組織をけん引するリーダーとしての資質や能力を指す「リーダーシップ」。ビジネスパーソンに求められる能力の中でも重要なものだ。近年の働き方の変化によって、プロジェクト単位で動く業務も増え、これまで以上に多くのビジネスパーソンがリーダーシップを身につける必要に迫られている。本記事ではリーダーシップの定義や種類、目的、必要な能力・スキルなどについて解説する。
「リーダーシップ」の種類やマネジメントとの違いとは? 企業や組織で発揮するための目的や必要なスキルも解説

「リーダーシップ」の意味やマネジメントとの違いとは?

「リーダーシップ」とは組織をけん引するリーダーとしての資質や能力を指す。これまで、数多くの研究者がリーダーシップについての研究に取り組み、リーダーシップの厳密な定義を定め、リーダーシップについてそれぞれ異なる複数のスタイルを発見している。また「目標達成に向けて引っ張っていく能力」という点では、リーダーシップとマネジメントを混同してしまうことが多々ある。偉大なる先達がまとめた理論を正しく理解し、ほんとうのリーダーシップを身に付け、職場で発揮しよう。

●三隅二不二のPM理論が定める2種類のリーダーシップ
一口に「リーダーシップ」といっても、よく見るとその中身は人によって違う。ここでは日本の心理学者三隅二不二(みすみ じゅうじ/じふじ:1924~2002)が提唱した「PM理論」から説明しよう。この理論では、リーダーシップを「目標達成機能(Performance function)」と「集団維持機能(Maintenance function)」の2つに分けている。

目標達成機能は、目標達成に向けて組織の生産性を高める機能を指す。目標達成のために中長期的な目標を定め、やるべきことの優先順位を付け、すべきでないことを排除し、メンバーに適切な指示を出し、進捗が思わしくないメンバーを励まし、指導するなどの能力を指す。リーダーがこの能力を高いレベルで備えていれば、チームは高いレベルの成果を挙げられる。

一方で集団維持機能は、メンバー間の人間関係や、目標に向かって仕事をする上でのやる気に注目する。円滑な人間関係を維持し、さらに円滑にすることでメンバー間のチームワークの質を高めるほか、進捗が思わしくないメンバー、元気がないように見えるメンバーの話を聞いてあげて、それぞれのメンバーが抱える問題を解決し、チームワークに参加できるように促すなどの能力を指す。リーダーがこの能力を高いレベルで備えていれば、チームはチームワークを強化できる。「あの人は面倒見が良い」という表現があるが、その表現が集団維持機能の一側面をよく表している。

世の中のリーダーには、目標達成機能が目立って高い人もいれば、集団維持機能で高い評価を得ている人もいる。しかし目標達成機能ばかりが高く、集団維持機能が低い人は、「目標達成という面では信頼できるが、チームメンバーからの人望がない」と判断されかねない。そして、集団維持機能ばかりが高く、目標達成機能が低い人は、チームをまとめる力はあるが、成果を上げるという面は劣る。

これから意識してリーダーシップを身に付けようという人は、両方の機能を高いレベルで備えるリーダーを目指すべきだ。チーム内の人間関係を円滑にし、高いレベルのチームワークを実現させながら、目標に向けて精密な進捗管理を実施し、期日までに高いレベルの成果物を完成させるリーダーが理想像と言える。


●マネジメントとの違い
リーダーシップとは、チームとそれぞれのメンバーの将来のあるべき姿を明確に描き、メンバーにもはっきりとイメージさせ、その将来像を実現させるためにチーム全体を導く力と言える。そして、リーダーをリーダーたらしめる要因は、人望だ。

一方でマネジメントとは、目標や目的を達成するための手段を定め、管理することだ。具体的には「目標実現のために細かな戦術を立案する」、「考え得るすべてのリスクを予想し、回避するために対策を打つ」、「確実に結果を出すために人・もの・お金を調整する」といったことがマネジメントを受け持つ人間、つまりマネージャーの役割となる。

