「○○世代」と十把一絡げにするのは個人の意図や意識を無視した行為

澤 円 氏(株式会社圓窓 代表取締役)
【講演4】テーマ:ニューノーマルな時代を生き抜く個人力を育てるには?
澤 円 氏(株式会社圓窓 代表取締役)


これからする話は、これまでの流れからするとやや「ちゃぶ台返し」のようなところがあるかもしれません。しかし、大事なことですので触れておきます。本日はZ世代がひとつのテーマになっていますが、この「○○世代」というくくりは、コミュニケーションを図る上で大きなエラーを起こす危険性をはらんでいる、ということを理解しなければなりません。

考慮すべきは、「あなたはZ世代だよね」と言われて“嬉しい”と感じる人がいるかどうかです。1995年以降に生まれた人をZ世代と呼び、それに当てはまるなら、事実として受け入れることはできるでしょう。しかし、行動やマインドセットの定義までされて、納得して喜ぶ人がいるでしょうか。まずいないと考えるのが妥当です。

Z世代との接し方や育成の問題の根底にあるのは、マネジメントだと捉えています。マネジメントを行う際、「Z世代」という雑なくくりは絶対にやってはいけないことです。世代にはそれぞれが持つ特徴的なものや、生まれ育った年代を背景に身につけてきたコモンセンスがあるのは事実です。しかし、「Z世代だから〜」と自分の主観を押し付けてしまうのは、個々人の意図や意識を完全に無視した行為で、個人力を育てることなど到底できません。

コミュニケーションの話をすると、「○○世代は」のような“大きな主語”の使用は差し控えることを推奨します。それだけでコミュニケーションの質は向上します。同時に、世代を言い訳にしないことが肝心です。上司としてのあなたの話が通じないのは、世代が違うからではなく、あなたのコミュニケーション能力の問題です。解決するには、コミュニケーション能力を磨くしかないのです。

さらに、コミュニケーションのコツをひとつ紹介します。対話をする際は「why」で聞かないことです。例えば、ミスの報告を受けたらつい「なんでそうしたの」と言ってしまいがちですが、その気持ちを抑えてください。「なぜ」という聞き方は、相手側に「私がこうしたから」という答えを強要します。また、相手が自分以外を主語にして「誰それさんがこう言ったから」などと答えた場合、上司側は「言い訳をするな」となるでしょう。これではコミュニケーションは敬遠され、ミスを恐れて隠すようになります。チャレンジする風土も醸成されません。

そこで使ってほしい言葉は「what」です。「何があったのか」、「何があなたの行動を引き起こしたのか」という尋ね方をします。すると、聞かれた側は「これこれこういうことがあった」と答えやすい。聞かれたことに答えているだけだから、言い訳とも捉えられません。聞いた側は、次に「how」を使い、「どうやって乗り越えよう」、「どうやってリカバリーしよう」、「どうすればあなたを助けられるか」と解決策を探っていきます。

お気づきかもしれませんが、「why」も「what」も本質的に尋ねていることは同じです。しかし、聞かれた側の感じ方はまったく異なります。「why」は対立を生み、「what」と「how」は解決を生むのです。「ミスをしてもカバーしてもらえる」という環境を作ることで、心理的安全性にもつながります。

若い世代が上の世代のメンターになる「リバースメンタリング」で状況を打開せよ

ここまでマネジメントやコミュニケーションの話をしましたが、「どこから手をつけていいのかわからない」と感じたかもしれません。また、「そうはいっても、若い人と会話をすることは困難」と頭を抱えているケースもあるでしょう。そうした時は、「リバースメンタリング」の取り入れを推奨します。メンタリングは“相手方に答えがある”という前提でいろいろ聞き出す手法で、通常は立場や能力が上の人、あるいは世代が上の人が、若い世代や自分のチームの後輩や部下に実施します。一方のリバースメンタリングは、端的にいうと若い人がメンターになり、上の世代がメンタリングを受けることです。

ぜひZ世代にメンターになってもらってください。単に相談相手になってもらうだけで十分です。内容は「どんな服を着ればいいか」、「カラオケは何を歌ったらいいか」などでもかまいません。大切なのは“自己開示すること”です。これにより、メンターのZ世代は心理的安全性が担保されるようになります。また、メンターのアドバイスに対しては、それが正しいかどうかは一旦横に置き、何を言われても受け入れることを心がけます。たとえ間違っていると感じても、第一声は「なるほど」です。

このリバースメンタリングによって、上の世代は「自己開示」と「意見を受け入れること」のトレーニングができます。対して、Z世代は相手に言語化して物事を伝えることの難しさを体験することができるのです。経営学者のピーター・ドラッカーも「何かを学びたい、身につけたいと思うのであれば、一番の近道は教えること」と言っています。その学びの機会を、若い世代に渡すと考えれば良いでしょう。

ここまでいろいろ話を進めてきましたが、2020年はCOVID-19(コビッド-19、新型コロナウイルス感染症)なくして語れないのは周知の通りです。COVID-19は見方によってさまざまな解説ができますが、私は「世界がリセットされた」と表現しています。すなわち、前の状態が取り消され、新たなスタートが切られたということです。リセットですので、前の状態に戻ることはできません。また、COVID-19が起こる以前が正しい状態だと捉えるのも意味がないことです。なぜなら、私たちはCOVID-19の存在を知ってしまったし、今後もCOVID-19のようなものが出てきて世界が止まることを前提にしなくてはならなくなったからです。

こうしたことを十分に理解した上で、求められているのは「マインドセットやマネジメントのアップデート」です。「今まではこうだった」と言っても仕方がないので、これまでをリセットし、ニューノーマルな時代に対応させてほしいと思います。ある意味、今は世代を超えて全世界の全員が「COVID-19世代」とも言えます。「どうやって乗り越えていこうか、みんなで一緒に考えよう」という掛け声も発しやすい。「ピンチはチャンスだ」などと軽々しく言える状況ではありませんし、言うつもりもありません。しかし、前に進んでいかねばならないのは事実です。ぜひ行動を起こしてください。
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