半数が入社予定の企業のインターンシップに参加

就職活動の各プロセスについても見てみましょう。まずはインターンシップ参加社数です[図表3]
第115回 理系学生(院生)はどのような方法で情報収集を行い、どのような点を重視して企業を選んでいるか
「0社」は13%しかなく、残りの87%、9割近い学生がインターンシップに参加しています。「1~3社」が最も多く41%に上りますが、「4~6社」24%に続き、「7~9社」が12%、さらには「10社以上」という学生も10%もいます。理系大学院生は、研究との両立で、それほど就活に時間を割くことは難しいイメージはありますが、意外とインターンシップにも参加しているのだなと思われた方も多いのではないでしょうか。

インターンシップに参加した時期を見てみると、「修士1年・8月」が54%、「修士1年・9月」が52%と高く、「修士1年・2月」46%、「修士1年・1月」41%が続きます[図表4]
第115回 理系学生(院生)はどのような方法で情報収集を行い、どのような点を重視して企業を選んでいるか
国内で新型コロナウイルス感染拡大が騒がれ始めたのは2月になってからで、2月下旬に予定されていたインターンシップやイベントが中止となったケースもあったため、本来であれば参加率が50%を超えていた可能性もあります。驚くのは、「修士1年・12月」が1月とさほど変わらない39%にも達していることです。「修士1年・11月」「修士1年・10月」もそれぞれ25%、24%と、4分の1の学生がインターンシップに参加しています。夏季休暇中に開催されるサマーインターンシップだけでなく、その他の時期にも、文系や理系学部生と同様に参加していることが分かります。

入社予定の企業のインターンシップ参加実績を聞いたところ、「参加した」学生は49%と半数に達し、「参加しなかった(応募したが落選した・欠席した)」(9%)までを合わせれば、ほぼ6割の学生が入社予定の企業のインターンシップに応募していたことになります[図表5]。理系大学院生も、インターンシップが採用選考において重要な場であると認識していることの表れでしょう。
第115回 理系学生(院生)はどのような方法で情報収集を行い、どのような点を重視して企業を選んでいるか

「推薦」利用により、就職活動量に文理の差

次は、エントリー社数について見てみましょう[図表6]。「4~6社」が最多で22%、次いで「1~3社」が19%、「10~14社」が17%などとなっています。また、「1~9社」(「1~3社」「4~6社」「7~9社」の合計)と回答した割合は54%と半数以上に上っており、エントリー時点である程度絞り込んでいる学生が多いことが分かります。ただ、中には「30社以上」の11%をはじめ、「20社以上」(「20~24社」「25~29社」を含めた合計)とする学生が20%もいます。
第115回 理系学生(院生)はどのような方法で情報収集を行い、どのような点を重視して企業を選んでいるか
面接社数については、「4~6社」が最多で29%、次いで「1~3社」が28%、「7~9社」が17%などとなっています[図表7]。「1~6社」(「1~3社」「4~6社」の合計)で57%と6割近くを占めています。
第115回 理系学生(院生)はどのような方法で情報収集を行い、どのような点を重視して企業を選んでいるか
HR総研が「楽天みん就」と本年6月に実施した「2021年卒学生の就職活動動向調査」では、文系学生の面接社数は「1~6社」が36%にとどまり、「10社以上」が41%にも上ります。「10社以上」の面接を受けた理系大学院生は、25%と4分の1にとどまっており、面接社数では大きな差異が出ています。ここでも「推薦」利用の学生の割合が多いことによる、就職活動量の違いが見られます。

就職活動を終了した学生を対象に、入社を決めた企業をいつ知ったのかを聞いたところ、「以前から知っており、もともと入社を志望していた」は24%にとどまり、「以前から知っており、就職活動の中で志望するようになった」が50%、「就職活動開始以前は存在を知らなかった」が26%という結果となりました[図表8]
第115回 理系学生(院生)はどのような方法で情報収集を行い、どのような点を重視して企業を選んでいるか
文系と理系を比較すると、理系のほうが大手志向の傾向が強く、理系の中でも学部生よりも大学院生のほうがその傾向が強いと考えられています。現に、今回の結果でも「以前から知っており、もともと入社を志望していた」と「以前から知っており、就職活動の中で志望するようになった」と回答した学生を合わせると、74%と4分の3近くに達しており、就職活動以前に既に社名を知っていた企業に入社を決めています。

ただ、もう一つ別の見方をすることもできます。もともとは志望していなかったのに「就職活動の中で志望するようになった」50%と、「就職活動開始以前は存在を知らなかった」26%とを合わせた76%、全体の4分の3以上の学生が就職活動を通して志望度を上げていった企業に入社を決めたという事実です。特に、「就職活動開始以前は存在を知らなかった」とする学生が4分の1以上もいるという事実は、大企業・人気企業以外の企業にとっても、希望の光となるのではないでしょうか。

では、どのようなタイミングで学生の志望度は高まるのでしょうか。入社を決めた企業について、「最も志望度が高まったタイミング」を尋ねたところ、「インターンシップ」が最も多く28%、次いで「採用面接」が23%、「説明会・セミナーでの説明」が19%などとなっています[図表9]
第115回 理系学生(院生)はどのような方法で情報収集を行い、どのような点を重視して企業を選んでいるか
上位二つはともに、学生にとって社員と双方向のコミュニケーションを取れる場面であり、コミュニケーションの密度が高いこれらのタイミングを、いかに学生の志望度を高めるために活かせるかということが企業にとっては重要になってくるといえます。ただし、インターンシップで志望度を高めた理系大学院生が多いものの、学生は複数の企業のインターンシップに参加しているため、より充実した内容のインターンシップで他社と差別化し、学生の心をつかむことが求められます。また、もう一つ注目したいのは、「もともと第1志望だった」と回答した学生が5%にすぎないことです。大多数の学生は就職活動のプロセスの中で志望を固めているということになります。

「自分の将来の働く姿」をイメージできるかが鍵

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