先述のように、リーダーをリーダーたらしめる要因は人望だ。では、マネージャーをマネージャーたらしめる要因にはどんなものがあるのだろうか。ズバリ言うと「上下関係」だ。社内の地位や、権力が高い人間がマネージャーとなるわけだ。

そしてリーダーとマネージャーは、目標として見ているものも違う。リーダーはチームやメンバーが将来どうなっているべきかという具合で、「未来」を意識し、メンバーにもそれを強く意識させる。明るい未来を現実のものにするため、今回の仕事の目標を達成しようとメンバーを鼓舞するわけだ。

一方でマネージャーは直近の事業計画、当期の予算や目標、現在発生している問題など、「現在」に注目している。そしてマネージャーにはリーダーにはない重要な役割が1つある。それは、リーダーを指導して、その行動を修正するという役割だ。チームを統率する力がリーダーシップで、リーダーシップに修正を加えながら全体的な舵取りをするのがマネジメントとも言えるだろう。

マサチューセッツ工科大学のクラウス・オットー・シャーマー博士(Claus Otto Scharmer:1961~)は、リーダーとマネージャーの違いについて自身の著書「U理論(Theory U)」で、以下のように記している。

「マネジメントとは「ものごとをうまく進ませる」ことだが、リーダーシップとは、より大きな視点に立って活動の場を創り出し育むー共通の土壌を豊かにするーことだ」

リーダーシップとマネジメントを比べると、必要な能力、立場、視点などいろいろな違いがあるとお分かり頂けただろうか。

そして、一般的な企業では、リーダーシップを発揮することがマネージャーへの道を開くことにもなる。経営層が誰かを新たにマネージャーに昇進させるときは、職務上の能力に加えて、社内の人望やチームリーダーとしての部下からの評価を意識するのが普通だ。リーダーシップを発揮することで、より高い役職を得られる可能性が高くなると言えるだろう。

「リーダーシップ」の種類は?

ここでは、リーダーシップにも複数の種類があるということを、実際の分類を紹介することで理解して頂こう。過去のリーダーシップ研究で、リーダーシップを複数の種類に分類した人物としては、ドイツ出身の心理学者クルト・レヴィン博士(Kurt Zadek Lewin:1890~1947)と、アメリカの著述家ダニエル・ゴールマン(Daniel Goleman:1946~)が挙げられる。まずは、クルト・レヴィンの分類から紹介しよう。

●クルト・レヴィンが提唱した3種類のリーダーシップ
クルト・レヴィンはリーダーシップを「専制型リーダーシップ」、「民主型リーダーシップ」、「放任型リーダーシップ」の3種類に分類した。

(1)専制型リーダーシップ
専制型リーダーシップでは、意思決定や行動など全てリーダーが決める。部下は主体性がなく、能動的であることが多く、どうするべきかを自身で考えず、リーダーの指示を待つようになる。その結果、短期的に見ればチームは目標を達成し、成果を上げることができる。しかし、部下の成長はあまり期待できず、ひいてはチーム全体の成長もおぼつかない。高い能力を持つワンマン社長と、何も考えず付いていく部下をイメージしてもらえれば分かりやすいだろう。

(2)民主型リーダーシップ
民主型リーダーシップでは、意思決定や行動など、チームとしての方針をすべてメンバーが決めて行く。リーダーは、メンバーが考え、決断するときに助言するが、基本的にはメンバーの決定を尊重する。部下が自分で考えて行動するため、チームの一人ひとりのメンバーは大きく成長し、メンバー間のコミュニケーションも活発になり、団結力が強くなる。チームとしても成長して、ゆくゆくは大きな成果を上げられるようになるだろう。

しかし、直前の目標を達成するという視点から見ると、あまり期待できない。目標達成のためにすべきこととすべきでないことを分類し、部下に適切な量と形で仕事を割り振る上司がいないからだ。

(3)放任型リーダーシップ
放任型リーダーシップでは、チームとしての意思決定や行動にリーダーが一切関与せず、すべてメンバーに任せきりとなる。メンバーはチームの今後について考え、決断しようにも、どうすればいいのか分からないため、なかなか議論が進まない。議論もできず、今後について何も決められないため、メンバー同士の士気や団結力は高まらず、目標達成に向けてチームをけん引する人物もいないので、チームとしての目標も達成できないことが多い。

