「働きやすさ」と「効率化・最適化・高度化」がアフターコロナの競争優位性につながる

いまはBCP(事業継続計画)としての対応であったとしても、テクノロジーの導入は中長期的に、「働きやすさ」による従業員のエンゲージメント向上や人事業務、および、人材マネジメントの「効率化・最適化・高度化」による新たな付加価値をもたらすものである。アフターコロナを見据えて、”生産性向上”や“精度の高い意思決定”を実現するための戦略的投資と考えるべきであろう。

HRテクノロジーは働き方改革の要でもある。業務の効率化や標準化が進み、時間や場所にとらわれない働きやすい環境が実現されれば、多様な社員の活躍やエンゲージメント向上が見込めるとともに、生産性の向上につながる。さらに、浮いた時間でより付加価値の高い仕事に集中することや、最適化や高度化の実現によってより精度の高い意思決定が可能になり、競争優位の源泉となる。

例えば、前述のデジタル面接であれば、時間や場所の制約からの解放による時短社員の活躍という「働きやすさ」の観点や時間の短縮化という効率化の側面に加えて、地理的・時間的に多様なバックグラウンドをもつ人にアクセスすることができ、採用母集団の裾野が広がる。また、選考にあたって複数の面接官による多角的な評価をおこなうことで評価基準のバラつきを阻止できること(=最適化)もメリットである。なかには、AIを使って活躍人材の予測をおこなうことができるようなツールもある(=高度化)。

人材育成もテクノロジーの力で進化させることができる。“いつでも、どこでも”受講可能なeラーニング/マイクロラーニングでは時間や場所の制約からの解放につながることはもちろん、個々人が自身に適したコンテンツを受講することもできる(=最適化)。また、オンライン集合研修では、その場でWEBアンケートの回答を集計・共有したり、リアルタイムで双方向フィードバックが可能になるような仕組みを使えば、これまで手を挙げて発言しづらかった人の意見も吸い上げて共有することができるメリットもある(=高度化)。

システム選定時は“データの一元管理” に留意

最後に1つ、システム選定にあたって考慮すべきポイントを付記したい。いまは緊急事態として導入を急がざるを得ない側面もあるが、中長期的視点で考えると、“データの一元管理”を念頭に置いた選定が必要である。

近年ピープルアナリティクスと呼ばれる人事・人材マネジメント分野のデータ分析に基づいた科学的意思決定への関心が高まっているが、せっかくシステムを導入してデータが溜まってもデータが散在しているのでは後に分析を実施しようとしたときに大きな壁となる。三菱UFJリサーチ&コンサルティングがおこなった調査(※2)によると、人事業務におけるデータ活用を実施していない企業の6割以上が「データの一元管理」を導入障壁と回答しており、データがバラバラであることが分析にあたっての大きな障壁となっている。セキュリティの観点や自社の規模や特性にあったものを選択することは勿論であるが、将来の分析を念頭に、既存システムとの連携や拡張性を考慮したものや統合的なシステムを検討することも一案あろう。

終わりに

国難とも呼べる現況において、明暗を分ける1つのカギはテクノロジーの活用にある。

働き方改革の流れとあいまって、HRテクノロジー導入は時代の要請とも言える。ピンチをチャンスにすべく、テクノロジーの力で不可能を可能にし、抜本的に「はたらきかた」を見直すこと、そして、生産性を向上させ、より精度の高い意思決定に舵を切っていくことが、目下の事業継続とその先の明るい未来につながる。


※1:パーソル総合研究所「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」
※2:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「人事のデジタル化に関する実態調査」

本記事はパーソル総研が2020年4月24日に公開したコラムの転載です
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