツールもある。ただし、管理面での「作業が見えない」ことへの不安は軽減できるが、従業員に「監視されている」ととられないよう、限度や範囲に対する配慮が必要だ。

・給与やその他のツールと連携できること
せっかく管理ツールを導入するのであれば、その記録が給与やその他のシステムと連携できた方が、コストカットにつながり、管理業務の効率化にもなる。テレワークを契機にして勤怠管理システムを導入するならば、自社の既存の給与システムと連携可能なものを選ぶと良いだろう。

政府推進の「働き方改革」やコロナ禍によって、多様な働き方が認められるようになったことで、「勤怠管理」は、単に遅刻・欠席を取り締まるような役割だけではなくなった。そして、法律改正などで、企業が担う義務の内容にも変化が生じている。企業は、従業員の働きやすさにつなげるために、刻一刻と進む変化に対応した勤怠管理をおこなうことが求められているといえる。
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