ただし、チームを構成する一人ひとりのメンバーに能力の高い人材が揃っていると、放任状態でもチームワークを固め、目標達成に向かってチーム全体が適切な行動を取る。その結果、短期的な目標を達成でき、かつ長期的な目標であるメンバーの成長や、より良いチームワークといったことも達成してしまう。

リーダーは、一人ひとりのメンバーの能力や性格を把握し、直近の業務目標がどのようなものであるかを理解して、上記3種類のリーダーシップを使い分ける必要があるだろう。優秀なメンバーが揃っていれば放任型リーダーシップを選び、リーダーとして口を出すことは最小限にとどめ、メンバーが勝手に目標を達成し、成長していくさまを見ていれば良いだろう。

一方で、会社として人材を育成している時間がなく、現有のメンバーで何とか目標を達成しなければならないということなら、専制型リーダーシップを選ぶことになるだろう。反対に、今回のプロジェクトでは業務的な目標達成は二の次で、メンバーの成長を狙うというときは、民主型リーダーシップを選べばよいだろう。

●ダニエル・ゴールマンが提唱した6つのリーダーシップ
ダニエル・ゴールマンはリーダーシップを以下の6種類に分類した。

・ビジョン型リーダーシップ
・コーチ型リーダーシップ
・関係重視型リーダーシップ
・民主型リーダーシップ
・ペースセッター型リーダーシップ
・強制型リーダーシップ


(1)ビジョン型リーダーシップ
ビジョン型リーダーシップとは、組織として将来どうありたいかという将来像を掲げながらチームを動かすリーダーシップだ。リーダーは常に前向きで、今より良い将来、今より幸せな将来を目標としてメンバーに訴えかける。

ただし、その将来にたどり着く方法をリーダーが口にすることはない。その方法は一人ひとりのメンバーに考えさせるのだ。常に前向きなリーダーの下で、一人ひとりのメンバーが今より幸せな将来を実現する方法を自由に議論しながら発見し、チームの行動目標として決めていく。そのため、リーダーはメンバーから厚い信頼を得られ、チームの団結力も高まる。

(2)コーチ型リーダーシップ
コーチ型リーダーシップでは、ビジョン型リーダーシップよりもリーダーがメンバーを指導する場面がやや増える。コーチ型リーダーシップでは、組織の目標達成はもとより、リーダーが一人ひとりのメンバーと1対1で向き合い、メンバー個人の個性について考える。

リーダーは、メンバーと1対1で向き合いながら、メンバーも気づいていない自身の長所、短所や個性、特徴を気づかせるように対話を展開する。メンバーは今まで気づいていなかった自分自身の長所、短所、個性、特徴に自分自身で気づくため、心から納得し、その後の仕事に、自身の長所を活かそうという意識が働く。それを気づかせたリーダーは、メンバー一人ひとりの特性をしっかり把握できるため、仕事の性質を見て、最も向いているメンバーに任せることができる。

(3)関係重視型リーダーシップ
関係重視型リーダーシップでは、組織の目標やあるべき将来像を追い求めるよりも、一人ひとりのメンバーがどう考えているのか、どう思っているのかということを重視する。メンバーそれぞれの考えに共鳴することで、友好関係を良好に保つ効果が期待できる。

一方で、メンバーの考え方が会社という組織の目標やあるべき将来像と食い違っていると、目標を達成できなくなる可能性が高くなる。また、メンバーの考え方を重視するだけでは、「違う考え方を理解して受け入れる」ようにメンバーを育成することが難しくなるなど、メンバーの成長、チーム全体の成長が止まってしまうということも考えられる。関係重視型リーダーシップは、状況、場面に応じて選択することにとどめて、ほかの型と併用すべきだろう。

