学生にとっても今年一番のトピックスはWEB面接

ここからは就活生による「就活川柳・短歌」です。まずは、【最優秀賞】からです。

ウェブ面接 止まる回線 止まらぬ汗 (大阪府 はらDさん)

今年、新型コロナの影響を受けて一気に利用が広がったのが「WEB説明会」と「WEB面接」。学生からすれば、「WEB説明会」は基本的には受け身であり、多くの説明会では学生側のカメラはOFFにされ、企業側から見られることはありません。学生からすれば、ある意味、気楽なものです。しかし、「WEB面接」はそういうわけにはいきません。

応募先企業に赴いて実際に面接官と対面で行う従来の面接と比べれば、受付や待合室、入室、退室などのすべての所作がチェックされることもありませんし、緊張感はそれほどではないかもしれません。ただし、「WEB面接」には別の緊張感が存在します。それが、通信回線トラブルとPCなどの機器トラブルによって引き起こされる面接の中断に対する不安です。

「人生がかかる就活面接で回線が止まってしまうと本当に焦ってシャツがびしょびしょになるくらい冷や汗が止まりませんでした」と作者。WEB面接中に、実際に回線が止まった時の焦りがこちらにもしっかりと伝わってくる優れた作品です。作者と同じ経験をし、共感する学生は少なくないでしょう。「止まる」と「止まらぬ」の対比も素晴らしく、作者の焦りをよりリアルに生々しく表現できています。

続いて、【優秀賞】の2作を紹介します。

AIに 思い語るも 愛は無し (京都府 忠犬社員志望さん)

WEB面接の種類を大別すると、決められた時間に画面の向こうにいる人事担当者とリアルタイムに面接を行うタイプと、いつでも好きな時間に用意された質問に答える様子を録画して登録するタイプの二つがあります。さらに後者の中には、AIが学生の回答内容を基に、学生のタイプやその企業とのマッチ度を判定するタイプまであります。

AIの中には、判定に必要な情報が得られるまで、学生に追加の質問を繰り返すタイプのものもあります。その結果、学生の回答内容によっては、15分で面接が終わることもあれば、60分を費やすこともあるのです。生身の人事担当者が相手の面接であれば、表情やジェスチャー、声のトーンなどの非言語情報もありますし、面接官が前のめりになって質問してくるのであれば、自分に興味を持ってくれているという手ごたえも感じられます。

でも、AIは違います。何度話しても無機質な声で繰り返される「もう少し詳しくお話しください」の質問にうんざりするとともに、「お前に何がわかるんだ」といら立ってしまう学生の気持ちを率直に表現したうまい作品だと思います。「AI」と「愛」をかけている点も見事ですね。

散歩ゆく 自宅面接 母の愛 (東京都 ひらこすさん)

採用川柳でも就活川柳でも、自宅でのWEB面接を詠んだ句では、親(多くは母親)はどちらかというと「悪者」として登場するケースがほとんどです。面接中に部屋へ入ってくる、横に同席して回答内容を指示する、面接中に大きな音で掃除機をかけ始めるなどなど。今回の選考では惜しくも入賞にはなりませんでしたが、WEB面接中の画面に風呂上がりの父親の姿が映り込んだという作品もありました。父親の登場はこの作品くらいです。

そんな中、この作品に出てくる親は全く違います。「WEB面接を受ける私に気を遣い、『あまり聞かれたくないでしょ?』と、そっと散歩に行ってくれる母に感謝です」と作者。わが子の面接が何時から始まるのかをちゃんと把握し、そして面接が始まる前に席を外してくれる母親の背中に思わず感謝する息子の心情を見事に表現した作品です。今回の応募作品の中で、最もジーンときた作品です。本当にうらやましい親子関係です。「オンライン」や「WEB面接」ではなく、「自宅面接」の言葉の選択も秀逸だと思います。

企業の対応力が学生に厳しくチェックされている

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