(4)民主型リーダーシップ
民主型リーダーシップは、メンバーの意見を求め、組織全体を動かしていくものだ。メンバーの意見を広く募ることから、新しいアイデアが生まれやすい土壌ができ、メンバー間のチームワークも高まるという効果が期待できる。ただし、結果よりも過程を重視するスタイルであるため、目の前の目標を確実に達成しなければならないという場合には向かない。

さらに、各メンバーが意見を自由に出し合うときに意見が割れてしまうことがある。こうなってしまうと、チームとして進むべき方向を決めるのに長い時間がかかってしまう。ほかの型との併用、使い分けのバランスに注意したいところだ。

(5)ペースセッター型リーダーシップ
ペースセッター型リーダーシップは、リーダー自身が率先して高いレベルの成果を出して見せ、部下を鼓舞して士気を高めるものだ。これは特に優秀なメンバーが揃っているチームでは非常に高い成果を期待できる。

一方で、メンバーの能力が低く、やる気もあまりないという場合では、ペースセッター型リーダーシップではリーダーシップをうまく発揮できなくなる。やはり、ほかの型との併用を考えるべきだ。

(6)強制型リーダーシップ
強制型リーダーシップは、チームとしての意思決定や行動をリーダーがすべて定めるというものだ。軍隊のように、上官が決めたことに部下は絶対服従という型とも言える。リーダーは、決定や、指示した行動の理由は伝えない。部下は疑問をはさまず、とにかくリーダーが言う通りに行動する。

強制型リーダーシップは、短期的な目標が明確で、その目標を絶対に達成しなければならないという場合には大きな威力を発揮する。しかし、リーダーの手足となって動いている部下は、自身で考えることなく、ただ命令に従っているだけであるため、それ以上の成長を見込みにくい。自身で考えて、目標達成に向けたやり方を工夫する、あるいは自身が将来ありたい姿を定め、実現のために何をすべきかといったことを考えられる、つまり「次のリーダー」を育てるという視点では何も期待できないと言っていいだろう。

企業や組織で「リーダーシップ」を発揮する目的は?

以下では、企業や組織で「リーダーシップ」を発揮する目的として4種類を提示し、それぞれについて解説する。

(1)タスクや目標の達成
一つ目は、「タスクや目標の達成」だ。チームとして、タスクや目標を達成するには、リーダーが適切な指示を出して、チームとして共通の1つの目標に向かうように仕向けなければならない。メンバーがある程度の能力を持っているチームなら、タスクや目標をメンバーに提示し、実現するためにしなければならないことを部下に議論させて決めさせるという手法も考えられるだろう。

反対に、メンバーひとり一人の力が不足している場合は、目の前のタスク、目標の達成だけを意識するしかないだろう。リーダーがすべての方針と、メンバー一人ひとりの行動を定め、理由は一切伝えずに仕事を割り振る。メンバーが異を唱えることなく、唯々諾々とリーダーが割り振った仕事をこなしていけば、目標達成も見えてくるだろう。

(2)団結の維持
目標を「団結の維持」の1点に絞れるなら、リーダーは先頭に立たず、メンバー間のコミュニケーションを円滑にするよう配慮すべきだろう。議論が発生したら話題がそれないように、建設的な議論になるように議論を見守る。ときには軌道を修正するために、それまでの議論をまとめてみせるなど、脇役に徹することが必要になる。

(3)個人の能力開発
団結の維持と同じように、目標が個人の能力開発ならば、主役はあくまでメンバー個人だ。リーダーは話し相手になって、メンバーの長所、短所、自分の将来ありたい姿などをメンバー自身が気づくように促すべきだろう。

(4)ダイバーシティの推進
企業として、社会として人間としての多様性、社会の多様性を受け入れることは、昔から何度も「社会的課題だ」と言われている。多様な人物が活躍する諸外国の現状を見ると、日本にとっては今こそが多様性ある社会を実現する最後のチャンスかもしれない。

多様な人たちの中から有能な人材を発掘したり、均質化した日本社会では決して出てこない革新的なアイデアを多様な人たちの議論から引き出したりということを求めるなら、企業はすぐに多様性を受け入れるにはどうすべきかを考えるべきだ。

とはいえ、多様な人材がチームという形で集まると、それぞれのメンバーが考える「常識」や、仕事の進め方が大きく異なるということになりやすい。単に多様な人材が集まっているだけでは、秩序がなくなってしまうこともある。ひいては、それがチームとしての生産性の低下につながることも考えられる。

多様性を企業の力としていくには、一人ひとりのメンバーがリーダーシップを発揮し、それぞれのメンバーが自律的に行動できる環境が必要だ。そして、ひとり一人のメンバーの特性に合わせて、それぞれ異なる型のリーダーシップを発揮できるリーダーも必要だ。

「リーダーシップ」に必要な能力やスキルとは?

リーダーシップを身に付けるにはどうすれば良いのか。リーダーシップを発揮するには、どのような能力やスキルが必要なのかというところが気になるだろう。以下では先人の研究などから、どのような能力が必要かを解説していく。

●ピーター・ドラッカーの定義
著書「マネジメント」で世界的な名声を得た経営学者ピーター・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker:1909~2005)は、2000年の著書「プロフェッショナルの条件」で、リーダーシップを次のように定義している。

リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者である。リーダーは、妥協を受け入れる前に、何が正しく望ましいかを考え抜く。リーダーの仕事は明快な音を出すトランペットになることだ。

リーダーと似非リーダーとの違いは目標にある。リーダーといえども、妥協が必要になることがある。しかし、政治、経済、財政、人事など、現実の制約によって妥協せざるをえなくなったとき、その妥協が使命と目標に沿っているか離れているかによって、リーダーであるか否かが決まる。

多くの一流のリーダーたちを目にしてきた。外交的な人も内省的な人もいた。多弁な人も寡黙な人もいた。『リーダーたることの第一の要件は、リーダーシップを仕事と見ることである』。


目標を決めて、やるべきこととすべきではないことをわけ、やるべきことに優先順位を付け、メンバーが進むべき方向を指し示す。これまでの解説では、リーダーシップを持つ人がすることをこのように紹介してきた。ドラッカーの定義を読むと、さらにもう一つすべきことがあるようだ。妥協が必要になったとしても、どのような形で妥協するのが正しいのかをしっかり考えることだ。

ドラッカーは妥協が必要になったとしても、目標や理想と比べてあまり離れていない範囲で妥協すべきだと説いている。妥協した結果、リーダーが当初示していた将来ありたい姿からかけ離れた形になってしまっては、メンバーも白けるだろう。その結果、リーダーが求心力を失う可能性もある。


●ジョン・アデアの定義
イギリス出身のリーダーシップ論の権威ジョン・アデア(John Eric Adair:1934~)は、リーダーとなる人に次の8項目を行動に移すことを要求している。

・仕事を明確にする
・計画する
・説明する
・統制する
・支援する
・評価する
・動機づけする
・模範となる


それぞれ一言ずつでは、アデアが意図していることがはっきり伝わらないかもしれない。一つずつ、簡単に解説していく。

(1)仕事を明確にする
「仕事を明確にする」は、仕事として「何をするか」だけでなく、「なぜその仕事をするのか」ということまで明確にしようということだ。ただ作業するだけでなく、その目的を理解することで、仕事への熱の入れ方が変わるだろう。また、その仕事で作成したものを利用する人のことを考えて、より便利に使ってもらうために、仕事のやり方を工夫するということになる可能性もある。

(2)計画する
「計画する」は、何の準備もなく仕事に手を付けるのは止めて、作業の順序や、それぞれの工程が持つ意味、役割を明確に理解しようということ。このような準備をすることで、仕事がどれくらいの時間で完了するかを見積もることができ、仕事を通した目標達成にどれだけ近づくかということも理解できるだろう。

(3)説明する
「説明する」は、メンバーに仕事を割り当てるときに、その仕事で何をしなければならないかということ、そしてその理由をしっかり説明しようということだ。説明がないと、目的を誤解したまま仕事を進めてしまうことがある。そうなると、チームとしての目標とは違う方向に進んでしまう可能性があるということだ。

(4)統制する
「統制する」は、チーム全体を監督して、良い方向に向かうように導こうということ。リーダーひとりですべてを監督することは現実的ではない。メンバーの成長を促すという意味でも、メンバーそれぞれに自己管理させる部分も作るべきだ。

(5)支援する
「支援する」は、困っているメンバーがいたら助けようということだ。とはいっても、仕事を代わりにやってしまうのではなく、うまく進むように助言したり、目標とすべき方向を明確に示すなどの方法を採ったりして、メンバーが仕事に取りかかる前に考える余地を残すべきだ。仕事の意味や、それを通してチームとして実現したいことなどについて考えさせることで、メンバーの成長を促すこともできる。加えて、精神的に行き詰まっている様子を見せていたら、話し相手となって心配事などについて聞き、心配を解消するなどして、精神的に支援することも忘れてはならない。

(6)評価する
「評価する」は、仕事の途中でそれまでの結果を見て、なぜ成功したのか、あるいはなぜ失敗したのかを振り返って考えようということだ。成功、あるいは心配の理由が分かれば、その後の仕事に反映させて、より良い結果を得ることができる。また、振り返って考えて分かったことは、チームのメンバーにも伝えよう。人の意見を聞いて、自分の仕事の進め方を改善するという経験を積むことで、メンバー一人ひとりが成長できるはずだ。

(7)動機付けする
「動機付けする」は、メンバーの仕事に対するやる気、モチベーションを刺激しようということ。具体的には仕事を任せるときに、その仕事が持つ意味や、期待していることを伝える、仕事の成果を受け取ったときは褒めるなどの方法が考えられるだろう。

(8)模範となる
「模範となる」は、リーダーとして組織の模範としてふさわしい言動を心がけようということだ。日々の行動で示すだけでなく、仕事に対する考え方について機会を見てメンバーに伝えることでも、メンバーに良い影響を与えられるだろう。

●その他に求められる能力やスキル
ほかにも、チームのリーダーとしてさまざまなことを決断していくには、決断力が欠かせない。メンバーの支援などで積極的に動くには、行動力も必要だ。メンバーとのコミュニケーションで、仕事の目標と、その目的を伝えるときは誠実でなければならない。

・コミュニケーション力
業務上の指示を出すときや、部下の話をじっくりじっくり聞くとき、チームの目標を伝えるときなど、コミュニケーションが必要な場面は多い。リーダーは自分の考え、思いを正確に伝え、相手の考えや思いを正確に読み取るために、高いレベルのコミュニケーション能力も必要になるだろう。

・発想力
難しい目標に挑むときなどに、ただ「難しいが頑張れ」と言うだけでは話にならない。リーダーは、どうにか知恵を絞り、思わぬ解決法を見つけ出すこともときには必要になる。つまり、さまざまなことを自由に思いつく発想力も必要だ。

・安定した精神
リーダーに頼りっきりのチームというのも困ったものだが、やはりリーダーがしっかりしていなければ、チームとしての働きは良くならない。リーダーが個人的な理由で悩みを抱えているなどの理由で精神的に不安定では、部下に伝えることがコロコロ変わってしまう可能性もある。精神的な安定もリーダーには必要だ。

・信頼感
最後に、やはりリーダーはメンバーから信頼されていなければならない。信頼はすぐに得られるものではない。リーダーから受け取る指示や、リーダーから受け取ったアドバイス、そしてリーダーの仕事ぶりなどを見て、メンバーはリーダーへの信頼を強めていく。上記のリーダーとしてあるべき姿、リーダーに必要な要素を日々の業務やコミュニケーション、仕事ぶりなどで、部下に見せ続けることが必要だろう。
近年、プロジェクト単位での業務の増加やダイバーシティの推進によって、管理職以外の従業員もリーダーシップを発揮することが求められている。ただ一口にリーダーシップと言っても、様々なタイプやスタイルがある。組織やプロジェクトを率いる際は、まず自分の特性や組織の状況を把握することが重要と言える。
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